表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第六章 魔法大国・ミスエファジーナに忍び寄る闇
17/66

第16話 久しぶりに

小説のサブタイトルは、いつも本文を書き終えてから決めています。

今回は主人公のセキや、ヒロインのミヤ、そして両親を失ったソエルにとって「久しぶりに・・・」な雰囲気や場面のある回だと気がついて、(いいタイトル決めだったかも?)とか、考えちゃいましたね!笑

 新たに仲間となったランサーと一緒に、俺達はボクタナから首都フェンジボルーカ行きの汽車に乗っていた。

俺の住んでいたレンフェンよりも歴史が古いミスエファジーナの首都・・・どんな所かな?

俺は、期待に胸を膨らませていた。

「ねぇ、廊下に“武具大会の参加者募集中”っていう張り紙を見つけたんだけど、“武具大会”って何??」

トイレから戻ってきたシフトが俺達に向かって尋ねる。

「ああ!確か5年に1度、首都フェンジボルーカで開かれる強さを競う大会よ」

「ソエル姉さん、詳しいんだな」

シフトの問いに答えたソエルに対して、ランサーが感心する。

「私も知り合いに聞いた程度で参加したことはないんだけど、建国してからずっと行われているミスエファジーナの伝統行事よ。今回は確か・・・10日後が開催日のはず・・・」

「成程・・・汽車に乗っている客に武器職人や旅人が多いのは、そのためかな?」

俺は辺りを見回しながら言った。

「旅人も参加可能みたいだけど、開催日が今日から10日後だと、旅人制度の滞在可能期間を過ぎてしまうのでは?」

ミヤが首を傾けながら、不思議そうに呟く。

「確かに、フェンジボルーカでの通常滞在可能期間は7日間よ。でも、武具大会前では、この国独自の法律があるの!」

「独自の法律?・・・そんなものがあるんだ・・・」

シフトが「なるほどなぁ~」と言いたげな表情をしながら言う。

「えーっと・・・あ、そうそう!武具大会前は出場者とその関係者が旅人の場合、最大1ヶ月間滞在ができるの。あと、武具大会関係者は、大会が終わるまでの間は、宿泊費や食料品・雑貨・生活必需品購入時に割引がつくとかで、特典が多いのよ!」

「へぇぇ~!」

そいつはすごいなと、話を聞きながら俺は思った。

「武具大会の優勝者は女王様からお褒めの言葉と、“強き者”として勲章が授与されるの!それって戦士にとっては名誉なんでしょうね、きっと」

ガンマンであるソエルが言った。

「そういえば今思い出したんだけど…この大会は出場する連中だけでなく、そいつらに武器を提供する武具店同士の戦いでもあるらしいな!」

ランサーがスナックをかじりながら、会話を進める。

「あれ・・・?自分が今使っている武器じゃ駄目なの?」

「やっぱり、自分が愛用している物だと個人の実力差が顕著になるから、出場者は必ずフェンジボルーカにある武具屋の武器を使用しなければならないルールなの」

「へぇ・・・。なんか、話を聞いていたら。参加してみたくなってきたかもな♪」

俺は話を聞いていて、興味関心が高まる。

自分の今の実力を知ってみたいのはもちろんあるが…もしも、優勝とかしちゃったら男としても磨きがかかりそう♪

「セキ・・・。ニヤニヤしてて気持ち悪いわよ・・・」

ちゃっかり妄想していた俺の隣で、ソエルが呆れていた。


 フェンジボルーカに到着後、俺たちはソエルの知り合いが住む家に向かった。やはり首都なだけあって、人の多さが半端じゃない。前に訪れたケステル共和国の首都とは違い、賑やかでとても活気がある。また、武具大会が近いだけあって、屈強な剣士や格闘家などが大勢街中を行き交っていた。

 そして、俺たちは商店街の一角にある「アイスワン」というバーの前に到着する。今は昼間なので“準備中”の看板がドアに引っ掛けられているが、ソエルはその看板を気にせず、ましてやノックもせずに、中へと入った。

