表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でレベルを上げられるようになった俺、現実世界で最強になる  作者: 絢乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/84

020 親孝行

 ランクシステムの都合上、月に一度は部屋の変更が生じる。

 そのため、部屋には最初から必要なものが揃っていた。


(すげー部屋だ。テレビで観た一流ホテルのスイートより豪華だぞ!)


 ソウマはSランクの部屋に感動した。

 とにかく広くて、何でもある。

 シアタールームは当然として、なぜかボウリングルームまであった。


「こんな部屋で暮らせるなんて夢みたいだ」


 ソウマは寝室に移動した。

 キングサイズの特大ベッドがあったので、迷うことなくダイブした。


「二次試験の終了時間までもう少しあるし、決闘の情報を確認しておくか」


 ソウマは仰向けに寝ながら、ミレイの言っていた冊子を確認した。


 それによると、決闘には以下のルールがあった。

 ・一度に賭けられるポイントの上限は1人につき100ポイント

 ・同じ相手とは週に1度しか戦えない

 ・自分より順位の低い者から申し込まれた決闘は拒否できない


 順位には、個人順位とPT順位が存在する。

 個人順位とは、ランク付けにも影響する個人単位の順位だ。

 PT順位は、PTメンバーのポイントを合計して順位付けしたもの。

 ソウマの場合、個人順位とPT順位の両方で1位だった。


「決闘システムはどうでもいいが……」


 ソウマは「強制退学について」という項目を読んだ。


『月末の順位決定の際に、PT順位が最下位のPTは退学となります』


 この点に、ソウマは些か不安を覚えた。


(他の3人が決闘でカモられた場合、俺がどれだけ頑張ってもPT順位が最下位になるかもしれない。それで退学処分になったら困るな。まぁ、その時は決闘システムで集団戦を申し込みまくればいいか)


 そんなとき、スマホが「ピロロン♪」と鳴った。

 確認すると、二つのアプリから同時に通知が出ていた。


 一つ目は帝栄のアプリだ。


『1,000ポイントを獲得しました』


 二次試験の1位報酬だ。

 順位表を開くと、マイ、レイカ、シオンの3人も1位だった。


「ようやく試験が終わったのか」


 そう呟くと、ソウマはもう一つの通知を確認した。

 銀行のアプリだ。

 帝栄冒険者学校からの振り込みを知らせていた。


『口座残高:20,513,500 円』


 ソウマの口座残高が、一瞬にして5桁から8桁に増えた。


「うお! マジで2000万が振り込まれた! いや、初月分の支給も含めたら2050万か。すげぇ!」


 見たこともない金額を前にして、ソウマの手が震える。


「そうだ! 早く母さんに渡さないと!」


 ソウマはアプリを操作して、母・ナミエの口座に送金した。

 学校から入金された2050万円のうち、なんと2000万円を送る。

 ナミエの抱える借金よりも遥かに多い金額だ。

 当然ながら、送金後まもなくして、ナミエから電話がかかってきた。


『ちょっとソウマ! なんなのよこの大金は!』


 ナミエの驚いた声が、ソウマの耳に響く。


「前に言っていたお祝い金だよ」


『それは分かっているわよ! 問題は金額よ! お父さんの借金は残り850万円なのよ! なのに2000万円だなんて……!』


「分かっているよ。余った分は生活費と引っ越し代に使ってほしいんだ」


『えっ?』


 ソウマは笑みを浮かべた。


「それだけお金があったら引っ越しできるでしょ? もうボロ家に住む必要なんかないんだよ、母さん。それに無理して働かなくても大丈夫だからね。今後も学校からお金が支給されるたびに、いくらか仕送りをするからさ」


