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*** 36 採点役 ***

 


 前回地球に戻ってから地球時間では5日が経過しており、今日は日曜日。


 ジムでは、この土日を通じて、級と段位の初めての認定試験が行われることになっていた。



 因みに、大地が属する『伴堂総合格闘技ジム』には120名を超える会員がいる。

 この手のジムにしては異例の人数だが、そのうちの70名は女性たちだった。

 数名はアマの女性修斗大会を目指しているが、大半は格闘技エクササイズや護身術を学ぶひとだそうだ。

 やはりというか当然というか、筋肉フェチの女性が多いらしい。


 男性50名の内20名ほどはやはりエクササイズや護身術目的だったが、30名はかなり真剣に鍛錬に励んでいる。

 ほとんどがアマの大会への出場やプロを目指しており、元SEALsの訓練指導教官だったという伴堂師範の指導を求めて、かなりの遠方から来ている者もいた。


 春休みや夏休みの時期になると、日本全国から臨時入会者もやってくるために、ジムは低めのリング2つと広いエクササイズスペースのあるかなり規模の大きなものになっている。



「おはようございまーっす!」


「おお大地来たか。

 昨日まででエクササイズクラスと護身術クラスの認定試験が終わったところだ。

 だいたい暫定級位通りの結果だったよ。

 今日は中級以上のMMAコースの認定試験が行われるから、お前も採点官として採点に加わってくれ」


「ええっ!

 延岡さん、いくらなんでも俺が採点とか……」


「いや、伴堂師範がそう言ったんだ。

 斎藤も含めた俺たち3人と師範とで練習生の段位を決めることになっている」


「は、はぁ……」



「練習生全員を評価した後は、俺たちの試験も予定されてるからな。

 お互い頑張ろうぜ」


「た、確かアマの試合に出られるのが初段からで、プロ推薦が貰えるのが3段からで、師範自身が8段としてみんなの段位を決めるんですよね」


「そうだ。俺はもうプロ登録してるから3段以上でないと格好がつかないなぁ。

 斎藤師範代だってアマの県大会ベスト8まで行ってたから2段を目指してるだろう」


「そうですね」


「それでな、今日のメインイベントはお前と師範のガチスパーだそうだ。

 頑張れよ」


「はい……」


「師範は最近進境著しいお前と戦うのを楽しみにしていたぞ」


「はは、死なないように頑張ります……」



 うーん、大丈夫かなぁ……

 でもいい経験かもしらんから頑張ってみるか。


 あ、タマちゃんが棚の上に飛び乗って丸くなった。

 早くもお昼寝態勢か……



 そうだ、そういえばまだみんなの『鑑定』をしてなかったわ。

 申し訳ないけどちょっと覗かせてもらおう。


 まずは斎藤師範代から……



 *****************


 名 前:斎藤雄二

 出 身:地球

 種 族:ヒト族

 年 齢:19歳 男性

 適 職:教師

 職 業:学生


 総合レベル:10

 E階梯 :4.2

 思考能力:4.4

 努力する才能:4.8

 行動力 :4.0


 殺人数  :0 

 中・重犯罪数:0


 体 力:12(12)

 魔 力: 0(0)

 攻 撃:12

 防 御:16

 敏 捷:14

 器 用:18

  運 :10


 スキル: なし

 魔法 : なし


 *****************



 へー、雄二さん普通の地球人としてはけっこう強いな。


 適職は教員か。

 そういえば、大学では教職課程を取ってるって言ってたし、コーチングも上手だったっけ。

 E階梯も高いしきっといい先生になるんだろうな。



 それじゃあ次は健吾さんを見てみよう。




 *****************


 名 前:延岡健吾

 出 身:地球

 種 族:ヒト族

 年 齢:22歳 男性

 適 職:教師

 職 業:MMAジム師範代、土木作業員


 総合レベル:14

 E階梯 :4.3

 思考能力:4.3

 努力する才能:5.0

 行動力 :4.5


 殺人数 :0 

 中・重犯罪数:0


 体 力:14(14)

 魔 力: 0(0)

 攻 撃:16

 防 御:12

 敏 捷:13

 器 用:18

  運 :12


 スキル: なし

 魔法 : なし


 *****************



 そうか……


 そういえば健吾さん、家が貧乏で高卒で働き始めたけど、やっぱり体育教師になりたいから金貯めてるって言ってたか。

 それで今年は大学受験するそうだし。

 うん、努力する才能も高いしなにより強いし、コーチや体育教師には最適な人材だな。


 そう言う点で、師範の人を見る目は確かだよ。

 このジムが流行ってるのも当然だわ……

 まあ2人ともイケメンなんで、女性会員が増えたっていうこともあるんだろうけど…… はは……



 さて、それじゃあ師範を観させて貰いますか。


『鑑定』……



 うわっ!


 師範が俺の方見て首傾げてるよ!

 鑑定されたのがわかったんか!


 な、なんちゅーカンの良さだ……


 超一流の兵士は狙撃兵に狙われたら分かるっていうもんな。


 これが実戦を潜り抜けて来た戦士のカンなのか……


 おっと、鑑定結果は……




 *****************


 名 前:チャールズ伴堂

 出 身:地球

 種 族:ヒト族

 年 齢:48歳 男性

 適 職:戦士

 職 業:MMAジム経営


 総合レベル:17.5

 E階梯 :4.1

 思考能力:4.9

 努力する才能:5.9

 行動力 :4.8


 殺人数 :85 (戦場殺人数:85)

 中・重犯罪数:0


 称号:白兵戦人類最強の男


 体 力:22(22)

 魔 力: 0(0)

