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*** 31 いろいろな樹木 ***

 


「それじゃあ木の選別を続けようか」


<カキもどきの木。地球の柿に似た実が生る(甘柿)>


「おっ、これも果樹園行きだな。

 シス君、果樹用時間停止倉庫に転移させておいてくれ」


(はい)



<カキもどきの木。地球の柿に似た実が生る(渋柿)>


「渋柿か。これはこれで使い道があるな。

 なにしろ干し柿の糖度は砂糖の1.5倍だそうだし」



<モモもどきの木。地球の桃に似た実が生る。実はやや小さいが糖度は高い>


「これも果樹園だな。

 お、これは……」


<タケもどき。地球の竹に似ている。タケノコは食用可>


「これは別に竹林用地を作って植えよう。

 タケノコは喰えるし、親竹はいろいろ使えるし」



<クリもどきの木。栗の木に酷似>


「これこれ、この栗の木が欲しかったんだよ。

 なんせ縄文人たちの主食だったようだからな。

 これは多めに植えよう」



<ミカンもどきの木。地球のミカンの木に類似>


「いいねぇ、これも植えよう」



<山ブドウもどきの木。地球の山ブドウの木に類似。やや酸味が強いが食用可>


「よし! ブドウは酒も造れるし、パン用の酵母も取れるからな」



<スギもどきの木。地球のスギに類似>


「はは、スギか。まだアルスには花粉症は無さそうだから大丈夫か」



(あの、ダイチさま)


「ん?」


(そのスギもどきの木なのですが、ダンジョンの幅1メートルの範囲に収まっておりましたのでそれを転移させて来たのですが、それ以外にも直径1メートルを遥かに超える巨木がたくさんございました)


「なんだと…… 

 シスくん、その木があった周囲を半径300メートルでダンジョン化して、一番大きな木を特定してくれ!」


(はっ、少々お待ちを……

 その範囲内では太さ12メートル、高さ40メートルのものが最大でございます)


「そうか、完全に樹齢1000年超だな。

 明らかにダンジョンが出来る前からあったけど、それだけの大木は誰も伐採出来なかったから残されてたのか……


 な、なぁ、それじゃあさ。

 太さ5メートルぐらいのやつを1本だけ転移させてくれ」


(畏まりました。

 これでよろしいでしょうか)


「ふう、樹齢500年かよ。

 日本で売ったらいったいいくらになるんだろうなぁ……


 それじゃあ木の選別を続けようか」



<黒檀もどきの木。地球の黒檀の木に酷似>


「こ、これもヤバイわ…… 超高級木材だ」



<紫檀もどきの木。地球の紫檀の木に酷似>


「こ、これも……」


<タガヤサンもどきの木。地球のタガヤサンに酷似>


「なんだよこれ……

 唐木三大銘木揃い踏みじゃん……」



<ビャクダンもどきの木。地球のビャクダンに酷似。

 ただし、地球のビャクダンとは異なり、他の木の根に寄生せずに独自で育つため、大木化する>


「ビャクダンの大木かよ…… 一体いくらするんだろうな……」


<沈香木。尚、樹脂が固化した伽羅が80キロ付着している>


「うっわー、伽羅まで付いてるのか!

 しかもこの木ってワシントン条約の希少品目第2種指定だぞ!」



<ウォールナットもどきの木。地球のヨーロピアン・ウォールナットに酷似>


「こ、これもヤベぇ……」



<チークもどきの木。地球のチークの木に酷似>


「こ、これも……」



<マホガニーもどきの木。地球のキューバン・マホガニーに酷似>


「や、ヤバすぎるってコレ……

 キューバン・マホガニーって絶滅危惧種に指定されてて、ワシントン条約で取引が制限されてるんだぞ!