・・・開店前だから、施錠しなきゃ駄目じゃん・・・

そんな彼女を見て、俺は少し呆れていたのである。

「ルーティー!いるんでしょ~!?」

薄暗い店内を歩きながら、ソエルが声を張り上げる。

すると、奥から黒髪で短髪の女性が出てきた。

「もう・・・また施錠するの忘れちゃったわ・・・。って、あれ?あんた・・・ソエル!?」

「うん!久しぶりね、ルーティー♪」

「きゃ~!!!」

ルーティーという女の人は、ソエルと挨拶の抱擁を交わしていた。

「なんか、ソエルと似た性格してそうだよね・・・」

シフトが俺の側でボソッと呟いた。

「おう!こりゃまた麗しきお姉さま!・・・超童顔なソエル姉さんの知り合いって言うからどんな奴かと思いきや、超美人じゃないっすか!!」

ランサーがメロメロ~な表情(かお)をしながら言う。

相変わらず、女性を口説くのが好きらしい。俺は思いっきり呆れていた。

「あら、美人なんてもう!お兄さんこそかっこいいじゃない♪」

とか言いながら、ルーティーさんはランサーの肩に両腕を置いたのである。

・・・どうやら、この人もまんざらではなさそうだ・・・。アホくさ。

「ちょっと、ちょっと!駄目でしょ、ルーティー!」

そんな中、ソエルが間に入ってきた。

「なんだよ、ソエル姉さん!・・・もしかして、ジェラシー感じちゃってるぅ~?」

・・・ランサーの顔がいじめっ子みたいだ・・・

成り行きを見守りながら、呆れすぎてかける言葉がなかった。

「誰が童顔よ!!!・・・じゃなくて、彼女・・・いや、“彼”はこれでも男だって言おうとしただけ!!」

「男・・・!!!?」

俺とシフトは目を真ん丸くして叫んだ。

「もう、ソエルってば!・・・正確にはニューハーフでしょ?」

ルーティーさんがランサーの肩から両腕を離しながら、不満そうにしていた。

一方のランサーは――――――――――間違えて男を口説いた事で呆然としていたのである。自業自得という言葉が、脳裏に浮かんだ。

「あら、あなた達気がついてなかったの?」

ミヤが、俺達の側でサラッと言う。

「知っていたんかい!!!」

ちゃっかり、俺とシフトとランサーは3人揃ってハモっていた。


「じゃあ、ちゃんとした自己紹介といこうかしら。・・・あたしは。ルーティー・ケイ・コケコット。この「アイスワン」とギルドの経営をしているわ」

「俺はセキ・ハズミ。旅の剣士です!」

といった具合で、俺から順に自己紹介をし始める。

「そんで、今日のご用件は?・・・こんな時間に来るということは、ただお酒を飲みに来たわけじゃなさそうだけど・・・」

「そうなのよ!実は・・・あ、先にこのお土産渡しておくわ!」

そう言ったソエルは、紙に包んでいたココナットの花をルーティーさんに渡す。

「あら、ココナットの花じゃない!!・・・でも、ごめんなさいね。ついちょっと前にも、これと同じ花をもらったばっかりなのよね~・・・」

「えぇ~!?」

俺らは一斉に不満の声を漏らす。

この状況じゃ、受け取ってもらえないってこと!?

インナショドナル塔へ行ったのが無駄骨になるのではという心配が頭をよぎっていた。

「お土産持参ってことは・・・機械を作れって話?」

ルーティーさんのまなざしが真剣なかんじに見えた。

「えっと・・・実は、古代図書館で手に入れたこのDVD-ROMを再生できる機械を作ってほしんだ・・・」

そう言って俺は古代図書館で手に入れたDVD-ROMを彼女―――否、彼の目の前に出した。

「ふーーん・・・」

ルーティーさんがROMを見つめた後、俺の顔をジッと眺めていた。

「何か・・・?」

ROMならともかく、俺の顔を見つめている理由が解らず、きょとんとしていた。「おーい、ルーティーさーん!」

すると、店の奥の方から男性らしき声が聞こえてきた。

それはどこかで聞いたことのある声。

・・・あれ?この声って、もしや・・・

「入っていいわよぉ~!!」

声の主の事を考えていると、ルーティーさんが、その方向に向かって声を張り上げる。

すると、奥にあるという裏口からお店の方に一人の男が入ってきた。黒髪で背が高く、マントの下に剣が見え隠れしている。

「兄さん・・・?」

俺は思わず、口走る。

それに気がついた男性は、こっちの方に向いて目を丸くする。

「もしかして・・・セキか!?」

この顔にこの声・・・間違いない!!

