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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第十一章 明かされるミヤの正体
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第45話 対決

今回は、ついにミヤを捕らえるよう命令した張本人「魔神」レスタトと対決する回です。

場面や回ごとに誰の視線で物語を進めるかを変えています。

今回はソエルの視点からの開始ですね★

  私達4人と1羽は、魔神レスタトの根城である城内を上へ上へと上がり、ついに玉座の間と思われる部屋の扉の前に到着した。

 巨大かつ大分古い扉だったので、開いた時の音がすごく響いた。

 それでも、セキ一人で開く事が出来たのだから…彼って、何気に力持ちなのね…

 両腕を使って扉を開く彼を見つめながら、そんな事を考えていた。

 扉を開けて中に入った瞬間、私達の目に入ったのは一人の巨大な魔族と、玉座の傍らにいるミヤだった。

 「ミヤ…!!!」

 私の目の前にいたセキは、レスタトには目も暮れず、ミヤの方を向いて走り出した。

 すると、何かに気がついたのか、ランサーの表情が一変する。

 「セキ!!危ねぇっ!!!」

 「うわぁっ!!!」

 感電したような音がしたかと思うと、セキが何かに弾かれたようにこっちへ吹っ飛んできた。

 「セキ!!大丈夫!?」

 私は、飛ばされて壁のぶつかったセキの側へ駆け寄る。

 「俺らが触れないように結界を張るたぁ…イラつく事してくれるじゃねぇかよ…!」

 憤りと苛立ちを醸し出すランサーの瞳が、玉座にいるレスタトを捉えていた。

 「…まぁ、そう言うな。せっかく久しぶりに来た客人だ…丁重にもてなそうと思っていたのだよ…」

 ものすごく低い声が聴こえる。

 玉座に座る奴は―――――青緑色の瞳をギラギラと輝かし、獣系の魔物と比べると、少しばかりか人間に近いような見た目だ。いわゆる、“亜人系”の魔物といった所か。しかし、耳は尖がっていて、座っていて私が立っているくらいの背丈なので、立ち上がればどれだけ大きい魔物かよくわかる。そして何より、声と共に発する殺気が、半端じゃなかった。

 今まで出くわした魔物と、桁が全く違う…!

 私は奴を目の前にして、一瞬その圧力(プレッシャー)に押しつぶされそうだった。

  一方、レスタトの傍らにいるミヤは、首と両腕に錠がはめられ、首と腕を鎖でつないだ状態で拘束されていたのである。

 「首にまで鎖をつけるなんて…!!」

 シフトが怒りを抑えながら、拳を強く握る。

 「ようこそ、人間の諸君!!私はレスタト。“魔神”の異名を持ち、かつては“大魔王の右腕”と称され恐れられた魔族だ…」

 奴は私達に自分の名を名乗ってきた。

 改めて教えてもらわなくても、こっちはわかっているのに…

 私は、飄々とした奴の態度に、軽い苛立ちを覚える。

 「レスタト!!!俺達は、ミヤを返してもらいに来た!!!」

 奴の圧力(プレッシャー)にも動じずに、セキが言い放つ。

 レンフェンの皇族だからとはいえないかもだけど、やはり一般人の私よりは肝が座っているな…

 その台詞を聞いたレスタトは、セキが腰に下げているミヤの刀を見下ろしてから口を開く。

 「…そういえば、はじめましてではない奴もいるようだな…」

 レスタトが呟くと、刀からガシェが現れた。

 『久しぶりだな、レスタト…』

 この台詞から察するに、この2人の魔物は顔見知りのようだ。

 やはり、もとは大魔王ダースの部下同士みたいなかんじだったからか。

 「ククク…。かつてダースの下にいたころは、多くの魔族を指揮していた貴様なのに…今は哀れな生霊か…」

 「ガシェをバカにしないで!!!」

 奴の傍らで、ミヤがものすごい形相でレスタトを睨みつけていた。

 しかし、周りが何も見えていないのか、若干向いている方向が違っていた。一瞬ミヤの方を睨みつけたレスタトは、すぐに正面にいる私達に向かって話し始める。

 「…ここまでたどり着いた褒美に、一つ話をしてやろう…。この娘の父親…ダースが持つ“大魔王”という称号は別の価値もある…という事についてだ」

 「“別の価値”…ですって…!!?」

 私や皆が驚いていた。

 なんで今、そんな話を…?

