第4話 国境近くの小競り合い
理屈では救いようがないことはよくわかったので、前線に行きます。
戦わない戦記を書くほどの胆力はありませんので(`・ω・´)
リヒャルトは何度か早馬を乗り換えながら、アルテリオ王国の南南西の国境近くの地に急いだ。
ジョーデル王への謁見の直後に、リヒャルトは自前の部隊を先行させていた。
国境近辺における、兵士同士の小競り合いなど一刻も早く隠さなければならない。
リヒャルトは先行していた部隊の野営に馬を乗りつけた。
そして、馬を降りて、悠々と野営の中心にある天幕へと歩き始めた。
リヒャルトの姿を見た兵士たちは、各々が敬礼し、リヒャルトは微笑で応えた。
中心の天幕に入ると、その奥で一人の赤い髪の青年が腰を上げた。
「お待ちしておりました、リヒャルト様。」
「ご苦労だね、アレン。」
赤い髪の青年・アレンは椅子をリヒャルトに譲り、リヒャルトは腰かけた。
それから、背筋を伸ばして控えるアレンに言った。
「情報操作は手はず通りにやったかい?」
リヒャルトの言葉に、アレンはうなずいた。
「はい。今のこの状態は、軍事演習であると近隣の住人に吹き込んでおります。」
「何日、それでごまかせそうだい?」
リヒャルトの問いに、アレンは言った。
「四・五日を見込んでおります。」
「思ったよりも短いね。」
リヒャルトが苦笑すると、アレンは首を振った。
「両家の仲の悪さは、誰もがよく知っていますからね。」
「だから、この野営を目立つ場所に設置した、と。――うん、いい判断だね。」
リヒャルトの言葉に、アレンは頭を下げた。
「光栄です。」
「じゃあ、とりあえず、鉄派のワグナー家に仕掛けるとしようか。」
リヒャルトが微笑しながらそう言うと、アレンは言った。
「ワグナー家からですか?」
「ん?鋼派のメイヤー家から仕掛けるかい?――その場合、何を狙ってる?」
リヒャルトの問いに、アレンは答えた。
「ワグナー家とメイヤー家であれば、メイヤー家の方が少々血気盛んかと。」
「だから、後回しなのさ。」
リヒャルトがニヤリと笑うと、アレンは首を傾げた。
「おっしゃることがわかりかねます。」
「撤退する理由が欲しい人間に、理由を与えてやるってことだよ。」
リヒャルトの言葉に、アレンは納得したようにうなずいた。
「そういうことですか。承知しました。しかし――」
「ん?」
リヒャルトは首を傾げて、アレンの続きを促した。
アレンは、咳払いをして言った。
「コホン。――ワグナー家はこちらの意図をくみ取れるのか、と。」
アレンがそう言うと、リヒャルトは微笑した。
「くみ取れない場合は、両家まとめて泣いてもらうだけさ。」
「は、はい……」
アレンが返す言葉を選んでいると、リヒャルトは肩をすくめた。
「もちろん、ワグナー家は話が分かることを願っているよ。」
一拍置いて、リヒャルトは続けた。
「部隊を半分に分ける。半分は僕が率いてワグナー家に仕掛けるよ。アレン、君は残り半分を率いて、メイヤー家を挟撃できるように陣取っておいてくれ。」
「仰せのままに。」
それから、アレンはリヒャルトに一礼した。
「それでは、私は部隊を二つに分けて、出陣の手はずを整えます。」
「ああ、頼むよ。――ちなみに。」
リヒャルトが声をかけると、アレンは首を傾げた。
「どうされましたか?」
「万に一つ、合流前にメイヤー家が敵対してきた場合は、こちらの安全を最優先にして対処して構わない。後処理はこちらでどうとでもするからね。」
リヒャルトの言葉に、アレンは苦笑した。
「さすがに、当主を討ち取るような真似はしませんよ。」
「それでも構わないと言ってるんだ。――どうせ、鉄派にも似たような家はある。そこを同じ目に遭わせれば、均衡は取れるからね。」
リヒャルトが当たり前のようにそう言うと、アレンは首を横に振った。
「リヒャルト様の仕事を作るのは、私の仕事ではありませんよ。」
リヒャルトは、肩をすくめつつも微笑した。
「いい部下を持って、僕はうれしいよ。」
「――ならば、出奔自体を考え直していただきたいものですがね。」
アレンは苦笑で返した。
うーん、第1話~第3話を知らなければ……
もっと言えば、動機さえ高尚であってくれたら……
まあ、なくて七癖、完璧超人の主人公は面白くないですからね(`・ω・´)




