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異世界でレベルを上げられるようになった俺、現実世界で最強になる  作者: 絢乃


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088 加護の欠点

 翌日、ソウマとユキは冒険者特区に向かった。

 上級コースのタイムアタックを攻略するためだ。

 佐藤と鈴木も気配を消して同行している。


 上級のダンジョンはレベル17。

 このレベルのダンジョンは、普段のソウマたちでは挑めない。


 実績不足として弾かれてしまうからだ。

 もちろん、ソウマが冒険者庁の任務を受けていることを明かせば別だ。

 今回はイベントの特例で、実績に関係なく参加できた。


「わお! 昨日と全然違う! 南国の島みたい!」


 ユキが声を弾ませる。

 新たなダンジョンは日差しの強い海辺だった。

 四人の前方には広大な海が、後方には深い紫色の森が広がっている。


「ボスの名前は分かりますか?」


 ソウマは佐藤と鈴木に尋ねた。

 いまだにどちらが佐藤で、どちらが鈴木なのか分からない。

 もはや気にしなくなっていた。


「「…………」」


 佐藤と鈴木は無言だ。


「ソウマくんの言葉にも反応するように!」


 ユキが命令すると――


「「御意。ビッグキャンサーです」」


 二人は無表情のまま答えた。


「ビッグキャンサー……聞いたことがないな」


「キャンサーって名前ならカニじゃない? カニは英語でキャンサーっていうし」


「え? カニはクラブじゃ?」


「キャンサーともいうんだよー! キャンサーって言葉はどちらかというと癌の意味合いで用いられるけどね!」


「そうだったんですか」


 ソウマは勉強が苦手だったので、まったく知らなかった。


「そんなわけだから、たぶん敵は海のどこかにいるよ! とりあえず砂浜を散歩しよう!」


「はい!」


 ユキはブーツとソックスを脱いだ。

 それに合わせて、ソウマも裸足になる。

 二人が脱ぎ捨てたものは、佐藤と鈴木が回収した。


「そういえば、ソウマくんとは全然デートしていなかったよね! 知り合ってからもう何年も経つのに!」


 ユキがソウマに腕を絡める。


「何年もって言いますけど、こういう関係になったのは最近じゃないですか」


「あはは! それもそうだねー! 私はずっとアピールしていたけど、ソウマくんはバイトに必死で見てくれなかったからなぁ」


 ソウマは「えぇ」と苦笑した。


「「「フィッシャアアアアアアアアアア!」」」


 そんなとき、海から大量のフィッシャーマンが現れた。

 体長約2メートルの半魚人だ。


「「お嬢様!」」


 佐藤と鈴木が珍しく慌てる。


「問題ありませんよ」


 ソウマは右手の人差し指を敵に向けて〈ライトニング〉を発動した。

 放たれた稲妻が〈チェイン〉によって連鎖して敵を殲滅する。


「ソウマくん、すご!」


「「強い……!」」


 ユキだけでなく、佐藤と鈴木も驚いていた。


「ボスもたぶん同じ要領で倒せるのですが、どこにいるかわからないので時間がかかりそうですね」


 ソウマは涼しい顔で言ってのけた。


「ソウマくんって本当に強いねー! 私のダーリンは世界一って皆に自慢しちゃおうかな?」


「ダーリン!?」


「まだ恋人にもなっていないのに気が早かったよね」


 ユキがニコッと微笑む。


(すでに恋人みたいなものだと思うけど……)


 ソウマは鈍感だが、それでもユキとの関係性は把握できていた。


「でも、ソウマくんと結婚したら、この世界が邪魔になるよね」


 突然、ユキがボソッと呟いた。


「邪魔になるって?」


「だって、ソウマくんは〈女神の加護〉で寝るたびに魂がミストリアに行くわけじゃん?」


「はい」


「私は昨日もソウマくんとイチャイチャしたまま寝て、起きたらソウマくんに抱きついた状態で朝を迎えたわけだけど、ソウマくんは違うでしょ? ミストリアで過ごした時間が挟まっているじゃん」


「ですね」


「二人で同じ瞬間をすごしているはずなのに、実際にはそうじゃない。それって私は嫌なんだよね。この問題は、私にも〈女神の加護〉が付くか、ソウマくんから〈女神の加護〉が消えてくれないと解決しない。そういう意味を込めて『この世界が邪魔になる』って言ったの」


「なるほど……」


 ユキに指摘されて、ソウマは初めて〈女神の加護〉のデメリットを意識した。

 すると、ある人物の顔が脳裏によぎった。

 エレナだ。


(そういえば、エレナも前に同じようなことを言っていたな……)


 ソウマは〈女神の加護〉に大きな恩恵を受けてきた。

 この力がなければ、彼は帝栄に入学することはおろか、冒険者になることすらかなわなかっただろう。

 ユキのように外国で冒険者資格を取ったとしても、弱すぎてお金を稼げなかったに違いない。


(お金は十分に貯まって、母さんを幸せにしてやることができた。魔王を懲らしめて女神様に恩返しを果たしたら、もう〈女神の加護〉をなくしてもらってもいいかもしれないな)


 などと思うソウマだが、すぐに躊躇した。


(でも、〈女神の加護〉がなくなったら、ミストリアの人たちとの交流も途絶えるんだよな……。それは嫌だな……)


 ソウマが深く考え込んでいると――


「今から悩んでどうするの!」


 ユキがソウマの顔を覗き込んだ。


「え?」と驚くソウマ。


「ソウマくん、〈女神の加護〉がなくなったらミストリアの人と過ごすことができなくなるから嫌だー……とか考えていたでしょ?」


「ぎくっ! どうしてわかったんですか!?」


「だって私、ソウマくんのこと大好きだもん!」


 ユキが「ふふふ」と笑う。


「さっきも言ったけど、私にも〈女神の加護〉が付けば解決するんだよね。だから、そっちの方面で考えたほうがいいよ! それに、私もミストリアの人と話してみたいし! 特にエレナちゃん!」


「エレナ?」


「鈍感なソウマくんがわかるくらい嫉妬深い子なんだから、絶対に可愛いでしょ! 私のことを見たら頬をぷくーって膨らませて怒りそうじゃん!」


「容易に想像できる……!」


「あと、ミストリアで会えるなら、地球で離れていても問題ないじゃん? 私はもう少ししたらまた海外に行くけど、ミストリアではずっと会えるわけだし!」


「おお! そういう考え方もあるんですね!」


 ソウマは「目から鱗とはこのことだ!」と思った。


「そんなわけで、女神様に交渉してみて! 私はソウマくんみたいに強くなれなくていいから、ただ寝るたびにミストリアへ行けるようにしてほしい! 頼むだけならタダだし大丈夫だよね!?」


「わかりました! では、今晩寝たときにでも女神様にお願いしてみます!」


「その必要はありません」


 突然、ソウマの背後から声が聞こえた。

 同時に、正面の砂の中から巨大なカニが姿を現す。

 ビッグキャンサーだ。


 ソウマは反射的に〈ライトニング〉を発動した。

 フィッシャーマンと同じようにボスを瞬殺してから振り返る。

 すると、そこには――


「女神様!?」


 なんとナミエールが立っていた。

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