俺はこの瞬間、相手が何者かという確信が持てたのである。

「おー、久しぶりじゃねぇかよセキっ!!!」

男性は自分の側まで駆け寄ってきて、挨拶の抱擁をしてくれた。

「こんな所で会えるなんて、ビックリだよ!!!もう兄さんとは2年近く会ってなかったもんなぁ・・・!」

再会を喜んでいる俺達の周りで、皆が呆気にとられていた。

「セキ・・・あなた、お兄さんがいたのね?」

ミヤが確かめるような口調で言う。

「ああ、ミヤ!」

つい皆のことを忘れていた俺は、少し慌ててしまう。

「えっと・・・。彼は、俺の4つ上の兄貴だ。兄弟といっても、母親は違うけどな・・・」

「セツナ・レンジだ」

俺が紹介した後、兄さんが自分の名を名乗って皆と握手した。

「成程・・・。彼があなたの弟なのね、セツナ」

その状況を見守っていたルーティーさんが、意味深な口調で兄さんに声をかける。

「そういうこと!・・・もしかして、俺、話の邪魔をしちゃったかな?」

「まぁ、それは別にいいんだけど・・・・・・あ!!!」

視線を下に落としていたルーティーさんだったが、何か思いついたようだ。

「じゃあ、こうしましょう!あんたが武具大会に出てくれるのなら、プレイヤーを作ってあげてもいいわ!」

そう言って、俺の方に指をさした。

「・・・俺!!?」

まさかの展開に、驚きを隠せない。

確かに、ちょっと前に「出てみたい」とか考えていたけど・・・ミヤじゃなく俺に言うとは・・・

「でなきゃ、このままお帰り戴くだけよ?」

その台詞(ことば)を聞いた途端、「これは流石に引き下がれないな」と直感した俺は、すぐに答えを出した。

「・・・引き受けます!」

「・・・商談成立ね」

ルーティーさんが何か企んでいるような笑みを浮かべる。

そして、続けざまに言った。

「そうと決まれば・・・。セキ君・・・だっけ?早速、参加手続きと大会で使用する武器を選びに行ってらっしゃい!!」

そう言ったかと思うと、俺とミヤを引っ張り出して、店の外に放り出したのだ。

「いててて・・・あの人、何気に怪力だな・・・」

俺は掴まれた二の腕を抑えながら、一人呟く。

そんな俺の側で、ミヤが口を開く。

「でも、結果として武具大会へ出られることになったから、良かったじゃない!」

にっこり笑いながら、彼女は言う。

なんだかその笑顔が、今までにないくらい可愛かった。

「お、おう・・・。・・・じゃあ、参加登録でもしに行くか!」

顔を少し赤らめながら、俺とミヤは街に繰り出したのである。


 俺とミヤが店を出て行った後、残ったシフト・ランサー・ソエルとセツナ兄さんに向かって、ルーティーさんが言う。

「・・・あなた達には2つ目の条件として、セツナがやっている「ある仕事」を手伝ってもらうわ」



 私はセキと武具大会参加の申し込みをするために、お城の近くにある武具大会事務局へ向かった。やはり、事務局には、大会への出場を希望する旅人が大勢いたのである。

「では、ここに氏名・性別・年齢・職業。そして、使用武器を書いてください」

事務局員の指示に従ってセキは書類を書き、その後に旅人用の身分証明書を提示していた。

「・・・そこのお嬢さんは参加致しますか?」

事務局員に参加の有無を聞かれたが、私は断った。

自分が持っている武器を使えないのが武具大会でのルールだと聞いていたので、出場なんてできやしなかった。

・・・だって、私はこの刀でないと思うように戦えないから・・・

そんな事を考えている私を尻目に、セキは手続きを進めていく。

「セキ・ハズミ様ですね。それでは、この参加登録証明書を持参して、自分が使いたい武器のあるお店にて、これを提示するようお願い致します」


参加手続きを終えた私たちは、今度は大会で使用する武器を探しに、武具屋が多くある場所へ移動した。

「剣ってお店や作っている職人によって良し悪しが分かれるから、慎重に選ばなきゃな・・・」

セキがそう言いながら、あちこちにある武具屋を見回す。

「へい、らっしゃいらっしゃい!!うちの武器は安くていいのが多いよ~!!」

といった声があちこちで聞こえる。

出場者に武器を提供するお店にとって、大会の優勝者は自分のお店の名を世界中に知らしめるチャンスになる。だから、皆が必死なのかもしれない。

「…なぁ、ミヤ。俺、今までこの剣以外のモノをほとんど使ったことがないんだ・・・。君だったら、どんな風にして使う武器を選ぶ?」

