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*** 27 地表ダンジョン ***

 


 大地はまたタマちゃんを頭の上に乗せてダンジョンに入り、最下層のコアルームに転移して貰った。

 その場には既に22種族の族長たちが集まっている。



(ねえタマちゃん、ダンジョン管理システムとコンタクトするときってどうすればいいのかな?)


(ダンジョンの中にゃらフツーに音声や念話で会話出来るにゃ)


(ありがと)



「みんなよく集まってくれた。

 それにしてもこの部屋は少し狭いな。

 今後も族長会議はここで開きたいから少し拡張するか。

 ダンジョン管理システム」


(お呼びでしょうか特命全権ダンジョンマスターさま)


 小学生ぐらいの男の子の声が聞こえた。



「その呼び方だと長いからダイチでいいぞ」


(それではダイチさま)


「この部屋を30メートル四方ぐらいに拡張するにはいくらかかる?」


(8ダンジョンポイントでございます)


「通常のダンジョン拡張と同じ割合か」


(はい)


「普通の洞窟風だとちょっと殺風景だな。

 神殿風にしてくれ」


(畏まりました。それでは40ダンジョンポイントでございます)



「照明は明るめに頼む。

 費用はさっきイタイ子に渡したDPカードからではなく、この俺のゴールドポイントカードから払う。

 もうゴールドポイントとダンジョンポイントの等価交換の件については聞いているな」


(はい)


「それじゃあカードはどこに置けばいいんだ?」


(その部屋の隅にあります筐体のスロットルに入れて頂ければ……)


「わかった。これでいいんだな」


(はい…… ひ、ひぃぃぃぃっ!)


「どうした?」


(あ、あのあのあの……

 こっ、このカードに入っているゴールドは……)


「うん、まだ110憶ゴールド以上入ってるだろ」



「「「「「 !!!!! 」」」」」


「ひ、110憶ゴールドだと……」


「な、なんだそれ……」


「そ、それを全てダンジョンポイントに交換出来るとは……」



「これは南大陸ダンジョンで80年間ダンジョンマスターをやっていた俺のじいちゃんが貯め込んでたポイントなんだ。

 そのじいちゃんが去年亡くなったんで、神界が俺に相続させてくれたものなんだよ」


「み、南大陸ダンジョンのダンジョンマスターじゃと!」


「そうだよ」


「そ、そそそ、それはまさかあの伝説のダンジョンマスターか!」


「なんだ知ってたのか」


「10年に一度はダンジョンコア同士で情報交換もするからの。

 いつも南のコアには自慢話を聞かされておったわ……」


「はは、そうだったんだ」


「お前はその孫だというのか……」


「うん、正真正銘、直系の孫だよ。

 8年前に事故で両親が亡くなったんで、それからはじいちゃんに育ててもらったんだ」


「それでダンジョンマスターの職も継いだと申すのか……」


「そうだね」


「な、なぜ南大陸ダンジョンを引き継がなかったのじゃ……」


「だって、あっちはもう既に大成功してるじゃない。

 だから誰がダンマスやっても変わらないよね。

 でも、この中央大陸は大変そうだから、神さまに頼んでこっちの担当にしてもらったんだ」


「なんじゃと……」



「それじゃあダンジョン管理システム、この部屋を広げてくれ」



 部屋がみるみる広がって行き、周囲には神殿風の装飾が現れた。


(すげぇ……)



「あ、ソファなんかも揃えられるのか?」


「ダイチダイチ、ソファは地球産の方がいいにゃ。

 神界のは質実剛健過ぎて硬いにゃ」


「それじゃあ今度買って持ってくるか」


「それがいいにゃ」



「そうだタマちゃん、飲物ってなにかあったっけ」


「うーん、缶コーヒーならたくさんあるけどにゃあ。

 あとはスポドリかにゃ」


「それ25本ずつ出してくれる?」


「うにゃ」



「さあみんな、この飲物を1本ずつ持ってその辺に座ってくれ。

 あ、それはこうやって開けるんだ。

 もしどっちも飲めないようなら水を出すから言ってくれ」



 各人が飲み物を手に取って座った。

 皆、缶やペットボトルを開けて匂いを嗅いだりしたあとに、おそるおそる口に含んでいる。



「みんな、その飲物はどうかな?」


「旨いです……」


「こ、このように旨い物、初めて飲み申した……」


「モンスター村に持ち帰って子供たちにも飲ませてやってもよろしいでしょうか……」


「ああ、モン村にはあとで似たようなものを持って行くから、気にせず飲んじゃっていいよ。

 収納くん、収納部屋に果汁系のジュースってどのぐらいあったかな?」


(あと500本ほどでございます)


