第3話 悲劇の根源・令息たちの主張
本作最大の謎。
鉄の剣と鋼の剣、どちらを辞書に載せるのか――
それは、争う理由になるのでしょうか。
まあ、論戦だけなら、きのこの山とたけのこの里でも展開されるので(`・ω・´)
「――ところで、お二人の主張を確認したいのですが。」
リヒャルトは唐突に言った。
リードとカイルが揃って首を傾げると、リヒャルトは続けた。
「荒事だけが能ではありません。口先でうまく事を運べる可能性もありますから、あなた方の主張をきちんと把握しておきたいのです。」
リヒャルトの言葉に納得したのか、二人は互いに顔を見合わせてうなずいた。
そして、リードがまず口を開いた。
「それでは、まずは「鉄の剣」を採用すべしとする意見を聞いてもらおうかな。」
リヒャルトはうなずいた。
「どうぞ。」
すると、リードは語り始めた。
「まず、前提として鉄鋼製の剣の材料が鋼であることは、私も心得ているよ。」
「ええ、そうでなければイクストニール公爵家に廃嫡されるべきですからね。」
リヒャルトの容赦のない物言いに、肩をすくめてリードは続けた。
「――それは、今騒いでいる者たちにいってやりたまえ。――それはそれとして、ここで私は言いたい。純鉄製の剣など、剣として実用的ではないと。」
「鉄の純度を高める手間と費用だけを増やして、しかし、強度を落とすだけの愚行ですね。」
相槌を打つリヒャルトに、リードは微笑した。
「そういうことだね。――そうであれば、鉄の剣と呼ぼうが、鋼の剣と呼ぼうが、それ自体には問題ないはずだろう。」
「それを火種にしてしまうほど、鬱憤が溜まっていたのでは?」
リヒャルトが肩をすくめると、リードは首を何度か横に振った。
「……そうかもしれないね。そして、ここからが私の唯一の主張だが、鋼の成分はほぼ鉄だ。」
「ええ、それは間違いありませんね。ほぼかどうかは鋼材にもよりますが。」
リヒャルトがそう言うと、リードは言った。
「しょせんは剣戟用途の鋼材だからね、そこに力を入れる理由はないよ。」
「――つまり、鉄派の主張は、鉄鋼製の剣は材料として鋼だが、鋼はほぼ鉄だから鉄の剣として象徴すべし、ということでよろしいですか?」
リヒャルトがそう尋ねると、リードは苦笑した。
「その通りだよ。――そして、その理解を派閥の者たちにも持ってほしかった。」
「それはまあ、不幸な事故でしたね。」
そして、リヒャルトはカイルに目をやった。
カイルは苦笑して、口を開いた。
「じゃあ、今度はオレの主張だね。」
リヒャルトはうなずいた。
「よろしくお願いします。」
カイルは鷹揚にうなずいて、語り始めた。
「オレは、「鋼の剣」を採用しろって立場だね。で、理由はもうオレが語る必要はないと思うけど?」
「確かに、材料として鋼に分類される。これ以上、何をいえというのやら。」
リヒャルトが苦笑すると、カイルはうなずいた。
「そういうこと。――ただ、オレは鋼と鉄の本質的な違いは炭素だから、剣を剣にするには鋼だと言った方がいいだろう、といってるわけだ。」
「つまり、象徴論か本質論か、その違いというわけですね。」
リヒャルトがまとめると、カイルはリードと顔を見合わせてため息をついた。
「リードと同じく。それを派閥のやつらには弁えてもらいたかったよ……」
「繰り返しになりますが、不幸な事故ですね。」
それから、リヒャルトは天井を仰いだ。
そして、大きくため息をついた。
「結論から言って、今回のお話は何の役にも立たないでしょうね。お二人と派閥の空気の乖離がひどすぎます。」
リードとカイルは肩を落とした。
そして、リヒャルトは言った。
「それでは、予定通りに火消しする方針で進めます。内乱への発展を避けることが最優先なので、いくつかの家は大きな損害を被るでしょう。」
リヒャルトの言葉に、リードとカイルは瞑目した。
そして、リヒャルトはつけ加えた。
「――まあ、派閥の均衡にだけは配慮して潰すようにします。」
リードとカイルは、がっくりと肩を落とした。
うーん、どうでもいい。
もちろん、材料については一応、作者なりには真面目に書いてますが。
「これ」で戦記にしたかったことを白状しますが。
こんな作者に翻弄されるアルテリオ王国も大変ですね(`・ω・´)




