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*** 34 サキュバス族のお姉さんたち ***

 


 大地のもとへ綺麗なお姉さんたちが5人ほどやってきた。


 全員が素晴らしく立派なモノをお持ちで、薄物を纏ったその姿はえらく煽情的だったが、みんな少しおどおどしている。



「あ、あの…… ダンジョンマスターさま……

 い、いま少々お時間よろしいでしょうか……」


「ああ、きみたちは確かサキュバス族か。なんだい?」


「あ、あの…… あのあのあの……

 ご、ご寝所にはいつごろお伺いすればよろしいでしょうか……」


(あ、なんかタマちゃんがおっかない顔で俺を見てる……)


「い、いやこれからはそういうことはしなくていいぞ」



 途端にサキュバスたちが悲しそうな顔になった。

 中には泣き出している子もいる。



「や、やはりわたくしたちはもうお払い箱なのでしょうか……」


「わたしたち、殿方を喜ばせる以外にほとんど役に立たないんです……」


「や、やっぱり消滅させられてしまうんでしょうか……」


「お、お願いです! なんでもしますから消滅だけはお許しくださいっ!」



「はは、なんだそんなことを心配してたのか。

 安心しろ。絶対に消滅なんかさせないから」


「で、でも、どうやってお役に立ったらいいのか……」


「わたしたち力もありませんし……」


「いや、今は確かにあまり役に立てないかもしれないけどな。

 俺の計画の中では君たちは重要な役割があると思うんだ」


「「「 えっ…… 」」」


「ああ、それに君たちは人の夢に入り込んで、その、エッチな夢とかを見せられるのか?」


「「「 はい…… 」」」


「それさ、逆に怖い夢とかも見せられるのかな」


「はい、可能ですけど……」


「その魔法、いつか俺も教えて貰いたいと思ってるんだ。

 軽犯罪者を罰するのにちょうどいい方法だと思ってな。


 だから、君たちも魔法の訓練をしながら普通に暮らしていてくれ。

 あとで必ず君たちしか出来ない仕事をお願いすることになると思うから。

 実はそのときに備えてもう少し人数を増やしておこうと思ってたぐらいなんだ」


「「「 !!! 」」」



「なあイタイ子、サキュバス族をあと5人ほど召喚しておいてくれるか。

 ああ、ポイントは俺のを使っていいから。

 いくらなんでも5人しかいないのは少なすぎるだろう」


「心得た……」


「「「 あ、ありがとうございますっ! 」」」


「はは、泣くな泣くな。

 お前たちだってこのダンジョンの貴重なメンバーなんだからな」



 そんな様子を大勢のモンスターたちが遠巻きに見ていた……



(やるにゃあダイチ……

 これでもうサキュバス族も肩身の狭い思いはしないで済むだろうにゃあ。

 人心掌握力はコーノスケ譲りかにゃ。

 いや、コーノスケ以上かも……

 さすがはE階梯5.8にゃあ……)




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 時間停止収納部屋に戻った大地は、コーヒーを飲んで一休みした後に砂浜に出て魔法訓練を始めた。

 いつものようにあらゆるスキルを試しながらすべての魔法を放ち、急速にMPを消費して気絶する。

 最近では気絶している時間も2時間ほどと短くなって来ていた。



(この気絶のおかげで睡眠時間も確保出来てちょうどいいな……)



 そうして体感時間で3日、35回の気絶を終えると、大地はタマちゃんとともに地球に転移した。

 地球時間では夕方6時、山の上の祠の前からすぐに街の家に転移した大地は、静田に電話を入れた。




「あ、静田さんですか、お忙しいところすみません。

 ええ、実は多めにご注文させて頂きたい品がありまして、明日の朝お邪魔させて頂けないものかと……

 え、今からでもいいんですか?

