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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第十二章 新たな世界へ行くために
51/66

第50話 逆戻りする中で

この回と次の第51話は、なろうサイトの前に投稿していたWEBサイトでは掲載したのですが、やっとこちらにも載せられた間のお話。

本編と関係ない部分も含みますが、ちょっとした伏線もあり。今までのおさらいやちょっとコメディーな部分もちょいちょいありなかんじですね。

ミヤ視点で始まります。

  まさか、またケステル共和国へ向かう事になるとは思わなかったな…

 港町カコンから乗った船の上で、私はそんな事を考えていた。

 「最果ての地」を目指してミスエファジーナへ向かっていた時、港町ダンヴァイからこの船を乗っていたが…今は、まさにその逆走をしている。

 「それにしても…あの町長の娘がいなくなってくれてから平和でいいよなぁー!」

 「婚約者の船長には悪ぃが…確かに、あのシオンっていう侍女も来なくなったから、船を汚されずに済むぜ♪」

 私の背後で船員さん達が会話をしていた。

  この船では…シフトを拉致して痛めつけた町長の娘サハエル、そして私と同じ「混ざりもの」である彼女の侍女シオンを初めて見かけた場所だ。でも、今の私にとってはそれよりも…ここは、“ランサーと初めて出逢った場所”というイメージの方が強かった。

 グリフェニックキーランを出発した時、ランサーから感じる気が少し不安定なのを感じ取っていた。

 何かあったのかな?とは思ったけれど、あまり詮索はしないようにしている。それは、出来る限り本人の口から聞きたいからである。

 「今日までいろいろあったけれど…。今はとにかく、父様にお会いして真相を訊く事が先よね…」

 『…その通りでございます、ミヤ様』

 私の呟きに、ガシェが応えてくれた。

 『ミヤ様…』

 何…?

 私は心の中で話し出す。というのも、は人前に姿を現れなければ、口に出さなくても心の中で会話できるからだ。

 『この度は…敵の手に渡った事でつらい目に遭わせてしまい…本当に申し訳ございませんでした…!』

 ううん…。も強かったし、仕方のないことだと思うわ…

 他人の表情が見えない私であったが、ガシェの場合だと感じる気に邪気を感じさせないので、すごい誠実さが伝わる。それは、ある意味人間よりも純粋なーーーーーーーーーーー

 「…そろそろ、船室に戻ろうかな…」

 『そうですね…』

 私はポツリと呟いた後、皆がいる船室に戻って行く。

  船が港町ダンヴァイに到着した後、私達は船酔いしたシフトを休ませるのも兼ねて、昼食を町中のレストランで摂っていた。

 「さっき、船員さんが話していたんだけど…」

 セキが話し始めると、皆は食べるのを止めて彼の方を向く。

 私も、魚介パスタをたらふく食べていたが、手を止めてセキの話を聞き始めた。

 「今度も、あの時の逆走でウィッシュナクルから“エアボード”を乗って、スス荒野を横断する事になる…」

 「今度は5人だから、僕は1人用に乗るね!!」

 側でシフトが断言する。

 そういえば、あの時はセキとシフトの3人だけだったから、2:1で乗ったんだっけ…

 ふと、そのときの光景を思い出していた。

 「そんで…船員さんから聞いたのが、そのウィッシュナクルの事なんだ」

 「…何かあったのか?」

 ランサーがセキに問いかける。

 「ああ。…なんか、の管理者が最近変わったらしく、警備とかがものすごい厳しくなったらしい」

 「ふーん…。でも、これまで通り、旅人は身分証明書を見せればちゃんと乗れるんでしょ?」

 ソエルが一言言うと、セキが言葉をつまらせた後に口を開く。

 「これ以上は船員さんも知らなかったらしいが…通るにあたって、何かしら“要求”を呑まなきゃいけないらしい…」

 「“要求”…」

 その台詞を聞いた私は、それがどんな“要求”をされるかが気になった。

 「それって…お金とか…?」

 私はポツリと呟いた。

 その場で沈黙が続く。おそらく、皆考え事をしているのだろう。すると、シフトが立ち上がった。

 「…なんにせよさぁ、ウィッシュナクルを通らないと古代図書館にたどり着けない訳だし…どんな要求にしろ、行くっきゃないんじゃない?」

 「そう…だよな。考えてばっかりじゃ駄目だもんな…」

 こうして、話がまとまった私達は、ダンヴァイを出発した。

 

