大丈夫でした。
学院から配られたアーカイブを起動して、地図を表示させる。
こういうのもらうと、ゼノは便利だなーって思うよね。
オスカの腕時計型の端末はその小さい画面でいろいろ見なきゃだったけど、学院から配られたやつは画面が目の前に出るから見やすいのなんの。
で、見晴らしのいいところはーっと。
今私がいるのが、森の入り口。そこから南に進むと草原に出るみたい。
よし、最初はそこ目指すか。
んじゃ、しゅっぱーつ。
と進もうとした瞬間、魔素が揺れ動く気配がした。
嫌な気配がして、少し左にずれる。
と、さっきまでいた場所に水の矢が3本刺さっていた。
…やばいな、これは。
森の入り口とはいえ、遠距離魔法が得意な奴なら、ここの地の利は向こうにある。
なんせ、隠れ場所がいっぱいだ。
身体強化をして走り出す。
ここで小さい時のお遊びが役に立つとは思わなかった。
今思えば、あれは紛れもなく授業だったな。父さんの。
私が走る速度を上げたことにより、動揺したのか、あちこちに撃ちまくってくる。
あの矢はおそらく、水の創生魔法だろう。
…こんにゃろう。
引き摺り出してやる。
もうすく草原。
草原まで行けばこっちのもんよ!
速度を緩めて、ザッと後ろを振り返る。
「…チッ」
案の定、ヒートアップしたせいで自分が草原に誘き出されたことに、今気がついたみたいだ。
森の中に戻ろうとする襲撃者。
…逃がさないよ。
『六花』
身体強化をそのままに、襲撃者の前に回り込む。
そして、師匠直伝の魔法を叩き込んだ。
「…クソッ」
「ありがたく、名札もらうわ。」
どれどれ、名前は、暁 将吾。うわお、金じゃん!
名札を取られた生徒は、自動的に空間から放り出されるらしい。
ジジジッと暁くんは消えていった。
師匠、兄達、どうにかなったよ。
なんなら、余裕だったよ。
大丈夫は信じてよかったんだね…。
◇
「なんだあれ…」
中継を見ていたある一人の生徒は、とあるエリアに映し出されていた生徒に釘付けになっていた。
彼女が暁 将吾の獲物になった瞬間、終わったな、と思った。
彼は日本でも有名な実力者で、大手ギルドの一つである、「九尾の炎」の一員だ。
水の創生魔法の使い手で、今年入学してきた生徒の中では頭ひとつ飛び抜けてる実力だろう。
その暁がやられた。
あの子は何だ?
暁の奇襲に気づいた時から違和感は感じていた。
あの暁の奇襲を入学ほやほやの新入生が避けた。異常としか言いようがない。
草原まで走って行ったのは、分かる。いい判断だと思う。
だが、速度が尋常じゃない。なんだあの速さは。
身体強化しようにも程があるだろ。
しかも、その後だ。
あの子が使った魔法はなんだ?
前に回り込んだ後、何か打ち込んだように見えたが…
変身魔法か?
いやそれにしても、外見に変化がない。
なんなんだ、あの子は…
とんでもない化け物が入学してきたかもしれないぞ…