 まだ会社にいらっしゃるんですね。

 は、はい、それでは静田物産の社長室に転移させて頂きます。

 あ、はい。5分後ですね。

 それではよろしくお願いします」



「もしもし淳さんですか、大地です。

 突然ご連絡してすみません。

 実は今から注文のために静田さんの社長室にお邪魔するんですけど、もし時間があれば淳さんにも来て頂けないかと思いまして。

 はい、ありがとうございます。

 それでは静田さんの部屋で」




 大地は静田物産の社長室に転移した。

 市内中心部にある25階建ての本社最上階にある社長室からは、青嵐市市街の夜景が良く見える。


「ようこそお越しくださいました大地さま」


 どうやら静田は秘書たちを部屋の外に出していてくれたらしい。


「こちらこそ突然お邪魔してすみません。

 実は少し大きめの注文がございましたのでお邪魔させて頂きました」



 静田が微笑んだ。


「おめでとうございます」


「えっ?」


「ご注文が多いということは、大地さまの異世界での御任務が順調に進んでいることの証でございます。

 なんなりとご注文下さいませ。

 なにしろ弊社は幸之助さまや大地さまのご要望にお応えするために作られた会社なのですから」


「あ、ありがとうございます……


 それで、こちらが注文の品なのですが」


 大地は1枚の紙を取り出した。



 ------------------------------------------


<注文書>


 肥料    : 100トン

 配合飼料  : 100トン

 味噌・醤油 : 各10トン

 塩     : 1トン

 砂糖    : 1トン

 味〇素   : 100キロ

 ブイヨン  : 100キロ

 野菜各種  : 10トン(キャベツ中心)

 野菜の種各種: 1トン

 小麦の種  : 10トン

 お茶    : 1トン

 ヤカン   : 30個(大型、お茶用茶こし付き)

 鶏卵    : 1トン

 牛乳    : 10トン

 業務用大型蒸し器(プリン用):10台

 食器(大・中・小):各1000個


 ------------------------------------------



 注文書を読み進むたびに静田の笑みが広がって行く。


「あの、大地さま。

 もしよろしければ耕作地の土のサンプルをお持ちいただけませんでしょうか。

 分析した上で肥料選択の参考にさせて頂きますので。

 また、その耕作地は果樹用地でしょうか、それとも小麦や野菜用でございましょうか」


「実は念のため土のサンプルを持って来てあるんです」


「さすがでございますね」


「それではこちらに土の入った箱を出してもよろしいでしょうか?」


「はい」


「収納くん、果樹園予定地の土が入った箱をここに出してくれ」


(畏まりました)



「作付け予定は、果樹と野菜と小麦が三分の一ずつぐらいです」


「それでは至急土を分析させた上で、最適な肥料をご用意させて頂きます」


「あの…… 代金はちゃんと請求して下さいね」



 また静田が微笑んだ。


「幸之助さまとの取り決めでは、原価+人件費等諸経費に対して10%を加えたものを取引価格とさせて頂いておりました。

 大地さまもそれでよろしゅうございますでしょうか」


「もちろんですけど、別にプラス20%で構いませんが……

 それでも小売価格よりは遥かに安いでしょうから」


「そんなことをすれば佐伯さんや須藤さんが激怒します。

 プラス10%でも文句を言っていましたから。

 市の弁護士会会長と県内最大の私立病院の理事長を敵に回すわけにはいきませんな」


「あ、ありがとうございます……

 そうそう、まあ先の話にはなるんですけど、アルスでいい材木を見つけたんですよ」


「ほう!」


 静田の目が細くなった。


(これがビジネスマンの目なんだな……)



