第6話 メイヤー家の意地
オチが決まったワグナー家戦は省略します。
まあ、作者は昔の戦に詳しくないので、書きたくないのが本音ですが(`・ω・´)
ワグナー家と交戦して、彼らを撤退させたリヒャルトは、そのままメイヤー家の野営と相対するように陣を張った。
そして、ワグナー家に対して行ったように、使者を送って口上を伝えたのだが――
天幕の中、線の細い黒髪の青年が背筋を伸ばして言った。
「メイヤー家のハウザー卿は、どうやら納得されていないご様子でした。」
「それはそうだろうね。そもそもここはワグナー伯爵領。わざわざ理由をつけて攻めてきたのに、何も得ることなく退け、だなんて受け入れられやしないさ。」
リヒャルトがこともなげに言うと、黒髪の青年は肩をすくめた。
「ワグナー家を先に退かせた件、よろしくなかったのでは。」
「僕は、事態の収束を急いでいる。犠牲を最小化することは考えてないんだ。」
リヒャルトの言葉に、黒髪の青年は言った。
「――つまり、最初から、メイヤー家をある程度叩く想定であった、と。」
「結果的にそうなったこと、その見立てが立っていたこと、否定はしないよ。」
そして、リヒャルトは腰を上げた。
「ランス、急いで領地に戻ってくれ。――次は、王国北東部に向かう。部隊を編成しておいてくれ。――あと、ジョーデル様にもこの書状を。」
「かしこまりました。」
黒髪の青年・ランスは、書状を受け取ると一礼して、天幕を退出した。
そして、リヒャルトは独りごちた。
「――それじゃあ、こちらも手際よく片づけようか。」
* * * * *
――平原にて、二つの部隊が対峙していた。
西側には、重装歩兵が前列に、弓兵が後列に、それぞれ位置しつつ左右に展開しており、リヒャルトが指揮を執っていた。
一方、東側には、メイヤー家の騎馬隊が一列で展開していた。
リヒャルトの傍に控えていた兵士が言った。
「リヒャルト様、あちらは短期決戦の構えのようです。」
「そうだね――騎兵の機動力を活かした、いい戦術だと思うな。」
それから、リヒャルトは頷いた。
「それでは、進撃開始だ。――狼煙を上げろ。」
「かしこまりました。」
兵士は角笛を吹き、その後、狼煙を上げた。
そして、アルスレート家の部隊が前進を始めると、メイヤー家もそれに応じた。
両者の距離が狭まってゆく。
――先に仕掛けたのは、メイヤー家の騎馬隊だった。
攻め立てるメイヤー家の騎馬隊に対して、アルスレート家の前列の重装歩兵たちは防御に徹する。
そして、その後ろから弓兵の放つ矢が放物線軌道を描いて、メイヤー家の騎馬隊に降り注いだ。
リヒャルトの傍に控える兵士は、少し慌てた様子だった。
「中央が押され気味です。弓兵の狙いを端ばかりではなく、中央にも。」
「側面に回りこませなければいいよ。――騎兵の足を止めることが最優先だ。」
それからリヒャルトは一息置いて、ニヤリと笑った。
「それに――アレンに部隊を任せたのは、何のためだと思っているんだい?」
メイヤー家の騎馬隊の後方から、狼煙が上がった。
角笛が響き、土煙が舞う。
土煙と共に、アレンの率いる騎馬隊が、メイヤー家の騎馬隊の背後から急襲した。
背後を突かれてメイヤー家の騎馬隊は混乱した。
戦闘中にもかかわらず、この戦術に対する謗りの声が上がっていた。
使者を送り、口上を述べた相手にしては手際が良すぎたのだから。
しかし、そのような怒号は意味をなさない。
前後から挟撃されたメイヤー家が、崩壊するのに時間はかからなかった。
リヒャルトの目の前に引き立てられた銀髪の青年、メイヤー家の当主ハウザーは、リヒャルトを罵ったが、肩をすくめたリヒャルトは淡々と言った。
「アルテリオ王国貴族であることを忘れ、亡国を招くような真似をしながら、戦の礼を語りますか。――まあ、殺しはしませんから、さっさと帰ってくださいね。」
そして、リヒャルトは腰を上げて、隣に控えるアレンに言った。
「後は頼むよ。僕はすぐに家に戻って次の火種を処理する。」
「かしこまりました。」
ぞんざいな扱いですが、メイヤー家が悪であるとは言いづらいです。
理屈が立てば、道理は引っ込む。
道理を、テキトーに理屈をつけて多数決で曲げるのは様式美です。
――そして、やがて曲げる力が弱って、倍返しを食らうのも様式美です(`・ω・´)




