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紅の鳳凰  作者: 皆麻 兎
第五章 記憶の断片
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第15話 ランサーの使命とシフトの決意

今回はランサーの通っていた魔法学校、グリフェニックキーランでの話。

ちなみに、グリフェニックキーランみたいな存在は、「ハリーポッター~」のグリフィンドールがモデルだったりする☆

何年も費やす旅になるかと思っていた。

あの爺さんの…いや、魔法省の命令で目標FX―――――――召喚獣フェニックスを俺、ランサーが探し始めてから半年が経った。

今、俺達は馬車に乗ってミスエファジーナ領の街・ボクタナに向かっている。


20分程前―――――

「あの…これから寄ってほしい所があるんだけど…いいか?」

「場所にも寄るけど」

ソエルという黒髪の姉ちゃんが、不機嫌そうな声音で答えた。

「そこは…グリフェニックキーラン。俺が通っていた魔法学校だ」

俺の台詞を聞いてソエル姉さんと黒髪の野郎…ではなく、セキとかいう剣士は瞳をパチクリさせていた。

「…という事は、ボクタナに行きたいって事?」

「ご名答!」

ミヤちゃんという相当可愛い剣士の女の子の台詞に、俺は返した。

彼女の鋭い洞察力もだが、それ以上に驚いたのは、彼女が持っている魔刀。船で初めて会った時、あまりの魔力の強さに動揺を隠せなかった。瞳に宿す色と瞬きがほとんどない所を見ると、盲目のようだ。

 刀の事といい…彼女は何者なんだ?

そんな疑念を持ちながら、俺は話し続ける。

「それと、お詫びも兼ねてお前らが探している賢者の石に関する文献を見せてやるよ!」

「…賢者の石?」

俺が探していた少年――――――――シフトが不思議そうな顔をしながら言った。

「ああ、そっか。“賢者の石”は、俺ら魔術師の間で呼ばれているマカボルンの別名なんだ!」

「そうなんだ…」

この銀髪の少年(ガキ)は記憶が戻ったと言っても、ほんの一部にすぎない。

だから、これからいろんな事を教える事になるのであった。


あれから、ボクタナに向かう事をこいつらが認めてくれた。

 あの爺さんに報告した後、シフトがどうしたいかによって、俺の今後の仕事が決まりそうだな…

馬車に乗りながら、ふと考えていた。

「ところで、ボクタナから魔法学校グリフェニックキーランにどうやって行くんだ・・・?」

セキが俺に問いかけてきた。

「あそこからだと、街から出ている汽車で行くのが普通なんだが・・・。今回はちょいと別ルートで学校へ入る」

「別ルート?」

「街に入ったら話す」

俺は真剣な表情でそう彼らに告げた。

というのも、俺達がこれから使う別ルートは学校の教職員や特別な客専用の行き方なので、魔術に関する3権を管理する魔法省の一部の人間しか知らない、トップシークレットだからだ。


          ※


 記憶が少し戻ったものの、大事な部分はまだ忘れたままだった。僕は何故、一度死んだのにまた実体を持ってこの世にいるのか。何故、不死鳥(フェニックス)になり得たのか。

そして…あの黒髪の女性の顔が思い出せないよ…

馬車に乗っていた時にそのような事を考えていたが、ふと不思議に思った。

そういえば、どうしてランサーは僕が人ではなく、召喚獣だと知っていたのだろう?

