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*** 326 森のヒャッハーたち ***

 


 その晩時間停止倉庫でゆっくり休んだ大地は翌日地球に戻って高校に行った。

 つい同級生女子の胸をチラ見しまくってしまったのは許してやって欲しい。

 なにしろ先日、同年代以下からお姉さまたちまで女子の生おっぱいを何十何百と見て来てしまっているのだ。



「ねぇねぇ♪ 

 今日大地くんがあたしのおっぱいをガン見してくれたんだよ♪

 大地くんやっぱり大きなおっぱいがいいのかしら♪」


「あ、あたしのおっぱいだってガン見してたんだから!

 きっと小さいおっぱいも好きなのよ♪」


「あたしのおっぱいなんか、どガン見してくれたわ♡」


「「 あたしのもあたしのも! 」」


「ねえ、今度大地くんにみんなの生おっぱいを見て貰って、どれがいいか聞いてみない?」


「「「「 きゃぁぁぁぁ―――♡ 」」」」



 やはり……

『男のチラ見は女のガン見』というのは真実だったようである……




 大地は放課後また静田物産に行って各種の注文をした。


「ナイロンロープ200メートル巻き2万個に、耳抜き可能なダイビングマスク、サイズフリーのベルト着脱式フィン5万個ずつですか……

 海辺の民もお救いになられるのですな」


「そうなんです。

 彼らの漁業技術はまだ未熟で、原始的な網で漁をしたり素潜りで貝類を採っているものですから。

 ああ、あと竹籠にエサを入れて草を編んで作ったロープを吊るしてカニも獲っていますね」


「それはそれは。

 地球の魚介類と同じようなものが獲れるんですか?」


「ええ、相当に似ていますね。

 サイズはむやみやたらに大きいですけど。

 タラバガニの甲長は40センチを超えていますし、アワビの殻の長径は30センチ以上でした」


「うーん、それは素晴らしい。

 仮に日本に輸入出来たとしたら、かなりの値がつきますな」


「でも日本では産地表示が義務付けられていますから、アルス産などと書いたら大騒ぎになりますよね。

 外来種だの遺伝子汚染だの検疫だのって言って、絶対に輸入許可は下りないでしょう」


「まあ国内漁業者保護の名分で政治家も猛反対するでしょう。

 養殖ウナギの稚魚は、その半分以上がブラックマーケット経由ですが」


「ははは、それの黙認は国内ウナギ流通業者の保護ですか。

 票に繋がるならルールはどうでもいいんですね」


「ははは」


「それでは量が多くて申し訳ないのですが、注文の方よろしくお願いいたします」


「畏まりました。

 ある程度の量が揃う都度、特別倉庫に搬入しておきます」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「なあシス、これ海から離れて内陸方面に行くほど、阿呆な王や貴族が支配している地になるよな」


(はい)


「だとすると、内陸の国が海の民や森の民にちょっかい出して来ることが考えられるな。

 監視体制は大丈夫か?」


(既に大陸全域が外部ダンジョンになっていますので、全く問題ないです)


「そうか、それじゃあよろしく頼む

 北の海岸線から100キロ以内全てに影響があるように、幻覚の魔道具を設置してくれ。

 それで幻覚を発動させた奴は、30分経って幻覚が収まった後にストレーの時間停止倉庫に放り込んでテミスに説諭させよう。

 その際に重罪を犯していた奴はそのまま牢獄行きだな。

 2度目の幻覚発動者は『変化の刑』にするか」


(あの、ダイチさま。

 終身刑になった者は、全員を変化の魔法で身長50センチにしてしまっては如何でしょうか)


「なるほど、そうすれば体積は約30分の1になるから、最低必要カロリーも30分の1になるのか。

 テミス、どう思う?」


(終身刑収監者は全員を独房に収監してありますので、特に問題は無いと思われます)


「はは、奴らにとっては穀物粥の穀物がヤタラに大きくなったとしか思えないのか」


(はい。

 ところで、一般の傷害未遂犯や脅迫未遂犯については、ダイチさまは変化の刑を3年にしていらっしゃいますよね。

 あれは3年の間同様の犯罪を起こさせないためと、その3年間で反省を促すためなのでしょうか)


