狂人の行方②
数日かけ、ようやく
あいつの手がかりを見つけた。
猫の獣人なんて珍しい体、
聞き込みすれば、
すぐに見つかると思ってたのに
情報屋にそこそこの金額払った方が
よっぽど早かったのではと思う。
あちこちで紛争が起こってばかりで、
情報は錯綜している。
外れたら仕方ないが、
これ以上正確なものなんて
手に入らなさそうだから、
とりあえず、行ってみようか。
カメラはあるが、銃と思われ、狙われたら
この世の終わりだから、
多分、ほぼ使うことがないな。
最前線に向かっても
できることはないだろうと、
近くの村へ泊まることにした。
「お前か、俺をつけてるのは。」
見たことある顔に、首根っこ掴まれ
雑魚寝の私は引っ張り出された。
壁に押し付けられる。
「俺の跡をつけるということは、
死んでも構わないということだな。」
本気で殺そうとする目だ。
もう、片方の手にはナイフが握られている。
本当に死ぬかもしれないな。
だって、この状況で
獲物を狩るかのような目を向けながら
口元笑ってんだぜ。イカれてるよな。
だんだん、私も笑えてきた。
冷や汗が出るのも、
心臓が速く脈打つのを感じることが、
不安や恐怖から、高揚感に変わってきた。
きっとあの時、
あいつと同じような
顔になっていたのだろう。
つい、素早く二回頷く。
「そうか。」
と言ってナイフが迫る。
すっ、と私の耳元を通り過ぎた。
壁に刺さったナイフは、
根元まで達していた。
「気に入った。ついてこい。」
なんだろう、この胸の高鳴りは
今まで気の狂うような
何かを求めていたような。
それが今にも手に入りそうだと。
あいつが手放したナイフは、
ナイフは鍔から下が地面に落ちていた。
もう、私も普通でないと確信した。
イカれたモノを求めた狂人だ。
ああ、こいつも同類なんだな。
そして、こいつは手に入れている。
それが羨ましくてたまらない。
はやく、はやく、私も手に入れたい。
そのためには死んでも構わないと。




