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014 次鋒戦

「レオン陣営、次鋒!!ダンテ=フロイト!!」

「ドラコ陣営、次鋒!!ブレイク=ドルイド!!」


 両陣営とも次は近接職の戦いである。ダンテは巨大な盾と片手剣を構えており、パーティーではタンク系の役割を担っている。

 一方でブレイクは直剣を持っている。速さを重視して、相手を翻弄することが得意な戦士である。防御のダンテか、速さのブレイクか。有利なのは間違いなく、ブレイクだがどうなるか。


「両者構えて……はじめ!!」

「“シールドアップ”。」


 一手目はダンテによる補助魔法。物理防御力の上昇効果を持つ魔法である。こちらも決闘のタリスマンを用いて戦われるので、被ダメを軽減させることは試合形式として有利に働く。

 一方でブレイクはそのままダンテの方へと向かって駆け出す。搦手などもなく純粋に剣技で勝負を仕掛けるようであった。


「“迅狼・狼牙”。」

「……。」


 早速、ブレイクは【剣聖】の子孫が体系化した剣術を用いて攻撃する。迅狼は相手の死角や身体構造の可動域から逆算して、虚実を交えた攻撃を得意とする剣術体系である。特に相手の意識外の攻撃を得意とする速度が重要となる。

 迅狼の中でも最も基礎的な技である狼牙は単純なもので、相手の構える武器や盾、あるいは自分自身を影として剣を隠して、最短距離で相手に剣を突き刺す攻撃である。

 だが、ダンテもダンドール家に伝わる剣術体系は習っている。基礎的な技は全て受けたことがあり、その対処方法も心得ている。軽々と盾でいなす。


「ちっ……」

「軽いな。」


 ブレイクは受け流される力に逆らわず、そのまま身体を滑らせるようにダンテの横に抜けようとするが、しかし、そう簡単に許すダンテではなく、軽く盾を構えて一歩踏み込む。

 シールドバッシュは当たらないが、相手の行動を抑制させるだけの効果はあり、ブレイクは回り込むのを諦めて、目の前で対峙する。

 そして、最初と同じように駆け出す。


「右、左……」

「……。ふっ。」


 ダンテの呟きにブレイクは目尻を跳ねさせる。先ほどの直進してきた行動に対して、次の行動が右か、左か。いずれにしても直進してこないだろうという予測をあえて口に出している。それに対してブレイクは何処に山を張っているかの心理戦を行わなければならない。

 しかし、その心理戦も圧倒的に攻撃側が有利であるのは変わらない。大雑把に考えると、選択肢は右、前、左の三択であり、山張りが当たる確率は33%。さらに防がれても攻撃は連鎖する。

 もし、攻撃を防がれても、気にするまでもないことであり、言葉に惑わされる必要もないことはブレイクには明白であった。


「真っすぐ。」

「なっ……、ちっ。」


 だが、言葉に惑わされる必要がないと頭で分かっていたとしても、頭の中で行動を読まれている可能性を演算しないとならなくなる。その時点で余計な思考を挟んでいることであり、一つ一つの判断処理が徐々に遅くなる。

 そして、運の悪いことに33%を当てられて、僅かな動揺がブレイクの中に生まれる。振り切ろうとするほど、行動を読まれていることが目立つような気がして、頭で次の行動を確定してから行動するように、思考が進む。

 ダンテとしては当たればラッキー。外れても特に問題にはならない。ただの言葉だけで相手が乱れる効率のいい手でしかなく、上手く嵌ったことに心の中ではにんまりとした笑みを浮かべている。


「……はっ!!」

「荒れてるぞ。」

「るっせ……!!」


 ブレイクは行動が読まれている可能性を頭では否定しながらも、その剣筋が乱れることを抑えられない。それをダンテに指摘されることで、さらに落ち着かなければならないと、戦闘中に余計な思考が挟まる。

 思考の上で演算するべき事柄が多い程、一つ一つの処理速度、精度が落ちるのは当然である。そのいつもの調子じゃないという感覚がさらに焦りを生み、落ち着かなければならないという感情を増幅させる。

 単調となる攻撃はダンテにとって対処することが簡単であり、さらにそれに合わせてカウンターを繰り出すなど、ダンテに有利な形で戦況が続いていく。


「……よしっ。」

「ん?」

「獣性解放“ワイルドウルフ”。」


 ブレイクは突然立ち止まる。次の瞬間、身体から莫大な魔力・気力が溢れ出して、その身体を包み込む。変化は大きいものではなく、耳と尻尾が生え、八重歯になった程度である。

 しかし、見た目の変化よりも身体能力の向上や思考面の性質の変化が際立ったものである。身体能力は元の人間状態の時よりも1.3倍程度となり、思考のノイズは消えて戦闘に最適化される。一方で、戦術の組み立てと言った論理体系で思考することが難しくなる欠点も存在する。

 獣性解放とは、カルアなど獣王に由来する存在が使うビーストモードの模倣技である。その性質はビーストモードに似ているが、出力やデメリットの有無、そもそもの発動の制約などに大きな違いが存在する。


「獣人!?きっつ……!!」


 獣人として原種の能力を引き出せる獣性解放は強力無比であり、先ほどダンテに追い込まれていたブレイクの様子が嘘のようにダンテが一方的に追い込まれ始める。

 なんと言っても、早い、強い。単純明快な身体能力の高さというもので圧倒していた。質が悪いことに、体系化した技術そのものを戦術として組み込むことはできないにしても、本能で最善手の技をその場で即興で繰り出すのである。

 心理戦に持ち込み、相手の心の隙をつこうと考えていたダンテに勝てる道理はなく、そのまま押し切られる。


「まじ、か……!!」


 ――――――パリン。ダンテの胸に付く決闘のタリスマンが割れ、粒子になって宙に消えて行った。こうしてドラコ陣営が白星を一つ獲得した。

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