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*** 45 タマちゃん、なんていい子なの♡ ***

 


「それにしてもさ。

 子供と大人の違いって、記憶力にあると思うんだよ」


「にゃ?」


「例えば『これは絶対にしちゃあいけないことだ』っていうことを知ったとするじゃない。

 大人はそれをいつまででも覚えてて、しないでいることが出来るんだけど、子供はみんなADHDだから、1日経ったら忘れちゃうんだ。

 だから2度と忘れないように30日間悪夢を見させようと思ったんだよ」


「にゃるほど」


「それでもやっぱり30日経ったら忘れ始めるんじゃないかな。

 まさかずっと悪夢を見させるわけにもいかないし。

 そんなことしたら睡眠不足で死んじゃうよね」


「にゃ」


「なんかいい方法はないもんかね?」


「それにゃったら、アレ使うかにゃあ」


「アレってなあに?」


「あのにゃ。

 神界が管理する高度に文明もE階梯も発達した世界でも、子供に関してはおなじ悩みがあるんにゃよ」


「まああるだろうね」


「銀河宇宙の多くの世界で子供たちに大人気のアニメがあるんにゃけど、その話の中でシャイアンっていう体の大きな子が、暴力でみんなを従わせようとすることがあるんにゃ。

 だから銀河宇宙ではヒャッハーやDQNが暴力で他人を従わせようとする行為を『シャイアニズム』って言うんにゃけど」



(F先生は宇宙人だったのか……)



「それで、子供がそうしたDQNのまま大人になって行かにゃいように、あちしらの種族が神界に協力して、矯正グッズを作ったんにゃ」


「それってどんなグッズなの?」


「あちしらのミニチュアフィギュアを吊るしたペンダントなんにゃけど、いったん首にかけたら外れないんにゃ。

 ワイヤーカッターなんかで切ろうとすると激痛がするし」


「それで?」


「それでその子が他の子を脅して言うことを聞かせようとすると、戦闘形態になったあちしらがその子だけに見えるように出て来て、目の前で吼えるんにゃよ。

 それをシャイアニズムが収まるまでつけさせておくんにゃ。

 でもあんまり売れなかったんにゃ……」


「ものすごくいいグッズに思えるんだけど、なんで売れなかったの?」


「その子が誰かを脅してあちしらが出て来た途端に、その子の膀胱と腸の中身も全部出て来ちゃうんにゃ……」


「あー、それは文明世界だと辛いね。

 でも、ダンジョン村やアルスだと使えるかも。

 それって俺も買えたりするのかな?」


「ツバサさまにきんを渡せばなんとかしてくれるかもにゃ」


「1ついくらぐらい?」


「日本円で1万円ぐらいかにゃ」


「それじゃあそのペンダント、とりあえず100個買っておいてくれるかな」


「毎度ありにゃ♪」


「?」


「そのペンダントが売れると、代金の半分が肖像権料としてあちしらの種族の口座に振り込まれるんにゃ。

 族長やってるグランマが喜ぶにゃ♪」


「さいでっか……」






(ツバサさま、今からお伺いしてもいいですかにゃ?)


(ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってっ!

 いつもの私室じゃあなくって執務室に来て!)


(えー、いつもみたいに、ついでに私室でアニメの続きを見させてもらいたいにゃぁ)


(し、執務室でも見られるようにするからっ!)



 あ や し い にゃ……




 指定された10分後にタマが神界に転移すると、執務室には大地が贈った『地球産柔らかいソファ』があった。


 だが何故かツバサが座る1人用のソファが、背を私室のドアに向けている。

 それもドアが開けにくいように。


 カーペットについたソファの脚の跡を見れば、急遽ソファの位置を動かしたことは一目瞭然である。



「で、私室にはなにがあるんですかにゃ?」


「な、ななななな、何も無いわっ!」


「誰にも言わないからタマちゃんに言ってごらんにゃ♡」


「ほ、ほほほ、ほんとになんにも無いから!」


「ふーん、『なんかツバサさまの部屋がアヤシイ』ってダイチに言ってもいいのかにゃ?」


「!!!!」



 おっぱいがビーンと立っている。


 まるで昔のギャグマンガの驚いた時の目玉表現の様だ。


 なんというわかりやすいおっぱいだろうか……



「さあ、白状するにゃ!」


「ほ、ほんとに誰にも言わない?」


「もちろんにゃ。

 タマの口は貝の口にゃよ。(でもお腹が空くとすぐ開くにゃ♪)」


「じ、じゃあ少しだけよ……」


「うにゃ♪」



 ツバサさまが私室のドアを少し開けるとタマが入って行った。



「ほー、へー、ふぅ~ん。

 ツバサさま、筋肉フェチ&年下好きだったんにゃ♡」


「…………(真っ赤)…………」



 おっぱいもへんにょりと垂れていた……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「タマちゃんどうだった?」


「ミッションコンプリートにゃ。

 スキルもグッズも全部手に入ったにゃよ。


 それにグッズだけじゃあなくって、グッズを魔法化した『幻覚魔法』も作ってくれたにゃ。


 あちしらの種族だけじゃあなくって、任意の幻覚を見させられる上に、痛みまで与えられたり各種オプションもつけられる優れものになったんにゃ。

 ツバサさまがもんのすごーく協力的だったにゃよ♪」


「それはよかった。

 ところでそれって神界やタマちゃんの種族に使用料払わなくっていいの?」


「神界の任務に使うんにゃったら神界には不要にゃ。

 あちしらの種族会は、単に肖像権だけにゃからにゃあ」


「それじゃあおカネで払うのもなんだから、物でなにか渡そうか。

 なにがいい?」


「お酒とジュースでいいかにゃ」


「それじゃあこんど淳さんに頼んで両方を300万円分買って贈るってどうかな。

 それで肖像権料一括払いっていうことで」


「みんな喜ぶにゃあ♪」



「ツバサさまにも今度またなにかお礼を贈っておくか」


「それもきっと喜ぶにゃ♪

 あ、ダイチそっくりのフィギュアを作らせて、それを贈ったらどうかにゃ?」


「ははは、まさか」



(にししし、ついでに『転写』の魔法も作ってもらったから、ダイチの生写真撮り放題だにゃ。

 ダイチの写真集作ってツバサさまにあげたら、きっと喜んでくれるにゃあ♪)




