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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第二章 ケステル共和国
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第5話 大国に潜む裏社会

今回はミヤの視点から物語が始まります。

また、視点が切り替わる際は直前に「※」が打たれているので、読む参考にしてみてください!

迂闊だった・・・。

彼――――セキとの会話中、柄にもなく感情的になったからか。

『君だって人間じゃないか!!』

彼の言葉が私の脳内をかけめぐる。

自分は人間ではあるが、ただの人間ではない。わかりきっている事なのに、その台詞を言われた時、何故か胸が痛んだのである。

…なぜこんな気持ちなんだろう…?

しかし、感傷に浸っている場合ではない。あれから妙な男達に拉致され、馬車で何処かに連れて行かれている。

「お前はうちで知らなくて良い事まで知りすぎた。・・・しかし、ただ始末するだけではつまらないから、面白い所に連れて行ってあげよう」

耳元で依頼人が囁く。

腕を縛り、猿ぐつわをされて目隠しもされた状態なので、真っ暗であった。

最も、私は目が見えないので、目隠しは無意味だが…。

刀も取り上げられてしまったため、抵抗する事もできない。ただおとなしくしているしかない状況に対し、屈辱的な気分を味わっていた。

そして、依頼人の手が目隠しを取り、私の顔に触れる。

「この白い肌と華奢な身体・・・。この漆黒の瞳は意外性を感じるが、さしずめ今後は鑑賞用か『ねこ』に使われるだろうね」

そう告げる依頼人の表情は、見えないがおそらくは不気味な笑みでも浮かべているだろう。

私はこの国のギルドに所属していたが、ある日この依頼人からの任務をこなした事で気に入られたのか、何度も私に依頼するようになった。

怪しい雰囲気は感じていたが、報酬(ギャラ)も良かったから続けていた。しかし、こいつらは裏で殺人・恐喝・買収・裏取り引き等、国の目を盗んでいろんな犯罪を犯していた事を知ってしまう。

こういう時、相手の表情が見えないのはつらい…

そう考えていると、突如馬車の動きが止まった。

「到着いたしました」

馬車の運転手らしき男の声が聞こえた。

すると、依頼人は私の口にハンカチをかざす。おそらく、睡眠薬のような薬品が染み付いているものだろう。徐々に意識が遠のいていくのであった―――――――――


    ※


くそっ、どこに行ったんだ!?

どこに連れて行かれたかわからないため、あの時見た馬車を俺は探していた。

個人用の馬車を所有していたくらいだから、結構金持ちな奴のはず・・・。

走り疲れたため、誰もいない空き家の前に座って休憩をすることにした。

彼女も俺と同じ旅人だから、通報しても相手してくれないだろうし…どうすればいいんだ!!


頭を抱えていた時、側を走っていった人物がヒラリと何かを落としていった。なんだろう?と思ってそれを拾う。少し古ぼけているが、旅人用の身分証明書だ。

「シフト・クレオ・アシュベル、16歳・・・」

無意識の内に名前を読み上げていた。

貼り付けられてる写真を見て(どこかで見かけたような・・・)と一瞬考えた。

とりあえず、ないとまずいモノなので、追って渡すことにした。あの少年を追って、空き家の階段を降りて行く。上は誰もいなそうなのに、こんな場所に何の用があったのか。降りて扉の前で銀髪の少年がもう1人と話し込んでいた。おそらく、身分証明書の持ち主だろう。

「これ、君のだよな?」

旅人用の身分証明書を見せる。

「・・・どうしてあんたが!?」

「君がここに来る時、俺の目の前で落としていったんだよ。・・・大事なモノだろ?」

「ありがとう!これがないと入れなかったんだ!」

身分証明書を受け取り、少年は側にある四角い穴に突っ込んだ。

「…通っていいぞ」

図太い声が穴の中から聞こえた。

「本当にありがとう!入れなかったら今日の仕事もできなかったし・・・そうだ!この仕事が22時くらいに終わるから、そしたらルイス通りの『フェニックス』って店に来てくれないか?お礼がしたいから!」

そう言って少年は中に入っていった。

・・・台風みたいな奴だったな

「あんたもギルドの奴だろ?・・・身分証明書を見せな」

身分証明書・・・あの少年も使っていたから、旅人用のでいいのかな?

