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異世界でレベルを上げられるようになった俺、現実世界で最強になる  作者: 絢乃


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018 二次試験

「やっぱりレベル5か8に集中するよねー」


 マイが言った。


「なんでだ? レベル10だけ点数が頭一つ抜けて高いのに」


 ソウマには理解できなかった。


「たしかに点数は高いけど、倒せなかったら意味ないからね。死ぬ可能性だってあるし。大半の生徒はレベル4~6で、総合力は300~450よ。このステータスでレベル10のダンジョンに挑むのは危険すぎる」


「効率も悪くなるわよねぇ。レベル8を3体倒すのとレベル10を1体倒すのじゃ1点しか差はないし、それならレベル8でいいかってなるわ」


 レイカが補足する。


「あ、あの、私たちも早くゲートに入ったほうがいいんじゃ……?」


 シオンは一人だけ慌てていた。

 もはや残っている生徒はソウマたちだけだ。


(あの子たち、何をしているのかしら?)


 教師のミレイは、隅のテーブルに座って優雅に紅茶を飲んでいた。

 ソウマたちから離れており、会話の内容が聞こえていない。


「そういうことか。納得した。なら俺たちはレベル10を独占させてもらおう」


「ソウマならそう言うと思ったよ!」


「ようやくソウちゃんの強さを拝めるわけね。ふふ、楽しみだわ」


「レベル10のダンジョンに行くの!? 無理だよぉ……やめようよぉ……危ないよぉ……」


 ソウマたちがレベル10のゲートに入っていく。


(お? レベル10を選んだか。今年も出来の悪い生徒ばかりだと思ったけど、少しは骨のある子もいたのね)


 ミレイは、タブレット端末を取り出した。


(あの男の子、たしか『ソウマ』って呼ばれていたわよね……いたいた、神代ソウマ。この子ね)


 ミレイはタブレットにソウマの情報を表示した。


(一次試験から異彩を放っていたけど、一体どこの学校が推薦……って、スポンサー推薦!? あの子、まさかのコネだったの!?)


 ミレイは「ふっ」と笑いながらタブレットを裏返した。


(馬鹿らしいわ。異彩を放っていたのはただの世間知らずなだけだったのね。それより、宮野グループがスポンサー推薦を使ったのは初めてのことよ。そんな子を不合格にしたら角が立つんじゃ……)


 ミレイは「あー、もう! 面倒くさ!」と叫んだ。


 ◇


 レベル10のダンジョンは、広大な湿地帯だった。

 ぬかるむ足場が移動を阻害する中、様々な魔物が襲いかかってくる。

 かなりタフなダンジョンだが、ソウマたちにとっては余裕だった。


「わお! ソウちゃん強っ! 私らの出番ないじゃん!」


「ね? 最強の男子だったでしょ!」


「す、すごいよ、ソウマくん!」


 女性陣が見守る中、ソウマが一人で敵を殲滅する。


「ここの敵は自分から死にに来てくれるから助かるな」


 ソウマは動くことなく魔法を連発している。

 自分を起点として全方向に火の雨を降らせる〈ファイヤーレイン〉が大活躍だ。


「ソウマ、前よりも格段に強くなってるじゃん! 前だって異常だったのに、本当にどうなっているのよ!」


 マイは苦笑いを浮かべていた。


(私だってこの二週間でレベルを7まで上げて強くなったつもりだったけど、明らかに前より差が開いている……!)