「そうだ。

 そういう傷害未遂犯や脅迫未遂犯は、まず貴族や村長などの地位を嵩に着て犯罪を行おうとする者だろう。

 そうした者が身長50センチになってしまえば、貴族家当主ならば当主交代の上幽閉、長男なら廃嫡されて同じく幽閉されることだろう。

 2男以下なら追放だし、村長もたぶん交代だな。

 そうしたことで反省を促したいからだ。


 また、一般の平民で変身刑を受ける者は、その多くは体が大きいか力の強い者だろう。

 そうした連中が力によって弱者から搾取しようとして犯罪を犯すわけだ。


 だが、身長50センチになって非力になってしまったとき、誰も自分を脅して従わせないということに気づくかもしれない。

 そうすれば3年後に元の姿に戻っても更生しているかもしれないからな。

 もちろん、それでまた同様な犯罪を犯すようなら、その時は禁固刑に処す。

 要は一般社会からの隔離だ」


(よくわかりました。

 ご教授ありがとうございます)



「ということでシス、済まんが『変化者用収容所』を作って、終身刑に服している者たちを全員変化させ、移送しておいてくれるか」


(畏まりました。

 幻覚の魔道具を広範囲に起動させても、激増するであろう終身刑収監者たちの食費が大分節約出来そうですね♪)


「そうだな。

 北部海岸から100キロ以内に『幻覚の魔道具』を設置したら、どれぐらいの頻度で発動するのか興味深いな。

 テミスも犯罪者たちの仕分けや説諭が大変だろうが、よろしく頼む」


(はい)


「そうそうテミス、幻覚の魔道具の発動条件に、『教唆』を付け加えて構わないかな。

 直接暴力を振るおうとした者だけじゃなくって、略奪や強盗や暴力行為を命じた者も含めて罰したいんだ」


(そのご判断は、アルス総督としてのダイチさまの権能の範囲内に入ります)


「そうか、ということは俺が決めていいのか」


(はい)


「それじゃあシス、幻覚の魔道具の発動条件に『教唆』も付け加えておいてくれ」


(畏まりました)




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 海の民の避難勧誘は予想以上に順調に進んだ。


 やはり55年前の海氷接岸と、それに伴う大量飢餓死は海の民にとって痛恨の記憶だったのである。

 その惨事を直接経験した者たちはもうほとんど生きていなかったが、当時の飢餓を生き延びた者たちは、その子供たちに徹底して海氷の恐ろしさを語り継いでいた。


 惨事を直接経験した世代から教えを受けた子供らも今や50歳前後になっており、各村々で指導者としての地位にある者たちばかりだった。

 そして、今年は例年より寒くなるのが早いだけでなく、小高い丘にでも登れば遥か北の海に白い海氷が浮かんでいるのが見えたのである。


 海の民、就中その中でも指導的立場にある高齢者たちは戦慄していた。

 全ての民を率いて越冬中の食料確保に必死になっていたのである。


 だが、海は豊かな恵みを齎してくれている反面、一冬丸々暮らせるだけの保存食になる産物は少なかった。

 僅かにイカやアワビの乾物しか利用出来なかったし、その乾物を作ろうとしても海鳥の大群が集まって来るために、鳥追いに多くの人員を割かなければならなかったのである。


 多くの村の指導者たちは、暗澹たる思いでいた。



 そんな中で、或る日突然村々を繋ぐ平坦な道が出来たかと思えば、隣村の村長が何人かの見知らぬ男たちを伴って現れたのである。


 そうして、あらゆる設備が整った越冬場のみならず、膨大な量の穀物を提供してくれるというのだ。

 しかもその条件というのが、親村に作る商会の支店を通じて交易をしてくれというものだけだったのである。


 あの越冬施設と備蓄穀物があれば、海氷が接岸しても村人は全員生き延びられることだろう。

 村長たちにこれを断る選択肢は無かったのであった。



 しかも、その男たちは漁の効率を上げるためと言って、さまざまな道具まで齎してくれた。


 まずは不思議な石の網に囲まれていて海鳥が入って来られない魚干場、大きな舟、漁網の材料になる丈夫な紐、カニ漁のための大きな籠に長いロープ、アワビ漁のための潜水具が提供された。

