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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第十二章 新たな世界へ行くために
53/66

第52話 古代図書館に存在する召喚獣

次回からは物語の舞台が”クリムゾロ”以外の異世界となります。

   エアボードを使ってスス荒野を横断し、無事に古代図書館に到着した俺達。ヴァラから出発して、ここに来るまで、見事に来た道を逆走したってかんじだ。ここまでかかった時間の事を考えるとやはり、これまでの旅は無駄じゃなかったんだと実感できる。

 「ここが古代図書館か…。確かに、蔵書量が半端じゃねぇな…!」

 「蔵書検索用のコンピュータもあるしね!」

 ソエルがコンピュータを操作しながら、ランサーと会話をする。

 「さて…どうやって、“次元のはざま”を発生するちゃんとした場所を探すか…」

 辺りを見回しながら、俺は呟く。

 「ガシェが…“それならば、クリムゾロの輝石を使えばいい”…だって」

 ガシェの台詞を、ミヤが代弁した。

 「この輝石を…?ガシェ、どういう事なんだ…?」

 「…とりあえず、この1階エントランスじゃなくて、人気のないフロアに行きましょ!」

 ミヤの提案で、俺達は移動を開始する。

  俺達5人は、古代図書館を中へ中へと入り、人気のなさそうな場所まで到達する。

 「ここまで来れば、もう大丈夫だろう。さぁ、ガシェ。詳しい事を聞かせてくれないなか…?」

 俺がミヤの刀を見つめながら話すと、ガシェが現れて話を始めた。

 『輝石は、時の精霊タイブレスが創りし鉱石。“次元の狭間を管理する者”…通称アンコンダクターが精霊の命などで異世界を行き来するのに使う…。そのため、輝石は次元の狭間が発生する場所を感知できるという事だ』

 「…でも、この人数で次元と次元を行き来なんて可能なのか…?」

 首をかしげながら、ランサーが呟く。

 『ダース様がレスタトと対峙した時におっしゃられていた台詞を聞く限りだと、おそらく…』

 ガシェは考え事をしながら話す。

 しかし、ここまでの段階で、俺にとっては話の内容が理解できなくなってきていた。

 「何となく…は理解できたけどさぁ…とにかく、輝石の反応を頼りに、皆で手分けして探してみない…?」

 「…それもそうね。このまま話だけしていても、埒があかないし…」

 ソエルの意見に皆が賛同した。

 

 ※

  