 これで世界三大銘木も揃ったか……

 材木屋をアルスに連れて来たら、みんなヨダレ垂らすな……


 な、なあシスくん、この辺りの木って南の方に生えてたのか?」



(はい、ここから2000キロほど南に行った地に、標高2500メートルほどの山地があるのですが、その山地の周囲に多く生えていました)


「そうか、山地のせいで雨が多いからなんだろうな。

 ついでに大陸南部に当たるから、きっと高温多雨の亜熱帯性気候なんだろう。

 はは、将来は希少樹木群生地として保護地域にしてみたいもんだ。

 それじゃあ木の選別を続けよう」




「ふう、これで竹や燃料用や家具・建材用樹30種と栗を含む各種果樹が15種類か。


 シス君、リンゴもどきの木と同じように、ここにある15種類の果樹が生えていた場所を中心に半径200メートルの範囲をダンジョン化して、200本ずつぐらい集めておいてくれ。

 保存は時間停止の収納庫な」


(はい)



 そのとき作業場の方から悲鳴が聞こえて来た。


「どうした!」


 作業場ではひとりのワーウルフが蹲って手を押さえていた。

 辺りにはけっこうな量の血が流れている。



「あ、あの…… こいつが枝を落とそうとして鉈を振ったら、もう一方の手に当たっちまいまして……」


「見せてみろ!

 よし、けっこう深い傷だけど骨までは折れていないか。

 これなら治療用光魔法Lv3で行けそうだな」


 歯を喰いしばっていたワーウルフの腕が光った。



「あ、あれ? も、もう痛くない……」


「す、すげぇ! 傷が塞がってる!」


「マスター殿の治療魔法か!」



「なあ、この中に治療用光魔法を使えるやつはいるか?」


「わ、妾が使えるぞ……」


「おお、それじゃあイタイ子、君はここにいて誰かが怪我をしたら治療してやってくれるか」


「心得たわ……」


「みんな、イタイ子がいてくれるけど、道具は気をつけて使うんだぞ」


 モンスターたちは神妙な顔で頷いている。



「俺はこれからスライム族やケイブバット族、それからホーンラビット族と1階層で鍛錬を行う。

 シスくん、モンスターたちをよく見ていて、何か問題があったら呼んでくれ」


(畏まりました)





「さて、まずはスライム族諸君、6体で俺に攻撃するように。


(((( はい! ))))



 レベル3のスライムが6体並んだ。


 それなりに素早く重い跳躍が大地を襲う。


 大地は基本は避けているが、同時に攻撃された場合にはパリィで防ぐこともある。

 だがそのパリィがクリーンヒットしたときや、手で叩かれて床に落ちたりすると、スライムたちにも徐々にダメージが蓄積していった。



「HPが尽きて死んだスライムがいたら、観戦していたスライムも参加せよ!」


(((( はい! ))))


「もっと! もっと激しく攻撃しろ!

 俺を殺すつもりでかかって来い!」


(((( は、はい ))))



 うん、これパリィの訓練にも最適だけどさ。

 単に手でパリィして避けるだけじゃあなくって、ジャブを当てる練習もしてみようか。

 これだけの数の攻撃にジャブを当てられれば、凄い鍛錬になりそうだ。



 そんな戦闘訓練が1時間ほど続いた。



「おお、もう10体全員が3度死んで、リポップも一巡したか。

 リポップした者はその場でしばらく休むように。


 それではケイブバット族も参戦してくれ。

 俺を攻撃するメンバーが常に6体になるようにだ」


「「「 はい! 」」」



 ほう、ケイブバット族の攻撃手段は手足のツメと牙か。

 当たったらけっこう痛そうだな……


 あ、でもパリィしただけでけっこうダメージが入ってる……

 そうか、こいつら攻撃力はあっても防御力が弱いんだ。



 またそんな訓練が1時間ほど続いた。



「みんな6回以上リポップしたかな?」


 スライムとケイブバットたちが頷いている。


「それじゃあ腹も減ったろう。

 昨日とおなじ菓子パンだが食べてくれ」



(これおいしいねー♪)


(なんか疲れも取れるねー♪)