『ソウマ……!』


 ナミエの声が震える。

 彼女は嬉しさのあまり涙を流していた。


「母さん、今まで頑張ってくれてありがとう。これからは俺が頑張るから任せてくれよ」


『ありがとう……。なら、このお金は大切に使わせてもらうね』


「そうしてくれ」


『ソウマも無理しないでね』


「分かっているさ」


 ソウマはナミエとの電話を終えた。


「ちょっとは親孝行できたかな」


 ソウマは誇らしい気持ちになっていた。


 ◇


 昼過ぎ――。

 ソウマは、マイ、シオン、レイカの三人と合流した。

 5階の食堂に行って遅めの昼食をとった。


 食堂はランクに関係なく無料で食べ放題だ。

 ただし、テーブルオーダーができるのはAランク以上に限られる。

 Bランク以下の生徒はランク順に料理を受け取っていた。


「うんめぇ! どの料理も最高だな!」


 6人掛けのテーブルには、所狭しと料理が並んでいた。

 和食から洋食、中華に地中海料理まで何でもある。

 その大半がソウマの注文したものだ。


「あんた無料だからって食べ過ぎでしょ!」


 ソウマの隣に座っているマイが、呆れたように言った。


「無料なんだから食べないと損だろ!」


 ソウマの思考は、貧乏人そのものだった。

 有料の食べ放題に行けば元を取ることにこだわる。


「残さずに食べているのだからいいじゃない」


 レイカは上品な手つきでパスタを食べた。

 彼女はソウマの対面に座っており、一見すると普通に食事している。

 しかし……。


「うおっ!? ゴホッ! ゴホッ!」


「ちょっとソウマ! なにむせてるのよ! 汚いなぁもう!」


「慌てて食べるからだよぉ」


 マイとシオンが眉間に皺を寄せる。

 二人は気づいていなかった。


(そんなこと言われたって……!)


 ソウマは手で口を押さえながら、自身の股間に目を向ける。

 レイカが足で悪戯していた。

 太ももを撫でたり、さらに奥に進んだり……。

 まるで地を這う蛇のようだ。


「うっ……!」


 ソウマは恐る恐るレイカを見た。


「どうしたの? ソウちゃん」


 レイカはニコッと微笑んでいる。


「な、なんでもない……!」


 ソウマは思った。


(この女……! 危険だ……!)


 ◇


 ソウマたちは、食事が終わっても食堂にいた。

 帝栄での生活や部屋の内装など、学校生活に関わることを話していた。


「え! 部屋にボウリングのレーンがあるの!? Aランクの部屋もすごかったけど、やっぱりSランクは格が違うねー!」


「今度、ソウちゃんの部屋でボウリング大会をしたいわね」


「レイカ、それ賛成! 何か賭けようよ!」


「賭けかぁ。マイさん、早くも帝栄に染まりつつあるね」


「シオン、それ私も思ったわ。あと、マイって自信家だよね」


「えー、そうかな?」


 女性陣が楽しそうに話している。

 ソウマは口を挟むタイミングが分からず、基本的に聞く一方だった。

 何か話すとしたら、それは女性陣が気を利かせて話を振ったときだ。

 もちろん、こうして雑談している間も、レイカは悪戯を続けていた。


「あれが1位のPTか」


「見た目は俺たちと変わらないな」


「まぁヤバそうな見た目って武藤くらいだったしな」


「でも、レベル10の仮想モンスターを全滅させたんだろ? あいつら」


「凄まじい強さだよな」


 周囲の生徒たちが、ソウマらのことを噂している。


「俺たち、目立ってるみたいだな」


 ソウマが周囲の反応について触れた。


「そりゃそうでしょ! でも、別にどうだっていいじゃん! 何かあれば決闘を挑んでくるでしょ!」


 マイは全く気にしていない。

 レイカも「だねー」と同意見だった。


「それもそうか」


 ソウマは納得した。

 そんな彼らについて、周囲の生徒たちは話を続ける。


「思ったんだけどさ、一次試験って即席のPT作りだったろ? あの条件でメンバー全員を最強クラスで揃えられるとは思わないんだ」


 Cランクの男子・村上が言った。


「だろうな」


 相槌を打ったのは、村上と同じPTの男子・池内だ。


「それに、武藤クラスのメンバー4人でも、1PTでレベル10の魔物5500体を時間内に全滅させるのは無理だ。ということは、異常に強い奴が1人いて、そいつが他の3人を引っ張った可能性が高い」


 村上の読みは的確だった。


「つまり、他の3人はザコってことか?」と、池内。


「ザコとは言わないが、俺たちと大差ないんじゃないか」


 村上はソウマたちの顔を見る。


(あの中で弱そうなのは……アイツだ!)


 村上はシオンに目をつけると、すぐさま席を立った。


「おい、村上、何をするつもりだ?」


「自分の勘と腕を試すのさ」


 他の生徒が注目する中、村上はソウマたちの席に向かった。


「決闘を申し込む。そっちは1位だから俺の申し出を断れないはずだ」


 村上が言った。


「いいぜ、俺も試したいと思っていたんだ」


 ソウマがにやりと笑う。


「いや! 私が戦う! 私だって決闘したかったんだから!」


 すかさずマイが手を挙げる。

 しかし、村上は「いや」と首を振った。


「俺が戦いたいのはあんたらじゃない」


 ソウマたちが「え」と驚く中、村上はシオンを指した。


「俺の相手は君だ。100ポイントを賭けて勝負しよう」

評価(下の★★★★★)やブックマーク等で

応援していただけると執筆の励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