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8

世界を渡り、レインの前に現れた悠希は順をおって説明をし、それを聞いたレインの許可のもと即位式が終わるまでの間、城を滞在することになった。


「…あの。俺、こんな豪華な部屋じゃなくてもいいんですけど」


滞在場所として悠希が案内されたのは一人でいるには広く豪華な作りの部屋で、悠希はシンプルだが素材がよくいかにも高価そうな椅子に座り、困惑していた。


「…姫様のご友人という設定でこの城の滞在が許されておりますので、格式のある部屋にいてもらいませんと示しがつきません」


そんな悠希に声をかけたのはこの部屋に案内されたと同時に悠希のお世話係としてつけられたシャロンという侍女でシャロンはメイド服を身に纏い、短めの銀髪で目は閉じていた。


「なるほど…即位式が終わるまでいるってレインさんには言ったんですけど、どのくらいで終わるかわかりますか?」


それなら仕方がないと悠希はシャロンへと目を向ける。


「……姫様が王配…伴侶を見つけ次第すぐですね、いつでも出来るようにと式の準備は整われておりますので」


シャロンは答えながら悠希の前にあるテーブルの上にココアが入ったティーカップを置いた。


「伴侶を見つけ次第…」


悠希はココアの匂いに惹かれながらも小さく呟いた。


「……始祖のことはご存知ですか?」


シャロンはカートの上にあったショートケーキの乗った皿をティーカップの隣に置いた。


「知ってます」


悠希はショートケーキやな目を奪われながら答えた。


「…始祖がいる種族は王を…王族を名乗りません。何故なら始祖が種の頂点で王のようなものだからです。始祖がいる種族で王族がいる場合、それは私利私欲の為に古代種などの情報を隠匿し、自分の都合のいいように歴史を改竄している場合がございます」


シャロンはどうぞお召し上がりくださいという意味を込めて悠希へとフォークを差し出した。


「都合のいいように…」


悠希はフォークを受けとり、小さな声で呟いた。


「…ですがこの国は違います。前提として神隠しという例外はありますが、この世界には吸血鬼と人間しかおりません。そしてきちんと歴史を知り、本当の王が始祖であることをわかっております。ただ人間の国に王がいるからとこの国でも成り行きで王をたてているのです。王はこの国の象徴であり人柱…贄なのです」


シャロンはそんな悠希に向かって話を続ける。


「贄…?」


悠希はその言葉を聞き、眉間に皺を寄せた。


「はい。吸血鬼は血を欲する種族です。故に力を持たない人間は怯えます。襲われて血を奪われてしまうのではないかと…そこでたてた象徴に教育を施します。人間に危害を加えることはないと周囲にもわかる教育を…そしてそれを支えるのが王配…伴侶です。以前までは支えはなく一人だったとのことですが、やはり一人では負担が多すぎるということとなりそれなら王になる方には恋愛結婚をさせ、その相手に支えてもらおうという運びとなりました」


シャロンは小さく頷いたあと、話を続けた。


「あ、だから伴侶を決め次第、即位式なんですね」


悠希は納得したような顔をした。


「はい。そうです」


シャロンは肯定するように再び小さく頷いたあと答え、それを聞いた悠希はなるほどと思うと同時に難しそうな表情をする。


「……長々とお話をしてしまい、申し訳ございません。どうぞココアが冷めないうちにお召し上がりください」


そんな悠希の顔を見てシャロンはケーキとココアを進めた。


「はい!いただきます!」


悠希は声をかけられたことでケーキの存在を思い出し、フォークを使って幸せそうに食べ始めた。


「……おかわりは沢山ありますのでいつでもお申し付けください」


そんな悠希を見てシャロンは微笑みながらカートを見せた。カートの上には様々な種類のケーキが乗った皿が置いてあり、それを見た悠希は先程の会話のことなど忘れて目を輝かせ、頬張りながら肯定するように頷いたのだった。

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