 ※

 

 「おー、ここがウィッシュナクルの街かぁ~!本当に岩だらけだなぁ~!!!」

 ランサーが辺りを見回しながら感想を述べていた。

 港町ダンヴァイを出発した俺達5人は、古代図書館へ向かうためにスス荒野近くの街ウィッシュナクルに到着していた。

 ここへ来る途中、トトベムという街の近くを通貨したが、あそこでは吸血鬼という連中を初めて見た街だった。からここまでいくらか距離があったので泊まっていくこともできたが、ソエルにとっては“吸血鬼に襲われた街”でもあるので思い出させないようにわざと寄らなかった。

 …あの時はランサーだけが仲間にいなかったけど、おそらくソエル本人から話は聞いているんだろうな…

 歩きながら、俺はそんな事を考えていた。

 「あったわ!”エアボート乗り場”!!」

 ソエルがエアボートの乗り場を見つけると、すぐさま俺達はそこに向かって入っていく。

 「悪いが、旅人の身分証明書だけではは貸せんな」

 店の人にサラリと言われたが、ここで引き下がるわけにはいかない。

 「俺達には、何が何でもエアボートと使ってスス荒野を横断したいんだ!…何とかならないのか!?」

 俺は軽くひるませるくらいの強面で、店員に言う。

 本当に反応したのかはわからないが、ため息をついたその店員は口を開いた。

 「あんたら、そんなに乗りたいのなら…ここの新しい町長の所に行って、お願いでもしてくるんだな!」

 そう言われた後、俺達は店から追い出された。

 「全くもう!!にこんな扱いするなんて、ひどい奴!!」

 「でも…その町長とやらのとこに行かないと、エアボートを使わせてもらえないのは本当みたいね…」

 ソエルが頬を膨らませて怒っていた横で、ミヤが考え事をしながら話していた。

 「まぁまぁ、ソエル姉さん…。とりあえず、その町長とやらに会いに行こうぜ!!」

  そして、町長とやらが住んでいるお屋敷の目の前に到着した俺達。門のところには、門番みたいな男が2人ほどいる。

 以前この近くを通った時、この屋敷はあっても、門番はいなかったはずなんだけどなぁ…

 前に来たときと、雰囲気が変わっていることに俺は違和感を覚える。

 「お兄さんたち!僕ら、ここに住まれている町長さんにお会いしたいんだけど!」

 シフトが先頭切って、門番達に話しかける。

 「…用件は?」

 「私達、エアボートに乗ってスス荒野を横断したいんです。だから、エアボートを使わせて戴きたくてお願いしに来ました」

 ミヤが丁寧口調で話す。

 ミヤもシフトも、堂々としていてすごいなぁ

 内心でそう考えている

 すると、門番の男たちはヒソヒソ話をした後、「少し待て。」と言って、中へ確認?をしに行った。自分がいた。

 「大丈夫かな…」

 俺は独り言をつぶやいていると、門番の一人が扉の中から出てきた。

 「オブゼヨ様が面会をしたいそうだ。…そこの茶髪の女と、黒髪の女だけな」

 「え!!?」

 それを聞いたソエルとミヤが驚いた。

 「ちょ…俺達は駄目だってのか!!?」

 「オブゼヨ様は、男性であられるが男嫌いであられるからな」

 「ちゃんと”男”って認識してもらえたのは嬉しいけど、女性だけなんて差別だなぁ~!」

 シフトが、頬を膨らませながら文句をつぶやく。

 「どういうわけだか理解できないけど…とりあえず、ミヤと2人で頼んでくるから、あんたたちは、どこかで待っていて!」

 「…ちゃんと、貸してもらえるようにお願いしてくるから…・」

 そう言った2人は、門番の一人に連れられて屋敷の中へ入っていく。

 2人の姿が見えなくなった後、ランサーが俺に耳打ちをしてきた。

 「おい、セキ…・。なんか、ミヤちゃんの表情が深刻そうだった。もしかしたら、何かあるかもしれねぇから、ちょっと調べてみようぜ!」

 「調べるって…どこに?」

 「いいから…おい!シフトも、行くぞ!!!」

 俺はランサーに引っ張られながら、町長の屋敷を後にする。

 

