013 初!対人戦
突如始まろうとする対人戦。俺の装備は村人の服に聖剣召喚で呼び出した祝福の聖剣“エルメシア”。そして先ほど購入した魔鉱の盾である。
対する少年たちは剣と盾使いが一人。槍使いが一人。それと杖を持った魔法使いが一人。数的に不利ではあるが、それは前世の経験でカバーしよう。とりあえず、回り込まれないように牽制しながらの魔法使いと前衛が直線状に来るように動き続ける。
これだけで攻撃の激しさも和らぐだろう。さてはて、少年たちはどう来るか。
「まずは俺からだな。」
「え?三人で来るんじゃないの?」
「は?お前生意気なこと言ってんじゃねーよ。俺らに勝てたこと一度もない癖にな。」
あ、そうなの。てっきり三人で掛かってくるのかと思っていたけど、そういうわけではないのね。まずは剣と盾使いの少年から戦うわけか。
いいよ。そっちがその気ならそれでもね。でも、負けたら恥ずかしいよ。大丈夫そ?あ、でも三人がかりで負けた方が恥ずかしいか。
「はぁ、じゃあやろうか。」
「気の抜けた奴だな。」
どうやらやる気をそいでしまったようだが安心してくれ。すぐに本気にさせてあげるから。俺に同じ装備で掛かってきたこと後悔させてやるよ。
ということで、ラウンド一開始である。
さて、まずこの少年がどういった手合いであるかだな。攻撃に偏重したタイプなのか、防御に偏重したタイプなのか。それともバランスの良いタイプなのか。
他の二人を見るにおそらく防御に意識を割り振るタイプの可能性が高いだろう。槍使いと魔法使いなんて攻撃系にしか見えないしな。もしくはバランス型か。
どちらにせよ動き出しが遅い傾向にあるだろう。相手の様子を見ようとするというか。なら、相手の意識外からの一撃で仕留めるのが一番早いかな。
「……来ないのか。」
「くくく、そっちこそ。攻撃は苦手なのかな?」
盾をどっしりと構えている少年。予測通りに防御に意識を割りふるタイプか。じゃあ、とりあえず間合いを詰めてみますか。
若干右寄りに詰め寄ってみると、じりじりと少年も足を動かし盾をこちらへと向けている。うんうん。こちらにしっかりと目線を向けながらも盾で身体を隠しているな。中々悪くない。
でも、攻撃しないことには戦いは終わらないんだぜ?特に今回は一対一だしな。こちらからいつでも攻めることが出来る状況なんてカモも同然だぜ。
「“フラッシュ”。」
「くっ……!!」
新しい光属性魔法のフラッシュは単純な効果で眩い光を放出して、相手を目つぶしする魔法だ。これが対人戦では中々に強力で、ほら少年もこちらの様子をよく見ているから目くらましが成功している。
そして、反射的な行動だろう。正面を向いてどしりと構えていた盾を上へと跳ねさせてしまっており、その身体は隙だらけになっている。
これで、俺の勝ちだな。ただ相手に駆け寄って首元に剣を添えるだけ。簡単な仕事だ。
「はい。俺の勝ち。」
「ちっ、降参だ。」
「じゃあ、次は俺だな。」
「二人で掛かってきてもいいんだぞ?」
そう言うとイラっとした表情を隠そうともせず、槍を手でクルクルと回しながら少年が歩み出てくる。相手の挑発に乗ってしまう単純で熱いタイプの少年か。
攻撃に偏重しているのが予想に難くなく、つい笑ってしまいそうになる。バカにするということではなく、こういう単純なタイプは酒の席とかでも面白かったんだよな。バカ話をして楽しめるから好きなんだよ。
さて、個人的な趣向は置いておいて、単純で熱いタイプというのは戦闘では欠点にしかならない。強い奴らってのはどいつもこいつも自分を律することが出来る奴らだった。
まぁ、本物の一部。天才と呼ばれる奴らは自分を律するというより、自分を押し付けて自分の土俵に持ち込む様な一癖も、二癖もある我の強い連中なんだがな。
