短編 彼が今日名前を持った。
彼は15の時に変わった。
いや、生来のものが、この時にあふれただけなのだ。
とにかく彼は以前とは違った。喩えるならば、羽化だ。
やっと、産声を上げたのだ。遅すぎた生まれ・・・。
外についての彼は無私だった。利を嫌った。
自己の存在を通り越した、石ころのようなものが彼だ。
彼に何を問うても、気の利いた答えが返ってこない日はない。
そんな、日常を送る彼だった。友達が少ないのが彼の悩みでもあった。
彼は楽観的だった。なにごとにも、動じない。
ただ解決方法をみつけ、実行しようとするやつだった。
と、見せるように彼は演じた。いや、ふるまわされたのだろうか。
そのの中の、ただ貫くものが、維持できるように。
ただ、彼は自分が好きだった。
だが、彼には好きだ言われるようなものはない。
彼は、道端で言えば、それとも小枝、枯葉・・・。
蹴られて、気づくのは自分が、そんなに気にされていなかったことに。