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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第十四章 文明世界マナ・アトラトで知らされる真実

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第57話 嫌な予感

「こ・・・ここはこう・・・」

「いや、ここはこうじゃねぇか?」

「本当に?・・・って、あーーー!!!」

部屋の中でセキ・ランサー・シフトの男3人の声が響く。

「何回やっても下手くそねぇ~!」

私は呆れてため息をついていた。

 この世界“マナ・アトラト”のアンコンダクターであるカリユシって子の家にこもってから、今日で2日目。彼女は現在、私達を時の精霊タイブレスの所へ連れて行ける状態じゃないらしく、連れて行ってもらうためには2・3日待たなければならない。しかも、どういう訳が私達の中の誰一人として、外出をさせてもらえず、今に至る。

「流石にこもりっきりもつらいだろうから」と言って、カリユシの身内だというナモンさんが私達に「ビデオゲーム」と「ノートパソコン」という機械を持ってきてくれた。

言うまでもなく、男共は前者の「ビデオゲーム」にはまっているかんじだ。そして、ビデオゲームをやった時にモニターから見える映像が見れない事もあり、ミヤはセキの隣でそんな彼らの様子に耳を傾けて楽しんでいた。

私はというと、ナモンさんが貸してくれた「ノートパソコン」で“インターネット”をしていた。

 このノートパソコン・・・古代図書館やグライドの家で見かけた形よりも、画面が見やすくていいなぁ・・・

私は、初めて使うはずなのにすっかり基本的な操作方法をマスターしていたのである。

“インターネット”自体は昔、幼馴染のグライドが「いろんな情報を探したり、他人とのコミュニケーションを取ったりと、いろいろな事ができる」と教えてくれたのもあり、何となくは知っていたが・・・こんなに利用していて楽しいモノだとは思いもしなかった。

 この“インターネット”でいろいろな事を調べてみて、1番に驚いた事が1つあった。それは、私達にこのノートパソコン等を貸してくれたナモンというおじさん・・・実は、マナ・アトラト一の巨大企業「アグゼリオ・カンパニー」の会長だという事実だ。ニュース関連の記事で、あちこちにあの金髪黒目で少しダンディーな顔が映っていた。

