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*** 89 新型魔道具 *** 

 


「というわけで妖精族の諸君。

 この塩を抜き取ったあとの水から、H2Oを分離して溜める魔道具を作ってもらいたいんだ。

 水はほとんどH2Oで出来てるから、このタンクにH2Oがいっぱいになったら自動的に止まるようにもして貰いたい」


「畏まりました。

 それでは、こちらの入れ物に水を入れると、こちらの入れ物にH2Oが溜まるようにすればよろしいんですね?」


「出来るかい?」


「もう既に『塩抽出の魔道具』を作っていますので簡単です」


「すぐに出来ると思います」


「そうか、ありがとう。

 褒美に何か欲しいものはあるかい?」


「い、いえ、わたしたちもう十分に食べ物も頂いてますし……」


「それにお洋服まで作って頂きましたし……」


(お洋服って言ってもさ、なんかすっげぇミニスカートと胸元が大きく空いたフリフリのブラウスなんだよな……

 どうやら可愛ければそれでよくって、首元がきつかったり動きにくい服はイヤがったそうだからなんだけど……


 あー、あの子完全におっぱいぽろりになってる……

 くっ…… 前みたいな完全な裸より却ってエロいぞ……

 また『(理性を)試される大地』になれって言うんか……)



「で、でもさ、それでもなんか欲しい物ってないのか?

 例えば甘いものとか」


「あ、あの……」


「遠慮しないで言ってごらん」


「あ、あの、『しゅーくりーむ』というものをもういちど食べてみたいと……」


「はは、わかった。シュークリームだね。

 今度地球に帰ったら買って来るよ」


「「「「 ありがとうございます♪ 」」」」





 それにしても『抽出』って便利だわ。

 ん? これってひょっとして金属資源とかも抽出出来るのかな……

 いくらアルスの地殻に金属資源が少ないって言っても、ゼロじゃないだろうし。

 あー、でも抽出の効率を上げるには岩を細かく砕かなきゃなんないよな。

 それも大変そうだわ。


 あ、確か海水ってすっごく微量だけど金なんかの原子が含まれてたよな……

 ひょっとして、海流のあるところに『金抽出の魔道具』とか置いといたら、魔道具の中に勝手に金属が溜まって行かないだろうか……

 でも、あんなクロノサウルスとか大イカとか大タコとかいるから、魔道具が壊されちゃうかな……



「なあシスくん」


(はいダイチさま)


「南の海ってダンジョン化されてたよな」


(はい、ダイチさまのご指示で、海岸から半径5キロの領域が半円形にダンジョン化されています)


「その中に、海水の流れってあるか?」


(ええ、海岸から200メートルほど離れると、西から東に向かってやや暖かい海水が流れていますね)


「その海流の速度は?」


(おおよそ時速3キロほどです)


「日本海流の半分ぐらいか……

 まあ普通の海流だな。

 なあ、そのダンジョンの範囲内に大型の海の魔獣が入って来られないように出来るか?」


(3つの方法が考えられます。

 ひとつ目はわたくしが常時監視していて、大型魔獣が入って来た時には別の場所に転移させてしまうことですね。)


「いくらなんでもそれじゃあシスくんが大変だろう」


(それでは大型の結界の魔道具をいくつか置いて、魔獣除けにするとか)


「うーん、それでもいいけど、それ魔石はどれぐらいいるかな」


(大型の魔石6個で1週間は保つでしょう)


「それも魔石の交換が大変だよ。

 それに、それじゃあ小さな魚も入って来られないから、漁も出来なくなっちゃうし」


(漁場は別に設けたらいかがですか?)


「それでも魔石の問題は残るからな」


(それでは海中に土魔法で大きな壁を作るのは如何でしょうか)


「そうか、壁に直径50センチぐらいの穴をたくさん開けておけば、海流も流れるし普通の魚は入って来られるか。

 でも作るの大変じゃないか?」


(作るのはダンジョン機能で作りますから)


「それじゃあ試しにやってみよう」


(壁は水面からどのぐらいの高さまでにいたしますか?)


