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異世界でレベルを上げられるようになった俺、現実世界で最強になる  作者: 絢乃


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089 ナミエールの提案

「この人が女神様!? 本当にソウマくんのお母さんにそっくり!」


 ユキは様々な角度からナミエールを眺める。

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて嬉しそうだ。


「はい……って、ユキ先輩、どうして母さんの顔を知っているんですか? 会ったことがないですよね?」


「あるよー! この前、日本を発つときにご挨拶させてもらったの! いつか結婚すると思うのでよろしくお願いしますって!」


「えええええ!?」


「それよりソウマくん、女神様が現れたんだからお願いしようよ!」


 ユキが話を進める。

 ソウマが頷くと、彼ではなくナミエールが口を開いた。


「言わずとも分かっております。あなた方のやり取りをこっそり聞いていましたので」


「こっそり……!?」


「私は全知全能の神ですので、常に皆のことを監視しています」


「だったら話が早い! 女神様、私にも加護をください!」


 ユキはナミエールの前で両手を合わせて「お願いします!」と頭を下げる。


「残念ながら、〈女神の加護〉はそう容易く与えられる能力ではありません。加護の付与には膨大な力を消費するからです」


「やっぱりダメかー」


「じゃあ……」


 ソウマが何かを言おうとしたが、その言葉をナミエールが遮った。


「ですが、劣化版であれば授けることができます」


「「劣化版!?」」


「〈女神の加護〉の効果でとりわけ力を消費するのは、ミストリアの仕様を適用することにあります」


「「ミストリアの仕様?」」


「レベルに比例して総合力が上がることです」


 ソウマは「あー」と納得した。


「ミストリアの仕様を実装するため、私はソウマの肉体をミストリアにも作りました。そして、魂だけを地球の肉体とミストリアの肉体との間で行き来し、能力は二つの肉体で共有するという、極めて複雑なシステムにしています」


「なるほど」


「はあ……?」


 ユキは納得し、ソウマは理解できなかった。


「ですが、純粋に地球からミストリアに転移するだけであれば、このようなシステムは必要ありません」


「寝るたびに肉体ごと転移すれば済むからですね!」


 ユキの言葉に、ナミエールは「はい」と頷いた。


「ユキ先輩、女神様の言っていることを理解できるんですか!?」


「ソウマくんは理解できないの?」


「全然……」


「ダメダメだなぁ!」


「ソウマは少し頭が悪いですからね」


「ぐっ……!」


「この劣化版であれば、力の消費量はソウマに付与している加護の1万分の1で済みます」


「じゃあ、私だけじゃなくて、エレナちゃんに付与して日本に来てもらうことも可能ですか!?」


「可能です」


 ユキは「おお!」と歓声を上げた。


「じゃあ、もうちょっと欲張ってソウマくんの学校の仲間……マイ、レイカ、シオンもミストリアに行けるようにしてほしいです!」


「いいでしょう」


 ナミエールは快諾した。


「しかし、条件があります」


「条件?」


「劣化版を付与するのは、ソウマが魔王を懲らしめた見返りとします」


「え?」と驚くソウマ。


「ソウマ、あなたは私と魔王が敵対するきっかけとなった一大事件を『しょうもないこと』と考えていますね?」


「それは……」


「隠しても分かっています」


「すみません……」


 ソウマはぺこりと頭を下げた。


「あれですよね? 魔王の大好物を女神様が勝手に食べたことで問題がこじれた件! ソウマくんが謝罪を促したら、女神様は神は誰にも謝らないと言って断ったとか!」


「はい、その件です。あなた方の親やそのまた親の世代が生まれるよりも前のことなのに、魔王ルシフルは未だに根に持っています。その腐った性根を叩き直して、ぎゃふんと言わせなくてはなりません」


「でも、そのために用意したソウマくんがすっかりやる気をなくしていて困っているわけですね!」


「その通りです。驚いたことに、ソウマは真実を知るや否や意欲を失ってしまいました」


「驚いたことに……?」と首を傾げるソウマ。


(俺じゃなくてもやる気をなくすと思うが……)


