表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/61

第52話 絶望の再会と、祭壇の上の最終決戦

真新しい、ブーツの足跡。


その、たった一つの痕跡が、

私たちの、束の間の希望を、

無慈悲に、粉々に打ち砕いた。


「……!」

カイ様 が、音もなく剣を抜き、

私をかばうように、その前に立つ。

ケンタ殿 も、穏やかだった表情を消し、

鋭い目で、遺跡の暗がりを睨んでいた。

上空を舞う、巨大な竜、リュウガ からも、

グルルル……という、

低い、威嚇の唸り声が聞こえる。


この島には、誰かいる。

それも、ただの遭難者や、

物見遊山の冒険者ではない。

私たちの行動を、

完全に、予測していた、誰かが。


そして、その答えは、

最悪の形で、私たちの前に現れた。


「――やあ、アリア姫。

ずいぶんと、遠回りをしたようだね」


遺跡の、崩れた柱の影から、

ゆっくりと、姿を現したのは……。

その、忌々しい、にやけ面。

金色の髪。

そして、蛇のように冷たい、碧眼。


「テ、テオン王子……!?」

なんで、あなたが、ここにいるの!?


「驚いた顔だね。

だが、驚いているのは、こちらの方さ。

まさか、君たちが、

伝説の『賢者の隠れ島』の場所を、

突き止めるとはね」


テオン王子 の後ろには、

選りすぐりの、屈強な護衛兵たち。

そして……。

あの、鉄壁の騎士、

『沈黙のギデオン』の姿もあった。


「どうして……!?

私たちの航路が、なぜ分かったのです!」

私の叫びに、テオン王子 は、

心底楽しそうに、肩をすくめた。


「ああ、君に贈った、

あの蛇のネックレス、覚えているかい?」

「あれは、ただの装飾品じゃない。

微弱な魔力を放つ、

極上の『追跡器』なのさ。

君が、あの『海の宝石プロジェクト』 とやらで

浮かれていた時から、

君の居場所は、全て、

私の手の内にあった、というわけだ」


「なっ……!」

あの時から、ずっと……!?


(私の、ささやかな希望も、

努力も、全て、

この男の掌の上で、

踊らされていただけだったっていうの……!?)

ぞわり、と背筋に、

氷のような悪寒が走る。


「さて、茶番はここまでだ、アリア姫 」

テオン王子 の目が、

ぎらり、と欲望の色を宿す。

その視線は、私が隠し持っている、

あの青い石――『海神の涙』 へと、

まっすぐに注がれていた。


「その石と、その忌々しい円盤を、

おとなしく、こちらへ渡してもらおうか」

「そうすれば、命だけは、助けてやらないこともない」


「……お断りいたしますわ」

私は、『領主の仮面』 を装着すると、

震える体を、必死で叱咤し、

一歩、前に進み出た。


「これは、アクアティア公国 に、

古くから伝わる、神聖な宝です。

あなたのような、

私欲にまみれた方に、

渡すことなど、断じてできません!」


私の、精一杯の抵抗。

それを聞いて、テオン王子 は、

心底、可笑しそうに、喉を鳴らして笑った。

「……そうか。実に、残念だ」


そして、彼の表情から、

すっと、笑みが消える。

「――ならば、力ずくで奪うまでだ」


「ギデオン!」

王子の、その一言が、

戦いの始まりを告げる、合図だった。


鉄壁の騎士ギデオンが、

音もなく、カイ様 の前に立ちはだかる。

二人の、最強の騎士の間に、

火花が散るような、

激しい闘気が、ぶつかり合った。


そして、残りのネプトゥーリア兵たちが、

私たちを取り囲むように、

一斉に、剣を抜いた!


「アリア様 の後ろへ!」

セーラ とフィンレイ様 が、

私をかばうように、前に出る。

リオの船員たちも、武器を構える。


「リュウガ !」

ケンタ殿 の叫びに応え、

上空のドラゴンが、

威嚇の咆哮を、島全体に響かせた。


ここは、忘れ去られた、古代の祭壇。

そして、私たちの、最後の戦場。


もう、逃げ場はない。

ここで、全てを終わらせるか、

それとも、全てを奪われるか。

二つに、一つ。


私の胃は、もう、とっくの昔に、

その機能を停止していた。

不思議と、今は、怖くなかった。

ただ、胸の奥で、

静かな、青い炎が、

熱く、燃え上がっているのを感じるだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