 ※

 

  門番の人間に連れられて、屋敷の中へ通された私とソエル。途中、ソエルは隣の部屋に連れて行かれる。

 この屋敷…やっぱり、何かありそう…

 私が周囲を怪しんでいると、ガシェも自分と同じ事を考えておりました…。と、言ってくれた。

 というのも、私やソエルを連れてきたこの門番達から、独特な気を感じていた。

 誰の気かはわからないが、とりあえず魔族ではなさそうだ。

 「失礼いたします、オブゼヨ様。先ほどの娘を連れてきました」

 「…入れてやれ…」

 門番がノックをした後、低めで特徴のある声が返ってきた。

 「…では、ここで武器を預からせてもらう」

 「ちょ…これがないと私は…!」

 「もし、あの方に何かがあった場合、お前が真っ先に疑われるぞ?」

 「っ…!!」

 確かに、こちらがお願いする立場なのだから、刀を携えていたら脅迫しているみたいになってしまう。

 町中で騒動を起こしたら皆に迷惑がかかるので、なるべくそれは避けたい。

 「…お願いします」

 私は腰に下げていた刀をはずし、門番の男に渡した。

 「失礼します」

 案の定、周囲が真っ暗になったので、よろけながら部屋の扉を開けた。

 ドアを閉めたその先はーー真っ暗だが、目の前に独特の気を放った何かを感じ取る。

 このかんじはやっぱり…。とりあえず、今は用件を話さなくては…

 「オブゼヨ殿…ですよね?あの…今日は、お願いがあってきたのですが…」

 「まぁ、堅苦しい話は後にして…とりあえず、こっちに来いよ!」

 最初は町長というので、もっと年配のおじさんとかだと思っていたが…やはり、若者のような声をしていた。

 「きゃっ!!」

 床に転がっていた缶みたいなモノに気がつかなかった私は、それにつまずいてずっこけてしまう。うつ伏せに倒れたから、顔面が痛いはずなのに…気がつけば、そのオブゼヨという男が私を受け止めてくれたようだった。

 「ありがとう…ございます…」

 「へぇ…あんた、盲目なんだ…」

 「ええ…まぁ…」

 私の耳元辺りから声が聴こえてきたので、心臓が跳ねそうだった。

 すると、私を抱きあげたその男は、ソファーかベッドのような柔らかい場所に座る。

 今の身のこなしから見ても、間違いない…この人は…

 私はつばをゴクリと飲んで口を開く。

 「あなた…”混ざり物”よね…・?」

 「嬢ちゃんもだろ?」

 相手はすぐに切り返してきたため、私は驚いた。

 「“も”って事はやっぱり…」

 私は起き上がりながら話す。

 「…まぁ、正確に言うと“獣人”が正しいかな」

 「“獣人”…じゃあ、もしや異世界の!!?」

 聞き覚えのある単語に対し、私は驚く。

 実は、”混ざり物”という呼び方は、この世界独自の呼称なのだ。

 そのため、異世界に行くと魔族と人間とのの呼び名を”獣人”のように異なる呼び方をする場合がある。

 「どうして、異世界の住人が、この世界に…?」

 私の台詞を聞いたこのは、一瞬黙った。

 「…俺の“要求”を1つ呑んでくれるなら、話してやってもいいぜ」

 「条件ね…どんな内容?」

 このオブゼヨという男が要求を出してくるのを聞いて、やはり街の人が言っていた通りなのがよくわかった。

 「お前の身体を、少しの間だけ俺に預けろ」

 「んなっ!!?」

 “要求”を聞いた私は、動揺を隠せない。

 「…何をするつもり!!?」

 多分、かなり険しい表情をしていただろう。

 私はキッとこの男の気を感じられる方向を睨んだ。

 しかし、臆する事なく、オブゼヨは私に迫ってくる。

 「忘れているかもしれないが…なぜ、お前と一緒に黒髪の女を入れたかわかるか…?」

 「…っ…!!」

 その場で一瞬だけ考えたが、すぐにその理由が理解できた。

 「…卑怯者…!」

 「“用意周到”と言ってほしかったけどな…」

 気がつくと、私はベッドの上に押し倒された状態になっていた。

 「やっ…」

 の舌が私の首筋に触れる。

 腕は片腕だけ押さえつけられているが、力が強すぎて振り払うことができない。多分、彼は肉食動物と人間のなんだろう…と、考えていた。最も、抵抗できたとしても、隣の部屋でソエルがいる以上、不可能である。私とソエルだけ中に入れたから、女好きなお偉いさんかと思っていたが…まさか、人質の目的で人選していたとは思いもしなかった。彼の手下らしき人は、おそらく操られているのだろう。は、普通の人間にはない能力を持っていたりするので、人間を操ることくらいたやすい。