 そうか、単に甘いものを食べてるからっていうより、地球産の甘い食べ物にはポーションみたいな効果があるのかな……


 それじゃあみんなをちょっと鑑定してみるか。


 おお、みんなけっこうレベルが上がってるじゃないか。

 スライムたちは全員レベル4になってるぞ。

 族長はレベル6になってるし。

 そう言えばさらに黒っぽくなって大きくなってるか。


 ケイブバットたちは全員レベル2になってるな。

 族長はレベル4か。

 まあさっきみたいな戦闘訓練をしていたら、すぐにもっとレベルが上がるだろう。



「それじゃあお前たちはその場で少し休んでいてくれ。

 次はホーンラビット族だ。

 同じように攻撃しろ」


「「「「 はい! 」」」」



 おほー、角を向けて飛んで来るのか。

 それも結構速いぞ。


 だがまあ避けられないことも無いか……


 ホーンラビットたちはパリィされても、地面には足から着地しているためにほとんどダメージは入っていないようだな。


 よし、少しはダメージが入るように、またジャブも混ぜてみよう。

 あ、ついでに少しフリッカーも入れるようにしてみようか。


 お、ホーンラビットたちにもダメージが入り始めたかな。

 うん、こりゃあいい鍛錬だ。


 あれ?

 でもホーンラビットに入るダメージにバラつきがある……


 そうか、左腕の肩や肘の関節だけじゃあなくって、腰や股関節の動きも乗せるとダメージが増えるんだな。


 それならいっそのこと軸足の足首、膝、股関節、胴体、左肩、左肘、ついでに手首まで連動させてフリッカーを打ってみよう。



 おお、なんかホーンラビットのダメージがどんどん上がって来てるわ。


 あっ! なんか今ラビットが光った!


 そうか、今のが『クリティカル』か……


 はは、ラビットのHPが一気にゼロになって、ダンジョンに吸収されちゃってるよ。


 よし! このクリティカルの感覚を忘れないうちにもっと戦おう!



「さあ、もっとどんどんかかって来いっ!」


「「「「 はいっ! 」」」」



 うーん、なんか俺も少し進化して来たような気がする……

 たぶん、『俊敏』と『動体視力』のレベルが上がったな。

 ついでに『器用』も。


 そうか、スキルスクロールだけじゃなくって、実戦経験でもスキルレベルは上がるんだ……



 あ、前からと後ろからの攻撃が同時に来てる。

 こいつらこんな連携も出来るんだ。


 それじゃあぎりぎりまで溜めたあとに、『縮地』で避けてみるか……


 ははは、空中で衝突して2体とも死んじゃったよ。

 まああの鋭い角がお互い頭に刺さったら死ぬわなぁ。



「あと2体参戦だ! 常に6体で攻撃して来い!」


「「「「 は、はいっ! 」」」」



 お、そうだ、飛んできた奴の角って掴めるかな。

 そしたら飛んできた勢いのまま振り回して、他の奴にぶつけてみよう。


 わはは、どんどん数が減って行くわ。

 こいつら目のいい相手は苦手なんだなぁ。


 こんな訓練を続けていたら、修斗の試合でも相手のジャブやストレートを掴まえて引っ張って、体勢を崩すことも出来るようになるかもしれないな……




 ジムでスパーとかやってるときによく思うんだけどさ。


 本当に強い奴の条件って何かって。


 まずはもちろんウエイトだよなぁ。

 運動エネルギーは質量×スピードの二乗に比例するんだから。


 あれほど多くの格闘技が体重別に分かれてるのは伊達じゃあないだろう。

 だから筋肉をつけてウエイトを上げるのも当然だよな。



 だけどさ、それだけじゃないと思うんだ。


 ウエイトよりも重要なのはスピードだよ。


 だって体重が20%増えても一撃のインパクトは20%しか増えないのに対して、スピードが20%上がったら、インパクトは44%増えるんだから。



 次に大事なのは『動体視力』だよな。


 それに加えて相手の動きを見て、次の動作を予測することだろう。

 どんなに重いパンチやキックでも、当たらなければ意味が無いんだから。


 昔の剣豪たちは、切り合いをするときに、目の焦点を相手に合わせずに常に全体をぼんやり見ていたそうだしな。

 たぶんそうして全身の筋肉を視野に入れることで、次の動作を『予測』していたんだろう。



 その次に必要なのはやっぱり『敏捷』だろうなあ。


 相手の攻撃を受けてもいいけど、パリィ以外でガードするのって、意外にダメージが入るし。


 だから、基本はサイドステップやバックステップで躱すべきなんだ。

 そうした躱すためのステップでも『縮地』が使えるようになったら最高だわ。



 うん、この多数を相手に躱す訓練はこれからも続けて行こう。


 ありがたいことに、こいつらもどんどんレベルが上がって来てるおかげで、スピードも増して来てるし……





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