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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第十二章 新たな世界へ行くために
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第51話 異世界からの来訪者

ランサーから始まります。

  オブゼヨっていうウィシュナクルの町長の屋敷に逆戻りした俺達3人。先程と変わらず、門番らしき野郎が2人いる。どうやって侵入するかを考えていた。

  「さっき来た時に顔が割れているから、正面突破は難しそうだな…」

  「…つーか、セキ。お前も、すっかり不法侵入する気満々じゃねーか!」

  セキと俺はコソコソ声で会話をする。

  「これだけ大きな屋敷だから、裏口の1つや2つはありそうだよな…」

  「どちらにせよ、あの門番達が邪魔になる…かな」

  「となると…彼らにお寝んねしてもらう?」

  シフトが指を強く鳴らしながら提案する。

  「うーん、それもなぁー…」

  シフトがやったら、他の野郎共に見つかって面倒な事になりそうだし…。せめて、奴らを引き付けることができれば…

  この時、何でか俺の頭の中に、ソエルの叔父(叔母?)に当たるルーティー姐さんの顔が浮かんだ。

  「あ…そうだ!!いいこと思いついたぜ♪」

  面白い作戦を思いついた俺は、意地悪そうな笑みを浮かべながらシフトの方を見る。

 

 数十分後――――――

「あのー…」

  「ん…?」

  門番の連中の目の前に現れたのは…女性っぽいメイクと旅人の服を着せられたシフトの姿だった。

  「な…何か用か?」

  頬を赤らめながら、門番達が尋ねる。

  「ちょっとお尋ねしたい事があるんですけどぉー」

  少し高めの声音で、女装したシフトが話し始める。

  「よし!今だ!!」

  ランサーの台詞を合図に、俺とランサーは門番達の目を盗んで裏口から侵入する。

  「“シフトを女装させて囮にする作戦“、大成功だな!…いやー、シフトが女顔で良かったぜ♪」

  「…でも、後でボコボコにされそうな気がする…」

  「まぁ、いいじゃねーか!そういえば、あいつ普段とは違う声でやっていたな!もしかしたら、役者に向いているかもしれねぇな!」

  「うーん…まぁ…」

  屋敷内を進みながら、俺とランサーは小さな声で会話をする。

  とは言っても、やっていて楽しかったな♪

  シフトを女装させるにあたって女性メイクと服装を施した俺は、ちゃっかり楽しんでいたのである。

  屋敷内の使用人に見つからないように進む俺達2人。すると、中で声の聴こえる部屋の前にたどり着く。

  「何か聴こえるか…?」

  隣でランサーの声が聴こえる。

  「微かに…」

  俺は扉に耳を当て、中から声が聴こえないか耳を澄ましていた。

  「まさか、あんたが奴の娘だったとは…」

  「貴方こそ…“あの方”の息子だったのね…」

  聴こえてくる声からして、ミヤともう1人いるのがわかる。

  「まぁ……な…!」

  もう1人の声が聴こえたかと思うと、自分達が耳を当てていた扉が木っ端微塵になり、俺とランサーは軽く廊下の壁に吹っ飛ばされた。

  「痛てててて…」

  「全く、最近はこんなのばっかりだ…」

 痛みを感じながら、無意識の内にそう呟いていた。

  「…盗み聞きとは、感心しねぇなぁ…!」

  床に座り込んでいる俺達の視線の先には…ミヤともう1人、見知らぬ男がいた。

 その鋭い声からは、少しだけ殺気を感じる。ミヤと一緒にいた男は、色黒の肌で図体がよく、紺色の瞳がギラギラしていた。

  「セキ…それに、ランサーも!!」

  「やぁ、ミヤちゃん!…大丈夫か?」

  ミヤは少し驚いた表情を見せる。

  一見したところ、怪我とかしていなそうだが…この男がオブゼヨだとすると、彼女に何もしなかったとは考えにくい。

  「とりあえず、エアボートの使用を許可してくれたので、これでスス荒野を横断できるわ!」

  「本当か!!?良かった…!」

  その台詞を聞いて、俺は安心した。

  でも…何だか、いろいろと上手くいきすぎじゃないか…?