 そんなマイの思いを知る由もないソウマは、すまし顔で答えた。


「ミストリアじゃ俺なんかザコ扱いだぜ」


「「ミストリア?」」


 レイカとシオンが首を傾げる。


「ソウマが強くなっている異世界のこと。本人によると、寝ている間は魂がミストリアに移動しているんだって。そこはゲームみたいな世界になっていて、レベルが上がると総合力もぐいーんって伸びるらしい」


「ソウちゃんって、そういうユーモアのセンスあるんだ!?」


 レイカが「あはは」と笑った。


「本当にそういう世界に行けたらいいのになぁ……」


 シオンは羨ましそうに呟いた。


 どちらもミストリアの存在を信じていない。

 それが普通の反応なので、ソウマは気にしなかった。


「雑談はその辺にして見てくれよ」


 ソウマが周りを見るよう促す。

 その言葉によって、女性陣が異変に気づいた。


「あれ? 敵は?」と、マイ。


「倒し尽くしたみたいだ」


「うっそー!? あんなにいたのに……!」


「たしかに周りは死骸だらけねぇ」と、レイカ。


「こういう場合って、どうしたらいいのかな……?」


 シオンが不安そうに呟く。


「どうしたらいいんだ? マイ」


「え、私!? うーん、とりあえず、戻ってみる? ミレイ先生に判断を仰いだほうがいいと思う」


 レイカとシオンが賛成する。


「なら戻るか」


 ソウマたちはすぐ近くにあるゲートへ向かった。


 ◇


(ちょっとちょっと……! もう20分経つのにコネ推薦の子、戻ってこないじゃないの! もしかしてレベル10のダンジョンで死んじゃった!? そしたら私、かなりまずいんじゃないの!?)


 ミレイは焦っていた。

 頭の中には「監督不行届」や「懲戒解雇」といったワードが浮かんでいる。

 居ても立ってもいられず、ゲートの周辺を歩き回っていた。


 そんなとき、ソウマたちがダンジョンから出てきた。


「よかった! 戻ってきたのね!」


 ミレイは駆け寄り、ソウマの手を掴んだ。


「ん? 何か問題でもあったのですか?」


「いや、君にもしものことがあったらと思って心配していたのよ!」


 声を弾ませるミレイ。


「さすがソウちゃん! もうVIP級の扱いじゃん!」


「やっぱり帝栄はすごいねー。もう情報を把握しているなんて」


「わ、私も思った! 早いよね!」


 女性陣がにこやかに話している。

 その会話の意味が分からず、ミレイは首を傾げた。


「情報を把握って何のこと? もしかしてコネ……じゃない、スポンサー推薦のこと?」


「え、ソウちゃんってスポンサー推薦なの?」


「ここのスポンサーって宮野グループだよね。ソウマくん、すごい……!」


「ソウマ、あんた強いだけじゃなくてスポンサーまでついていたの!? というか、その強さの秘訣って宮野グループのおかげ!?」


 ミレイにとって、女性陣の反応がまたしても理解不能だった。


「ちょっと待って。一旦、落ち着いて整理させて。あなたたち、レベル10のダンジョンから逃げ帰ってきたのよね?」


 ミレイが尋ねると、今度はソウマたち4人が首を傾げた。


「何を言っているんですか? 俺たちは魔物を倒し尽くしたから判断を仰ぎに戻ってきたんですよ」


 ソウマの言葉に、マイたちが頷く。


「はぁ!? 魔物を倒し尽くした!? 何を馬鹿なこと言っているのよ」


「だったら調べてくださいよ。仮想ダンジョンに棲息する魔物の状況はここから調べられるんですよね?」


「言われなくても調べるわ」


 ミレイはタブレットでダンジョンの情報を確認した。


『魔物の生存数 0/5500』


 ソウマたちの説明通り、全ての魔物が死んでいた。


「嘘でしょ……!? 5500をたった20分で……!? あなたたち、一体どんな手を使ったの!?」


「私たちっていうか、ソウマが一人で倒しちゃったんだよね」


「はぁ!?」


 ミレイは生徒別の討伐数を画面に表示した。


『神代ソウマ:5500体』

『逢坂マイ:0体』

『葉月シオン:0体』

『百瀬レイカ:0体』


 ミレイはタブレットの画面とソウマを何度も交互に見た。


(この子、どうなっているのよ!? 化け物だから宮野グループが推薦したってこと!?)


 あまりにも理解できないことの連続で、ミレイの頭がショートした。

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