「そうだな、満潮時の海面から10メートルにしよう」


(それでは大ダコや大イカが壁を越えて来たりしませんでしょうか)


「あいつらがあれだけ大型化したのは海水中で浮力が働くからなんだ。

 鰭で陸上を移動出来るクロノサウルスも垂直の壁を昇るのは無理だろう。

 でも念のため、壁にはオーバーハングをつけて、上部にも尖った槍のようなものをたくさん設置しておいてくれ」


(畏まりました)



 大地は妖精族の村に転移した。


「族長、たびたび済まないな」


「とんでもございません。

 またなにかご用命を頂戴出来るのでしょうか」


「出来るかどうか教えて貰いたい魔道具があるんだ。

 たとえばさ、今海の水から塩を抜き取る魔道具が稼働してるだろ。

 それって、塩以外の物質を抜き取ることも出来るかな」


「その抽出の魔法を見せて頂ければ、もちろん可能です。

 後は魔方陣の一部を書き換えるだけですので」


「そうか、俺も『抽出』のレベルが上がったんで、いろいろな物質を抽出出来るようになったんだけどな。

 海の水から金(Au)っていう金属を抽出してみたいんだ」


「はい」


「シスくん、ここに1立方メートルほどの容器を作って、その中に海水を入れてくれるか?」


(はい)


「さあ妖精族のみんな、よく見ていてくれ。

 この海水の中から金を抽出するけど、その量はものすごく少ないんだ。

 たぶん100万分の2グラムよりも少し少ないぐらいだろう」


「『ひゃくまんぶんのにぐらむ』という言葉の意味はよく分かりませんが、ものすごく少ないだろうということはよくわかりました」


「はは、そうか。

 それじゃあ金を抽出してこの机の上に出すからよく見ていてくれ」


「「「 はい 」」」


『金(Au)抽出』


 見た目にはほとんどなにも感じられなかった。

 だが……


「見えました。

 今の魔法を再現する魔道具をお作りすればよろしいのですね」


「さすがだな。作れるか」


「魔方陣の一部を少々書き換えるだけですから簡単です」


「それでさ。

 その魔道具の有効範囲ってどのぐらいまで広く出来るかな。

 例えばその魔道具を海に沈めて、半径10メートルの範囲の海水から金を抽出することって出来るか?」


「それも魔方陣の一部を書き換えるだけですので簡単です」


「そうか、それじゃあ有効範囲を100メートルにしてみてくれ」


「はい、出来ました」


「早いな!」


「シスさまが木や石や土や鉄などの材料をたくさん用意して下さっていますので。

 それにもう魔道具作りにも大分慣れて来たものですから」


「そうか、それじゃあさ、この『金抽出の魔道具』の抽出率はどのぐらいだと思う?」


「?」


「そうだな、たとえばこの容器の海水には元々100の金が含まれていたとするだろ。

 それでこの魔道具を作動させたら、その100のうちのどのぐらいが抽出出来るのかな」


「100です」


「す、凄いな……」


「いえ、凄いのは魔道具ではなくダイチさまの魔法ですので」


(さ、さすがはLv9の魔法だということか……)



「そ、それでな。

 まずは、この魔道具にロープと重りをつけて、海に沈めて使いたいと思っているんだよ。

 回収しやすいようにロープの先には浮きもつけて。

 そうだな、だいたい100メートルぐらいの深さに沈めて使いたいんだけど、その深さだと海水の圧力が凄いんだ。

 それで壊れないように魔道具の容器を頑丈にして欲しいんだよ」


「それでは容器の形を球形にして、いくつか穴もあけておいたらいかがでしょうか」


「それで頼むわ。

 それから魔道具の作動なんだけどな。

 例えば2分間に1回抽出を作動させるって出来るか?」


「はい、時計の魔道具も組み込めば」


「すごいな、お前たちなんでも出来るんだな」


 妖精族たちが頬を染めた。


「あ、ありがとうございます……」


(こいつら口調も表情も淡々としてるけど、感情はけっこう豊かなんだな……)


