001 英雄は来世へと旅立つ
この日、俺は世界を救う英雄になった。
この世界は長らく魔王の脅威にさらされており、各国がこぞって魔王討伐を競い合っていた。
かく言うこの俺も魔王討伐の旅に選ばれた一人だった。
少ない軍資金と心許ない装備を渡され、魔王討伐の旅に出ろと言われた時は、何の冗談かと思ったものだ。
だが、六人の仲間たち。【聖女】フィリア,【守護神】ルーファス,【賢者】エルノア,
【剣聖】ダンドール,【冒険家】カルア。そして【隠者】ハーミットと出会い、嘆きの森、死の火山、呪いの大海など。環境に魔物、数多の脅威を退けて、魔王討伐を成し遂げたのだ。
「それが、どうしてこうなった~~~~~~!!」
「おぉ、勇者よ。死んでしまうとは情けない。」
そう、世界を救う英雄になった俺だが、魔王との相打ちで死んでしまったのだった。
そして、目の前にいるこの白髭たっぷりのじじいがこの世界の神様である。
「って、酷い言い草だな!!」
「ほっほっほっ。儂、神じゃぞ?」
「一応、世界を救った英雄だけど?」
世界を救った英雄にもかかわらず、この扱い。生き返らせるとか特例事項を認めるべきだと思うのだが。
「そうじゃのう。生き返らせるのは世の道理に背く行為じゃ。」
「特例だよ、と・く・れ・い。」
そりゃね、死者蘇生なんて禁忌も禁忌だよ。でも、こちとら魔王を倒した英雄だぞ?
それくらいの役得あって然るべきだと思うんだけど。違うかな?
「う~む。生き返らせると魂が穢れるからのう。今後の可能性と来世その全てを捨て去る覚悟があるなら、やってもよいがの。」
え?死者蘇生ってそんなに代償でかいの?やばすぎでしょ。
今後の可能性って何?まぁ、来世の方は俺のことじゃないし、知ったことではないけど。
「こやつ、クズじゃの。」
「はっ、こちとら英雄様だぞ?」
「死んでしまってよかったのかもしれんの。」
このじじい、何を言いやがる!!俺は英雄様だぞ!!
この俺が居なかったら魔王討伐なんて出来はしなかったのだぞ。そんな俺に向かってクズとは、何たる言い草か。
ぺっ、疫病神が。
「おぬしも神に向かってどういう態度をとっているのじゃ。」
「さっきから、ちょくちょく心を読むんじゃねぇ!!」
「……。」
じじ……ごほん、神様何ですか、そのジト目は。
ジト目をしていいのは可愛い美少女だけと決ってんだぞ!!ビジュ変えてから、出直してこい!!
「全く禄でもない男じゃの。生き返らせるのは無理でも、記憶を残したまま来世をやり直してやろうと思ったのじゃが。」
は?そう言うのは先に言えよ。
がはははは、記憶を残したまま来世をやり直せるだと。強くてニューゲームとか最高じゃねぇか。
神様もお人が悪い。じじいとか言ってごめんな。見た目。じじいだけど。
「ヤダなぁ~、神様。僕は神様の立派な信徒ですよ。僕が英雄になれたのも最高の仲間のおかげ。現世のことは心強い仲間に任せますよ。」
「……現金な英雄じゃのう。」
神様ならぎりジト目を許せ……。
うん。ありがとう神様。ありがとう。
「さて、で?俺は何処に生まれるんだ?」
「……まぁ、よいか。おぬしが魔王を倒して、230年目の世界じゃ。」
230年か……。
……仲間も皆いなくなっちまっているか。いや、一人、あの女だけは生きてるかもしれなないか。あいつが生きているなら心強い。
「ほう。おぬしにも感傷という感情は残っているのじゃな。」
「最高の仲間だったからな。……って、それはどういう意味だこのじじい!!」
くそじじい。こいつ本当に神なのか?神と言っても邪神なのでは?
ここで討伐しておいた方が絶対にいい気がする。ビジュ、美少女じゃないし。
「ほう、そんなに美少女が好きだと。」
「あ?当たり前だろ?じじいより美少女の方が何倍もいいに決ってんだろ。」
「うむ。参考にするとしよう。」
お?まさか、美少女の幼馴染とか。美魔女な母親とか。美少女な貴族の娘とか。そんな美少女にめぐり合わせてくれる気か?
なんだ、いい奴じゃないか。邪神とか言ってごめんな。悪かったよ。
だから、美少女にちゃんと会わせてくれな?な?
「その願い叶えてやろう。」
「おお、神様。感謝いたします。神様の庇護のもと生まれてこられて幸福でございます。」
「だが、その代わり他の特典はつけられないがよいかの?」
がはははは、他の特典なんているものか。美少女と仲良くなる以外にすることなんてあるものか。
記憶は引き継げるんだよな。それに美少女との出会いも保証されているなんて、最高じゃないか。
「気に入って貰えたようで何よりじゃ。」
「いえ、有難き幸せでございます。」
「……ふむ。おぬしに一つ頼みたいことがあるのじゃが。」
頼み事?ちっ、めんどくせぇな。だが、神様の頼みだ。きちんと聞いてやろうじゃないか。
そのかわり、分かってんだろ?美少女のことは頼んだぜ。あと、特典も寄こせや!!
「230年。それだけの期間が経っていれば、世も色々と変化しているだろう。」
それだけの時間があれば世の中は発展しているだろうよ。酒に、娯楽。
くくく、今からも楽しみでならねぇ。
「おぬしの体験を来世では伝えてやってくれ。」
「その程度でしたら、この俺に任せてくれ。」
つまり、合法的に美少女にお触り出来るってことだろ?
剣技を教えるために身体が接触したり、魔法を教えるために美少女の身体に魔力を流したり。ぐへへ、さらに楽しみが増えたぜ。
「特典に鑑定を付与してやろう。」
うほっ、マジで特典までくれるとは。
けけけ、来世は最高の人生が待っているに違いない。
待っていろよ。俺の幸福な人生よ。今行く!!
「不満もないようだから、もう送ってやろう。」
「ああ、あっちのことは任せておけ!!」
「ほっほっほっ。では、精々楽しむのじゃ。」
あん?なんだ、そのあくどい笑みは?やはり邪神なのか?
くそっ、何をしやがった?精々楽しめだと?
何かしやがったら、後悔させてやるぞ、この邪神め~~~~~!!
「ほっほっほっ。ほっほっほっほっほっほ。」




