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異世界でレベルを上げられるようになった俺、現実世界で最強になる  作者: 絢乃


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031 エイトファントム

「嘘だろ……!? 俺の槍が……!」


 村上は砕け散った槍を見て、信じられない様子だった。


「次は俺の番だな――〈エイトファントム〉!」


 ソウマは突きの構えでスキルを発動した。

 すると、彼と全く同じ構えの分身が8体、扇状に現れた。


「は!? なんだよ、その能力!」


 村上は目を疑った。

 スキルの存在を知らないため、現状が理解不能だった。


「おい、神代が9人いるぞ!」


「どうなっているんだ!?」


 見物席も騒然としている。


「あんな魔法あったっけ!?」


「し、知らないわ……!」


 マイとレイカも驚いていた。


(あれは、スキル……! どうして神代くんがスキルを……!?)


 ただ一人、教師のミレイだけは知っていた。


「この分身には質量がある。つまり、本体と同じで攻撃できるってことだ!」


 ソウマは、村上に見えるようにゆっくりと突きを繰り出す。

 ただ、彼にとってはゆっくりでも、村上や周囲には驚異的な速度に見えた。


「参った! 俺の負けだァアアアアアアア!」


 村上は顔面蒼白になりながら叫ぶと、尻餅をついた。


 グサッ!


 ソウマとその分身たちが放った突きは、村上の足元に刺さった。

 その衝撃によって、地面に大きなクレーターができた。


『勝者:神代』


 モニターにソウマの勝利が表示される。


「ありがとう、村上。おかげで楽しめたよ」


 ソウマは剣を鞘に収めると、村上を立たせた。


「すごいな、神代。俺たちとはモノが違う。まさに怪物だよ」


「ミストリアだと平凡だけどな」


「ミストリア?」


「気にするな」


「なんだか分からないが、1位を目指すのは諦めるよ」


 そう言うと、村上は演習場を後にした。


「あの村上が全く通じないなんて……」


 村上のPTメンバー・池内が呟く。

 ちなみに、彼の暫定順位は35位と下がっていた。


「神代は別格だな」


「最後の突きもすげー速度だったし、ありゃ勝てないわ」


「ああいうのを『真の天才』って言うんだろうな」


 見物席の生徒たちが去っていく。

 皆の話題はソウマの強さで持ちきりだった。


「ソウマくん……!」


 シオンが小さな声で呟く。

 すると、フィールドのソウマが彼女のほうを見た。

 目が合うと、ソウマは右の拳をシオンに向けて、親指をぐいっと立たせた。


「ありがとう……!」


 シオンも同じように親指を立たせる。


「シオン、早くおいでよ! ソウマのところに行こ!」


 見物席の扉の前で、マイが声を掛ける。

 彼女の隣にはレイカもいた。


「ごめん、すぐに行くね」


 シオンが席を立つ。


「悪いけど、神代くんのところに行くのは待ってもらえるかしら」


 そう言ったのは、ミレイだ。

 彼女は見物席に座ったまま、じっとソウマを見ていた。


「どうかしたんですか?」と、マイ。


「彼に話があるから」


 そう言うと、ミレイは立ち上がり、壁際のマイクでソウマに言った。


『神代くん、残って』


 ソウマは「分かりました」と頷いた。


「悪いわね」


 マイたちにそう言うと、ミレイは足早に見物席を去った。


 ◇


(わざとじゃないとはいえ、地面に穴を開けたのはまずかったか)


 ソウマは足元のクレーターを眺めながら思う。

 ミレイがどういう用件で残るように命じたのか想像していたのだ。


「待たせたわね」


 そこにミレイがやってきた。


「いえ。それより、どうしたんですか?」


「訊きたいことがあってね」


 ミレイはソウマの前に立った。


「訊きたいこと?」


「さっきの決闘で分身したでしょ?」


「はい」


「あれ、〈エイトファントム〉だよね?」


「え?」


 ソウマは驚いた。

 地球ではスキルの存在が一般的ではないからだ。


「先生、スキルをご存じなんですか?」


「それはこちらのセリフよ。どうしてあなたがスキルを知っているの? それに、どうやって習得したの?」


「えっと……」


 ソウマは答えに窮した。

 素直に話しても「ふざけるな!」と怒鳴られるのが見えている。

 かといって、適当な理由が思い浮かばなかった。


「まぁいいわ」


 すると、ミレイが勝手に話を進めた。


「知っていると思うけど、スキルは公には知られていないものよ。その理由は分かるでしょ?」


「いえ、さっぱり」


 ミレイはズコーッとこけた。


「強力すぎて危険だからよ! 例えば君がさっき使った〈エイトファントム〉は、8体の分身を自由に動かすこともできるでしょ?」


「ですね。さっきは俺の動きにシンクロさせましたが、その気になれば全ての分身に違う行動をさせることも可能です」


「その性質を悪用すれば、様々なことができるわ。だから、スキルについては限られた人間しか知らないはずなの」


「なるほど。それを俺が使ってしまったと……」


「君の強さは明らかに規格外だし、何かしらの理由があるのだと思う。スキルを使えることも、同じ理由によるものでしょう」


 ソウマは、「はい」と頷いた。


「その詳細について答えなくても結構だけど、今後はスキルの使用を控えてもらってもいいかしら? 校内だけじゃなく、冒険者になってからも、原則的には使わないでもらえると助かるわ。大きな騒ぎになるから」


「分かりました。俺も騒ぎはごめんなので気をつけます」


「ありがとう。話は以上よ。時間を取らせて悪かったわね」


「それでは失礼します」


 ソウマはミレイに頭を下げると、演習場の外へ向かった。

 だが、少し歩いたところで、ミレイに「待って」と呼び止められた。


「もう一つ質問していい?」


「なんでしょうか」


「私と神代くんが勝負したらどっちが勝つと思う?」


「絶対に俺が勝ちます」


 ソウマは笑顔で断言した。


「即答ね。どうしてそう思うの? 入試で見たと思うけど、私は戦闘経験が豊富よ? 多少のステータス差ならカバーできるくらいにね」


「多少じゃないからです。ステータスの差が」


「そうなの?」


「俺に魔法を使ってみれば分かりますよ」


「言うわね」


 ミレイはニヤリと笑うと、氷魔法〈アイスピラー〉を発動した。

 入試の際に武藤を倒した魔法だ。


「ちなみに私、レベル18で総合力は550だから。女だからって侮っていると死ぬわよ?」


 地面から生えた氷柱がソウマを襲う。

 しかし――。


「侮ってなんかいませんよ」


 ソウマが言った瞬間、氷柱は粉々に砕けた。

 ステータスに差がありすぎて、彼を貫けなかったのだ。


「先生が弱いんじゃなくて、俺のステータスが異常に高いんです」


「そんな……! 私の攻撃が効かないなんて……」


「むしろ先生はすごいです。ミストリアに行くことなく総合力を550まで上げるなんて。俺にはできません、心から尊敬します」


 ソウマはミレイに背を向け、「それでは」と立ち去った。


「天晴れ……というほかないわね」


 ミレイは力なく笑った。

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