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16-B 意識外にて

「何が起こっている」


 目の前の状況の変化にライオン魔獣を従えた男はうろたえていた。

 つい先程、組織が多大な資金を費やして召喚した「無垢なる魂の贄」の男にごみ処理の命令して、男もそれを多少抵抗していたものの実行していた。贄の男はたいした魔力を持っていなかったはずだが、目の前の男の全身からは衣服を揺らし髪を逆立てるほど濃い魔力が大量に延々と放出されている。

 そして、うろたえてる間に男が動き出した。殺せと命じたゴミを自由にしてその場から離れさせ、ゆっくりとこちらに向き直る。

 先程までとは男の雰囲気が異なっている。今の男は神々しくまるで神。そして思い至った。


「はははは、そうか! 儀式は成功したいたのですね!」


 理想の世界が現実になることを確信して、笑いが込み上げてくる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 何か知らないが目の前の男が笑っている。しかしそんなことティアには関係ない。今のティアにはとにかく時間がないのだ。自分の目的のため、この体の持ち主の魂を消滅させるわけにはいかないからだ。こうしている間にもどんどん魂を取り込んでいる。


「バラバラだと時間かかりそうね。まとめて一気に消滅させた方が魔力効率がよくて取り込むのを抑えられそう」


 そういうとティアは手に水を纏うとそれを、九つの頭を蛇のような形にした。


「水蛇・ヒュドラ」


 以前トールが考えていた魔術を実現させる。魔術名を宣言すると蛇の頭は九方向へと伸びてローブのやつらとその獣魔をティアの前に放り投げて一ヶ所にまとめていく。

 ローブの奴らは家の中や木の影に隠れてやり過ごそうとするもの居たが、魂を直接感知できるティアにとって物理的な障壁など大した問題ではなかった。


 ローブの奴らは全部で十三人だった。全員が一ヶ所に揃ったことで戦力が増したと思ったのか、それぞれ魔獣をけしかけて襲いかからせてきたのだが、そんなこと気に掛けるでもなく左手を向ける。そして、「ハッ」と力をいれて魔力を放出させた。

 放出した魔力は光の奔流となり地面を削り、触れるものを消滅させながら夜空へと消えていった。

 光が流れた後には、たったひとつのものしか残っていなかった。光に呑まれた地面は削られ、ローブの奴らもその魔獣も、そして構えたティアの左腕さえも消滅していた。


「あー、魔力昇華してしまったか」


 放出する魔力に耐えられず、左腕が魔力に分解されたのだ。ティアはとりあえず止血をした。


「流石の力ですね」


 唯一消滅をしていなかった男が拍手をしながら話しかけてきた。


「あれだけの力を持っていても契約者である私を傷つけることできない。やはり我々の計画は完璧だった」


 何を勘違いしたのか、男は上機嫌だ。


「あなたが残ったのは私が私の意思で残したの。あなたには色々教えてほしいからね」

「な、何を言っているんだ! 俺はお前の契約者だぞ! お前は俺に服従しなければならいんだ。だ、だから近づくな!」


 ティアは男の言葉を無視して近づく。


「な、何をしたって無駄だぞ。俺は一切何もしゃべらない」

「別に構わないよ。時間もないことだし、あなたの魂を直接調べるから」

「や、やめろー」


 ティアは残った右手で男の頭を掴む。


「ソウルイーター」


 掴んだ右手を離すと男の体は一切の力が抜けその場に崩れ、魂だけが右手にのこった。その魂を様々の角度から見ながら魂に刻まれた経験を読み取っていく


「ふーん成る程ね。召喚術ってそういうものか…… トールに関してはこの石が、居場所を示したいたのね。回収しときましょう」


 男の魂を調べるうち様々なことがわかったが、トールが一番知りたがっていたもとの世界に帰る方法はわからなかった。


「さてと、調べ終わったけどトールならこんな魂は欲しがらないよね…… だからこのまま私が食べてしまったほうがいいよね」


 そういうとティアは魂を口にいれ、がじっと噛み砕いた。



「エメラルダ、来なさい。君ももう大丈夫よ」


 ティアは隠れていた二人に声をかけると、二人ともおずおずとやって来た。

 エメラルダはティアから放出される魔力に恐怖を感じている様子、ウルも間近でティアの魔力放出を受けて恐怖が染み付いている様子だ。それでも二人が近づいてくれるのはトールの築き上げた信頼のおかげだろう。


「大丈夫。知っての通り私はトールじゃない。けどトールは戻ってくるからそれまでこの体の面倒を見てほしい。わかった?」

「ぎぎゃ!」「ああ」


 後のことを二人に頼んだティアは横になるとゆっくり目を閉じた。

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