  輝石の反応を頼りに、私達は手分けして何かないかを探す。

 あれから、輝石が少しだけ輝きを見せたけれど…特にこれといったモノはないよなぁ…

 私は目の前にある本棚を片っ端から調べる。

 ミヤ達が言っていたように…この図書館に漂っている魂は、やっぱり古代人(ククル)なんだなぁ…

 手を動かしながら、その事実を私は実感していた。彼らの名前が出てきた時、最初に連想できるのがシフト―――――そして、歌姫アキだった。

 『この世とあの世の狭間』での出来事の時、あいつ…カイバに抱きつかれた時の感情は、やっぱりアキの想いなのかな…

 そんな事を考えながら、一冊の本に触れる。すると――――

 「きゃっ!」

 何かが私の目の前を横切る。

 驚いた私は、その拍子に本を地面に落としてしまう。

 「ソエル姉さん、どうした!!?」

 ランサーが私の所に駆け付け、あいつの声を聞いたミヤ達が集まってきた。

 「あれ…!」

 私は自分の目の前を横切ったモノを指差す。

 その先にいたのは…金髪碧眼の、背中に羽が生えた妖精みたいな存在(もの)だった。

 「なんだこれ!!?」

 「これは…召喚獣!?」

 私を含む皆は、やはり初めて見たモノに驚きを隠せない。

 「あんた達、誰?」

 「しゃべった!!?」

 「そりゃあ、しゃべりもするわよ!」

 宙に浮く“それ”は、甲高い声で言い放つ。

 「金髪碧眼の妖精…もしや、召喚獣ピクシェル…?」

 手を顎に当てて考えながら、ランサーが呟いた。

 「正解!よく知っているじゃない!!」

 得意げに話すピクシェルを見た私は、白い目で見ながら呟く。

 「うるさそうな召喚獣ね…」

 それに対し、そいつは瞬時に私の方へ振り向く。

 「アキの子孫なんかに言われたくないわよ!」

 「アキを知っているの!!?」

 その名前を聞いて、真っ先にシフトが食らいついたのである。

 「知っているというか、まぁ…音楽業界ではよく知られていたから、知っているだけ!実際は、会ったこともないわ!!」

 このピクシェルとやらの話を聞いていて、私達は呆気にとられていた。

 「ピクシェル…。君は、生前…いや、人間だったころの記憶があるのか…?」

 ランサーが恐る恐る訊くのに対し、ピクシェルは思いがけない事を口にする。

 「ええ!召喚獣でこの図書館に存在している連中は、ほとんどが生前の記憶を持っているわ!」

 「召喚獣が、この館内にいっぱいさまよっている…という事か…?」

 セキが目を丸くしてそいつに問う。

 「まぁね!!…っていうか、あんたたちは一体何をしに来たの??」

 その台詞を聞いて、私は本来の目的を思い出した。

 「そうだ!!ピクシェル、私達『次元の狭間』が発生する空間を探しているんだけど…何か知らない?」

 こいつが知っているのかはわからないが…なかなか見つけられない以上、ここの住民に聞くのが一番だと考えた私は、今の台詞を口走った。

 私の問いかけに一瞬反応したが、すぐにそっぽを向いてしまう。

 「知―――らない!!」

 ふてくされているような表情(かお)をしていた。

 「あんた、本当は何か知っているんじゃないの~??」

 怪しいと思った私は、強い視線で睨みつけながら召喚獣に問いかける。

 そんな私を見たピクシェルは、舌を出してあっかんべーをしてきた。私の中で、何かが切れたような気がした。

 「こぉんの、くそ妖精が~~~!!!」

 右手でピクシェルを掴んだ私は、縦に振る。

 「おいおい、ソエル姉さん!それはちょっと、よくないんじゃねぇの??」

 横からランサーが割り込んできたのを見たピクシェルは、急に態度を変えて話し出す。

 「かっこいいお兄さぁ~~ん!この女を怒鳴りつけてやってぇ~!」

 男を誘惑するような声音と仕草に、マジでウザイ…と、私は心からそう思ったのである。

 

  そんなアホみたいなやり取りの後、私達5人と1匹?は、古代図書館の中を奥へと進んで行く。ミヤやシフトとも話すようになったが、未だに私と話をしようとしないピクシェル。余程、アキが嫌いなのだと見た。

 「ピクシェル。次元の狭間の事を知っているツアルって、どんな召喚獣なの…?」

 不思議そうな表情かおでミヤがそいつに尋ねた。

 「ツアルはねぇ~、雷を操る召喚獣だよ!」

 この甲高い声を聴いていると、苛立ちが止まらない。

 それはまだ我慢できるとして、なぜかランサーにベッタリくっついているのが気に食わなかった。

 「…君たち第2元素召喚獣は、魔法陣なしで召喚できると聞いたことあるが…本の中に宿っていたって所か?」

 「ええ!…まぁ、召喚獣わたしたちにもいろいろあるんだけど、どういったわけか生前の記録が魂や記憶と共に、書物に書き記されていたみたいね…」

 甲高い声で歌うようなかんじで喋っていたピクシェルだったが、この時だけ真剣な表情をしていた。

 シフトがピクシェルの羽をじっと見ながら呟く。

 「君が持っている羽って、何でできているのかな?羽毛とかではなさそうだけど…」

 「あれ?あんたってもしや…」

 「君と同じ、召喚獣だよ!…完全ではないけど…」

 後半の方で、シフトの声が自信なさそうな声色になっていた。

 やはり、不完全な存在だという事を気にしているのだろう。

  古代図書館のかなり奥まで進んだ私達。雷の召喚獣ツアルはどこにいるのかと思うや否や、ピクシェルがゆっくりと飛びながら叫ぶ。

 「ツアルいるーー!!?いたら返事をしてーーーーーーー!!!」

 ただでさえ不快にさせる声なのに、そんな奴が大声を張り上げたものだから…私はつい耳を塞いでしまった。

 「…何も起こっていないな…」

 「本当に、この辺りにいるのか…?」

 何も現れないのを見たセキとランサーが、ピクシェルに問う。

 「で…出てくるはずなんだけどなぁ…」

 どうすればいいかわからないような表情でピクシェルが慌てふためく。

 「地震!!?」

 激しい揺れを感じた私は、辺りを見回す。

 「これは、もしや…あの時と同じ…!!?」

 「とにかく、皆!!机の下に隠れろ!!!!」

 セキの台詞と共に、私達は本棚の周辺にあった机の下に潜り込んだ。

  数秒間ほどで地震は収まった。レンフェン暮らしていた時は地震が多かった、とお爺ちゃんから聞いた事がある。しかし、当時は幼かったので、地震を体感した経験はなく、今回みたいな大地震は生まれて初めてだった。

 「あーあー!!本がメチャクチャだよ!!」

 地震によって本棚から落ちた本を1冊拾ったランサーが、ため息交じりで呟く。

 「…古代図書館ここの地形は、無限大に変化していくからね。…だから、あそこ!!」

 「え…」

 ピクシェルが指さした先には…先ほどまでは壁だったのに、いつの間にか扉が出現していた。

 「やはり、地形変動による地震だったのね…」

 「俺達3人が来た時も、こんな地震が起きたよな!」

 私の隣でミヤとセキが話す。

 「“雷獣”ツアル…。この先にいそうだね…」

 身体を少し震わせながら、シフトが呟いた。

 同じ召喚獣故の反応だろうと横目で見ながら、奥へと入っていく。

 

 ※

 

  扉の中に入った直後、本棚の近くで火花が弾けるような音が聴こえた。その瞬間、俺の頭の中にひびが生えるような音が響いた。

 今のは一体…?

