006 初クエスト
心地よい気温、程よい騒狂、澄んだ空気。快適な朝。しかし、心は何故か晴れない。
それもそのはず、昨日10000もの借用をしたのだ。一応、次の月までに金庫に預金できれば問題ないのだけれど、そのためはちゃんと働かないといけない。
それに来週にはまた10000の出費が確定しており、かなりかつかつになるような気がしている。心にのしかかる見えない重石が辛いな。
「ということで、冒険者ギルドにやってきました。」
「うん。今日でちゃんとお金稼げるといいね。」
いや、アリスちゃんはそれでいいだろうけど、こっちはそうもいかないんですけど。単純に一週間で13000稼げば初めて一か月後に宿泊費を完全に納めることができる計算だよ。普通に厳しいよ。
確か、一日薬草取りをした場合に1500でダンジョン下層に潜って1300だよ。十日いるじゃん。あれ、最初から破綻しているような……。
「そうだね。頑張らないと……。」
「そう言えば、ギルドボードは一回の左の掲示板にあるみたいだね。掲示板にある依頼用紙の魔方陣にギルドカードをかざせばクエストが受注できるんだよね。」
おっ、久しぶりのチュートリアルアリスちゃんの登場だ。説明台詞をいつもどうもありがとう。ということで、早速掲示板を見に行こうか。
……見に行きたいんだけど、どうやら人が群がっているため隙間がない。石級で受けられる仕事は大したことないから、はけてから掲示板に近づこう。面倒なのに絡まれるのは嫌だしな。
「アリスちゃんはどの依頼を受けたい?」
「私のオススメは薬草採取とグレーターラッドの討伐依頼、かな。グレーターラッドは木の根や草の根を食べるから、薬草の群生地に生息していることが多いからね。」
「なるほど。二つは常設依頼だったよね。常設依頼は受付嬢に危機に行けば依頼用紙をくれるんだっけ。」
「うん。グレーターラッドは日中も活動して、繁殖力も強いからね。いつでも依頼が出ているよ。受付嬢さんは常設依頼の用紙はくれるって昨日言ってたよ。」
薬草と鼠狩りか。薬草を取りながら鼠も討伐して金を稼げるため、セットで受けることで同時にクエストを進めることができるのか。また、常設依頼であるため、期限設定がなく、違約金の発生などがないことも石級の間は有利なことだな。
しかし、ギルドカードに進行クエストの登録と進度の表示までできるって、多機能過ぎないか?魔力に反応してとか、魔方陣にIDがあるからだとか、そんな話を王都の偉い人が言っていたな。
「おはようございます。今日は早速クエストを受注しますか?」
「はい。薬草採集とグレーターラッド討伐の常設依頼を受けます。」
「承りました。こちらにギルドカードをかざしてください。……お二人の活躍をお祈りしています。」
「ありがとうございます。」
受付嬢の取り出した二枚の用紙に添付されている魔方陣にギルドカードをかざすと、魔法陣が光り輝き、ルーン文字が浮き上がってカードに吸い込まれていく。
カードの背面を見るとID、クエスト名、カテゴリ、対象、対象数、期限が青い文字で浮かび上がっているのが見える。カードには十行用意されており、一度に受注できるクエスト量が制限されている。
何度見てもオーバーテクノロジーだな。どういう原理かさっぱり分からないけれど、情報が圧縮され、カードを見れば大まかな概要が分かるのは非常に助かる。
そうしてクエストを受けた俺とアリスちゃんは近郊の森に来ていた。村にあった森と同じような雰囲気であり、人の行動がしやすい程度の木々の密集率に足元は木々の葉をすり抜けて太陽が当たるため、見えないということもない。
ちなみに、通行料はしっかりと取られている。これも毎日とられるときついな~。
「あ、早速薬草があるね。」
「本当だね。意外と集まるかもしれないな。」
「うん。いつも通り、イリアちゃんは周囲の警戒をお願いね。」
「ああ。任せておいて。」
森の中でも特に日当たりの良いところに薬草は生えている。また、比較的暗い場所よりも明るい場所の方が品質も良い場合が多いため、光量の差みたいなものを意識すると見つかりやすかったりする。
けれど、今までアリスちゃんより先に薬草を発見したためしがない。流石は雑貨屋の看板娘と言うべきだろうか。アリスちゃんは薬草も自分で調合したりするからな。
「グレーターラッドでないね。」
「うん。薬草採集は群生地が三か所あったけれど、一回も出会わないね。」
「14本の薬草か。1400だな。ミザー婆さんなら1500にしてくれそうだけど、クエストを通してだと売却額上がらないからなぁ。」
グレーターラッドが出ないのはいいけれど、薬草採取だけで稼ぐのは無理があるからな。実際に今二時間程度だけど、1400だからな。単純に三倍程度で5200。半分で2600なんだよなぁ。
一応、五日間働けばノルマは達成するけれど、群生地だからと一日で生えてくれるわけではないから、他の稼ぎ方を考えておかないと厳しいな。
「あ、薬草とそれとグレーターラッド。」
「おっ、本当だ。今回は一匹か。遠くから魔法を撃ってしまおう。」
「うん。いつも通りだね。」
さて、ようやく見つけたわけだけど、一応鑑定しておこうか。この近辺のレベルだとそこまで強い魔物ではないはずだけれど。念には念を入れ。
CNーLv12/100 Race:グレーターラッドLv11/30 Rank:1
HP 892/892 MP 873/873 SP 742/742
STR 47 VIT 52
INT 49 RES 62
AGI 58 DEX 60
「“ライトアロー”。」
「“ダークアロー”。」
光の矢はグレーターラッドを貫く、そこにアリスちゃんとスラちゃんの追撃が加わり、で倒してしまった。魔物は光の粒子に包まれて、天に舞っていく。そこには鼠の牙(下級)がドロップしていたのだった。
呆気なかったな。流石に強くなり過ぎていたのか。このレベルの敵ならすぐに終わるため、戦う意味が薄いな。アイテムの売却額50だし、早くギルドランクを上げよう。うん。それがいい。