断られる事も考えて恐る恐る渡したら、

「通っていいぞ」

あっさり了承してくれた。


中に入った途端、タキシードを着て変な仮面をした男が視界に入る。

「おい。ぐずぐずしてないで、早く着替えてこい」

そう言ったのと同時にタキシードと仮面を俺に渡してきた。

辺りを見回すと、何人かがひそひそ話をしている。あまり良い雰囲気じゃなさそうだ。


着替えた後、軽い説明を受けてわかった事は、自分が半強制的にやる事になったのは、これから始まる闇オークションの会場で飲み物を配ったりするいわゆるアルバイトだ。アルバイトにギルドの人間を雇う事は秘密保持も兼ねているので、よく使われる手段である。

・・・それにしても、どさくさに紛れてとんでもない場所に入っちゃったな・・・

入り口の所にはまた違う男が見張っているからしばらく出ることは出来なさそうだ。

ミヤを助けなくてはいけないのに・・・

しぶしぶ仮面をした客達に飲み物を配り始める。闇オークションということは、ここの客は金持ちな奴がほとんどだろう。飲み物を渡した後、バーの方に戻ると座席案内をしていたバイトの奴らが会話しているのが耳に入ってきた。

「今日は久しぶりに、人間の女が出品されるらしいぜ」

「へぇ・・・面白そうじゃねぇか」

 女の出品・・・という事は、人身売買か。

60年くらい昔には奴隷制度も健在だったケステル共和国だが、今はもう法律で禁止されているはずだ。俺が生まれ育ったレンフェンでもその制度はない。自分は旅人だから法に触れた行為は多少目をつぶれるけど、人身売買についてはあまりあっても良いとは思わない。少しもどかしい気持ちになりながら、闇オークションは始まる。


 オークションは最初、物から始まり、その後に人の売り買いが始まる。俺自身は歴史とかに詳しくないので、「古き時代に作られた骨董品です!!」とか聞いてもいまいちピンと来なかった。そして、後半の人部門に入る。その時、後ろからものすごい殺気を感じた。振り向いてみても誰もいなかったため、気のせいだと思う事にしたのである。

人身売買は子供から始まり、次に大人の男、若い女性という順番らしい。バイトへの指示として「人部門に入った時は客の競り落としが激しいので、あまり客の前に出過ぎない」と、言われていた。なので、後ろの方から会場を眺めていたのである。


 ※


 目を覚ました私は、まだ朦朧としていたのか頭がボンヤリしていた。しばらくして意識がはっきりしてきた時、腕は縛られたままだったが、目隠しと猿ぐつわは外されていた事に気が付く。

ここは一体どこだろう・・・?

周囲を見渡して場所を探ろうと思ったが、後ろに寄りかかった時、鉄格子を触ったような感覚がした。そのため、牢屋か何かの中かもしれないという仮説を立てる。

 この状態や先ほど依頼人が言っていた言葉から考えると、闇オークションか何かに出品されるのだろう。この国での人身売買は法律で禁止されているが、まだ裏社会では行われているという話を聞いたことがある。

普通の人間の年齢なら私は18歳に当るが、実際はもっと長く生きている。そんな中でこんな経験をするなんて思ってもみなかったな・・・。

そう考えてるや否や、数人の男らしき足音が耳に入ってくる。すると、丸ごと持ち上げられて、どこかに乗せられたかんじがした。

…成程。私は牢屋ではなく、小さな檻に入れられているんだ・・・

持ち上げられたかと思うと、檻は動き出す。折が揺れる音と一緒に滑車のこすれる音が聞こえる。

いよいよか・・・

大きなため息をついていると、ふと私の刀の気を一瞬感じた。私は目が見えない代わりに人や物の気を感じ取ることができる。あの刀も、どこにでもあるモノではないちゃんとした刀なので、独特の気を放っているのだ。

・・・しかし、あれは連れて行かれる時に取り上げられてしまったから、ここにはないはずだが・・・

そんな考えが頭の中を巡っているが、自分を乗せた滑車は舞台であろう場所へと運ばれていくのであった。



いかがでしたか?

ひょんな事から闇オークションに巻き込まれたセキとミヤ。

ミヤは本当に売り飛ばされてしまうのか!?

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