 突然し始めた話に対して、私は不思議で仕方がなかった。しかし、“大魔王”は“魔族の長”としか捉えた事がなかったので、この話に関しては少し興味津々だった。そして、不気味な笑みを浮かべながら、レスタトは話を続ける。

 「まず、この世には…こことは別の世界が多く存在するのは知っているかな…?」

 「別の世界…!?」

 「もしかして…山岳宮殿を造った連中がいた世界…って事か…?」

 セキとシフトが驚き、その側でランサーが“最果ての地”へ向かう時に通った山岳宮殿の話を持ち出した。

 「そう。あれも、異世界から来た人間共が作り上げた建造物…。あとは、“世界最大の図書館”とかもな…」

 「古代図書館も…!?」

 その場にいたミヤがボソッと呟いた。

 「そして、“大魔王”が持つもう一つの意味は“次元の狭間を管理する者”だ…」

 「“次元の狭間”…あれって、ただの伝承じゃねえのか!!?」

 初めて聞く言葉に私やセキ・シフトはわからなかったが、それを知っていたのか、ランサーだけが目を丸くして驚いていた。

 「…実在するが、管理者はどの世界にも1人しか存在しないため、知る者も少ないのだろうな…!」

 「うっ!!」

 レスタトは、ミヤの首輪から伸びている鎖を思いっきり引っ張った。

 あの子が苦悶の表情を見せる。

 「だからこそ、私はダースの地位を狙っているのだ!そして…その野望を叶えるために、この娘を利用しようと考えたのだよ…!!」

 その台詞(ことば)を聞いて、私は憤りを感じられずにいられなかった。

 すると、辺りの空気が一気に変わった感覚を覚える。

 「もう…お前と話す事はなくなったようだな…」

 セキが剣を構えながら、ボソッと呟く。

 周囲の空気が変わったのはおそらく、セキが放っている強い殺気のせいだろう。それを聴いたレスタトは言う。

 「フハハハハ!!!”私を許さない”と言いたげそうな顔だな、小僧!!そんなにこの娘を助けたいのならば…貴様ら全員でかかってくるがいい!!!」

 その台詞(ことば)を皮切りに、戦いの火蓋が切られたのである。

 

 ※

 

