エイプリルフール特別編 ぴえん(フェン)リルナイトの逆襲 ~いや、これ「ぱおん」だよ?~
エイプリルフールですね…
みなさんの鬱々とした朝に、ちょっとした「スパイス」を。
あくまで「ネタ」です。
特定の何かを貶めるものではありません。
ええ、リスペクトしてますとも。
「ふ、ふふふふふふ」
薄暗い部屋。
湯気を立て、気泡がふつふつと湧くフラスコを前にする少年がいる。
「くくく、これがあれば……『奴らに復讐』できるっ」
彼の名はオーレ・マクスウェル。
ハティ・アガートラーム・マクスウェルの養子。
孤児院で育った養子組の中で下から2番目である。
グレーの髪、幼く弱々しい見た目。
「その手」の女性には、どストライクな見た目。
しかしながら、このパーティーでは影が薄い。
「オーレ、ついにできたのか」
後ろに控えていた青年が声をかける。
彼の名前はアルセイス・マクスウェル。
オーレと同じくハティの養子である。
孤児院で育った養子組の三男である。
さらりとした絹のような長髪。
涼し気な目元と端正な目鼻立ち。
街を歩けば誰もが二度見するほどの美青年。
「お耽美」なモノが好きな女性であれば、そのまま挿絵にしてもおかしくはないビジュアル。
だが、彼もこのパーティーでは影が薄かった。
「オーレ、効くのか?相手は『マトモな人間』ではないぞ」
「ふふ、アルセイス、大丈夫だよこの『魔法の薬』は強力さ」
「ほほう」
「たぶん、あのリムアンも一度口にしたら『お願い、ちょうだい』って言ってくるレベル」
「なんだとっ!?」
「ルーダですら『お、オレにもくれ……いや、お願いします。ください』って言うだろうね」
「それは素晴らしい!」
「エリーゼさんなんかメロメロだね。にじり寄って『意地悪しないで、お姉ちゃんにも、ちょ・う・だい』とか何とかいうだろうね」
「それはいい!実に、いいっ」
アルセイスが興奮して声を上げる。
「ちょっと、声が大きいよ」
「す、すまない。つい想像してしまった」
「気をつけてよ。他のメンバーに知られたら計画が台無しだから」
「そうだな、これは日頃『影が薄い』僕たちの『逆襲』の物語だからな」
ふたりは固く握手を交わす。
「ふ、ふふふふ……」
「ふふふ、ははははは……」
『アーッ、ハッハッハァーーー!』
『見ていろよ!一軍ども。僕らが女子連中を跪かせる姿を』
早朝のエルフ集落にふたりの笑い声が響く。
◇
「はぁ、はぁ、はぁ」
「う……」
大柄な青年。スヴェンが荒い息をつく。
そのすぐ傍でポチ(ハル)が唾を飲み込む。
ふたりは全身を汗で濡らしている。
身じろぎをすると顎からポタポタと汗が滴る。
「す、スヴェン……ぼく、もう……」
「どうした?もう根を上げるのか?堪え性がないな」
ふたりは熱い吐息を漏らす。
それからせわしなく体をゆする。
「スヴェンだって」
そう言ってポチ(ハル)が手を伸ばす。
「う、やめろ。こんな時に」
スヴェンが顔を赤くして手から逃れようとする。
「こんなに、熱くなってるじゃないか」
小さい手ながらも、農作業で固くなった皮膚。
スヴェンの熱い胸板に触れる。
「ドキドキしてるね。本当はもう、限界なんでしょ?」
「う、うるせぇ……」
「言っちゃいなよ。『降参だ』って」
「生意気なっ、ことをっ、言うな」
「ふふふ」
ふたりは体が火照るのも構わずに互いを見て微笑む。
◇
「ひょおおおわあわわわわわっ!」
「キタキタキターーー!」
「待ってましたっ!『筋肉ドーベルマン』と『ポチ』の『サウナ回』!」
今日も「貴腐人」たちは平常運行。
「受け攻めの逆転っ!」
「いや、これが良いんだっ。デカい方が『受ける』のが!」
「いやぁん、いやぁんっ、こんなのいけませんっ、『サウナ』でぇ!『熱中症』になっちゃいましゅぅぅ」
コレットも加わって騒いでいる。
「こ、ここっこのあと、『ロウリュウ』くるんだろっ」
ルーダが鼻息荒く言う。
「そうなのそうなの、それで……『先に出ちゃうの?』ってポチがぁぁぁ」
リャナンが声真似をして呟く。
一同が「ひゃああああああ」と奇声を上げる。
床をドンドンと踏み鳴らす。
(うるさいなぁ……)
その狂態を背にして机に向かうコリガン。
今や彼は「絵師」としてこのBL本……もとい、「聖典」の片棒を担がされていた。
(ハルぅ、スヴェン……ごめんよぉ)
彼はそっと心の中で「友」と「義兄」に謝った。
「絵師さん、絵師さんっ、できればもっと『汗だく』でお願いっ」
まるで牛丼の「つゆだく」を注文するようにリャナンが言う。
「あ、はい……」
「絵師さん、絵師さんっ、リムは『照りマシマシ』で」
リムアンが「背脂マシマシ」みたいに注文してくる。
「はい。かしこまりました」
コリガンは思う。
(絵師じゃなくて、「壊死」するよ……この貴腐人たちのせいで)
◇
な、なにが起きているっ!?
これは、これは……禁断の「アレ」ではないかっ!
