第一節 膝の上の少女
私、夏野陽光、二十五歳。
『夏の光』なんて書くと、熱血で正義感が強くて、健康的な小麦肌のスポーツ万能アスリートを思わせるような名前……かもしれないけれど、全然そんなことはありません。
むしろスポーツとか苦手だし、夏はクーラーの効いた部屋でゴロゴロしながらゲームをしていたいという、全くもって名は体を表していない女です。
そんな純・現代人の私は今──
「何をボーっとしておる。早ようせんか」
幼稚園児くらいの、小さな女の子を膝枕していました。
でもこの女の子、喋り方に何だかすごく貫禄があります。それに、背中には厳つい翼が生えていて、お尻には立派な尻尾も生えていて……。
そして、私の手元でぴこぴこと動いている耳は先っぽがとんがっているのです。
「この黄金竜たる儂の玉体に触れるのじゃ、変な真似をしたら即座に喉元を掻き切ってくれるぞ」
ドラゴン。
この可愛らしい女の子はドラゴンだと言うのです。そしてなんか、もの凄く物騒な脅しをされています。
これから始まるのは──
「早ようやってみろ、お主の『耳かき』とやらを──」
文字通り私の生死をかけた、命がけの『耳かき』……!
この子を耳かきで満足させなければ、私は殺されてしまうかもしれないのです……!
……一体どうしてこんなことに〜!?