表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第六章 魔法大国・ミスエファジーナに忍び寄る闇
20/66

第19話 戦いの後に残る疑惑

この回は、割と物語の中でも重要な回。

それがわかるのは、だいぶ後の回ですが・・・。

事件の首謀者、アーケード将軍が放った巨大な魔物を倒そうとする俺・ミヤ・セツナ兄さん・シフトの4人。

 しかし、この蜘蛛のような形をした魔物がとても硬く、剣で斬りかかってもなかなか斬れない。

「痛い~~~!!せめて足技で細い部分だけでもへし折れるかと思ったのに、硬すぎて全然歯が立たないよ~!!!」

 シフトが、足を痛そうに押さえながら叫ぶ。

「身体全体が相当硬い甲羅によって守られているようだな・・・ならば!!」

 セツナ兄さんが突如、剣の構えを変えた。

「その構えは・・・!!?」

「よく見ていろよ、セキ!!!」

 兄さんが剣を振り回し始める。

 すると、そこに火の粉が集まったかのように剣が光りだして行く。

「割れないなら、溶かすまでさ!…食らいな!!!」

 炎をまとった剣からの斬撃が飛ぶ。

兄の放った斬撃は魔物に直撃し、巨大な轟音が闘技場内に響き渡る。

「倒した・・・か!?」

煙がたちこめているため、よく見えない。

俺は少しずつ魔物に近づいてみると――――――直撃した部分は焦げた跡すらなかった。

「セキ、危ない!!!!」

「え・・・!?」

シフトの叫び声が聞こえたかと思うと、全身に鈍い痛みが走る。

「セキ!!!」

 セツナ兄さんの声が下から聞こえた。

「ふははははは!!愚か者め!!その魔物が持つ甲羅は、どんなに強い衝撃を受けようと破壊はできない!!」

王族の観覧席がある頭上から、アーケード将軍の声が聞こえた。

「マジかよ!!?」

 俺は魔物の腕の中で目を丸くして驚く。

「貴様らは1人ずつ、こやつの餌にしてやろう!!」

「ぐっ・・・!!」

 魔物が俺を握りしめる力を強めたのか、腹が締め付けられる…!

  餌なんて、冗談じゃない。俺はまだ、こんな所で死ぬわけにはいかないのに・・・!!

