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01 小国の王女が大国の皇子と働く理由


「小国の王女が大国の皇帝に嫁ぐ理由」を沢山の人に読んでいただけました。

 おかげさまでじわじわランクアップ、日間異世界恋愛短編五位、すべてで七位、日間の総合短編六位、すべてで九位になりました。

 ブックマークや評価のポイントが少しずつ上がるのを見て、メイやユークリッドが少しずつ夢を叶えていったのとリンクするようでとても嬉しかったです!

 応援してくださった皆様への感謝とこれからも頑張る気持ちを込めて、ちょっとしたお話を書きましたのでお届けします。




 大国ラウドラント帝国の皇太子と小国イースの王女の結婚が発表された。


 ラウドランドの国民もイースの国民も喜んだ。


 それは両国の望むものが手に入るからだった。


 ラウドランドはイースの真面目で誠実な国民性から養われる美意識や精密技術。


 イースはラウドラントの強くて勇ましい国民性から養われる国防意識と軍事力。


 これまでは二国間の交流が少なく、大国であるラウドラントが小国のイースを一方的に見下してきた。


 しかし、イースの王女メイの活躍により、ラウドラントはイースの持つ素晴らしさを知ることになる。


 その結果、ラウドラントとイースを結び付けるために皇太子と王女が結婚するのはごく自然な流れであり、両国の良さを活かしながら一体となって発展していけるだろうと思われた。





「おかしいです! ぐーたらできると思ったのに!」


 メイは皇太子の執務室でむくれていた。


「仕方がない。まだ子どもがいない」


 ユークリッドは書類を見ていた。


「子どもができるまでは大好きなラウドラントのために働け」

「打算的で利己的でご都合主義のユークリッド様らしいです。騙されました!」


 メイは白いウェディングドレスを着て結婚式を挙げると思っていた。


 ところが、政略結婚のために婚姻書類にサインしただけ。


 結婚式の準備には予算も時間もかかるということで、半年後になってしまった。


「騙してはいない。俺がどんな人物かは知っているはずだ。打算的で利己的でご都合主義だと言っただろう?」


 ユークリッドが欲しいのはメイ自身。


 結婚式をするために結婚を待つ気はなく、婚姻書類を整えて法的に正式な夫婦になることを優先した。


「皇太子妃はぐーたらできるって言ったのに!」

「すぐにとは言っていない。イースを併合する準備をしないとだろう?」


 イース王国は王女の持参金としてラウドラントのものになる。


 しかし、完全な併合は両国の準備ができてから。


 メイを正妃にして生涯大事にする、ユークリッドとメイの間にできた子どもがイースの統治権を受け継ぐなどといった細かい条件がある。


 現状としてはイース王国として存続し、ラウドラントと併合するために必要な法律や制度に変えていくことになった。


「イース王がラウドラントに来て併合のための準備をするわけにはいかない。当然、王女が代理を務めることになる。次期イースの女王でもあるからな」

「ぷんぷんですよ!」


 メイは書類を睨んだ。


「怒るな。その書類を片付けたらお茶にしよう。今日はどのお茶にする? 抹茶はどうだ?」

「紅茶がいいです」

「俺は抹茶がいい」

「苦いですよね?」

「だからこそ、甘い菓子が美味くなる」

「ラウドラントの皇太子なのに、イースのものが好きなんて!」

「そっくり返す。メイこそイースの王女だというのに、ラウドラントのものが大好きではないか」

「どっちも用意するから大丈夫。さっさと書類を片付けて休憩にしようよ」


 皇太子の側近兼友人のリストは、ユークリッドとメイの机の上に書類を置いた。


「増やすな」

「そうですよ!」

「どっちも用意するって言ったよ? 皇太子夫妻の書類もお茶やお菓子もね。じゃあ、お茶とお菓子のほうを用意してくるから!」


 リストは執務室から出て行き、お茶とお菓子が載ったワゴンを自ら押して戻って来た。


「侍従は?」

「重要書類が多いから執務室に入れることはできないかなって」


 リストは皿の上にあるクロッシュを取った。


「今日はケーキだね。ラウドイースだ」

「父上の大好物が間にあるのか」


 スポンジで羊羹ようかんを挟んだケーキだった。


「生クリームをトッピングできるよ」

「そのままでいい。むしろ、羊羹だけでもいい」

「絶対に生クリームをトッピングします! むしろ、羊羹はなくてもいいです」

「メイ、羊羹とスポンジの部分を交換しないか?」

「名案です! さすがユークリッド様、大大大好きです!」


 ユークリッドは照れるような表情を浮かべた。


「メイはずるい。そうやっておじい様やおばあ様をたらしこんだ」

「人聞きの悪い。羊羹をあげませんよ?」

「すでに取引済みだ。変更はできない」

「羊羹とスポンジの部分を交換ね」


 リストはユークリッドとメイの分をとりわけ、羊羹とスポンジに分けて配った。


「いただきます」


 リストはたっぷりの生クリームをつけて羊羹ケーキを頬張った。


「リスト、羊羹に生クリームをつけるのはどうだ? 美味しいのか?」

「美味しい。羊羹と生クリームは合うよ」

「試してみるか」


 ユークリッドは羊羹に生クリームをかけて食べた。


「どう? 美味しいよね?」

「生クリームと一緒でもいいが、個人的には羊羹だけでいい」

「ユークリッドは生クリームを食べ慣れているからだよ。飽きてそうだよね」

「贅沢ですね! 生クリームを食べ慣れているなんて!」


 メイは生クリームたっぷりのスポンジケーキを口に入れた。


「んー! 最高! ラウドラント万歳!」

「これがイースの王女とはな」

「ラウドラントの皇太子妃としては正解だけどね」

「でも、同じものばかりでは飽きてしまうというのもわかります。工夫しないとですよね」

「メイは工夫が好きだな」

「そういうところ、イース人らしいよね」


 メイはユークリッドのほうをじっと見つめた。


「羊羹はやらない」

「そうではなくて、抹茶です」

「抹茶?」

「羊羹と抹茶は合います。なので、抹茶味の生クリームと羊羹も合いそうかなと思って」


 ユークリッドとランスは目を見開いた。


「それなら食べてみたい!」

「すごくいいよ! 絶対!」

「抹茶味の生クリームを作ります。羊羹にトッピングすればイースラウド風、ケーキに使えばラウドイース風ですよね!」


 二つの国を結び付ける方法は多種多様。


 抹茶味の生クリームを作ることも、それを使ったスイーツを広めることも、両国を平和的に結ぶことにつながったのだった。


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