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第3話 フィンレイ様の(秘)策と、開かずの間のヒミツ物件!?

「……と、いうわけでございまして、アリア様」


私の執務室。

目の前には、ポーカーフェイスの宰相補佐フィンレイ様。

先ほどの評議で私がぶち上げた、「ネプトゥーリアも無視できない『何か』を匂わせる」作戦について、

それはもう、冷静沈着に、しかしどこか面白がっているような瞳で、お話の続きを待っている。


(いや、待ってると言われても! 私、ノープランなんですけどぉ!)


仮面の下で、私の顔はきっと青くなったり赤くなったり、大忙しのはず。

助けて、セーラ! ……って、セーラはにこにこしながらお茶淹れてるし! あなたは私の味方じゃないの!?


「……ふむ。アリア様のおっしゃる『何か』。

 おそらくは、我がアクアティアに古くから伝わる、

 『海の彼方の賢者の国との盟約』の伝説のことかと拝察いたしますが」


「へっ!?」

思わず、素っ頓狂な声が出た。い、今の私、領主様っぽくなかった!?


フィンレイ様は、私の反応にはお構いなしに続ける。

「初代公爵様が、海の向こうの高度な文明を持つ国と、固い約束を交わしたという、あの伝説ですな。

 もちろん、その証拠となる品も、相手国の正確な情報も、今となっては定かではございませんが」


(え、え、え、そうなの!? 私のハッタリ、元ネタあったの!?)

(しかも、フィンレイ様、その伝説に乗っかってくれる感じ!? 神か! あなたは神様ですか!)


私の脳内は、驚きと安堵と、新たな不安でごちゃ混ぜ状態。

「しかし、フィンレイ様。証拠がなければ、ネプトゥーリアを牽制することなど……」


「いえ、アリア様。外交とは、時に『存在するかもしれない』という可能性だけで、

 相手を十分に牽制できるものでございます。

 重要なのは、その『可能性』を、いかに真実らしく匂わせるか、ですな」

にやり、とフィンレイ様の口元が、ほんの少しだけ歪んだ気がした。

(この人、やっぱり食えないオジサマだわ……!)


「つきましては、アリア様。

 初代公爵様ゆかりの品々が眠るとされる、お父上の書斎の奥、

 あの『開かずの間』を、一度お調べになってはいかがでしょう?

 何か、それらしい『手がかり』が見つかるやもしれません」


「ひ、開かずの間ですって!?」

なんだか、急に冒険の香りがしてきたじゃないの!

よーし、こうなったら、インディ・ジョーンズもびっくりの大発見をしてやるんだから!

(……お宝とか出てきたら、国の借金も返せるかしら?)


そんなわけで、私とセーラは、フィンレイ様(「私は埃アレルギーですので、入口で指揮を執ります」ですって!ずるい!)に見守られながら、

埃まみれの「開かずの間」に、いざ突入!


「うわっ、すごいカビ臭い……ゴホッゴホッ!」

「アリア様、大丈夫ですか!? もう、フィンレイ様も手伝ってくださればいいのに!」

セーラが、私の背中をさすってくれる。優しい。


部屋の中は、まさしくガラクタの山。

古びた甲冑、折れた剣、誰が書いたか分からない肖像画……。

「これぞ!」というお宝は、なかなか見つからない。


「アリア様! これ、見てくださいまし!」

セーラが、床に落ちていた小さな木箱を拾い上げた。

古びてはいるけれど、表面には細かい彫刻が施されている。

ドキドキしながら蓋を開けると……。


「……なにこれ?」

中に入っていたのは、一枚の、子供が描いたみたいな拙い絵。

大きな船が、見たこともない光る植物が生い茂る島に向かっている……そんな絵だ。

そして、もう一つ。

手のひらに収まるくらいの、つるりとした、青くて綺麗な石。

なんだか、持っているとほんのり温かい気がする。


「……これは」

いつの間にか部屋に入ってきていたフィンレイ様が、その石を興味深そうに手に取る。

「『星詠みの石』……あるいは『導きの雫』とも呼ばれる、極めて希少な鉱石やもしれませんな。

 そしてこの絵……。初代公爵様がご覧になった、海の彼方の光景なのでしょうか」


(え、これ、もしかして、本当に『何か』になっちゃうの!?)

(私のハッタリが、国を救う秘密兵器にジョブチェンジ!?)


私の期待がMAXに高まった、その時だった。

「アリア様、大変です! ネプトゥーリアの使節団が、予定より早く、明朝にも到着するとの知らせが!」

伝令の兵士が、息を切らして飛び込んできた。


「「「なんですってぇぇぇ!?」」」

私とセーラと、そしてなぜかフィンレイ様の声まで、綺麗にハモった瞬間だった。

明日の私、生きてるかなぁ……。



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