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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
最終章 決戦と訪れる別れ。そして…
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第62話 決戦

<前回までのあらすじ>

ついに、大魔王ダースがいる世界「テアビノ」へ到達したセキ達。

そこで2度目の再会を果たすミヤとダース。

「マカボルンを壊すため」とはいえ、実の父親に刀を向けることをためらうミヤ。しかし、ダースやセキの想いを知ったミヤは、父親と戦うことを決意する。

彼らは、それぞれの想いを胸に、最後の戦いへと身を投じていく。

 「クウァァァァァァァッ!!!!!」

  真の姿へと変貌した大魔王ダースは、人間を吹き飛ばしてしまうような雄たけびをあげる。山ほどの大きさを持つ魔鳥は大きいだけでなく、その速さも疾風のごときスピードだ。

 「きゃぁぁぁぁっ!!!」

 「くっ・・・!!!」

 彼が自分達に目掛けて突進してきた時に周囲の土が強風で舞い、それによる土砂が俺達5人の顔面に直撃する。

 「“黒き鳳凰”とは、よく言ったもんだぜ!伊達にその二つ名を持っちゃいねぇな・・・!!」

 「ああ・・・!」

 顔いっぱいについた土を払いながら、ランサーと俺が呟く。

 「父様・・・!」

 斜め前にいたミヤの声が微かに震えているのに、俺は気がついた。

 ミヤ・・・やっぱり君はまだ――――――――

 「・・・来るわ!!!」

 真横にいたソエルが銃を構えていると、ダースは上空から数発のかまいたちを放つ。

 「セキ!!!」

 走り出している自分の後ろで、シフトの叫び声が聴こえる。

 彼らが立っている大地にどんどん近づいていく数発のかまいたち。

 俺の剣にて、最初の2・3発をなんとか弾く。一番大きいのが彼に迫ると――――

 「はっ!!!」

 剣が風を斬る音と共に、真空の刃がかまいたちを相殺した。

 「よし!!!その調子だ、セキ!!!」

 ランサーが自分に向かってガッツポーズをしながら叫ぶ。

 

 「シフト!!いくわよ・・・!!!」

 「OK!」

 シフトの合図の直後、ソエルはダースに向かって一発の弾丸を撃つ。

 銃から放たれた弾丸は宙を舞い始めた直後、シフトの能力ちからによって発火。炎をまとった弾丸が敵の翼を打ち抜く。

 「アアアアアアアアッ!!!!!」

 弾丸は小さかったけれど、ダース本人にダメージを与える事には成功したようだ。

 彼の悲鳴が響き渡る。

  その直後、詠唱を終えたランサーが氷の矢を放つ。以前に見たものよりも、かなり威力が上がっているのが見た目でもはっきりとわかった。

 ランサーが放った氷の矢をその素早さで避けていたダースだったが、ソエルやシフトの攻撃で受けた傷もあってか矢の1発が直撃し、地面に落ちる。

 俺は戦いが始まってから、一度としてミヤの表情を見ていない。否、「見る事ができない」という方が正解かもしれない。

  仲間の身内を倒すなんて、実際はこちらもつらい。しかし、一番つらいのはミヤだ。そんな彼女の表情を見ているのは、今の俺にはとてもできない。

 彼はミヤの表情を見る事で、“戦う”という自らの覚悟が揺らいでしまうのを恐れていた。

 「2人とも!!!彼はマカボルンの力もあって、傷口はすぐに再生する!!!・・・つらいけど、一気に片をつけるよ!!!」

 いつものシフトとは思えないくらい、冷静かつ迅速な判断である。

 まるで別人のような彼に対し、俺は不思議に感じていた。

  案の定、ソエルの弾丸やランサーの魔術で傷ついた箇所はものの数秒で傷が塞がり、元の状態に戻る。だが、その瞬間にダースの腹部から紅い光が微かに見えた。

 「あれは・・・・!!!」

 「セキ…!!!?」

 上を見上げる俺達4人を見たミヤの表情が一変する。

 「・・・何が起きたの!!?」

 「今、傷口が再生するのと同時に、ダースの腹部が紅く光ったんだ!!おそらく、あそこにマカボルンが…!」

 「えっ…!!!?」

 俺の台詞を聴いたミヤも上空に飛び始めた父親を見上げる。

 その直後、彼の全身から黒い光が現れたかと思うと、巨大な閃光弾を放ってきた。

  この規模じゃ、相殺できない・・・・!