 攻 撃:22

 防 御:21

 敏 捷:18

 器 用:23

  運 :18


 スキル: なし

 魔法 : なし


 *****************




 戦場殺人85人かよ……


 そ、そういえば特殊部隊時代にアフガニスタンやソマリアに行ったって言ってたっけ……


 しかも、『白兵戦人類最強』か……


 まあ実際の白兵戦では、ナイフやらスコップやらに加えて暗器も使うんだろうけど。


 それにしても、実力に加えて経験も持ってるんか……

 そりゃあ強いわけだな。


 総合レベルが地球人最強の18じゃないのは、きっと年齢による衰えだろう。

 それでも17.5もあるし。



 そりゃあレベルは俺の方が遥かに上だけどさ。

 殺し合いの実戦もモンスター相手にさんざん繰り返して来たけどさ。


 でも俺のレベルって魔法込みだからなぁ……

 まさか火魔法で師範を火ダルマにするわけにはいかないし……


 はは、筋肉ダルマを火ダルマにしてどうするよ。



 それにしても、魔法抜きだと俺のレベルってどれぐらいなんだろうか?

 果たしてこんな怪物モンスターにも通用するんかね……

 そうだな、師範とのスパーのときは、なるべくスキルは使わずに地の力で戦ってみるか……



 おっといけない、段位認定のための試験が始まるな。

 俺も採点官に指名されたんだから真面目に見よう。

 そうだ、『時間加速』も使ってよく見てみるか……



 それにしても、なんでこんなにギャラリーがいるんだ?

 エクササイズコースや護身術コースの級位認定は昨日までで終わってるはずだぞ?

 これ、ギャラリーだけで男性10人以上、女性50人はいるなぁ。

 なんかみんな目をキラキラさせちゃってもう……



「みんなストレッチは十分にやったかしら?

 それじゃあ級位・段位認定試験を始めるわよ。

 他の人の試験を見ててもいいけど、自分の番が近くなったらもう一回体を温めておいてね。

 リングの外4面にビデオカメラをセットしてあるから、自分の試技は後で見られるわよ。


 それじゃあ、そこに張り出してある名前の順番にリングに上がって頂戴。

 まずは師範代のミット目掛けてパンチを打ってもらうわ。

 それからコンビネーションブローとキック、最後にキックも含めたコンビネーションを見せてもらうわ。

 時間は3分1ラウンドよ。それじゃあ最初のひと」


押忍オス!」



 雄二師範代と試験生がリングに上がった。

 師範代は完全防備姿になっている。

 ヘッドギアはもちろん、胴体や腕や脚には師範が開発したという分厚いクッション付きのガードもついていた。

 なんでもケブラー繊維まで使ってあるそうだ。

 手にはこれも大きなミットを嵌めている。



(最初の人は暫定2級のストロー級か。

 見た目は高校生っぽいな)


 リング上では試験生が師範代のミットを叩く音が聞こえていた。


 同時にギャラリーの中の女子高生っぽい子からも声援が飛んでいる。



(うーん、ワンツーの間隔が大きいな……

 それにジャブをジャブだと思い込み過ぎてるせいか、威力が低いし。

 その代わりにストレートは力強いけど、その分モーションが大きいなぁ。

 なんか完全にテレフォンパンチになっちゃってるよ。

 しかも足と腰の筋肉を半分も使って無い手打ちだし。


 あー、パンチやキックの頻度もスピードも落ちて来たか。

 体幹もブレて来てる……

 このひとをアマの試合に出したりしたら、スタミナが切れたところでボコボコにされちゃうぞ。


 パンチは1.5級、キックは1.3級、コンビネーションは1.6級で、スタミナは2.3級っていうところか……)



 大地は採点表を係の女性に渡した。



 ギャラリー席からは女性たちのひそひそ声も聞こえる。


「ねえねえあの子、15歳ぐらいに見えるんだけど採点とかしてるわよ」


「あの子は暫定初段以上のひとのスパーリングパートナーをしてる大地くんよ」


「へー、じゃあ強いんだ」


「うーん、スパーリングパートナーだから本気で戦ってるところは見たことがないんだけどね。

 でもチャールズ師範に言わせると相当に強いらしいわよ。

 プロの試合にも出られるぐらいだって」


「すっごーい!」




 大地は苦笑しながら意識をリングに戻した。


 リングには既に次のフライ級の選手が上がっている。

 暫定1級の選手だった。


(多少はマシになったけど、まだパンチが手打ちだな。

 キックは力を入れすぎててスピードが遅いし……


 あー、膝を完全に伸ばした後に相手にヒットさせてるよ。


 あれってよくMMAのポスターなんかで見かけるキック姿勢だけど、見栄えはしても大腿四頭筋群の力が相当に無いと威力は落ちるんだよなぁ。


 それにしても、こうしていろんなひとの試技を見てると、どこに欠点があるかよくわかって参考になるわ。


 そうか……

 だから師範は俺に採点官をやらせてくれてるんだな……)



 大地が師範を見やると、チャールズ師範はすぐ大地の視線に気づいた。

 微笑みながらウインクまでしている。


(これが無けりゃあほんとに最高の戦士なんだけどなぁ……)




 各人の試技は無事に進んで行った。


 練習生たちのパンチやキックが師範代たちのミットやガードに当たる音も、「ぱしっ! ぴしっ! ばしっ!」という音から、「ばしっ! びしっ! どん!」という音に変化して来ている。




「さあ、それじゃあ会員さんたちの試技も終わったし、次は師範代さんたちと大地ちゃんの番ね。

 みんなの相手はわたしがするわ」



 チャールズ師範の長男、伴堂つよしは、父である師範を睨んだ。


(親父…… なんでそこまで大地を特別扱いするんだよ。

 まだこいつはようやく体が出来て来たばかりの中学生じゃねぇか。

 2つ年上の俺の方が素質も実力も遥かに上だろうに……)





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