解放
「あ、ねぇ。ちょっと待って。それが転入とどう関係があるの?」
危ない。忘れてた。
「あー。まぁ、後々思い出すかもだけど…ほら、ゼノは19歳になったら学校に入って魔法を学ばなきゃいけないんだよ。こっちで言ういわゆるまぁ…中学校とか高校みたいな。りっちゃん今年で19歳でしょ?だから。」
雪月が教えてくれた。
あ、あー。そゆことね。
だから、転入と。なるほど。
転入つか入学じゃん。
「んじゃ、説明も終わった事だし、やるか。」
そう言って兄達は立ち上がった。
「やるって何を??」
その姿を見て頭に?を浮かべる私。
「何って。決まってんだろ。魔法の練習。」
当然だろと言わんばかりの美月。
……はい?
え、あのさ、さっき説明されたばっかのド素人なんだけど。
分かる?素人じゃなくて、ド素人よ??
しかもまだ封印解けてないんでしょ?
え??????
「…魔法を習うために学校通うんじゃないの?」
「普通はな。」
さーて、やるかー。と言って美月は庭に出てしまった。
……は?
普通はな、ってなに?
普通で良くない?
え?
ドユコト?
「りっちゃん、りっちゃん。」
?マークが浮かびまくってたのがわかったのか雪月が来てくれた。
「何?」
「りっちゃん、まだ封印解けてないでしょ。今のままだと多分魔法使えないから俺が解除するね。
と言っても全部は無理だけど、封印が弱まってる所なら出来るから。」
…え?説明しに来てくれたんじゃないの?
というか、そんな力技で封印って解いていいの?
だめだよね?
え、いいの?
自然に解ける方が良くない…?
だって受けいられるようになったら解けるんでしょ…?
え……?
「…え、と、お願いします…?」
困惑した頭のまま雪月に返事をしてしまった。
「うん。」
そして雪月は私の頭の上に手をかざした。
『強制解除』
すると、私の中に何かが流れ込んで来た。
「…っ」
何これ。
何十本の映画を同時に見てるみたい。
しかもめまぐるしく何かが、記憶が、忘れ去られた記憶のかけらが頭に浮かんでは消えてを繰り返す。
「う”…ぁ…」
情報という名の暴力が頭の中を駆け巡る。
「りっちゃん!凛月!?」
雪月の腕に支えられて、私は気を失った。
◇
「……ん?」
気がついたら天井が見えた。
多少頭痛がするがさっきのと比べたらだいぶ良くなった。
頭を押さえながら起き上がるとそこには雪月と美月が心配そうな顔をして座っていた
「…ごめん、弱い部分だけを解除するつもりが全部外れた。つまり、ほとんど外れてたってことなんだけど…。自然に解除されるのが一番なんだけど…本当にごめん。」
雪月がガバッと頭を下げて言った。
あ、やっぱり力技はだめだよね。
うん。知ってた。
「大丈夫。ありがとう。」
そう言って雪月から少し、離れる。
雪月のおかげで全部思い出した。
魔素の扱い方も感じ方も全部。
そして、周囲の魔素を感じるために目を閉じた。
「……」
自分の周りに魔素が集まってくるのが分かる。
そして、魔素が自分の中に吸収されていくのを感じる。
何年も魔素を吸収していなかったから、自分が魔素で潤うのを感じていく。
乾いた大地に水が沁むこむように私の体は魔素で満たされていった。