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進む会議

 リーシャの声で開幕した会議は、冒頭はまるで作業のような報告が続いた。前回の会議から統治は恙無く行われ大きな問題は発生していなかったらしい。

 だからこそ本題に入った瞬間眷属全員の表情が険しくなる変化は顕著に感じられた。それまで静観し、座しているだけだったリーシャが腰を上げ、眉間に皺を寄せた。


「突然の『ノヴァ』の侵略。これはかの生物の存在を確認してから現在に至るまでおよそ二千年間、発生することがなかった異常事態です。そも、大気圏から上空二キロメートルの層には、侵略者を阻む障壁を張っているはず。空の統治はあなたに一任していたはずですよ、シュウナ」


 ツイと視線を向けられたリーシャによく似た少女、『忌憚』の眷属シュウナは気に入らなそうに鼻を鳴らした。眦を吊り上げて堂々と言葉を返した。


「さっきも言ったじゃろ。わしの統治地域に何ら異常はない。それともバリアが破られたことに気付かぬ無能だとでも?障壁が無傷なのは張った本人がよく知っておるじゃろうが」


「……そうですね。交戦中に『ノヴァ』を『アース』に近づけた覚えもありません。ですがそれならば尚更奇妙です」


 顎に手を添えるリーシャ。

 会議前の会話と眷属との会話の内容から彼女が主神だということは一目瞭然だった。親切で優しい少女という認識から一気に覆されたラピスとアキラに、証人としての役割を果たす余裕は微塵もなかった。付け焼き刃の知識では、世界のトップたちの話に混ざれないのも無理はなかった。

 心ここに在らずの二人を気遣いながらアズリカが発言する。


「空に異常はなく、『ノヴァ』の取りこぼしもない。だとしたら、アイツらはどうやってこの星に入り込んだ?」


「或いは……最初から入り込まれていた」


 主神とシュウナの問答を纏めるように疑問を提示したアズリカに続いて、憶測を挟んだのは眷属の中で外見の年齢が最も上に見える赤髪の女性だった。なぜこうも主神に似ている者が多いのか、という小さな疑問はすぐに吹き飛ばされることになる。


「外から来たのでは無く、『アース』で自然発生した可能性があるわ」


 かの眷属の名前はレイラ。『克己』を司る眷属だ。

 シュウナ以上にリーシャに似た眷属は、円卓の中心に大きな電子パネルを出現させた。映し出されていたのは大地にできた大きなクレーター。だが肝心の窪みを穿ったはずの物体がどこにも見当たらない。


「時々、あなたが宇宙で戦っている最中に空から小さな石が落ちてくることがあるわ。特に珍しいことでもないから報告しなかったけれど、コレとなにか関係があるかしら?」


 画像の一点が大きくアップされる。限界まで大きくしてようやく、ラピスの目にもソレが見えた。


「これは……卵、みたいに見えるがどうやら端末みたいだな」


 思わず口から零れた感想に、一斉に視線が集まる。急に注目されて心臓が嫌なリズムを刻んだ。


 冷や汗を垂らすラピスに続きを求めるようにレイラは薄らと笑みを浮かべる。それもまたリーシャによく似た顔だった。


「えっと、あくまでパッと見の印象から出た思いつきだからあまり参考にしないでもらいたいんだが……」


 そう前置きしてから一つ深呼吸を挟む。


「月がシステムを管理しているなら、主神の防御壁を突破するより、『ノヴァ』を直接発生させる物をどさくさに紛れて侵入させる方が手っ取り早いと思うんだ」


「だが、結局は月から投げ込まれる物だろ?外部からの侵入を防ぐ以上、発生装置も弾かれるんじゃないのか?」


 ラピスの推測に疑問を投げかけたのはアキラだった。ラピスが喋りだしたことで緊張が解れたのか、忌憚なく会議に参戦する。

 疑問の提示者がアキラだったことで、ラピスの怖気も影を潜めた。


「その障壁も宇宙から飛来する全てを弾いているわけじゃないんだろ?……じゃないんですよね、主神様」


「砕けた口調のままで結構ですよ。ラピスが言った通り、私のバリアは全ての侵入を防ぐわけではありません。太陽の光熱や星の輝き、放射能など『アース』に害をなさない物、または最初から『アース』に存在したものは難なく入ることができます。そうでなければ作物が育ちませんし、気象にも影響が出てしまいますから」


「であれば話は単純。この画像に写っているのは、『ノヴァ』の発生装置でありながら、最初から星に存在したものである可能性が高い」


 鳥の卵のような形を模倣した、薄く発光する謎の物体。

 ラピスの言葉を聞いてソレを観察していた眷属たちの内、『忍耐』を司るキルスが新たな疑問を浮かべた。


「ではラピスさん、あなたはそれが何だと考えていますか?」


 真っ当な言葉なのに顔のせいで全てが胡散臭くなる眷属に、少し考えた後ラピスは答えを述べる。


「俺は『ダンジョン』の中の生物の遺伝子情報に限りなく存在を近づけたことで、侵入に成功したと考えている」


 束の間の静寂。てっきり笑われるかと思っていた推論を、至極真面目な顔で彼らは脳内で反芻していた。

 ラピスの緊張が再び爆上がりし上限を超える前に手を挙げてくれたのは、我らが眷属アズリカだった。


「なら、心当たりがある」


「アズリカ、続けて」


「リー……主神が大陸を統一した際に、ダンジョンから新しい知能体がいくつか誕生しただろ?元はあの巣窟の怪物だった訳だが、今では普通に共存できている」


 え、そうなの?とラピスはアキラに視線を向ける。彼も初耳だったようで首をブンブンと勢いよく振っていた。


「俺は"ドライアド"が変異した種族である『エルフ』が怪しいと思っている。『エルフ』全員を指しているわけじゃない。あくまでもその中の一個体だ」


「その個体の名前、あなたは知っているのですね?」


 小さく頷くアズリカ。若草の瞳は確信に満ちていて、場の緊張を一気に引き上げた。


「ソイツの名は」


 次に続いた名前はラピスたちも知っている人物を示していた。


「『セルタ』の『司祭登録所』で受付嬢をしている"ライザ"というエルフだ」

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