「じゃあ後で一旦地球に戻って、淳さんに果汁系ジュースを1万本ぐらい買っておいてくれって頼もうか。

 菓子パンも各種1万個ほど」


「それがいいにゃ」



「さて、それでは俺のこれからの方針を説明するぞ」


 モンスターたちが居住まいを正した。



「最初の目標は2つある。

 ひとつ目は俺自身を鍛えてレベルを上げることだ。

 よって君たちモンスタースタッフには、俺と戦うという任務が与えられる」


「そ、そのようなことをして、もしモンスターに倒されて死んでしまったらどうするのじゃ……」


「俺は神界に頼んで、ダンジョン内に限りいくら殺されてもリポップされるようにしてもらった。

 もちろんHPも全快で戻れる」


「な、なんじゃと……

 そのようなこと聞いたことがないわえっ!」


「あれ? 南のダンジョンコアから聞いてなかったのか?

 じいちゃん、ああ南のダンマスはそうやって自分を鍛えて、ダンジョンの外のクニグニを回ってたんだぞ」


「!!」


「そうじゃなかったら、あんなにゴールドを貯められるわけないだろうに。


 もちろん俺が殺されたときには、ダンジョンが得られるダンジョンポイントは通常のレベル×100じゃあなくってその10分の1だけどな。

 だから俺やモンスターたちが痛い思いをすればするほど、ダンジョンにはポイントが入るわけだ。

 ついでに俺のレベルも上がって、ダンジョンの外に出てもそう簡単には死なないようになれるだろう」


「………………」


「取敢えずの目標は俺がレベル50になることだ」


「いったい何回死ぬつもりじゃ……」


「ん? 1万回でも10万回でも必要なだけだ」


「………………」


「でもモンスターたちは数がいるから一人当たり死ぬのは数百回で済むかもね」


「「「「「「 ……………… 」」」」」」



「この鍛錬には3年を充てるつもりでいる。

 まあレベル50になったら外を回りに行くが。

 そうして、その間に出来うる限りの調査もしておきたい。

 そこでダンジョン管理システムくん」


(はっ)


「うーん、長いな。

 君の呼び名も考えようか」


(光栄です)


「そうだな、ダンジョン管理システムだから『ダン吉』はどうだ?」


(相変わらず酷いにゃダイチ……)



(あの…… ダイチさま……)


「なんだ?」


(わたくしには感情回路というモノがございません。

 ですが不思議なことに、今私の回路の中をナニかが駆け巡っているのです。

 ひょっとしたら、ヒューマノイドはこれを『絶望』と呼んでいるのでしょうか……)


「そ、それじゃあ『ダン助』はどうだ?」


(あ…… また違ったモノが流れ始めました……

 こ、これはひょっとしたら『慟哭』と呼ばれているものなのかも……)


「そ、それじゃあさ、システムだから『シス君』っていうのはどうだい?

 これならなんか今風でクールだろ」


(ああ、また違ったモノが……

 こ、これはきっと『歓喜』と呼ばれるものでございましょう♪)


「お前絶対感情回路あるだろ」


(そ、そそそ、そのようなモノはございません!)


「まあいい、それじゃあシス君、このダンジョンから最も近いヒューマノイドのムラやクニは、どこにあってどれぐらいの距離にあるんだ?」


(不明です)


「えっ」


(外の世界の情報を得る手段はございませんので不明です)


「それじゃあ他にその情報を知っている者は?」


「あ、あの…… 500年前には北に1日ほど行った地にマチと呼ばれる集落があったそうじゃ。

 ダンジョン挑戦者共が拠点にしていると言っていたわ」


「今は?」


「………………」


「500年も経ってもう誰もダンジョンに来なくなってるんだから、その街も無くなってるかもしれないよね」


「そ、それはわからん」


「はぁ、みんなそんなことも調べずに、ただ挑戦者が来ないことを嘆いていたのか」


「「「「「 ……………… 」」」」」



「シス君」


(はっ!)