 などと思うものの、口には出さないでおいた。


「そこで、〈女神の加護〉の劣化版を見返りとして提示します。ソウマが魔王を懲らしめたあかつきには、任意の相手に劣化版を付与します」


「おお! じゃあ、早く魔王を懲らしめないと!」


 ユキが声を弾ませる。


「すみません、よく分かっていないのですが……俺が魔王を懲らしめたら、ユキ先輩も〈女神の加護〉に近い能力が得られるってことでいいんですよね?」


「私だけじゃなくて、ソウマくんが希望した相手全員だよ! エレナちゃんやマイにも付与してもらえるって!」


「そこは理解できたんですけど、実は俺に付与されている〈女神の加護〉と劣化版の違いについて分からないところがあって……」


「というと?」


「女神様が言っていた『複雑なシステム』やら、あの辺りのことがさっぱり……」


 ユキは「簡単だよ!」と右の人差し指を立たせた。


「ソウマくんの体は二つあるでしょ? ミストリアの宿屋かどこかで寝ている体と今ここにいるソウマくんとで」


「はい」


「劣化版は肉体が一つのままなの。ソウマくんがイメージしやすいように言うと、寝るたびに体が地球からミストリアにワープする感じ!」


「なるほど!」


「で、ソウマくんはレベルが上がると総合力がドカンと増えるでしょ?」


「はい! 俺の総合力はレベル×基礎能力で決まるので!」


「でも、私やマイがレベルアップしても、総合力は増えないよね?」


「はい! 俺の総合力がドカンと上がるのはミストリア人の性質が反映されているからなので! 普通の地球人は総合力=基礎能力であって、総合力=レベル×基礎能力ではありません!」


「劣化版では、この点も変わらないわけ。つまり、レベルが上がっても総合力はドカンと増えないってことね」


「じゃあ、寝るたびに肉体だけワープする感じで、他の効果はなくなっているわけですか!」


「大正解!」


 ソウマはようやく劣化版の仕様を把握した。


「そうなると、劣化版は魔法やスキルを簡単に覚えられないのですか?」


「魔法やスキルって?」とユキ。


「ミストリアでは魔法やスキルの習得が簡単なんです! でも、地球だとかなり大変なんです!」


「劣化版では、魔法やスキルを簡単に覚えることはできません」


 ユキの代わりにナミエールが答えた。


「なるほど……」


「そこはどうでもいいじゃん! とにかくソウマくんが魔王を懲らしめたら、私も寝るたびにミストリアへ転移できるようになるってことだよ! 逆にエレナちゃんを日本に招くこともできるし、すごく熱いでしょ!」


「熱いです!」


 ソウマは大きく頷いた。


「では、再び魔王を懲らしめるために頑張ってもらえますね?」


「わかりました! 魔王様には申し訳ないですが、俺のために懲らしめます!」


「では、お二方、契約成立を祝して握手しましょう!」


 ユキに促されて、ソウマとナミエールが握手を交わす。


「期待していますよ、ソウマ」


「任せてください!」


 握手が終わると、ナミエールは微笑んだ。


「あなた方にミストリアの祝福を……!」


 ナミエールが呟くと、ソウマとユキの全身が一瞬だけ光った。


「今の何!? 体が光ったんだけど!?」


 ユキが嬉しそうに飛び跳ねる。


「ただ光っただけで何の効果もありませんよ」


 ソウマが笑いながら説明する。

 このやり取りの最中に、二人は一瞬だけナミエールから視線を外した。

 その一瞬の間に――


「あれ?」


「女神様がいない!?」


 ――ナミエールは姿を消していた。

 二人の邪魔をするまいと静かに去ったのだ。


「まるで佐藤と鈴木みたいな消え方……! 私も握手したかったのになぁ!」


 ユキは残念そうに呟く。

 そのとき、彼女はある物を発見した。


「あれ、ソウマくん、あそこに魔石が落ちているよ?」


 ユキが砂浜を指す。


「あれはボスの魔石ですね」


「いつの間に倒したの!?」


「ナミエール様が登場したのと同じタイミングです」


 ユキは「ええええ!」と驚いた。


「早く持って戻らないとダメじゃん! 私たち、タイムアタック中だよ!」


「そういえばそうでした」


 ユキに指摘されて、ソウマはタイムアタックのことを思い出した。


「急ごう! 今ならまだ1位になれるかもしれないよ!」


「長々と話していたし、さすがに厳しいんじゃないですか」


 などと話しつつ、二人は魔石を回収して冒険者特区に戻った。


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