  あまりに順調な現状に対し、俺は違和感を覚えていた。

  「てめぇが、オブゼヨっていうウィッシュナクルの町長か…。ミヤちゃん、君はこいつに何をされた…?」

  真剣な表情をしたランサーが、立ち上がりながら言う。

  すると、ミヤは頬を少し赤らめながら黙り込む。

  「何って……この嬢ちゃんを抱いた」

  「何!!?」

  オブゼヨが横で言った台詞を聞いた俺は、目を見開いて驚く。

  「ちょっと…!!誤解を招くような言い方しないで…!!」

  思いもよらぬ発言に対し、ミヤがこいつに反論する。

  「ミヤ…?」

  「ハハ…冗談だよ!正確に言うと、嬢ちゃんの生気(エナジー)をもらったという所かな?…身体に触れたのは本当だが…」

  「生気(エナジ)ー…だって…!!?」

  言葉の意味はわかっても、どうしてそんな事をしたのか全くわからなかったので、驚きで身体が硬直していた。

  彼女の肩に腕を回しながら、オブゼヨは意地悪そうな笑みを浮かべながら、俺らを見据える。

  「信じられない話かもしれないけど…。彼…オブゼヨは、クリムゾロじゃない場所…異世界の住人なの」

  「えっ!!!?」

  俺とランサーが驚く。

  「…それとこれと、何の関係があるんだ…?」

  ランサーがミヤに問う。

  「彼の場合…このクリムゾロに来て間もないため、身体がこの世界の空気に慣れていないの。クリムゾロは他の世界と違って、特殊な空気漂う世界だから…」

  「この世界の住人の生気(エナジー)を食わないと、死ぬ…って事か…?」

  「それで、この街に居座って生気エナジーの強そうな人間を探していたというわけ…!」

  ランサーの台詞の後、オブゼヨが補足する。

  「まさか、俺と同じ獣人…じゃなかった。大魔王ダースの血を引いた”混ざり物”がいるとは、思いもしなかったぜ…!」

  馬鹿にするような口調で言うこいつに、少しだけ苛立ちを覚える。

  「お前の“要求”は呑んだわけだから…さっさと彼女を解放しろ…!」

  本当は殴り飛ばしたい所だけど、エアボートの事があるので、手荒な真似はできないーーーーそう考えた俺は、怒りを抑えながらこいつに言い放つ。

  「はは~ん…お前、嫉妬しているんだろう…?まぁ、この嬢ちゃんにはチューしたり胸触ったりはしたが…心はあんた一筋だから、安心しな!!」

  「何!!?」

  「落ち着けって…!!」

  奴に掴みかかろうとした俺を、ランサーが止めに入った。

  「とにかく、早く隣の部屋にいるソエルを迎えに行ってあげましょう!私は、大丈夫だから…!」

  冷静な表情で言うミヤに対し、俺はすごく複雑な気分だった。

  「…邪魔したな」

  何とか落ち着いた俺は、すぐさまオブゼヨの部屋を出て隣へ向かう。

  ミヤが奴の部屋を出ようとした時、オブゼヨがミヤを引き留める。

  「嬢ちゃん」

  「…何…?」

  彼女は、振り返る事なく問いかけた。

  「お前ら、異世界に行くんだろ…?もし…俺の親父に会ったら、“しばらくは帰らない”と伝えてくれ…」

  それを聴いミヤは一瞬黙り込む。

  「わかったわ。…伝えておく」

  そう返事をして、部屋を出て行った。

  その後、隣の部屋に入ると、床で倒れていた奴の手下達の中心にソエルがいた。

  「あら、皆…!」

  「ソエル…この状態は一体…?」

  「ああ…これ…?」

  呆気に取られている俺達をよそに、彼女は話を続ける。

  「私ね、普段からこの服のベルトの所にオート発射の超小型麻酔銃を仕込んであるの!…もちろん、護身用でね♪」

  ベルトに装着されている麻酔銃を片手で見せつけながら、ソエルは言う。

  「心配した意味…なかったって事かぁー…」