 「自分は、裏の事情にも詳しい」って本人は言っていたけど・・・ものすごい納得

この事実を知った時は驚いたが、すぐに納得できた。

「ソエル、”インターネット”はどんなかんじ?」

「ミヤ!!」

椅子に座ってパソコンを使っている私の隣に、ひょっこりとミヤがやってきた。

「クウィーン・MD(この都市)についてとか、いろんな情報を見ることができるから、本当に楽しいわ♪」

「そっか・・・」

上機嫌で答えた私だったが、ミヤの表情が・・・なんだか、考え事をしながら話しているようなかんじに見えた。

「ミヤ・・・どうしたの?」

「・・・え?あ、そうそう!!私だけじゃできないから、調べるのをお願いしたいんだけど・・・」

「何?」

一瞬ボーッとしていた彼女の様子が気になったけど、すぐに元に戻ったからとりあえず私も普通に振舞ってみる。

「えっと・・・市内観光した時に回った“国立魔導研究所”について調べてほしいんだけど・・・」

「OK!!・・・でも、どうして・・・?」

魔術師であるランサーならともかく、剣士であるミヤがこの研究所に興味を示したのが、ものすごい不思議なかんじがした。

すると、ミヤ(この子)はいつもの真剣な表情になって言う。

「・・・なんか、あの時の出来事がどうも引っかかっていて・・・なぜかはよくわからないんだけど、嫌な予感がするの・・・」

多分、彼氏であるセキとかは絶対に気が付いているんだろうけど・・・ミヤが真剣な表情をして言う憶測は、驚かされる事も多いけど、結構当たる事が多い・・・。

「えーっと・・・」

私はパソコンのキーを使って“国立魔導研究所”と、検索欄に順番に打ち込んでると―――――――

やかましいくらいの音が室内に響く。音の正体は、この部屋に置かれていた電話器の着信音。

「私出ますね!!」

いつの間にか外出から戻ってきていたアモーネちゃんが、受話器を取る。

「もしもし、アモーネです!・・・はい・・・えっと・・・」

受話器を取った彼女は、電話器越しに誰かと会話をしていた・・・。

返事の様子を見る限り、電話の相手はナモンさんかカリユシのいずれかのようだ・・・。

「はい・・・わかりました。皆さんに伝えておきますね!」

そう一言言って、電話を切る。

「今の電話は・・・カリユシさん?」

受話器を置いた彼女にシフトが問う。

「はい。今日はナモンさん・カリユシさんは2人とも大事な用事があって、帰ってくるのは明朝になりそうとの事で・・・」

「ふーん・・・やっぱり、表と裏の世界と両方で活躍している奴らは忙しいんだねぇ~・・・」

ランサーが少し皮肉っているような口調で呟いた。

そんなあいつの台詞を聴いたアモーネちゃんが眉をピクリと動かしていたが、すぐにいつもの表情に戻って、荷物の中身を取り出す。

「今日は未成年であるセキさんやミヤさん、そしてシフト君のために、アルコールの入っていないお酒を買ってきました!!・・・おつまみになる食べ物もたくさん買ってきたので、ついでに夕飯にしちゃいましょう♪」

そう言ってお酒やジュース、あとはクリムゾロではあまり食べないようないわゆる“マナ・アトラト料理”をたくさん出してくれた。

 こうしたゆったりした空間でゆっくりご飯を食べるなんて、久しぶりだなぁ・・・

お酒を片手に私は大満足していた。ミヤやセキは異世界の一つ“フィシュビストラー”でスコウ陛下と会食をしたから、久しぶりではないだろうけど・・・。でも多分、そういった形式ばったモノよりはのんびりした雰囲気なので、セキやミヤも満足しているだろうな・・・と、一瞬考えていた。

「アルコールなしのお酒は初めて見たな…。アモーネちゃん・・・なんか、いろいろとありがとうね」

「いえいえ!そんな・・・」

私がアモーネちゃんにお礼を言うと、本人は少し顔を赤らめて呟いていた。

この2日間、外を自由に歩き回れない分、私達はこの日、夜遅くまで飲んだり話したりで楽しく過ごしていたのである。



 頭がボーッとする・・・

自分の周辺で何か物音がした時、やっと意識がはっきりしてきたのである。 

 ・・・えっと・・・確か、俺は皆でノンアルコールのお酒を飲みながらはしゃぎまくっていた・・・・。その後、物凄い睡魔に襲われて・・・

おそらく、かなりぐっすりと眠っていたのだろう。自分はお酒に強いはずなのに、何故寝てしまったのだろうか。

眠る前後の事を考えていると、誰かがそこにいるような感覚に襲われる。

「アモーネ・・・ちゃん・・・?」

最初に俺の視界に入ってきたのは、深刻そうな表情をした、アモーネちゃんの姿だった。

「・・・ごめんなさい・・・」

「へ・・・?」

彼女が低い声で何か呟いたが、寝起きの俺ははっきりと聞き取る事ができなかった。

「痛っ・・・!!」

ガシャンという音と共に、俺の両腕に手錠がはめられる。

「なんだ、お前・・・ら・・・!?」

気がつくと、俺の周りには2人ほど軍人のような格好をした野郎がいた。

 力が…入らねぇ…!?

ベッドから自分で起き上がろうとすると、身体が痺れているのか、上手く動く事ができず、ベッドに再び倒れこむ。

「連れて行きなさい」

「はっ」

アモーネちゃんが低い声でこの軍人2人に命令すると、俺の両腕を持ち上げる。

「くそっ・・・放せ・・・!!」

俺は抵抗しようとするが、やはり、身体が思うように動かない。

「無駄な抵抗はしない事ね」

今までの彼女とは思えない口調で、俺に言うアモーネちゃん。

 何がどうなってやがる!!?

内心そう思ったが、俺はすぐに自分の身体の異変に気がついた。

「流石、“文明世界”・・・。こんなモノまで作れちゃうとはな・・・」

そう呟いた俺は、両手を振って自分にはめられた手錠でわざと音を鳴らす。

「・・・やっぱり、頭の回転が速いのは本当のようね・・・」

アモーネちゃんはそう言ってこのカリユシの家を出ようと歩き始める。

俺の身に起きた異変・・・それは、「魔術が使えない状態」になっているという事だ。ミヤちゃんを助けるために「魔神」レスタトと戦った際、俺は奴の暗黒魔術で魔力を封じられて、術が使えない状況に陥った事があった。それが、この手錠をはめられた瞬間、同じような感覚になったからだ。

