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第100話 暗い布団の中の……切ない「告白」


エルフの集落の別荘こと、ハティさんの家は今、とんでもない雰囲気だ。


コレットがしでかしたことが原因で、今は非常にいたたまれない感じ。


コレットは部屋でふさぎ込んでいる。

コレット自身、ハティさんを無自覚に傷つけてしまったことを悔いている。

そう、罪の意識にさいなまれているんだ。


フェンリルナイトのみんなもコレットに冷たい。

意地悪をするわけじゃないけれど、距離を置いて関わらないようにしている。


ティアさまはコレットを慰めている。

ジャンヌさんも一緒。


アンジェさんは「オマエ、足先から炙り殺してやろうか」と脅してきた。

「闇(病み)」全開。


そして、問題はエリーゼさん。

あれだけコレットを可愛がっていたのに……


「近寄るな」と敵意をむき出しにしている。


僕はどうしていいかわからない。



「いやぁ~、まいったねぇ、恥ずかしいところを見せちゃったなぁ」


ハティさんは一晩で回復した。


というのは真っ赤な嘘。

笑いながらもまだ何かに怯えているような感じがする。


「みんなも、そんな怖い顔しないでよ。コレットだってわざとやったわけじゃないんだからさ」


そう言ってコレットのところに行こうとする。


でも、それをエリーゼさんとアンジェさんが止める。


「会ってどうするのです?」

「それは『気にしないで』って言うのですよ」

エリーゼさんの問いにハティさんが答える。


「そんな顔で言っても追い詰めるだけよ」

アンジェさんが言う。


「ハティ、アンタ、今自分がどんな顔してるかわかってるの?」


そっとアンジェさんがハティさんの頬に触れる。

「ダメよ。『無理してます』っていってるようなものじゃない」


ハティさんをめぐっていがみ合う二人。

だけれど、こういう時は大切な人のことを第一にしている。


「ハティ……」

コレットのいる部屋からティアさまが出てきた。


とても心配している顔。

「その、大丈夫か?」

「うん。大丈夫だよ」

ティアさまがきゅっと唇を噛んだ。


涙がこぼれる。


「すまない。私は何もしてあげられない」


普段は中二病全開なのに、こんな時は女の子している。


「あ、あの……」

襖が開いてコレットが顔をのぞかせる。


途端に空気が張り詰めた。

いや、違う。

ここだけ極寒になったような冷たさ。


原因はこの二人。

エリーゼさんとアンジェさん。


コレットは歯の根が合わず、歯をカタカタと震わせる。


冷たい目。

静かで重く、殺意に満ちた……敵を見る目だ。


「ふたりともやめてくれ」


ハティさんの声。

「でないと、僕は『自分』を許せなくなる」

追い詰められたような声。


小さく震えている。


我に返ったふたりはそのまま踵を返していなくなってしまった。


「あ……と、コレット」

ハティさんが力なく笑う。


「ごめんね」

そう言った。



―――――コレットは声を上げて泣き出した。



私が「視た」のは、ハティさんの昔の姿。

やせ細っていて、でも女の子みたいにかわいい顔をしていた。


いつも「気持ち悪い」「死ね」と怒鳴られていて石を投げつけられていた。

大人の人に捕まって、殴られたり蹴られたりしていた。


抱き着いた瞬間。


私は体がとても熱くて痛かった。

それはハティさんの心のビジョンが視せた錯覚。


煮えたぎったお湯と松明が投げつけられた。

とっさに逃げようとしたハティさんの背を焼いた。


その後、騎士のような人たちが来て、逃げるハティさんに火がついた矢を射ってきた。


何本かが刺さってとても痛い。


でも、「殺される」と思ったハティさんは必死に逃げた。


怖い、痛い、それ以上に悲しい。


そして――――――――「憎い」。


あんなに優しくて、小さな子に甘くて、だらしなく笑う人の奥底にあるもの。


私は彼の心の傷に触れてしまった。

けして癒えることのない「傷」に。

「憎しみ」に。



人の心のビジョンが「視える」ことに慢心していた。

気味悪がられていたあの頃に戻ってしまった。


私はなにも学んでいなかった。

反省したつもりになっていた。


お姉ちゃんとお兄ちゃんが受け入れてくれたからって、いい気になっていたんだ。



ろくにご飯が喉を通らない。


みんなは距離をとっているけれど、ティアさまは違った。


「食べなさい」と言って私の分を持ってきてくれる。

もとはお姉ちゃんやアンジェさんが用意してくれたもの。


ふたりだって意地悪じゃない。

ちゃんと私の分も用意してくれている。


でも、ふたりに合わせる顔がない。


なによりも、「お兄ちゃん」を傷つけてしまった……


私は、なんで、なんてっ、バカなことをしたんだろう。


知っていたつもりだった。

気づいていたつもりだった。


ハティお兄ちゃんはいつも「他の人のため」に頑張っていた。

それは、自分の存在価値を「他の人が認めてくれる」ことに見つけようとしていたから。


子供を助ける時、いつも「ありがとう」って言っていた。

助けておいて「ありがとう」って。

それは自分への贖罪だったんだ。


なにもできなかった「幼かった自分」を他の子に映して救いたかったからなんだって。



暗い部屋の中、私は布団の中で丸まっていた。

ゴソゴソと中に入ってくる人がいる。


私と同じくらいの大きさの人。

「コレット……」

そう言って手を握ってくる。


「返事、しなくていい。黙って聞いて」

そう暗い布団の中で言う。


「リムも、昔、バカなことをしてハティを傷つけた」

静かな声。


「リムは後悔した」

ちょっと震えている。


「リムは、初めて他の人のこと。男の人を『好き』になった」

切ない告白。


「バカなリムはハティが差し伸べてくれた手を払ったの」


それから、ちょっとした間。


「だから、リムは決めたの。もう一度あの人の手をとるまであきらめない。あの人が、本当に『私』を抱きしめてくれる日まで、絶対に」


それからちょっとだけ鼻声で言った。


「リムの愛した人は、とんでもなくお人よし。だから、『ごめんなさい』ってちゃんと謝ったら許してくれる」

そうして、私を抱いた。


「コレットの『好きな人』も、絶対にあなたのことを嫌いにならないわ」


ちょっとした沈黙。


それから私は彼女の顔を見た。

「リムおねえ……」


くかー。くかー……


いや、さすがは「マクスウェル」を名乗る御方。


寝息を立てて爆睡なされている。


たしか、あなたは二十代前半とか。

私は十代前半でございます。


そう思いながらも、繋がれた手を見てしまう。

自然と涙はこぼれ出てしまった。


(頑張れ。頑張れ。あなたの好きになった人は、あなたを嫌いになったりなどしない)


そんな心のビジョンが視えた。



ジャガイモ仲間の皆さんへ


今日も1日お疲れ様でした。

新生活に向けて忙しい方も、日々の諸々に追われている方も、今日という日を乗りきっただけでも凄いことだと思います。

ヴィクトリー!


さて、本作品はハティさんの古傷を無自覚に抉っちゃった回ですね。

この後、コレットちゃんはどうするのか?どうなってしまうのか?


是非とも次回もご覧ください!


ご評価いただけますと、さらに作者としても筆が加速いたします。

よろしくお願いいたします。



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