「このダンジョンから、地表に幅1メートルのダンジョンを拡張するとして、10キロ当たりいくらかかる?」


(ち、地表にでございますか?)


「そうだ」


(な、何分前例が全く無く、いくらかかるかは申し上げようがございません……)


「ジャッジメント」


 中性的な子供の声が聞こえてきた。


(お呼びでございますか特命全権ダンジョンマスターさま)


「今の話は聞いていたか」


(はい)


「それでは神の判断を問う。いくらだ?」


(お待ちくださいませ、ただいま神が考え中でございます)


「新たに空間を用意する必要も無く、洞窟も作らずに済み、ましてや天候制御も自然に任せればいい。

 単に地表の領域をダンジョンと認識して、外部の情報を得るだけだ。

 出来るだけ安くしてくれと言え」


(はい……

 通常の洞窟ダンジョン拡張であれば、延床面積1万平方メートル当たり100ダンジョンポイントでございますが、20ダンジョンポイントではどうかとのことでございます)


「高いな。

 単に認識するだけなんだ。

 もっと安くしてくれと言え」


(は、はい……

 ならば10ダンジョンポイントではどうかとのことです)


「もう一声っ!」


(は、はっ!

 あの…… 5ダンジョンポイントとのことですが……)


「よし! それで決めだ!」


(あの…… 神さまよりの御伝言がございます……)


「ん?」


(『持ってけドロボー!』だそうでございます……)


(かみさま……

 な、なあタマちゃん)


(んにゃ?)


(今度さ、地球産の柔らかいソファとお茶の葉と茶器のセットを買って、神さまに贈ろうか。

 あと、ツバサさまにもソファとコーヒーのセットを)


(ワイロかにゃ?)


(そ、そそそ、そのようなものではございませんっ!

 単にご挨拶の品でございますっ!)


(じゃあそうするにゃ♪)



「お、おほん。それではシス君」


(は、はい)


「このダンジョン前の広場から南北方向と東西方向に幅1メートルのダンジョンを海に当たるまで広げてくれ。

 この大陸はだいたい東西2万5000キロ、南北1万キロの四角形に近い形をしているから、総延長は3万5000キロほどになるだろう」


(川の部分はどういたしましょうか)


「川底をダンジョンとしてくれ」


(畏まりました。

 総費用はおよそ1万7500ダンジョンポイントになります)


「「「「「 !!!!! 」」」」」



「実行するのにどれぐらいの時間がかかる?」


(単に認識するだけでございますので数時間ほどかと推察されますが……

 やってみないことには……)


「わかった。取敢えず始めてくれ」


(はい)



「それでは早速俺の修練を始めよう。

 第1階層に戦闘に手ごろな部屋はあるか」


(ございます)


「それではまずそこに行って、俺とスライム族との戦いを行う。

 次はケイブバット族、その次はホーンラビット族との戦いにするつもりだから、念のために一応控えていてくれ。

 それ以外の種族は自由行動とする。

 そうだな、対戦相手の配置や数の調整のために、最初はイタイ子もその場にいてくれ」


「承知した……」



「俺は最初は魔法やアクティブスキルは使わない。

 対戦するモンスター諸君は一切の遠慮なく、思いっきり戦ってくれ。

 明日は朝8時からこの場で族長会議を行う」


(あの、ダイチさま。モンスター村には時計がございませんが……)


「それじゃあシス君、7時と8時10分前にチャイムを鳴らしてくれ」


(あ、あの…… 時刻の定義をして頂けますでしょうか……)


「ああ、太陽の高度が最も高くなるときが昼の12時だ。

 翌日同じように12時になるまでの時間を24時間とする。

 つまり1日を24等分したものが1時間だ。

 1分は60分の1時間になる」


(畏まりました)


「それでは解散」





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