 それからしばらくして、タマちゃんがツバサさまに一冊のアルバムを届けに行った。


 ツバサさまは真っ赤になりながらも狂喜し、毎晩私室でその『大地生写真集』を眺めているという……


(タマちゃん…… なんていい子なの♡……)


 おっぱいも嬉し気にふりふり揺れているそうだ……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 大地とオーク族族長との戦闘から30日後、大地は6人のDQN少年たちに『幻覚魔法』をかけた。


 もしもシャイアニズムを発揮しようとすると、トラウマになっている幻覚や激痛が襲ってくるという魔法である。


 族長の息子には自分の死を追体験させる幻影と痛みを。

 他の5人にも同じ経験をさせる機能を持つ魔法だった。



 DQN少年たちはやはりすぐに教訓を忘れた。


 だが……


 リーダーの少年は、耳から自分の脳味噌が噴出していく感触をほんの僅かながら覚えていたらしく、シャイアニズムを発揮しようとするたびに、耳を押さえてのたうち回りながら腸と膀胱を空っぽにしていたとのことである。


 その後も、しばらくの間は時折モン村に悪臭と共に絶叫が響き渡ることがあったが、それも数か月で収まっていったという……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 大地が毎日コツコツと作業を続けた結果、ヒノキの丸太3本の用意が整った。


「静田さん、お忙しいところ失礼いたします。

 今お時間大丈夫でしょうか。

 ええ、ヒノキ3本の準備が整いましたのでご連絡させて頂いています。


 はい…… はい……

 それでは2日後の夜22:00に特別倉庫にお持ちさせて頂きたいと思います。

 どうもありがとうございました」




 大地は約束の時間に現場に転移した。

 その場には巨大なトレーラートラックが用意されていたが、周囲には静田以外に誰もいない。

 どうやら人払いしてくれていたらしい。



「この荷台に積み込めばよろしいでしょうか」


「はい、お願いいたします」


「収納くん、荷台の上に丸太を出してくれるかな」


(畏まりました)



 直径1.5メートル、長さ25メートルの巨大な丸太が姿を現した。


 順番にトレーラーの荷台に積み込まれて行くたびに、広大な荷台が軋んで8個ある大きなタイヤも少しずつ変形していく。


 ワイヤーはかけていなかったが、それは作業員さんたちがやってくれるだろう。




 すぐに移送の準備が始められた。


 この手の大型車両の通行には警察署の許可が要る。


 移送時間も、市街地に於いては通常深夜0時から朝4時までに制限されており、そのトレーラーの前後には紫色の回転灯を付けた別の車両を用意する必要もあった。



 大地はいったんアルスに戻り、翌朝『隠蔽』を纏って買収した製材所に向かった。


 製材所の庭では、従業員たちが巨大な丸太を見上げて口をあんぐりと開けている。


 静田物産木材事業部の担当課長がそれをドヤ顔で見ていた。



「こ、こいつぁ……」


「お、親父っさん…… 切り口が真円ですぜ……」


「あ、ああ、それに材の表面がつるつるな上に、端から端まで太さがおんなじだ……

 節までほとんど目立たなくなってるわい……」


「太さが均一になるように削ってあるんスかね?」


「いや…… それだったら材の表面に年輪が見えるはずだ。

 だがそれも無ぇ。

 こいつあまるで、いったん溶かした木を枠に入れてまた固めたみてぇだ……」



(当たり!)



「な、なぁ課長さん、これほどの材を一体どこから持って来なすったかね」


「申し訳ありませんが、それは秘密ということで」


「そ、そうか。

 ところでまだこんな材が他にあるんかね?」


「ええ、多少時間はかかりますが、まだたくさん用意出来るそうです」


「そうか、わかった。

 おいお前たち、すぐに材の検査を始めるぞ」


「「「 へい! 」」」



 さすがは巨木の製材を得意とする製材会社である。

 クレーンで工場内に材を運び込むと、各種の検査が始まった。


 まずは超音波検査、続けてX線診断、さらにはCTまで使っての検査が続く。


 これらの非破壊検査は、通常は生えている木に倒壊の危険性があるか否かの診断のために行われる。

 そのため、周囲に足場を組む必要もあったが、ここでは既に丸太になっているため検査は容易だった。



「親父っさん、各部の含水率は20%しかありやせんでした」


「よく乾いてるな。

 その割にゃあどこにも割れがぇってねぇが……」


「ええ、X線でもCTでも内部に空洞は見つかりませんでした」


「よほどの乾燥名人が手掛けた材に違ぇねぇな……」


「ええ、ここまで乾燥していて割れが無い材はあっしも初めて見やした……」



「比重は?」


「そ、それが、1.15もありやす……」


「なんだと…… 黒檀並みだって言うんか……」


「へぇ、木材としては最も重くなりやす」


「そうか……

 おい、京都の南厳寺さんに連絡してみろ」


「へい」





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