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第21話 起死回生(のつもりの)プロジェクト発進!~OLスキル、舐めないで!?~

「……以上が、わたくしの提案する、

『海の宝石☆アクアティア・プロジェクト』の

概要ですわ!」


どやっ!

と、心の中で効果音をつけながら、

私は、アクアティアの主だった商人や職人、

そしてフィンレイ様、カイ様を前に、

高らかに宣言した。

もちろん、顔には最強の『領主の仮面』を装着済み!

背筋もいつもより五センチは伸びている気がするわ!


(うぅ……緊張で足がガクガクするけど……!)

(でも、ここで引くわけにはいかないのよ!)


私が熱弁をふるったのは、

アクアティアの素晴らしい特産品――

例えば、あのキラキラ輝く「銀鱗魚ぎんりんぎょ」 や、

夜に淡く光を放つ「月光真珠げっこうしんじゅ」 、

そして、薄くて丈夫な「シーウィード・ペーパー」 など――を、

ただの産物としてではなく、

一つのブランドとして世界に売り出そう!

という、壮大な(そして無謀な?)計画だった。


資料は、もちろん私が徹夜して作ったわよ!

前世で培った、パワーポイント作成スキル(もどき)と、

見栄えの良いグラフ作成テクニック(手描きだけど!)を駆使して、

シーウィード・ペーパーに、それはもう美しく(自画自賛)まとめたのだ!


シーン……。


……あれ?

反応がないんですけど……。

もしかして、私のプレゼン、

壮大にスベりました……?


商人たちはポカーンと口を開け、

職人たちは眉間に深い皺を寄せ、

カイ様は……うん、いつも通り無表情ね。

そして、フィンレイ様は、

銀縁眼鏡の奥の目を細めて、

じーっと私を見つめている。


(ひぃぃぃ、フィンレイ様のその視線、

私の心臓に突き刺さるんですけどぉ!)

(お願いだから、ダメ出しはオブラートに包んで……!)


「……アリア様」

沈黙を破ったのは、フィンレイ様だった。

「その、『ぶらんど』? とやらで、

具体的に何をなさるおつもりか、

もう少し詳しく伺っても?」


(ぶ、ぶらんど……。うん、この世界には

まだ馴染みのない言葉よね、きっと)


「え、ええとですわね!

例えば、銀鱗魚は、鮮度を保つための

新しい保存方法や、高級感のある木箱のパッケージを考案し、

『海の至宝・アクアティア・シルバーフィッシュ』

みたいな、ちょっとカッコイイ名前で売り出すのです!」

「月光真珠には、

『人魚の涙』とか『星の雫』みたいな、

ロマンチックな物語を添えて、

若い女性たちの心を掴みますの!」

「シーウィード・ペーパーは、

その品質の高さを証明する『公国認定印』を押して、

各国の王侯貴族御用達の最高級紙として……!」


私の熱弁に、

商人たちの中から、

ぽつり、ぽつりと声が上がり始めた。


「新しい保存方法、か……。確かに、

銀鱗魚は足が早いのが難点だった」

「人魚の涙……。なるほど、

若い娘たちは、そういう話に弱いかもしれん」


おおっ!?

なんだか、少しずつ食いついてきた感じ!?


「しかし、姫様。そのような新しい試みには、

元手もかかりましょう。

それに、ネプトゥーリアの目もございます。

下手に目立つようなことをして、

彼らの機嫌を損ねては……」

年配の商人が、不安そうに言う。


(うっ……そこが一番の問題なのよね……)


「もちろん、危険は承知の上ですわ。

ですが、このまま何もしなければ、

アクアティアはジリ貧になるだけです!

小さなことからでも、

まずは国内で試してみませんか?

例えば、この新しい売り方で、

次の『海神祭わだつみさい』 の市場を

盛り上げてみる、というのはどうでしょう!」


私の必死の(そしてちょっと強引な)提案に、

その場はしばらく、議論の渦に包まれた。

そして、最終的には、

「……まあ、姫様がそこまでおっしゃるなら」

「国内で、小規模に試すだけなら……」

と、なんとか渋々ながらも、

商人たちの協力を取り付けることができたのだった!


(やったー! 第一関門突破よ!)

(私のOLスキルも、捨てたもんじゃないわね!)


その日から、私とセーラ、

そしてフィンレイ様(なぜかちょっと楽しそう)と、

数人の有志の商人や職人たちによる、

「海の宝石プロジェクト」の準備が始まった。


私は、前世の記憶をフル回転させて、

商品のロゴマークをデザインしたり(絵心皆無だけど!)、

宣伝用のキャッチコピーを考えたり(センス壊滅的だけど!)、

それはもう、大忙し!


そして、数日後。

港町の小さな市場の一角で、

私たちのプロジェクトの試作品が、

ささやかながらもお披露目された。

新しい木箱に入った銀鱗魚の干物。

可愛らしい小瓶に詰められた、

小さな月光真珠の粒。


すると……。

「あら、このお魚、なんだかオシャレね!」

「まあ、この真珠、お守りに良さそう!」

と、意外にも、町の女性たちから

なかなかの好感触!

特に、私が考えた、

「一口食べれば、あなたもマーメイド!

~アクアティア・シルバーフィッシュ~」

というキャッチコピー(フィンレイ様には苦笑されたけど)が、

なぜか子供たちの間で大流行し、

市場はちょっとした賑わいを見せたのだ!


(こ、これは……もしかして、

本当にイケるかもしれないわ……!)


ほんの小さな成功。

でも、それは、暗闇の中に差し込んだ、

一筋の光のように、私の心を照らしてくれた。


しかし、その市場の賑わいを、

物陰から鋭い目つきで監視している者たちがいた。

彼らは、ネプトゥーリアの「交易監視団」の兵士たち。

その手には、しっかりと帳面が握られ、

何事か細かく記録しているようだった……。


私の小さな希望の光は、

早くも暗雲に覆われようとしているのかもしれない。

……やっぱり、胃薬は手放せないわね、私。

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