 「はぁぁぁぁっ!!!」

 俺の剣が奴を撃つ。

 しかし、いとも簡単に――――――しかも、素手で止められてしまう。

 「言い忘れていたが、私は強いぞ…?」

 その台詞に鳥肌が立ったかと思うと、壁に吹っ飛ばされた。

 「セキ!!考えなしに突っ込むんじゃねぇ!!…俺が援護するから、それで奴を狙え…!」

 壁際で、ランサーが助言をしてくれた。

 「よし…頼むぜ!!」

 そうあいつに告げた俺は、再び走り出す。

 目の前を見ると、奴は何やら詠唱を始めていた。

 「その呪文は…!!」

 後ろでランサーの声と同時に、あいつの呪文を唱える声が聴こえたが――――

 「遅い!!」

 詠唱を終えたレスタトが俺ではなく、ランサーの方を向く。

 「うわぁぁぁぁぁっ!!!!」

 ランサーの悲鳴が聴こえた途端、俺は立ち止まって瞬時に後ろを向いた。

 「ランサー…!!?」

 よく見ると、ランサーの首周辺に黒い円盤みたいな形の光が見えた。

 そして、あいつが苦しそうな表情をしている。

 「…その小僧にかけた術は、暗黒魔術における魔封じの術。普通の魔術と異なるのは、魔力を封じられるだけでなく、身体の自由も効かなくなるという点だな…!」

 奴がゆっくりと歩きながら語る。

 「くそが…っ!!」

 そう吐き捨てたランサーの身体が、地面に崩れ落ちた。

 魔術を封じられても、彼は槍闘士としてのスキルも持っているから本当ならまだ戦えるはずだった。しかし、動けない事から、それすらも不可能となったのか。

 ソエルが奴に向かって何発も発砲するが、全く効いていない。

 「いくらお前でも…僕の炎は封じられないだろ!!!」

 そう叫びながら、両足に炎を帯びさせた状態でシフトが奴に突っ込んでいった。

 「ほほぅ…フェニックスか…!」

 奴はシフトの蹴りを、片腕で止める。

 すると、足から発している炎がレスタトの身体に移る。

 「ぐああああっ!!」

 「その炎は、肉体だけでなく、魂も焼き尽くすんだよ…!」

 地面に降り立ったシフトが言う。

 これってもしや…召喚獣バハレンドを倒した時に使った炎…か!?

  真っ赤に燃え上がる奴を見ながら、俺は思った。

  これで奴を倒したかと思ったが―――――なんと、片手での一振りで炎をかき消してしまった。

 「フェニックスの炎か…思っていたより熱くはなかったな…」

 自分についた灰を払いながら、レスタトは言う。

 「そんな…!どうして…!?」

 シフトの表情(かお)が驚きと戸惑いでいっぱいになる。

 「残念だったな、少年。私以外の魔族なら、倒せたかもしれないが…」

 「どういう事だ!!?」

 「ククク…。それは一重に、私が悪魔(デーモン)族の者だからだよ…!」

 「悪魔(デーモン)族…。要は不死者と繋がっているから、魂の扱いに慣れている…とい

 う事だな…」

 ランサーが、麻痺した身体を動かそうとしながら呟く。

 「…ほぅ、まだ喋る余裕があったか…。ちなみに、その術は悪魔がお前にとり憑いているモノだが…まだ物足りないようだな…!」

 そう言ったレスタトは、右腕を前に突き出し、開いている右手の拳を強く握りしめる。

 「うわああああああっ!!」

 ランサーの絶叫が、部屋全体に響く。

 「ランサー!!!!!」

 ソエルが苦しむランサーを見て、泣きそうな表情をしていた。

 「止めろーっ!!」

 俺は剣を手に、奴へ斬りかかる。

 「馬鹿め!!!」

 目の前にいたレスタトは雷撃を放とうとしていた。

 ヤバい…!!!

 まともに食らうと直感した俺は、瞬時に腕だけで身構えた。雷が落ちたような音が聴こえた直後、何かが俺を覆っていたのに気がつく。

 

 「シフト…!!?」

 床に座り込んでしまった俺は、自分の上に被さっていたモノがシフトだというのに気がついた。

 「セキ…大丈夫かい…?」

 「あ…ああ…」

 気がつくと、俺の身体の周りには――――シフトの紅い羽が何枚も散らばっている。

 一言つぶやいた後、倒れこんだ彼の背中を見た時に目を見開いて驚く。

 「まさか、俺を…かばったのか…!!?」

 シフトの背中が黒く焦げている。フェニックスの片翼で、瞬時に移動した…のか…?

 「シフト…しっかりしろ…シフト…!!!」

 必死に叫んでいる内に、頭の中が真っ白になる。

 どうしてこんな事になってしまったのか――――何も考えられなくなっていた俺は、後ろでレスタトに立ち向かい、返り討ちに遭うソエルの姿すら目に入っていなかった。

 「どうやら後は、貴様だけのようだな…小僧…!!」

 背後からレスタトの低い声が聴こえる。

 すると、服の裾をわしずかみにされた俺は、一気に扉近くの壁まで吹っ飛ばされた。

 壁にぶつかった勢いと、奴の計り知れぬ力によって、壁が一部崩れる。

 右足が痛てぇ…。だが、今は…

 フィズとの一騎討ちの際、俺は軽く足を痛めていた。しかし、今は全身が痛く、剣が玉座の間の隅の方に飛んで行ってしまったのに気がつかなかったくらいだった。

 「グッ…!!!!」

 目の前まで移動していたレスタトは、そのでかい左手で俺の首を絞める。

 俺の身体が宙に浮き、絞める力はどんどん強くなっていく。

 「フハハハハ!!!勝負ありという所か…!」

 「ミヤを…返…せ…!!」

 首を絞められながらも、俺は必死に抵抗しようとする。

 「悪いが、それは無理な相談だ。…それに、私は人間が恐怖におののき、絶望する表情を見るのが大好きなのでね…!だから、あの娘の目の前で大事な“仲間”とやらのお前たちを殺すのも辞めるつもりはないのだよ」