 セキ以外のとこんな事になるなんて、かなり嫌だけど…思えば、私がお願いしないと、古代図書館に行けないのよね…

 他人にいいようにされるのはこの上ない屈辱だが、皆の事を考えると、なりふり構ってはいられないのも事実。そう考えた私は、身構えていたもう片方の腕を下ろした。

 「無駄な抵抗をやめたみたいだな。まぁ、別に捕って喰ったりはしないし…すぐ終わるから、安心しな…・」

 

 ※

 

  ミヤちゃんとソエル姉さんが連れて行かれた直後、ウィッシュナクルで情報収集をしていた俺・セキ・シフトの3人。

 「ああ…あの新しい町長…?なんか、今のオブゼヨって奴に変わったのは最近らしいぜ!」

 「仕事でケステル共和国の首都ゼーリッシュに行きたいのに、エアボートが使えないから困っているんだよ~!」

 などといった話を旅人から聞いていた。

 「…情報をまとめると、その“オブゼヨ”って奴が町長になってから、街の体制が厳しくなった…といった所か…」

 セキが考え事をしながら、呟く。

 「絶対に何かあるよね、その町長…」

 「シフト…?」

 俺とセキがシフトの方を向く。

 「だってさぁー、屋敷に入れたのってミヤとソエルだけ…っていう女性陣だけなんだよ?もしかしたら、そいつはかなりの女好きとか…」

 その台詞を聞いた俺は、苛立ちと同時に、嫌な予感がした。

 「こうなったら…こっそり忍び込んじまうか!!」

 「ええっ!!?」

 セキが驚いたが、それを全く眼中なしなかんじでシフトが口を開く。

 「どうせ僕たちは旅人だから、捕まる心配とかあまりしなくてもいいしね!!」

 「ちょ…シフト!!お前まで…」

 「それともう一つ、オブゼヨって野郎が普通の人間じゃない可能性も…」

 俺は真剣な表情で考え事をしながら呟く。

 というのも、エアボード屋の店員や門番を垣間見た際、魔力は感じなかったが瞳が虚ろで操られているような雰囲気を感じたからだ。魔法省が制定した魔術法では禁止されているため、俺と同じ魔術師ではないだろう。とにかく、実際にそいつに会って確かめるしかなさそうだ。

 「でもさぁ、ランサー。ミヤやソエルがお願いしに行ってくれているんだから、不法侵入はいくら旅人である俺達であろうと、良くないんじゃないか?」

 横でセキが俺に意見を述べる。

 「う~ん…・。って、あれ?シフトの奴は??」

 俺とセキは、シフトが見当たらないので、辺りを見回す。

 すると、あいつは町長の屋敷に向かって猛ダッシュをしていた。

 「ちょ…シフト!!!お前、どこに行くつもりなんだよ!!?」

 「そりゃもちろん、オブゼヨって人の屋敷!!!グダグダ考えているより、行動してしまった方が、早く解決するかもよ?」

 走りながらシフトが行った。

 「まぁ、確かに…。でも、シフト!!!そんな猛ダッシュだと、門番共に怪しまれるぞーーーー!!!」

 セキがそうシフトに告げ、俺とはソエル姉さんやミヤちゃんのいる、町長の屋敷へ逆戻りを始めた。


いかがでしたか。

今回はテンポがよくて、久々の編集も楽しかったです♫

ちなみにこの話の原案は、ファイナルファンタィーVIIを参考にしております★

クラウドファンの方は、どのエピソードかすぐにわかるかも?笑


さて、この後はある意味”後編”ってかんじになります。

オブゼヨという男は明らかにスケベですが、単なるセクハラなだけではなく、この行動にも一応意味はあります(苦笑)

その辺りが次で描かれているので、誤解を招くとあれなので、読んでいただけると幸いです(´-ω-`)


ご意見・ご感想があれば宜しくお願い致します!


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