とりあえず、ランサーが初めて会った時とは打って変わって真剣な表情をずっとしているので、真面目な話をまたするかもしれない。


ボクタナに到着後、僕達は生活雑貨店に到着していた。

「なんで、雑貨店??」

ソエルがものすごく不思議そうな表情をしている。

「一応言っておくが、これから通るルートのことは・・・何があっても他人に話したりするなよ」

「わかった」

僕やセキ達がうなずいた。

そして、僕らは雑貨店の中に入っていく。

お店ではいろいろな生活雑貨が売られていた。ただし、割と女の子が好きそうな物が多いけど…。

「皆、こっちだ!」

ランサーが店長と話し始めたかと思うと、僕らにそう告げて案内してくれた。

案内された先は、店の2階に売り物の見本として置かれている大きな姿見の前だった。

「これを身につけてくれ」

口を動かしながら渡してくれたのが、ヘアゴムに色がついたもの。

「これって、髪を結ぶのに使ってもいいってことなの?」

「ああ・・・身体のどこかと接触してくれれば、どこでも大丈夫だぜ!」

それを聞いた僕は、髪をまとめるのに使用する事に決めた。

僕は今まであまり気にしたことはなかったが、セキやランサーと比べて自分の髪は女性のように長い。そのため、せっかくなので一部ポニーテールのようにしてみることにした。

「・・・皆、身につけたな?じゃあ、この鏡の中に入るぞ!」

「は!!?」

僕とソエルの声がほぼ一斉に放たれる。

「…成程。この輪ゴムを身につけることで、その鏡をくぐることができるということね?」

「そうそう、そうなんだよ~!さっすが、ミヤちゃん♪」

浮ついた声音で告げる彼の態度は、元のランサーに戻っていた。

っていうか、この台詞で表情を変えないミヤはやはり冷静だね…

鏡の中に入る―――――――なんて考えたこともなかったけど、きっと魔術学校だからこその行き方なんだろうと考えながら、僕達は恐る恐る鏡の中に入り込んだ。

 鏡の中は、ランサー曰く「異空間」と呼ばれる空間で、僕らが普段いる所よりいくらか時間の流れが違うらしい。そして、5分程異空間の中を歩くと、いつの間にかグリフェニックキーランの校門内に入り込んでいた。

「こっちだ」

ランサーの先導によって、僕達は歩き出す。

校舎の外や廊下では男子生徒も女子生徒も、同じような服を着て動き回っていた。

「グリフェニックキーランの制服って、結構おしゃれなのね♪」

ソエルが生徒達をチラチラ見ながら言う。

「お久しぶりです、マイストグ教頭先生!」

ランサーが一人の60歳くらいの老女に声をかけていた。

「あらあらまぁ・・・ランサー君じゃないの!!」

マイストグ先生という女性(ひと)が、とても嬉しそうな表情(かお)をして僕達に近づいてきたのである。

「相変わらず、あなたから感じる魔力は凛としていて、透き通っているわ。流石、校長先生が見込まれた生徒ね♪」

「今日はその・・・校長先生に用があるんですが・・・」

その台詞をランサーが言った後、マイストグ先生は何かボソボソと呟いたみたいだが、僕や他の3人には聴こえなかった。


 その後、マイストグ教頭先生に案内されて、僕達はグリフェニックキーランの校長メスカル先生の部屋に来た。

「メスカル校長!俺です、ランサーです!!」

扉の前でランサーがノックをし、自ら名乗った。

数秒後――――――――

「おお~、ランサーか。・・・今開けよう」

中からすごくのんびりとした声が聞こえた。

聴いたかんじから想像すると・・・この校長先生はかなり年寄りっぽいね

扉の模様と思われていた部分がネジ巻き人形のように動き出し、何かが擦れあう音が繰り返され、扉は開いた。

・・・面白い仕掛けだなぁ・・・

感心しながら中に入ると、予想通り髪が白髪で、髭が胸くらいまで生えている老人がそこに立っていた。

「長旅・・・ごくろうじゃったな、ランサー。マイストグ先生から事の概要は聞いた」

この先生、話し方はのんびりしているが、声に言霊を感じるくらい力強いものを感じる。伊達に校長先生ってわけではないようだ。

「校長・・・この大事な報告、今回だけこの3人に聞いてもらってもいいですか・・・?」

ランサーの問にメスカル校長は答える。

「今回の報告は、とても大事なもの。・・・お主の意見は、何か考えあっての事なのじゃな・・・?」

「はい・・・」

いつになく真剣な表情のランサー。

それにしても、意味深な台詞だな…

僕が彼を見つめている一方、校長先生は少しの間考えた後、重たくなった口を開く。

「・・・かまわん。それでは、報告を始めてくれ。」

「ありがとうございます!」

ランサーが校長に礼とお辞儀をした後、俺達の方に向いて話し始めた。

「先に、改めて自己紹介をさせてほしい。・・・俺の名前は、ランサー・ゼロ・ピカレスク。半年前に魔法学校グリフェニックキーランを卒業後、表向きには魔術における法律などを管理する魔法省に就職した」

「魔法省!!?」

その言葉を聞いた僕達は、驚いた。

「魔法省って、魔術師の中でも優秀な術師が多く働いているという、あの!?」

いつもは冷静なミヤが、珍しく驚いていたのである。

「・・・あれ?ミヤちゃんは、それを知ってて“凄腕の魔術師”って俺のこと言っていたんじゃないの?」

ランサーが不思議そうか表情(かお)をした。

「・・・まぁ、それはいいか、とりあえず。・・・で、続きを話そう。俺は表向きには役人だけど、本当は・・・この学校の校長であり、魔法省の幹部でもあるメスカル先生の個人的な懐刀・・・ってのが本当の職業だ」

「懐刀とは何か」と疑問に思ったが、とりあえず今は、ランサーの話を黙って聴くことにした。

「それで、俺が学校を卒業して1週間後、先生に呼び出されてある指令を受けたんだ」

「・・・指令?」

セキが口を挟む。

もう、今いい所なのに~!!