 不思議そうに考えていたが、ピクシェルの声で我に返る。

 「ツアル!!お客さんだよ♪」

 俺の肩くらいの高さで飛んでいたピクシェルが、目の前にいる雷をまとう獣がいた。

 その獣は、全体が白くて耳の近くには金色の触覚が生えたーー虎のような召喚獣だった。

 「あなたが…“雷獣”ツアル…?」

 「…・いかにも…・」

 セキの問いに対し、この獣は静かに答えた。

 「召喚獣ツアル…。あなたは、この古代図書館が“次元の狭間を発生させる場所”だと知っているのを、ピクシェルから聞きました。それはどの辺りで、この刀とクリムゾロの輝石をどのように使えば、異世界へ渡る事が可能なのでしょうか…?」

 自分の刀とクリムゾロの輝石をツアルに見せながら、ミヤちゃんが訊く。

 俺らや召喚獣たちの間で、緊張が走る。彼女の刀と輝石を見つめたツアルは、その重たい口を開く。

 「…簡単なことだ。そこにある机と、その下に敷かれているじゅうたんをどかすがよい」

 「これか…?よいしょ…っと!」

 俺とセキの2人でその場にあった机を別の場所へ移動し、じゅうたんを剥がした。

 「窪み…。もしかして、ここに刀を差し込むのか…?」

 じゅうたんの下に現れた窪みが、ちょうどミヤちゃんの刀ぐらいの大きさだったので、そんな気がしてきた俺はツアルの方を向く。

 「そうだ。あとは、行きたい世界の事を考えながら、呪文を唱えればよい…」

 「呪文…」

 「その輝石を刀にはめ込んでから床の窪みに差し込めば、持ち主の頭の中に呪文が浮かんでくる…」

 「じゃあ、ダースが言っていた“テアビノ”の事を考えればいいんだな…!」

 「テアビノ…!!?」

 その言葉を聞いたツアルの表情が険しくなる。

 「お主ら、テアビノに行きたい…と申すのか…!?」

 「ああ。何か、問題でもあるのか…?」

 面白いくらいに表情が変わっていたので、きょとんとしていた俺は、そいつに尋ねる。

 「テアビノ…・あそこに行きたいというならばまず、次元移動といった時の流れを管理している精霊・タイブレスに会わねばならないらしい…」

 「“らしい”…?」

 「我は、この図書館を出られない身だからな…。詳しい事は知らないのだ」

 「そうですか…」

 ミヤちゃんが残念そうな表情をしていた。

 そこに、セキが肩を軽く叩く。

 「召喚獣ツアル…ならば、異世界をそれぞれ回るしかない…という事か?」

 「…そういう事になる」

  『雷獣』ツアルから、異世界への行き方の話を聞いた俺達は、すぐさま実行に移すことにした。

 クリムゾロの輝石をミヤちゃんの刀に埋め込むと、そこから光が発した。その直後、ピクシェルが俺の肩にとまって耳元でささやく。

 「“マナ・アトラト”に行けば、あんたの知りたい事がわかるわよ…」

 「え…?」

 その台詞を聞いた俺は、すぐさま後ろを振り返ったが…既に、ピクシェルの姿はなかった。

 “マナ・アトラト”…か

 その言葉を頭の中に刻み込んだ俺は、準備万端となった皆の元へ戻った。

 「…あの妖精と、何を話していたの…?」

 「…ちょっとな…」

 いつもだったら、ふざけてかわしていた俺だったが――――ソエルの問いかけに対し、今回に限ってはそんな余裕がなかった。

 「よし!!皆、心の準備はいいか?」

 「OKだ!行こうぜ!!」

 「ええ!!!」

 刀を差込み、呪文の詠唱を唱え始めたミヤちゃんの側に、俺達4人は固まった。

 この世界の言語ではない言葉で詠唱する彼女の額には、光の紋章が現れていた。

 あれ…?この紋章…

 なぜかこの時、初めてじゃないような感覚「デジャヴ」を感じていた。

 そして、呪文の詠唱の終了と同時に現れた次元の歪みが、俺達5人を異世界へと運びだすのであった―――――――


いかがでしたか?

いなくなる前に、ピクシェルが謎の言葉をランサーに告げましたが、その答えは今後の話の中で明らかになります。

自分達が暮らしていた世界”クリムゾロ”から、異世界へと飛び出したセキ達。

マカボルンを持つとされるミヤの父親、大魔王ダースの情報を求める彼らに、何が待ち受けているのか!!?

・・・次回をお楽しみに♪


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