 思わず身構えてしまう。

 気がつくと、ランサーが汗だくになりながら、結界を張っている。

 「ランサー!!!」

 「悪い!!!今っ…無駄話は・・・できねぇ・・・!!!」

 直撃すれば凄まじい威力を発揮しそうな閃光弾を何とか自らの結界で防ぐランサー。

 結界の範囲外に直撃している地面はひびが生え、粉々に砕けていく。

 ダースは燃え盛る炎のように閃光弾を放ち続ける。

 「ランサー!!!!」

 威力が増していくにつれ、体勢を崩しそうになったランサーを、ソエルが後ろから支える。

 「・・・・・っ…!」

 「ミヤ・・・!?」

 この状況になって、初めてミヤの表情を見た。

  刀を握り締めているはいるが、その表情はやはり、苦悩が見てとれる。

 「・・・父様の強さは、私の誇りだった・・・」

 彼女の呟きに俺は黙って聴いていた。

 「・・・本当は決心なんてできていなかったのに・・・虚勢を張ってしまうのは、長年の経験のせいね・・・」

 「ミヤ・・・」

 「私、何度か自殺をしようと考えた事があったの・・・」

 「え・・・」

 彼女の思いがけない一言に、俺は戸惑いを隠せない。

 「幼い日の私は“混ざり物”という事で人間達から迫害され・・・自分は“いらない子供だ”と思い込んでいたから・・・」

 気がつくと、近くにいたシフトの表情も悲しげな雰囲気になっていた。

 「でも、今はもう・・・違う・・・!」

 彼女は自分の刀の柄を力強く握り締めながら口にする。

 「父様も母様も、私の事を愛してくれていた・・・。そして、自分に“共に生きる事の喜び”を、あなたが・・・そして、皆が教えてくれた・・・!!」

 彼女の視線の先には、結界を維持し続けるランサーとソエルがいる。

 「ミヤ・・・」

 本当の意味で“決意した”表情を見せたミヤの両手を強く握る。

 「俺達や・・・皆が生きるこの世界の未来を・・・共に作り上げていこう!!ミヤ・・・!!!」

 そう述べた自分とミヤ・・・2人の身体から紅い光が発せられる――

 

  その直後、ダースが放っていた閃光弾を見事に消えた。何が起こったのかわからず、驚きを隠せないシフトやソエルの側で、ランサーは呟く。

 「姉貴・・・今こそ、“あれ”の使いどころ・・・だよな?」

 その直後、彼は姉から受け取ったブレスレットを取り出して、呪文の詠唱を始めた。

 聴きなれない言葉・・・古代語の呪文といったところか。そして、気がつくと俺とミヤの刀剣が淡く光り始めていた。

 「召喚獣“ウィル・オ・パシフィルヴァ”は“心”を司る。人間の・・・そして、全ての生き物や物の力を、最大限に引き出す能力を持つ・・・!!」

 詠唱の途中でそう呟くランサー。

 「うわっ…!?」

 眩い光と共に現れたその召喚獣は、神々しい女神のような格好をしていた。

 彼女の力が更に加わり、俺とミヤからは溢れんばかりの力がみなぎってくる。

 「セキ…」

 「・・・ああ」

 俺と彼女は互いを見つめ、頷く。

 全速力で走り出す俺とミヤ。土を踏み、その直後に宙へ身を乗り出す。

 「はっ!!!!」

 ダースは再びかまいたちを放つが、ミヤの黒い衝撃波がそれらを相殺し――――

 「セキ!!!!今よ・・・・!!!!」

 「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 横からはミヤの。下からソエル達が叫んでいる声が聴こえる。

 「ウォォォォォォォォッ!!!!」

 自分を支えてくれた仲間達やいろんな人々の想いを乗せて、光輝く剣を今、俺は振り下ろす――――――

 

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