不安げな口調で、セキが私に相談してきた。

「そうね・・・。持った時の重さはもちろんのこと、見た目に無駄がなく・・・鞘がしっかりした物にするといいかもしれないわ」

私も武器選びをしたことないけれど、何となくでそう言ってみた。

「そっか、なるほど・・・。ありがとうな、ミヤ!」

セキが嬉しそうな声でそう言った。

 そして、「良さそう」と思ったのか…セキは1軒の武器屋の中に入っていった。私も彼を追って中に入ろうとすると―――――――― 1つの独特な気を感じたのである。

「このかんじは・・・」

感じたことのある気を察知した私は、武器屋とその隣の建物の間の細道に入り込む。

奥へ進んで辺りを見回したが、人一人としていなかった。

セキがいる武器屋に戻ろう・・・

そう思って振り返った瞬間、誰かにぶつかり、私は地面に転げた。

「痛たたたたた…」

「すまん・・・。大丈夫か?」

お尻を押さえていると、目の前にいた人物が手を差し伸べてくれた。

「・・・・・・もしかして・・・・・・ミヤか?」

その男性(ひと)は私に向かって言う。

この声と気・・・・・・もしや!!

「フィズ・・・フィズなのね・・・?」

すごく懐かしい気持ちになった私は、彼に抱きついた。

「すごく久しぶりっ!!もう何十年も会ってないよね!?」

「しっ!」

フィズが指を口元に当てて、私を黙らせる。

「あ・・・!ごめんなさい・・・」

その理由を悟った私は、口をつぐんだ。

彼――――――――フィズは、私にとって兄のような、幼馴染のような存在。そして、父以外で私の正体を唯一知っている人。まさか、この都市で会えるとは思いもしなかったのである。

「会うのはかなり久しぶりだな・・・。お前は今、何をしている・・・?」

すっかり大人びた話し方になっていた彼。

人間の年齢で言えば、24歳くらいに当たる。実は言うまでもなく、彼も私と同じ「混ざり物」なのだ。

「・・・仲間と一緒に旅をしていているわ!今は、その一人と一緒に、武具大会で使用する武器を探しに来てるの」

「・・・お前も大会に参加するのか?」

「ううん、私はしない。だって、今の私はこの刀でなきゃ戦えないから・・・」

とても複雑な気分で私は答えた。

フィズしか知らない事だけれど、この魔刀は私の”目”であり、これのおかげでかろうじて視界に入ってくる人や物を見分けることができるのだ。なので当然、この事実はセキ達には話していない。

「仲間が参加するということは・・・武具大会が終わるまでは、このフェンジボルーカにいるって事だな?」

「ええ・・・。そういえば、フィズは何の目的でここに来たの?」

私が尋ねると、彼は答えなかった。

一瞬、考え事をした後、剣士の青年は口を開く。

「そろそろ俺は行く・・・。フェンジボルーカにはまだいるつもりだから、また会えるかもな・・・」

「ちょっと・・・フィズ!!?」

その場を立ち去ろうとする彼に対して、私は引き止めようとした。

すると、フィズは止まってこっちに向き直る。

「早い内にこの街を・・・この国を出たほうがいい」

「え・・・!?」

なぜ、そんな事を・・・?

謎の言葉の意味を考えていたら、彼は去ってしまった。

・・・久しぶりに会ったのだから、もっとゆっくり話をしたかったのにな・・・

そう思いながらため息をついていると―――――――――――――

「おーい、ミヤー!!」

後ろからセキが現れる。

「気がついたらいなかったから、どこにいたかと思ったよ」

「ああ・・・ごめんなさい」

「いや、謝らなくていいんだけど・・・どうしたの?」

「ううん、何でもないわ」

私は何事もなかったかのように振舞う。

フィズの事は・・・今はまだ話さなくていいか

そんな事を思いながら、セキと皆がいる所まで戻った。


この物語に出てくる「旅人制度」は、私がオリジナルで考えたこの世界での仕組み。

旅人の滞在可能期間は、その国の法律によって様々ですが、普通は7日~10日間が多い。しかし、ソエルも言っていた通り、ミスエファジーナでは、武具大会前では出場者・及び関係者(仲間や担当する武器職人も含む)に”独自の法律”が適用されます☆

だから、大会に出ることになったセキ達一行は、最低でも10日はフェンジボルーカに滞在することになるのですが・・・。

ご意見・ご感想をお待ちしてます(^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