「じゃあ、やろうか。」
「言われなくても。そらっ……!!」
鋭い突き。中々に速度も速く、重さも乗った良い攻撃ではないか。でも、狙いが分かりやすく防ぎやすい。ただ相手の攻撃が来るところに盾を置くだけの作業だ。後は盾の角度を工夫して、槍が後ろに流れるようにしてやるだけ。
ガキンという音と共に槍は丸い盾を滑り、攻撃は身体の外に逸れる。全力の攻撃は勢いが付きすぎており、少年は前のめりに倒れるように踏ん張りがきいていない。
だが、どうにか倒れるのだけはしなかったようで、槍を戻そうと懸命に足掻くが、身体のバランスが崩れた少年では俺の攻撃を前に槍を引き戻すことは叶わなかった。
「一瞬だったな。熱くなり過ぎだぞ。」
「くっ……。」
「俺の勝ちだな。」
こうして少年の首元に添えられた剣が何よりの証明。少年はこの戦いに負けたのであった。俺に勝とうなんざ百年早いわ。魔王を倒してから言いやがれって話だよな。
盾による防御、パリィがなくても余裕で勝てていただろう。圧倒的な戦果。我ながら流石だ。
「魔法使い殿はどうされるか?」
「流石に前衛に対して、この広場で一人戦おうとは思わないな。三人で戦って欲しそうだから、その提案に乗ってやる。」
「くくく、いいねぇ。じゃあ、しっかりと頼むぜ。一瞬で終わるなんてないようにな。」
「さて、ではこのコインを投げるから、地面に落ちたらスタートな。」
「ああ。」
「ぶっ殺す。」
「……。」
「じゃ、投げるからな。」
コインを一枚指で弾く。キィンという音と共にコインは宙をくるくると舞い、そして地面へと落ちてくる。
くくく、三人とも良い戦意を見せてるじゃないか。久しぶりに心が熱くなるような対人戦になりそうかな?あぁ、早くコインよ落ちてくれ。早く。早く!!
―――カラン。
「“フィジカルブースト”。」
初手、魔法使いによる補助魔法。いいね。先ほどの感触からおそらくステータス的には大きな差はなく拮抗している。そこに補助魔法を与えれば、均衡はあちらに傾くだろう。
そして、槍使いの案外にも冷静な対応。剣と盾使いの後ろを追従しながら、こちらの隙を伺っている。熱い闘志を瞳に宿らせながらも、どうやら激情は奥にしまい込んでいるようだ。
中々手強そうではないか。
「くくく、だけど“フィジカルブースト”。」
俺も同じ魔法を使えるんだよね。支援系の魔法は特に無属性魔法に属しており、その無属性魔法は俺も扱えるのだ。偏っていた均衡はまた拮抗状態に戻ったぞ。
さて、ここからどうするか。やはりこちらとしては魔法使いによる遠距離攻撃をどうにかしたいからな。どうにか同線上に前衛を置きたいものだが、剣と盾使いが防御よりの考え方をしている限り、間合いとか立ち位置の把握というのはしっかりしているだろう。
そして、問題はどの属性の魔法を扱えるかだ。脅威度としては風と土が同程度。その下に火と闇、光が来て、最後に水だろう。風は不可視なため、魔法の発生後に処理をできない。
で、土属性。これは対人戦においてあまりにも出来ることが多い。攻撃はもちろん。防御に、足元に石を生み出したり、穴を掘ったり。果てはゴーレムなんて呼び出してみろ。そうなったらさらに人数差が生まれて不利になる。
さてはて、どんな魔法属性がやってくるのやら。
「“クレイウォール”。」
「ちっ、最悪だ。」
土属性か。これでは勝てるか怪しくなって来たぞ。自分の身を守りつつ、一方的にこちらに攻撃してくる魔法使い。本当に最悪だな。
それにこちらからは魔法使いの様子が見えない。相手がどんな策を講じているのか見えないというのは中々に厳しい展開になりそうだ。