 さらには浜辺に炊事場と風呂という施設まで作ってくれたのである。

 しかも越冬施設の食料代金は、今後54年間かけて返済すればいいというのだ。



 村人の全滅も覚悟していた村長たちは、この申し出に涙を流して喜んだ。

 そうして、隣村の村長を紹介して貰いたいという要望にも、もちろん真摯に応えてくれたのである。

 彼らは同じ村内で婚姻を繰り返してはいけないということを本能的に理解しており、隣村とはかなりの縁戚関係が結ばれていたからである。



 また、こうした経験を積んだ総督隊や互助会隊の隊員たちは、その経験を生かして巨大湾の外側の地にも足を延ばし始めた。

 なにしろ北部海岸沿いには東西8000キロに渡って約8000もの村があるのである。

 親村に限っても800近い数があり、海氷接岸までの日数はあと1か月以内という予測も為されていた。



 日に日に大きく見え始めた海氷に慄いていた海の民たちは、一も二も無く総督隊や互助会隊の申し出に応じた。

 そしてもちろん、海産物と薪を交換していた隣接する森の民たちも。

 彼らとて、食料のかなりの部分を海産物に依存していたのである。



 だが、森の民の中には強欲な者たちもいた。


「うははははー、莫迦め!

 このように大量の食料を、たった2人の兵に見張らせるとは!

 この食料は全て村長たるわしの物だし、この越冬施設とやらもだっ!

 お前たち村民は、ここに入ってメシが喰いたければ全員わしの奴隷になれっ!」


「そんな…… 

 あの方たちは村人全員にここで暮らせと……」


「なんだと、お前は村長たるこのわしに逆らうのか!

 おいお前たち、こ奴をぶちのめせっ!

 見せしめにするのだっ!」


「「「 へい村長! 」」」



 だが……


「「「 ん? なんだ? なんか痛いぞ?

 ぎ、ぎゃぁぁぁぁ―――っ! 」」」



 村長とその一族が激痛に転がり廻るのを、村民たちはあっけに取られて見ていた。


 そして30分後。


「く、くそうあのメス餓鬼め!

 偉そうに村長の長男であるこの俺様に説教しやがって……


 おい! 親父は牢に入れられた!

 これからは俺様が村長だ!

 お前たちはこの施設の入り口を塞いで、俺の奴隷になると誓った者だけ通せ!

 勝手に通ろうとする奴はぶちのめしてやれ!」


「「「 へいっ! 」」」



 1秒後。


 その場にいた男たちの身長は50センチになっていた。

 中には手に持っていた大きなこん棒に押し潰されている者もいる。

 村長の長男はいつの間にかいなくなっていた。


「さあみなさん、この越冬施設を独占しようとした者たちは排除されました。

 これからは皆さんで協力してここで越冬してください」


「「「 は、はい…… 」」」




 別の森の村では。


「おおーこりゃあすげぇところだぁ。

 喰いもんもやたらにあるし、村の連中に使わせるのはもったいねぇ。

 ここは俺様の国にする。

 もちろん俺が王だ。

 お前ぇたちも俺に従うんなら貴族にしてやるぞ。

 手始めにここにいる奴らを全員追い出して来い!

 逆らう奴がいたらぶちのめせ!」


「「「 へい親分! 」」」


「馬鹿野郎っ!

 親分じゃあなくって陛下と呼べっ!」


「こらこら、ここはダンジョン国のダイチさまの施設だぞ。

 勝手に王様ごっこを始めるんじゃない」


「なんだとこの野郎っ!

 たった2人しかいねぇくせにこの俺様に逆らいやがって。

 おい、まずはこいつらをぶっ殺せっ!」


「「「 へい、陛下っ! 」」」


「「「 ん? なんだ? なんか痛ぇぞ?

 ぎ、ぎゃぁぁぁぁ―――っ! 」」」


 30分後。


「な、なんだったんだ今のは……」

「なんか生意気なガキが罰とかなんとか……」

「あ、親分がいねぇ!」


「そうか、それじゃあ俺が次の王になる!

 まずはお前ぇらあの兵をぶっ殺してこい!」


「「「 へい兄貴っ! 」」」


 1秒後。


「「「 な、なんじゃこりゃぁぁ――っ! 」」」


「な、なんで村の連中があんなに馬鹿デカくなってんだよ!」

「ち、違うっ!

 建物もなんもかんも大きくなってるっ!」

「お、俺たちが小さくなっちまったのか……」


「そうだ、これに懲りてこれからは真面目に生きるんだな」


「「「 う、うぅぅぅぅぅっ…… 」」」





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