僕は歯がゆい気持ちになりながら、成り行きを見守っていた。

「ああ。それが・・・この世に存在している召喚獣・フェニックスを宿す魂を探し出してほしい・・・と、いうことだった」

「え・・・!!?」

ランサーの視線が自分に向いた途端、僕の表情が凍りついた。

「そう、俺がこの半年間探していたモノが・・・・お前だったんだシフト」

「じゃ、じゃあ・・・。僕を・・・僕をこの人に引き渡しちゃうの・・・!!?」

見た目はみすぼらしいお爺さんだけど、仮にも校長先生。

何をされるのかわからないため、僕は恐怖を感じ始める。この間、インナショドナル塔で、あんな目に遭ったばっかりなので、尚更だ。すると、メスカル校長先生が立ち上がって話し始める。

「少年・・・・シフト、といったか。儂は、そなたを捕まえてどうこうしようと思っているのではない。ランサーに頼んでそなたを探させたのは、私の見込んだ者にそなたを保護させ、その後どのようにしたいかを、お主の口から直接訊きたかったからじゃよ・・・」

「それじゃあ・・・。もしシフトが“マカボルンを探したい”と言うのなら、それも了承してくれるんですか?」

ソエルが校長に尋ねた。

「・・・もちろんじゃ」

メスカル校長はそう言ってゆっくりと首を縦に頷いた。

その表情はとても落ち着いている。ひと呼吸置いた後、続けて話し出す。

「シフトよ・・・。そなたは記憶喪失だというが・・・今後はどうしたいのじゃ?」

今度は、僕に向かって問いかけてきた。

心臓が強く脈打ってるな・・・。失われた記憶の一部は思い出したけど、まだ自分にあいている穴は多い・・・

その時、僕の脳裏に、セキとミヤがマカボルンを探している理由を話してくれた時の会話が浮かんだ。

ミヤは、「父親を探す手がかりになると考えたから」。セキは、多くを語ってはくれなかったけど、「自分と自分の大切な人を守るため」と、言っていた。そして、皆にはまだ話していないけど、あの塔で記憶が一部戻った時に僕はある記憶の断片を見ている。

それは、僕の目の前で科学者らしき人達が何かを作っている様子だ。それが何なのかわからなかったけど、出来上がった物質の色が血のように紅い石のようなものだったことだけが鮮明に覚えていたのである。あれは何だったのだろうか―――――皆が捜し求めているマカボルンも紅い魔石だと云われている。

慎重に考えて答えを決めた僕は、校長先生に向かって告げる。

「僕は…僕は、これからも皆と一緒に旅をして・・・マカボルンを見つけたいです!」

ランサーが僕の横で「やっぱりな」と言いたげな表情をしていた。

「・・・マカボルンを探すことが、そなたの記憶を取り戻す可能性があると取ってよいのじゃな?」

「はい!僕はそうだと考えています…!!」

僕は即座に答えた。

・・・マカボルンを見つけて、本当に記憶が戻るのかはわからない。・・・ただ、伝説で「なんでも願い事を叶える」と言われているのだから、可能性はゼロではないはず!

