表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

戦闘狂ドグマVS橙の鬼神






16時30分。


「ゲームスタート5分前となりました。ゲームに参加いただける方はフィールドインをお願いします」


スタッフからのアナウンスが流れる。


「なお次のゲームが本日の最終ゲームとなります」






ここ、サバイバルゲームフィールド「ラグナロク」名物、その日最終最後を飾るゲーム、無限復活戦。


何度ヒットされようが、復活地点まで戻れば再びゲームに参加できるというルール。


一見遊びに寄せたお遊びルールに見えがちだが、それは大きな間違いである。






セイフティを出て本館と呼ばれる超巨大建築物の階段を下りてゆく。


地表まで下りきったらそこはもう戦闘フィールドだ。


見慣れたはずなのに慣れることのないバリケードや様々な障害物が並ぶ景色。


傾いた太陽が深い暗がりと不気味な明るさを際立たせ、否が応にも今日最後の戦いが始まることを意識させる。


俺はゴーグルを確認し銃にマガジンを差し込む。


足は赤チームのスタート地点に向きつつ、意識を体の調子のチェックにあてていく。


ここまでのゲームでそれなりに飛ばしてきたためか、全身からは多少の疲れが感じられる。


しかし、問題があるレベルではない。


今日は天気も気持ち良く比較的気温が高かったこともあり、この時間にもなればプレイヤー全員がバテ気味だと言っていい。


相対的に見て今の俺はかなり体力を残している状態だと思う。


「おい!ドグマ!」


「?」


俺を呼ぶ声に振り向けば、オレンジの迷彩という正気を疑わざるを得ない服装に身を包んだ二人の男が俺を見ていた。


その腕には黄色のマーカーが巻かれており俺の所属する赤チームと今日一日戦いを繰り広げてきた黄チーム所属を示している。


長身細身、野性的な男と優しい顔をした黒髪セミロングのイケメンの二人組だ。


野性的な方、今俺に声をかけてきた男が言葉を続けた。


「この最終戦、今日の決着をつけようじゃないか!」


「…?」


「はっ、細かい事は言いっこなし!どちらがやられてどちらがやるか!」


「…」


「お前がおれにBB弾を届かせられるのか、それとも先におれのBB弾がお前を撃ち抜くのか!それ以上の事はありえねえ存在しねえ、お互いのサバゲーマーとしての矜持をかけた勝負よ!」


この男は橙の鬼神。


全身をオレンジ色基調、酔狂な恰好をキメ過ぎたサバゲプレイヤーだ。


サバゲに必要な各装備品もオレンジかそれに近い色で統一している一見色物キャラだが。


しかしその実力は折り紙つき。


このフィールドでも一目置かれる男だ。


「待ってるぜドグマ!オレを失望させるなよ!」


「ばっおまえ何喧嘩売ってんの!あの人本当にこっちまでマジ来るから!ガチで来るから!」


もう一人の男、黒髪のイケメンが言う。


この男の名は龍宮。


どこからどう見てもイケメンだ。


実力もあり、サバゲではある条件を満たした時恐るべき敵となる一人だが、口を開けば残念イケメンになる。


女装コスプレがサマになるほどの二枚目ハンサムイケメンなのだが残念イケメンなのだ。


「ぅおおおおぉぉぉマガジンチェンジ!マガジンチェンジ!マ」


「あそうそうドグマ」


橙の鬼神が何かに興奮したのであろう唐突にマガジンチェンジの練習を始めた龍宮をスルーして繋げてきた。


「BB弾足りてっか?何なら余分あるから」


こいつは。


俺は気持ちだけを受け取り謝意を伝え背を向ける。


俺たちは別れ、チームのスタート地点に向かう。





赤チーム側スタート地点。


ラグナロクでは通称「坂下」と呼ばれるポイントだ。


そこに集合したのは本日の赤チーム11人。


名前も知らない間柄だが、それでも今日一日を共に戦った仲間だ。


程よい緊張に包まれつつも、軽い雑談と共にスタートの合図を全員が待っていた。


俺はかすかに見える黄チームのスタート地点に意識を向けていた。


黄チームのスタート地点は通称「ホテルモスクワ」だ。


坂下とホテルモスクワは互いがなんとか視認できる位置関係で、ゲーム開始時のスタートダッシュで戦場のどの方向に何人が向かったかを伺うことが可能となっている。


しかしその情報のために立ち止まっていたら決定的に出遅れて有利な位置をみすみす相手に渡すことになりかねず、それはそれでなかなかのジレンマである。


やがて時間が来て、スタッフが拡声器でカウントを始める。


スタート。


俺達は全力でダッシュを開始。


俺は走りながら初弾をチャンバーに送り銃口を橙の鬼神がいるであろう方向に向ける。


そのまま中央通路を突き進む。


このルートは敵が配置に着いて狙ってくればひとたまりも無いが、もっとも高速で敵陣に迫ることが出来る。


流れ次第では一瞬でゲームを決めるほど強いポイントを抑えることが出来るのだが。


今回は向こうに橙の鬼神と龍宮がいるので確実に無理だがな。


遠く敵がこちらに向かって走り寄って来る姿が見える。


敵チームは気持ち右寄りに戦力を傾けているようだ。


右側の戦場は小屋が連続して建っているようなシチュエーションとなっている。


一度取られたら押し返すのがなかなか困難な戦場だ。


不可能ではないが、時間が取られ無駄に走らされスタミナを奪われる。


こちらは右に3人走っている。


ちょいとマズいなと思いつつ、俺は走る方向を右に向ける。


複数の銃撃音が聞こえてくる。


中央、左翼で敵味方のヒットコールが響く。


各所で激突が始まったらしい。


見れば見方も敵も全速力で復活地点に戻って行っている。


少しでも早く戻ってきて、戦線復帰しなければマズいと判断したのだろう。


右翼の小屋の一つに駆け込んだ瞬間、俺を追うようにBB弾が周囲の壁を叩き始めた。


まずいじゃないか。


完璧な位置バレ状態かよ。


射撃してきた方向を読んで、次に移動する場所を見繕う。


俺は銃のストックを肩に付け、右翼戦線に参加する。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