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異世界でレベルを上げられるようになった俺、現実世界で最強になる  作者: 絢乃


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062 検査入院と習得制限

 その夜、ソウマは自衛隊中央病院に来ていた。

 もちろんリサ――すなわち、冒険者庁の要請である。


 彼の特異な強さを調べるためだ。

 採血などが行われ、その日は病院の個室で寝ることになった。


「まさかこんな形で人生初の病室を体験することになるとは……!」


 ソウマは病室のベッドに座っていた。

 病人でもないのに病衣姿なので不思議な気分だった。


「協力に感謝する。学校には私から連絡してあるから、遠慮なく休んでくれ。何か必要なものがあれば、そこの内線を使って職員に伝えるといい」


 そう言うと、リサは小さな機械を取り出した。

 一見するとパルスオキシメーターのように感じられるものだ。


「邪魔になると思うが、これを指に装着してほしい」


「それは?」


 と言いつつ、ソウマは左手を出した。


「測定器だ。装着者のレベルを測定できる。アストラル・ミラーの簡易版といったところだ」


 リサは答えながら、ソウマの薬指に機械を装着した。


「どうしてレベルを測定するのですか? 俺のレベルについては既にご存じのはずだと思いますが……」


 データベース上だと、ソウマのレベルはエラーになっている。

 しかし、アストラル・ミラーを使用した際に星の数を計測できていた。

 そのため、おおよその情報は冒険者庁も把握している。


「理由は二つある。一つは最新のレベルについて知りたいということで、もう一つはミストリアでのレベルアップが反映されることをモニタリングしたいからだ」


 冒険者庁の目的は主に後者だった。

 前者については、ソウマの自己申告で済むからだ。


「私や月野、星川などは君の言うミストリアの話を信じている。しかし、大半の人間は半信半疑だ。私自身も完全に信じ切れてはいない」


「それを証明するために……ということですか」


「ああ。君の話が本当なら、君は寝ている間にレベルが上がるはずだ。通常、そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ない」


「なら、ミストリアでレベルを上げる必要がありますね」


「そうだな。1レベルでも上げてもらうまでは、今日みたいな検査入院を繰り返すことになる」


「それは嫌ですね……」


「だから頑張ってレベルを上げてくれ」


「分かりました」


「それでは失礼する」


 リサはソウマに背を向け、悠然とした足取りで部屋を出て行った。


(リサ校長……)


 ソウマは大きく息を吸い込む。


(すんげーいい匂い! なんだこれ! これがフェロモンの香りってやつか!?)


 コロンの残り香を無我夢中で堪能した。


 ◇


 グリーンウッドの宿屋で、ソウマは目を覚ました。

 いつも利用しているグランデルの宿屋とはマットの質感が異なる。


「エレナ、おはよ……って、あれ?」


 いつもなら腕の中で眠っているはずのエレナがいない。


(あ、そうか、今回は別々の部屋で寝ていたんだったな)


 先日、ソウマたちのPTに三人目が加わった。

 ワンワン族の女ローグことユーシィ・ジャイロガットだ。

 彼女に配慮して、男女で部屋を分けることにした。


(隣に誰もいないのは寂しいものだな……)


 ミストリアだとエレナ、地球だとラブドールが一緒だった。

 それが当たり前になっていたので、この日の朝は少し憂鬱だった。


 ◇


 魔王を懲らしめるため、ソウマは今日もレベル上げを頑張る予定だ。

 しかし、その前に新たな魔法を覚えようと考えた。

 そこで、エレナとユーシィを連れて魔法屋にやってきた。


「雷、炎、氷の魔法を覚えているし、次は土属性にするか」


 ということで、ソウマは土属性の汎用魔法に目をつけた。

 しかし――


「知らない魔法ばかりだな……」


 ショップウィンドウに表示されているリストには、未知の魔法が並んでいた。

 地球だと土属性の魔法がそこまで普及していないからだ。

 よく使われるのは、敵の足止めなど妨害系のものだった。


「強そうだからこれにするか」


 そんな中、ソウマは攻撃系の〈ロックバイト〉を選択した。

 商品説明には『地面から生えた土の牙が対象の足を噛む』と書いてある。

 彼がたまに使う炎属性の魔法〈メラフレイム〉に似たものだと感じた。


「それでは、さっそく……」


 購入した汎用魔法を習得しようとするソウマ。

 だが、ここで問題が発生した。

 視界に警告メッセージが表示されたのだ。


-----------------

 習得魔法数が上限に達しています。

 新しい魔法を習得するには、覚えている魔法を1つ忘れる必要があります。

-----------------


 習得できる汎用魔法の数には制限があったのだ。

 合計で5つまでだ。


「知らなかったんですか!? ソウマさん!」


「ソウマ、常識っすよー?」


 エレナとユーシィが驚いた様子で言う。


「ぐぬぬ……」


 ソウマはどうしようか悩んだ。

 既に魔法書を買ってしまったため、返品することはできない。

 売却は可能だが、店の買取額は商品価格よりも遥かに安い。


(どれか忘れるか?)


 ソウマが既に覚えている汎用魔法は以下の5つだ。

・ライトニング:雷属性の初級魔法

・チェイン:初級魔法を強化する強化魔法

・メラフレイム:足元から炎を発生させる火属性の中級魔法

・ファイヤーレイン:自分の周囲に火の雨を降らせる火属性の中級魔法

・アブソリュートゼロ:前方広範囲を凍らせる氷属性の上級魔法


(忘れるとしたら〈メラフレイム〉だが……)


 ここでソウマのもったいない病が発動した。


「よし、エレナ、この魔法はお前が覚えろ」


「え! 私ですか!?」


「そうだ。お前は汎用魔法を3つか4つしか覚えていないだろ? 〈ロックバイト〉を覚える余裕があるはずだ」


「たしかにありますけど……魔法の使用にはMPを消費しますよ? MPがなくなっちゃうと、回復魔法が使えなくなっちゃいますよ? そうなると私はただの置物みたいになっちゃいますよ?」


「今も大して変わらないだろう。覚えろ」


「酷ッ!」


 こうして、エレナはソウマの代わりに〈ロックバイト〉を習得した。


「よし! 今日もレベルを上げるぞ!」


「「おー!」」


 クエストを受けるため、ソウマたちは冒険者ギルドに向かった。

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