僕、ハル・ロッシェは農作業から戻ってきた。
そして、見てはいけないものを見てしまった。
フィンレーとスヴェンが……
そう、ふたりが畳というフローリングの上で折り重なっている。
スヴェンが下。フィンレーが上。
ふたりは抱き合うようにして体を重ね、足を絡ませている。
「はぁはぁはぁ」
「ぜぇぜぇぜぇ」
荒い息をつく二人。
…
……
………
「うっ!?」
フィンがうめいた。
スヴェンの胸にフィンは頭を押しつけられる。
スヴェンは右足をフィンの左ひざ裏に絡め、左足は彼の右足の付け根にかける。
「おっりゃぁっ!」
くるんと一回転。
上下が入れ替わる。
「くくく、『受け攻め』逆転だな、フィン」
「まだまだ。下だから『受け』とは限らないぜ、スヴェン」
……うん。パンクラチオンか柔術の稽古だね。
グラウンドテクニックって使う機会あるのかな。
見ていたら、ふたりもこちらに気づいたみたい。
「お?お帰り。ハル」
「お帰り。ハルもやるか?教えるぞ」
「あ~、ただいま……あ……」
そして、僕は気づいてしまった。
もう一人の存在に。
「うむ。良いな。寝技の『構図』はこうか」
めっちゃメモを取ってるティアさま。
「ふふふ、創作意欲がマシマシだな」
何か不穏なことを言ってるよ。
「お嬢様。そろそろ」
ジャンヌさんが声をかける。
「ああ、もうそんな時間か」
スッとティアさまが立ち上がる。
「諸君、私はこれで失敬する。実に勉強になった。ありがとう」
ティアさまが素直に礼を言う。
「いやぁ、お役に立てて何よりです」
「そう褒められると照れるな~」
ふたりは照れくさそう。
知らないのか?気づいていないのか?
これが、あの「禁書」のネタとして「変換」されてしまうことに。
「あ~、どうすっかなぁ」
「腹減ったし、なんか食いもの探すか」
いや、僕は言うまい。
世界の「真実」を。
知らないことが「幸せ」ってこともある。
「そ、そうだね。おやつ探そうか」
ふたりに僕は同意する。
◇
おやつの時間。
頃合いと見たアルセイスとオーレが部屋に戻る。
作戦決行の時だ。
「あ、あれ?アルセイス」
「どうした?オーレ?」
オーレの言葉に、アルセイスが訝しむ。
「ないよ」
「え?『ない』?」
「うん。『魔法の薬』が」
その言葉にアルセイスが愕然とした。
そして、その時だった。
「キャ―――――ッ!」
戸外から悲鳴が上がる。
◇
オーレとアルセイスは慌てて外に出る。
目にしたのは女子チームが輪になって嬌声を上げている場面だった。
そして、その中央では……
「どすこーーーい」
「もういっちょぉぉう」
「のこったのこったぁっ!」
相撲のぶつかり稽古をしているフィンとスヴェンとハル。
「暑いなぁっ、体が火照るぜ」
「僕もだよっ!気合が入るねっ!」
「俺も俺もっ!我慢できねぇ」
三人がバッと服を脱いで、上半身裸になる。
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
女性陣が黄色い声を上げる。
「スヴェンっ、行くよ」
「おおっし!こいやぁ」
バシーーーン!
「おりゃぁ」
ゴロゴロゴロ……
「次は俺だぜ!」
「受けて立つぜ!フィン」
ぶつかり合う男たち。
それを見て歓声を上げる女性陣。
「そ、そこだぁぁっ、寄り切れ!」
「もももっ、とぉぉぉ『おっつけ』ろぉぉぉ」
「もろ差し、もろ差しぃぃぃ」
その狂態を見てアルセイスとオーレは事態の原因を突き止めようとする。
「あ……」
今朝つくった「魔法の薬」――――
正式には「リキュール・ボンボン」。
その空箱が地面に打ち捨てられていた。
お酒好きのエリーゼをも陥落させるため、エルフの高級酒を砂糖で閉じ込めた逸品。
外側をチョコレートでコーティングしている。
たとえ、子供舌でも抵抗なく食べられる。
彼ら二人が徹夜で丹精込めて作った……
――「魔法の薬」のようなお菓子。
「あ、ああああああ」
アルセイスとオーレが膝をつく。
それを余所に、女性陣は「相撲」に夢中だ。
「ああ……」
ふたりの脳裏には固く誓った思いが浮かぶ。
「オーレ、僕は地味な自分を変えるんだ。『スイーツの魔術師』と呼ばれてちやほやされるんだ」
「分かるよ。アルセイス。僕も便利屋扱いから『味覚の黄金比を生み出す錬金術師』として脚光を浴びたいんだ」
「お、オーレェえええ」
「あるせぃすぅぅぅぅ」
ふたりは涙する。
目の前では「相撲観戦」に夢中の女子連中。
「ぼ、僕たちの『スイーツで屈服』作戦が……」
「ああ……女子たちの舌を制圧して、欲しがりさんにした上で『もっとキャラ立ちさせろ』という要求をのませる作戦がぁぁぁぁ」
ふたりは手を地について慟哭する。
そんな切実な思いを「世界」は見向きもしなかった。
ただ、ただ「暑苦しくヌルヌル」する「男」たちに「熱中症」だった。
どこからともなく声が上がる。
『うっちゃれ!』
そんな声が、エルフの集落にひときわ大きく響き渡る。
このエピソードは、「本編」とは全く関わりがない「エイプリルフール」のためのお話です。
本日はちゃんと12:20と19:20に「本編」を投稿いたします。
次回、「伝説のSSRモンスター」が出現!?
どうなるハル?どうなるコレット?
そして共和政府本営!?
ぜひご覧ください。
今日も1日、頑張りましょうね。
いってらっしゃい!
理不尽なんか「うっちゃれ」!
(夜勤の方は「おやすみなさい」)