「それでどのような材木なのでしょうか」


「ええ、クヌギやマツやヒノキなんかは山ほどあるんですけどね。

 その中でも幹の直径5メートル超で樹齢500年のスギを見つけたんですよ。

 まあ、中には直径15メートル超で樹齢2000年のものとかもあるんですけど」


「じ、縄文杉……」


「それ以外にも直径3メートル、長さ20メートルの黒檀や紫檀やビャクダンや沈香木とか」


「な、なんですと!」


「そういえば沈香木には樹脂が固化した『伽羅』とかいうものもいっぱいついているみたいです」



 静田がため息を吐きながらソファに背を預けた。


「大地さま……」


「はい?」


「天然の伽羅の最高級品は、1グラム5万円で取引されています。

 つまり同じ重さの金の10倍の価格ですな」


「ええっ!」


「しかも、それだけのカネを出しても手に入れるのは至難の業です。

 そういった意味で、誰でも買えるダイヤモンドよりも貴重なものかもしれません」


「は、はぁ」


「それをお売りになることはあるのでしょうか……」


「ええ、今後任務に必要な資金を調達するためであれば、売却も考えています。

 アルス中央大陸を救うためであれば、アルスの木を売ってもいいんじゃないかと思いました。

 あ、あと、ウォールナットとチークとマホガニーの大木もありましたよ」



 また静田が微笑んだ。

 もう完全にビジネスマンの顔になっている。


「実は今県内でも大手の製材会社が倒産の危機に陥っていましてな。

 県から非公式に買い取っては貰えないかとの打診が来ているのですよ。

 社内の方針は拒否の方向で動いていたのですが……

 わかりました、その会社は買い取って子会社にしておくここと致しましょう」


「あの……

 危機の原因はなんだったんですか?

 それから負債の総額は?」


「もちろん原因は木材需要の低迷です。

 ただの木造住宅用材では海外産に太刀打ち出来ませんから。


 加えてその会社は、かつて大型材の加工機械に設備投資しておりましてな。

 全国の寺や神社などへの大型補修用材の供給者としてそれなりに繁盛していたのですが、もはや日本中どこを探しても大木などはございません。

 あっても自治体などに保護されていて、建材などには加工出来ないのです。

 負債総額は確か12億円ほどでございました」


「なるほど。大型材の加工技術を持っているんですね」


「ええ、加えて30名ほどの社員の内、社長を含む12人は熟練の職人であるようです」


「それではその12億円は私が出しますので、その会社を買っておいて頂けませんでしょうか。

 もしもアルスの材木を売らなくて済んだ場合にご迷惑をおかけすることになりますので。

 あ、わたしの未成年者後見人の佐伯さんの了解を頂戴しなければなりませんけど」


「わはははは!

 さすがは天が見込まれた大地さまでございます!

 畏まりました。ご指示の通りにさせて頂きます。

 佐伯さんもきっと涙を流しながら賛成して下さると思いますぞ。

 大地さまが成人されるまでは佐伯さんに社長をして頂いて、実際の経営は私共で代行させていただきます」


「あと、その職人さんたちが辞めてしまわないように、少し待遇を良くしてあげて頂けませんでしょうか。

 そのために追加で2億円出資させて頂きたいと思います。

 すみません、生意気なことを言って」



 静田は大地の顔をまじまじと見た。


「いや……

 さすがは幸之助さまのご薫陶を受けた大地さまでございます。

 というよりも人心掌握にかけては幸之助さまを上回るかもしれません。

 この分でしたらアルスの内政も安泰でございましょう。

 それでひとつご提案があるのですが」


「なんでしょう?」


「あまり高級材ではない木でそれなりに大きなものを、彼らに加工させてみられたら如何でしょうか。

 その方が彼らも士気を保てると思います」


「それではクヌギかヒノキに似た木で直径5メートル、長さ30メートルほどの材は如何でしょうか」


「わはは、そこまで大きいのですか!

 それにヒノキならばちょうどいいですな。

 日本中の神社仏閣が建材としてのヒノキを欲しがっていますので。

 それに、あまりにも希少な木であれば、出所と流通経路を県に報告しなければなりませんから。


 ですが残念ながら、直径1.5メートルを超えるような木の伐採も県に届け出る必要があるのです。

 もちろん森林資源保護のためなのですが」


「そうでしたか。

 それではまず直径1.5メートルのものまでにさせて頂きます」


「それほどの材でしたら天然乾燥で最低1年はかかりますが」


「そこは魔法でなんとかなりそうなんです。

『乾燥』の魔道具と乾燥部屋を作らせましたので」


「うーん、さすがですなぁ」


「それでも1か月ほど頂きたいのですが、どこにお持ちすればよろしいですか?」


「今淳さんが詰めている受け渡し用倉庫の隣には広いスペースがございます。

 そこに木材運搬用トレーラーを待機させますので、準備が出来次第ご連絡下さいませ」


「わかりました」





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