  ソエルの台詞を聞いたランサーは、脱力して床に座り込む。

   そしてソエルを見つけた俺達は、最後に約束の場所でシフトと落ち合うために、ウィッシュナクルの森林地区入口へ向かった。

  「私達が屋敷の中にいる間に、そんな事が…」

  俺とランサーは、オブゼヨの屋敷に侵入するまでの経緯をミヤとソエルに話していた。

  「それにしても…シフトの女装した姿かぁ…一度、この目で見てみたかったな♪」

  楽しそうな表情(かお)をしながら、俺らの話を聞くソエル。

  「じゃあ、また今度見せてやるよ!本当に女みたいなん…だ……」

  気がつくと、ランサーの顔色が真っ青になっていた。

  「ランサー。どうした…?」

  そう言った俺は、あいつが向いている方向を見る。すると…

  「あら、シフト!」

  俺の背後には、すごい怒り顔のシフトがいた。

  「セキにランサー…。…ちょいと、(つら)貸せやぁ…!」

  その後、ウィッシュナクルの森林地区で、俺とランサーの悲鳴が響いたのである。

 

  ※

 

  「全くもう!!2度とこんな事はしないからねっ!!!」

  「すんません…」

  僕に叩きのめされたセキとランサーが、2人揃って返事をした。

   見た目はガキんちょとはいえ…本当は彼らより年上なのに、20前後のガキ共に女装させられた僕は、どんだけ女顔なんだよ!!

  そんな事を考えながら、口をプクリと膨らませていた。

  「まぁまぁ…でも、やっぱり一目見てみたかったなぁ、シフトの女性姿!」

  そう呟いたソエルを僕はキッと睨む。

   オブゼヨって人の屋敷を去ってから、エアボートを乗るために、乗り場へ向かっていく僕達。どんな“要求”をされたのか訊いたら、誰も教えてくれなかった。

  …もしや、訊いちゃいけない質問だったのかなぁ…?まぁ、大体その内容は想像できるけど…

  「少し無駄な時間を食っちまったが…とりあえず、これで古代図書館へ行けるようになったな!」

  「古代図書館かぁ…初めて行くから、ちょっとドキドキね…」

  「…あそこは、すごい不思議な雰囲気の場所よ。…あの老人に会えれば、いいけれど…」

  「あの老人?」

  ランサーとソエルとミヤが、古代図書館について語り合っていた。

  「会ってみれば、わかると思うよ!確かに、あのお爺さんなら、何か知っていそうだよね♪」

  女装の話はとりあえず、水に流して…僕はこことは違う別世界に行くのが、すごい楽しみだった。

   これから僕達は、この世界を抜け出して、マカボルンを持っているであろうミヤのお父さんを探しに行く。ただ、マカボルンができるまでをよく知っている自分としては、僕らーーー特に、ミヤにとってつらい現実が待ち受けているような気がしてならない…。

  これからは、僕らの団結力と、個人の精神力が試される時…。それに、ランサーの事も何かわかるかもしれないな…

  そう思いながら、僕は皆と一緒にスス荒野を横断する。

 

いかがでしたか。

ソエル姐さんの無双っぷりには、久々に読んで噴出しそうになりました。笑

あと、女顔でからかわれていたシフトが、女装して本当に女役をやらせちゃった!!という、コメディー要素全開でしたね★

映像化とかしたら、すごい事になりそう( ̄▽ ̄)


さて、この後やっと古代図書館へと行けるようになるセキ達。

また、今回のエピソードは、違う章への伏線も多少兼ねているので、関連性がある賞の文を、よかったら探してみてください!


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願いいたします(^^


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