 苦しみながら俺はそう考えていた時だった。

「2人とも伏せてっ!!!!」

 突如、ミヤの叫び声が響く。

すると、大爆発したような豪音が響いた。

「おわっ!!」

魔物の腕から逃れた俺は、何とか地面に着地できた。

後ろを振り返ると、斬り落とされた魔物の腕がある。

「シフト、今よ!!」

「うん!!」

ミヤの合図の直後、シフトが勢い良く走り出し、アーケード将軍の元へ飛び上がる。

シフトの蹴りによって、奴が持っていた水晶が地面に落ちて割れた。

「ギャァァァッ!!!!」

魔物が悲鳴をあげ、バラバラに砕けてしまったのである。


「今度こそ・・・倒したな!」

俺はその目で、魔物を倒した事を確認した。

「アーケード将軍。売国行為や諸々の罪で、出る所で裁かれてもらうよ!」

シフトが敵を見下ろして話してる所に、俺とミヤとセツナ兄さんが追いつく。

「くっ…!」

「あなたを操っていた黒幕の存在も白状してもらいます。おとなしくなさい」

ミヤが、アーケード将軍に刀を向ける。

「こんな所で…こんな所で、捕まってたまるかぁ!!!!」

将軍が叫ぶと、目の前が急に明るくなり、眩しくて周りが見えなくなった。

「閃光弾かっ!!」

視界が真っ白い中、兄さんの声が聞こえる。

「逃がさない!!!!」

 ミヤがそう言い放ったかと思うと、走っていく足音が聞こえたのである。


 数分後―――――――――ようやく周りが見えるようになった俺達は、アーケード将軍を追ったミヤを探す。すると、会場の裏口付近に彼女を発見した。

「ミヤ・・・奴は?」

 後ろから俺は声を掛けたが、反応しない。

「ミヤ?」

 本人の目の前で呼び掛ける。

「ああ・・・セキ・・・」

 いつもは冷静な彼女が、何かを見たかのように呆然としていた。

「ミヤちゃん!もしかして、逃げられちゃった・・・?」

「あ・・・はい」

 しかし、茫然としていたのはほんの一時で…ミヤはいつもの状態に戻った。

「”悪人は逃げ足が速い”っていうけど、本当だよね!」

 シフトがため息をつきながら呟く。

  将軍には逃げられてしまったが、まだやり残していることがある。まずは、それをしなくては・・・。

「とりあえず、残りの魔物を捕らえたり会場をきれいにしたり等、やる事が多そうだ。・・・兄さん、城の兵士を呼んできた方がいいよな?」

「ああ」

 セツナ兄さんがうなづいた後、俺は兵士を呼びに城へ向かった。


          ※


「逃がさない!!」

アーケード将軍が閃光弾を放った時、私は逃げた彼をすぐさま追った。

セキや皆の中で唯一、目くらましが効かない私だからこそできることだった。王族関係者用の座席から下へ階段で下り、どこへ行ったか辺りを見回すと――――――敵は裏口らしき小さな出口へ向かっていた。

「待ちなさい・・・!!!」

追いついた先にはアーケード将軍がいた。

彼は暗黒魔術による移動魔法で逃げようとしている所だった。目の前に人間くらいの大きさをしたブラックホールみたいなものが見えたが――――――――――

「え・・・!!?」

その光景を目の当たりにした瞬間、私は身体が硬直した。

逃げる彼をつれて行こうとブラックホールみたいな魔法の中から顔をのぞかせていたのは――――――フィズだった。

  なぜ、フィズがあの将軍を助けているの!!!?

あまりに突然の出来事だったので、身体が思うように対応できなかった。そして、あっけにとられている私を尻目に、移動魔法陣は消えていく。

 私は「何故、人間が暗黒魔術を使用しているのか」という疑惑よりも、フィズがあの将軍の味方をしている事に戸惑いを感じた。あれだけの魔物を将軍一人で集められるものではないから、必ずパトロンでもある黒幕がいるはずだ。私にはその可能性となる人物を2人ほど知っていたが、どちらかはまだわからなかった。


 あれから会場の復旧や、国民へのフォロー等によって数時間が経過していた。

「お疲れ様です、ルーティー」

 私たちが作業している途中、依頼人でもあるトイスト王女が声をかけてくれた。

「いえいえ、トイスト王女様!この度は貴重な情報を提供して戴き、誠にありがとうございました」

 やはり、公の場なのでルーティーさんも挨拶がしっかりしている。

「あなたが・・・この間お店で会えなかったギルドの人達ね」

王女が私とセキの前に来た。

「お初にお目にかかります、トイスト王女。わたしはセキ・ハズミと申します」

「ミヤです」

私とセキは自分の名を名乗り、お辞儀をした。

「セキ…。そう、貴方が…」

「…このような場につき、失礼致します」

「構いませんよ。セツナ殿から話は聞いていますので…」

  何のことだろう・・・?

 私を含め、あの兄弟以外の人は、不思議に感じただろう。また、セキの挨拶する声がとても堂々としていたのが驚きだった。その後、王女が私の目の前に来る。

「ルーティーから聞いた通り、確かに貴女は(わたくし)にそっくりですね!髪や肌の色はもちろんのこと、顔のパーツも…」

「・・・どうかいたしましたか?トイスト王女・・・」

 一瞬黙りこんでしまったので、何となく尋ねてみた。

「…ミヤさん…と申しましたよね?失礼ですが、その右手にはめている手袋を外して戴けますか・・・?」

「え・・・?あ、はい!」

  突然、どうしたんだろう?