 「てめ…ぇ…がはっ!!!」

 俺の首を絞める力が、更に強くなる。

 これまで…か…

 次第に意識が薄れていく。すると――――――――

 「やめてぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 俺の耳元に、必死で叫ぶ声がうっすら聴こえてきた。

 

 ※

 

 「やめてぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 その一言の直後、僕の意識が完全に戻った。

 背中がものすごく痛い…。

  そっか…僕、レスタトの攻撃からセキを庇って…

 どうやら、ほんの数分だけ意識を失っていたようだ。全身が痛くて起き上がれないが、最初に僕の視界に入ってきたのは…奴に首を絞められているセキと、その近くまでたどり着いていたミヤだった。

 「もう…やめて…!!!こんな…・こんな風にして、皆がやられるのなんて…見たくない…!!」

 何も見えない状態で立ち上がって歩いたせいか、彼女の身体には至る所にかすり傷や打撲の痕が見られた。

 そして、まるで赤子のように、顔を真っ赤にして涙ながらにレスタトに訴えかける。

  レスタトは一瞬ミヤの方に視線を向けるが、セキの首を絞める左手を離そうとしなかった。

 「やめるも何も…そなたがいる限り、こいつらはまた立ち向かってくるのではないかね…?」

 奴は、この台詞がどれだけミヤにとってつらい一言なのかってわかって言っている。

  人の心を弄ぶ悪魔…。僕の傷だらけの身体が動けば、こいつをぶっ飛ばせるのに…!!!

 僕は、怪我でうまく動けない自分が情けなくて仕方なかったのである。

 「くっくっく…そなたも良い顔つきになってきたな…!その恐怖と絶望に満ちた表情は、やはり母親にそっくりだな…!」

 「…っ…!!?」

 ミヤを含め、その場にいた全員が驚いた。

 『ガシェ…貴様、アクト様に何かしたのか!!!?』

 セキの剣と一緒に壁際にあったミヤの刀から、ガシェが姿を現して叫ぶ。

 レスタトはセキを地面に振り落とした後、その口を開く。

 「“女神”自体には、何もしておらんよ。手を下さなくても、死にそうな勢いだったからな…。」

 『何…!?』

 「あなたに顔を触られた時…初めてじゃないかんじがした…。という事は…まさか…!!!」

 ミヤの口調は、何かを悟ったような言い回しだった。

 「ほぅ…そなたは当時、赤子だったから覚えていないかと思ったが…。わたしに食い殺されようとしていた当人としては、どんな気持ちだったのかな…?」

 この時…能力ちからの強い魔族が、“混ざり物”の血肉を食らうという話が…本当だと言う事を改めて理解した。

 「そうやって、母様の気持ちを…弄んだのね…。この外道が…!!!」

 彼女の気が怒りに満ちているのが一瞬でわかった。そして、ミヤから黒い光がほと走る…。

 「!!?」

 眩しいと感じた僕は、数秒だけ目をつぶった。

 その後、目をゆっくり見開くと…そこにいたのは、いつものミヤではなかったのである。


いかがでしたか?

作品中で「魔力を底上げする方法」として「魔力が強いモノの血肉を食らう」という設定は、当たり前といえば当たり前かもしれませんが、これは「ハーメルンのバイオリン弾き」の影響を受けていますね!


なかなか挿絵を描いて入れる暇がありませんですが、ちょくちょく入れていきたいと思っているので、よろしくお願いします!


黒い光に包まれたミヤは、一体どうなってしまったのか!!?

次回をお楽しみに♪

また、ご意見・ご感想をお待ちしてます!!

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