「それでダイチさま。

 2分に1回の割合で『抽出』を作動させると、抽出物を入れる容器がすぐにいっぱいになってしまうと思われるのですが……」


「海水に含まれている金って、ものすごく少ないからさ。

 そうだな、金を入れる容器は直径20センチほどの球形で充分だぞ」


「畏まりました」


「それで、この魔道具を作動させる魔石はどのぐらい必要なんだ?」


「そうですね……

 2分に1回の作動でしたら、中型魔石1個で1年はもつと思います」


「中型魔石はたくさんあるのか?」


「はい、普段ご用命の無い時には、魔石作りで私共のMPを枯渇させてMPの上限を上げるようにしていますので」


「偉いな。お前たちよく頑張ってるよ」


 さらに妖精たちの頬が赤くなった。


「それじゃあちょっと時間をくれ。

 今少し計算してみるから」


「はい」



 えーっと、海流の速度は時速3キロだったから、分速だと50メートルか。

 それなら魔道具の発動は2分に1回のままで充分だな。


 それから、確か地球の海水には2pptの割合で金が含まれていたよな。

 つまり、存在率は重量ベースで1兆分の2か。

 1トンの海水で2㎍(マイクログラム)か……

 はは、さすがに少ないや。


 でも、半径100メートルの球形の海水の重さは約400万トン強だから、1回の抽出で得られる金の重さは……

 うおっ!

 8.4グラムもあるんか!


 2分に1回の抽出ということは、日に720回の抽出になるから、魔道具ひとつ当たり1日の産金量は5760グラム、1グラム5000円と低く見積もっても、日に2880万円の収入……


 アルスの海の金合有量を3割引きにしても、約2000万円か……

 すげぇな。

 さすがに地球の海水には50億トンの金が含まれてるって言われてるだけのことはあるわ。

 人類がこれまでに採掘して精錬した金の総量が約17万トンだそうだから、途轍もない量だ。


 その魔道具を50個作って1日稼働させれば10億円の収入、1年で3600憶円の収入か。

 うほほほほほほ♪


 はっ、い、いかんいかん!

 トラタヌはほどほどにしなければ!

 アルスの海水中の金濃度はもっと低いかもしれないんだからな!



「こほん、あー、待たせてすまない」


「いえ、お気になさらず」


「それじゃあすまないが、その魔道具を50個作っておいてくれ。

 頑丈なロープを結べるような輪も2個所頼む」


「畏まりました」


「もしこのプロジェクトが成功したら、膨大な量の食料が買えるからな。

 お前たちにももっと褒美を買ってやれるぞ」


「いえ、もう甘いものは十分に頂いておりますので」


「だが、優れたものを作ってもらう褒美だ。

 なにか欲しいものは無いのか?」


 途端に妖精たちの顔が真っ赤になった。


「なんでも言ってみろ。

 俺に出来る事なら願いを叶えてやるぞ」


 周りの妖精たちに励まされて、族長がようやく口を開いた。


「あの…… あのあのあの……

 も、もしもよろしかったら、妖精族の男の子も召喚してやっていただけませんでしょうか……」


「!」


「他の種族の方々が、みなさん女性と男性で仲良くされているのが羨ましくって……」


 族長の顔は血が噴き出しそうなほど真っ赤になっている。


「そうか、お前たちも生殖が出来るのか……」


「い、いえ、わたしたちは魔法生命体ですので生殖は出来ません。

 その代りに非常に長い寿命を授かっているのです。

 ですがまあ、他の種族の方々みたいに…… 仲良く…… その……」


「わかった。

 今妖精族は何人いるんだ?」


「80人です」


「テミス」


(はい)


「妖精族の男の子って召喚出来るのか?」


(はい、前例はございませんが可能です)


「ありがとう。

 シスくん」


(はい)


「妖精族の男の子を80人召喚してくれ」


(畏まりました)



 その場に80人の妖精族の男の子たちが現れた。

 女の子たちと同様、全員が凄まじい美形である。


(やはりちんちんは丸出しだったか……)


 妖精族の女の子たちは、ものすごく嬉しそうにしているが、新たに召喚された男の子たちはみんな恥ずかしそうにもじもじしていた。


「妖精族の男の子諸君、ようこそダンジョン村へ。

 ダンジョンマスターとして君たちを歓迎する」


 男の子たちが一斉に頭を下げた。


「さて、妖精族たちよ。

 これからは女の子も男の子も、全員が全員と仲良くするんだぞ

 誰かをハブったりボッチにさせることは許さないからな」


「「「「「 はいっ♪ 」」」」」


「それじゃあ魔道具作りは頼んだぞ」


「「「「「 お任せくださいませ! 」」」」」




 後は静田さんに丈夫なロープを注文しておくか。

 魔道具に繋ぐ重りや回収用の目印の浮きは俺が土魔法で作ろう。



 それにしてもレベル9の上級スキルって便利だよ。

 これは俺ももっと鍛錬を続けて、主なスキルや魔法は全部レベル10まで取得しておいた方がいいな……





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