狂人の行方①
彼は、放浪の旅を続けていた。
いつでも戦場に赴き、
立ち開かる者を薙ぎ払って来た。
今日も、獲物を狩り取ったかのように
尖った歯を見せて笑う。
獲物に使い捨ての剣を突き立てて。
そんな彼に付き纏う記者は
私くらいの物好きだけであろう。
やはり、私も彼と同じように
普通ではないのだろう。
そんな彼に出会ったのも
つい先日のことだ。
ただの記者同士の馴れ合いだった。
酒場でガブガブ飲みながら、
誰かがお互いが手に入れた情報が
どれだけのものかを試そうなどと
言い出し、
今度の戦争はどこが勝つだとか
誰が実権を握るのだとか、
そんな下らない賭けをしていた。
ふと、カウンターを見ると、
一人の男を数人で囲んでいる。
別段珍しくもない。
こんな廃れた街で起こる揉め事など
数える方が無駄だ。
だが、その男の特徴、
青髪、猫耳、顔の傷。
どうも何かで見た気がして、
何となく眺めていた。
騒がしい店内だ。
カウンターにいる奴の声など通らん。
まあ、どう見ても恨みだろう。
で、そいつは表に引っ張り出され、
数の問題だ。
一方的なリンチになると思っていた。
ところが、あいつは
正面の奴が剣を振りかざした途端、
それを背中を撓らせ躱したかと思うと
すでに懐に入っていて、
どこで拾ったか分からないナイフで
喉元を掻っ捌いて。
いや、あのナイフ、
店のものじゃないか。
いつの間に盗ってたんだよ。
その後は、後ろから
勢いつけて殴りかかる奴の足元を
払い退け、倒れたところで
目ん玉目掛けて、串刺しに。
そして、最終的には銃やら魔法やら、
飛び道具使う奴らに対しては、
足元に転がる死体を盾に
突っ込んで行って仕留めた
というわけですよ。
いや、見事見事な戦いぶり。
それと同時に、あいつの使った武器が
全て粉々になっているのを見て
私は確信した。
あいつは、
全てを使い捨てると噂の男だ。
だが、記者の私としたことが
見失ってしまった。
とんだ失態だ。