そう考える一方、僕の決意を聞けたと考えたのか、ランサーの表情が明るくなる。

「・・・じゃあ、これで俺もお前たちの正式なお仲間に加わるって事だな!」

「・・・それはどういう事?」

ランサーの台詞に対して、ミヤが切り替えしてきた。

「言葉の通りの意味さ!俺は先生の懐刀だから、この人が望むことを叶えるのが俺の仕事だ。召喚獣って事もあるけど、俺にはシフトを見守るのが義務みたいなもんだからな!」

「仲間に加わってくれるのはとても嬉しいが・・・ランサーはマカボルンを探すっていう別人の目的に付き合って大丈夫なのか?」

少し心配そうな口調で、セキがランサーに尋ねた。

「・・・いいのいいの!俺、普通の役人みたいに同じ部署にずっと縛り付けられるのとか嫌いだし!」

ランサーが得意げに言った。

「人が増える分には大歓迎♪」

ミヤはなぜか複雑そうな表情(かお)をしていたが、ソエルはこの前ランサーに食って掛かった時とは全然違った表情(かお)をしていた。


 ランサーが仲間に加わり、メスカル校長先生との面会を終えた僕達は、約束通りマカボルンの資料等が眠っている学校内の図書館を訪れていた。

「そういえば、ランサー。お前の場合、既に学校を卒業しちゃってるけど、図書館の本って借りれるのか?」

本をあさりながらセキが言う。

「ああ。校則により、この学校の卒業生も卒業してから1年間は図書館の本を自由に閲覧・貸出ができる事になっているんだ!」

「・・・でも、返却期限とかあるんじゃないの?」

「それも問題ない!例え違う国にいたとしても、この校舎宛に郵送で送れば返却できるし、貸出期間は最大で5ヶ月だからね♪」

ミヤの質問に対し、ランサーが得意げになって答えた。

「それにしても、魔族にも偉い奴っていたのね~」

とある本を見ながらソエルが呟く。

「なになに…”魔族の長であり、『漆黒の鳳凰』とも云われているダースには「右腕」・「左腕」と、呼ばれる魔族を従わせていた。彼らが魔物の大軍を率いて、人間と戦争を繰り返していた”・・・か。この「右腕」と「左腕」の魔族に関する具体的な話は・・・載っていないようだな」

セキが横から覗き込んで、資料を読み上げた。

その時、本棚越しで見えたミヤが、一瞬身体を震わせているように見えた。

それ以降、僕もあちこちの文献をあさり始めたのである。記憶を取り戻し始めたせいか、多少の古代語が自然と読めるようになっていた。すると、『古代人(ククル)について』という本を見つけて少し驚く。

自分のことでドキドキするけど・・・怖がっていては何も始まらないよね…

勇気を出して開けてみると、「レッドマカボルン族」という単語が目に止まった。

「えっと・・・”レッドマカボルン族は、賢者の石を初めて完成させた種族”・・・」

「え・・・!!?」

資料を読み上げる声を聴いた皆が、僕の元に集まってきた。

「えっと・・・”彼らは知能に優れ、瞳が皆、紅かったことからこのような名前で呼ばれていた。”・・・すげぇ!マカボルンが古代語で「賢者」という意味なのは知っていたけど・・・こんな記述、初めて見た・・・!!」

ランサーが、横でものすごく驚いていた。

「しかもこれって・・・シフトに当てはまる・・・って事にならないかしら・・・?」

ミヤが恐る恐るそれを口にする。

「確かに・・・そう考えた方が、むしろ自然なのかもな・・・」

セキが彼女の隣で、同調していた。

僕がその「レッドマカボルン族」ならば、あの映像はもしや・・・

何にせよ、自分を知る良い手がかりを見つけた事で、強い満足感を僕は得ていた。


          ※


 ランサーの用事や資料調べが終わり、やっとグリフェニックキーランを出た俺達。シフトも少しばかりか満足そうだったので、正直安心した。なんだか、それが自分のことのように嬉しかった。ランサーは、本来は企業機密な内容を俺達に包み隠さず話してくれたのである。

俺も、レンフェンにたどり着いたら、自分の正体について全て明かそう・・・

俺は腕を組みながら、そう考えていた。

「セキ・・・どうしたの?」

俺の横でミヤが心配そうな声音をしていた。

「ああ・・・大丈夫。何でもないよ」

俺は笑顔で返した。

・・・ミヤには俺のこの表情も見えていない・・・か

それはものすごく残念だが、メリットもある。というのも、最近は正面から彼女を見るとつい意識して変な顔になってしまうが、そういったおかしな表情も彼女には見られていないからだ。

あの亡失都市からずっとミヤと一緒に旅してきたけど・・・。彼女は俺の事、どう思っているのかな?

そう考えながら歩き出した。

「それじゃあ、ココナットの花を、ミスエファジーナの首都フェンジボルーカにいるあたしの知り合いの所に、持って行きますか♪」

ソエルの台詞と共に、俺達は首都へ向かい始めた。

 

今回、シフトの事で信じられない出来事がたくさん起きた。しかし、これ以上に衝撃的な出来事、そして、大規模な事件に俺達は巻き込まれようとしていたのである。



言うまでもありませんが、これまでで書かれているあまり意味なさそうな場面でも、後々重要なところだったりするように書いています。

次は、物語の中でも、かなり重要な回がある新章の最初です!

また、ご意見・ご感想もお待ちしてます♪

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