 と、不思議に思いながら私は右手の手袋を外した。

「失礼しますわね」

 トイスト王女が私の右手の甲を触る。

なにか、こすっているのかな・・・?

触りながら少し考えたかと思うと、すぐ離した。

「えっと・・・。今夜、皆さんを城へご招待したいと思います!今回の依頼を受けて戴いたお礼もしたいですし、お母様…女王陛下からも御礼の言葉を賜ってくださるとのことなので…」


 そうして「お城でお待ちしています」ということになって、現在(いま)に至る。女王陛下との謁見は翌日になるらしいので、今夜はミスエファジーナ城で泊まらせてもらう事になった。

「あ~!さすが、お城のベッドよね★布団がフワフワで気持ちいいわ♪」

 ベッドでゴロゴロと寝転がりながら、ソエルが言う。

「さっき風呂に入らせてもらったけど、すっげー大きな大浴場だったぜ!」

 風呂上りのランサーが牛乳を飲みながら言う。

 私も少し前にお風呂へ行ってきたので、部屋のバルコニーでのんびりと涼んでいた。

  フィズの事もあるけど…そろそろ、1人旅に戻った方がいいのかもしれない…

 そんな風に考えていた。すると、セキが隣にやってくる。

「涼んでいるかい?」

「ええ。セキはお風呂行かないの・・・?」

「んー・・・もう少ししたら行くよ!」

 その後、少しの間だけ沈黙が流れる。

「あー!今日は長い一日だったなぁ!!・・・それにしても、なかなか倒せなかった魔物に一撃を食らわせた辺り、やっぱりミヤはすごいね!」

「・・・ありがとう」

 すごく複雑な想いでそう答えた。

「今回、“DVD-ROMを再生する機械を作ってもらう”のを目的としてルーティーさんの所を訪れたけど・・・10日くらいかかって、しかもいろんな事がありすぎだったよね!」

「ええ・・・。でも、一歩ずつマカボルンの在り処に近づいている・・・よね?」

 気がつくと、少し不安そうな声を私は出していた。

「そうだね・・・。少しずつではあるけど、目標に近づきつつある。…これからも、頑張ろうぜ!!」

「ええ」

 その後、セキが皆に覗き見をされているのに気がつくまで二人で会話をし、その日の夜を過ごした。


          


 一方、とあるお城にて――――――――――

「あの魔法大国でのお遊びは結構楽しめると思っていたが…これはどういう事かね?アーケード将軍」

 誰かが逃げ帰ってきたアーケード将軍に問う。

「しかも、私が授けたあの魔物…。人間共に倒されたようだな…」

 声の主による殺気が室内に充満し、それによって怯える将軍。

「そそそそそれはその…連中の中にいた茶髪で盲目の小娘が…魔物を紙のように斬ってしまい…」

「・・・何?」

 その台詞(ことば)に反応した声の主は、数秒だけ考え込む。

「それは…その娘は、剣を使って斬ったということかね…?」

「は、はあ…そうですが…?」

 主が目を見開いて尋ねてきたので、アーケード将軍は不思議に感じた。

「…まあ、よい。報告、ご苦労だったな…」

 そう言った声の主は――――――一瞬にして将軍の首を斬り裂く。

血が飛び散る音と共に、首が失くなった肉体は、地面に肉塊と化す。

「…あの魔物を斬ることができる、盲目の娘…か」

「…どうかしましたか?レスタト様」

 近くでフィズが問いかける。

「ククク…。あのミスエファジーナを乗っ取ることはできなかったが…思わぬ収穫があったようだな…」

 そう言いながら、レスタトはほくそ笑んでいた――――――――


いかがでしたか?

だいぶ意味深な事が多いですが、後々に判明しますので、お楽しみに!

ご意見・ご感想をお待ちしてます★

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