 軍人2人に両腕を掴まれながら歩いていくと、俺がいたこの民家のすぐ近くに、馬車みたいな形をした乗り物が停まっている。

「ご苦労だったな、アモーネ・・・」

その乗り物の窓から、藍色の髪で白銀色の瞳をした20~30代くらいの野郎が顔を覗かせて言う。

「てめぇがアモーネちゃんを操っていた黒幕か・・・。俺を一体どうする気だ!!?」

俺は殺気を放ちながらこの男を睨みつける。

「私は、政府の情報課に所属する軍人・・・と言えばわかるかな?まさか、この良き日にお前と会えるとは思いもしなかったよ。・・・ランサー・ゼロ・ピカレスク・・・」

「なぜ、俺の名前を!!!?」

俺は、初対面であるはずの人間が自分を知っている事に対して驚いていた。

「まぁ、それは移動中にでも話してやろう・・・。あと、一つ言っておくが、無駄な抵抗はしないことだな」

「・・・なに・・・?」

「今は薬が効いてぐっすり眠っているが、お前が余計な抵抗をしたら、彼らの安全は補償しない・・・」

カリユシの家の方向を指差しながらこいつがそう述べた時、俺は気がついた。

自分がそうだったように、ソエル姉さん達も薬で眠らされているという事に――――――

「・・・ちっ・・・!!」

俺は、悔し紛れに舌打ちする。

「よし、ここを出るぞ」

黒幕と思われる軍人は、部下に命令したのである。



「セキ…!起きて!!」

翌朝、俺はミヤの声によって目が覚める。

「おはよう、ミヤ…。…もう朝なのか…?」

寝起きで頭がボンヤリする。

夕べは疲れて眠ってしまったのか…。

「ボーッとしてないで!!それよりも…大変なの!!!」

「大変…?」

「ランサーが…!!!」

「え…!!?」


 ミヤの台詞で完全に目が覚めた俺は、皆のいる居間へやってくる。

「セキ…!」

そこには、顔が真っ青なソエルと、深刻な表情で考え事をしているシフト…そして、ナモンさんがいた。

「ナモンさん!!ランサーが連れ去られたって、本当ですか!!?」

俺は彼の方を向いて叫ぶ。

「ああ…本当だ」

「なんであいつが…!!?」

ナモンさんが本当だと告げた後、俺の頭の中がこんがらがっていた。

「…そういえば、カリユシさんとアモーネさんの姿が見当たらないけど、なんでかな…?」

シフトが俺たちを見ながら呟く。

そんなシフト(あいつ)の肩をポンとたたいたミヤが、ナモンさんの方に視線を向けて言う。

「あなただったら…なぜ、ランサーが連れ去られたかを、ご存知なんじゃないですか…?」

真剣な表情のミヤ。…周囲に重い空気が立ち込める。

「大体は知っている…」

「!!!!」

俺たち4人の表情が一変する。

「…とりあえず、あいつらを助けに行く策を練らなくてはな…。このままだと、ランサーもカリユシも、やべぇ…」

そう呟いたナモンさんは、腰掛けていた椅子からゆっくりと立ち上がった。

「どういう意味なんですか!!?」

今にも泣き出しそうな表情をしたソエルが、この人に食って掛かる。

「ソエル…!!」

そんな彼女を俺が止めに入った。

「ナモンさん…」

冷静な口調でミヤの口が開く。

「私…人間や生き物が持つ、”気”を感知できるのですが…もしかして、ランサーとカリユシさんって…」

彼女の台詞を聞いた後、ナモンさんは一瞬瞳を閉じる。

そして、1秒足らずでゆっくりとその瞳を開いた。

「思った通り、お前ら4人の中では…お嬢ちゃんが一番勘が鋭いようだな…」

「それじゃあ…!!」

2人の会話についてこれず、俺とソエルは呆気に取られていた。

「あの…どういう…事なんですか…?」

俺は恐る恐る、ナモンさんに問いかける。

すると、ナモンさん(この人)は…

「察しの通り、カリユシとランサーは…同じデスティニーロ族。そして、実の姉弟だ…」



いかがでしたか?

物語を読んでいて、ランサーと同じように「もしかして」と思われた方も多いと思います。

あと、サブタイトルにもあるように、ミヤは勘が鋭いのがよくわかります。

なぜ、ランサーは連れ去られたのか!!?

その辺りが次回で語られる事となります。


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