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*** 24 じょびじょば ***

 


 その後も順調に大地の修練は続き、体感時間では実に3年が過ぎようとしていた。

 その間、地球では1か月が過ぎており、県立高校の受験日まではあと2日になっている。


 おかげでステータスもかなり育って来ていた。



 *****************


 名 前:北斗大地

 出 身:地球

 種 族:ヒト族

 年 齢:15歳 男性

 適 職:ダンジョンマスター

 職 業:特命全権ダンジョンマスター(アルス中央大陸ダンジョン)


 総合レベル:28


 体 力: 90 (90)

 魔 力:150(150)

 攻 撃:120

 防 御:65

 敏 捷:95

 器 用:50

  運 :50


 加 護

  即死回避 帰還


 ギフト

  ジャッジメント


 取得スキル&魔法総数 : 96 (388,800G)


(以下略)


 *****************




「ふう、それじゃああと2日は自宅に戻って受験に備えるよ」


「それがいいにゃ」


「淳さんも買い物とかあるでしょうし、これから地球時間で3日間はお休みとさせてください」


「了解です」




 大地は気合を入れるため、馴染みの床屋に行っていつものソフトモヒカンにしてもらった。


 一度中学の生徒指導教員にイチャモンをつけられた髪型だが、大地は『なんで後ろ刈上げは良くって横刈上げはダメなのかご説明頂けますか?』と言い返して絶句させた。


 以来文句をつけられたことはない。




 受験当日は実にヒマだった。


 満点が100点の英国数はそれぞれ1時間、50点の理社は40分の試験時間だったが、大地は半分以下の時間で解答を終えている。


(まあ今の俺の理解は大学院生レベルだから当然なんだろうけど。

 それにしても各教科の『理解スキル』はすごいわ。

 問題見るだけで、出題者の意図までありありと伝わって来るもんな。

 はは、ダンジョンの外でもスキルを使えるようにして貰えてほんっとよかったよ。


 それにしてもよくもここまで出題傾向を変えたもんだ。

 こりゃ各教科とも例年に比べて10点以上、いや20点近く平均点が下がるぞ。

 まあ、その分合格ラインも下がるんで問題ないだろうけど)



 各教科試験の試験時間が終了するたびに、受験生たちからはため息とも悲鳴ともつかない声が漏れている。

 中には顔面蒼白になっている者もいた。


(暗記に頼る内容から、思考力や応用力を見る問題に切り替えたっていうことだな……)



 それでも試験が終わって開放感を味わっていた大地は、また収納部屋に戻ってゆっくりした後タマちゃんと食事をした。



「にゃあダイチ」


「なぁにタマちゃん」


「もうダイチもかなりレベルを上げたし、そろそろアルスに行ってみにゃいかにゃ」


「うん、俺もそう思ってたところ」


「それじゃあ一休みしたらアルス中央大陸ダンジョンに行ってみるにゃ」


「今向こうは何時ぐらいなの?」


「日本とアルス中央大陸ダンジョンの時差はちょうど12時間にゃから、向こうは朝の6時かにゃ」


「それじゃああと2時間ぐらいしたら行こうか。

 あんまり朝早いと向こうも迷惑だろうから」


「うにゃ、ダンジョン管理システムには連絡を入れておくにゃよ」


「よろしく」




 市内の自宅にも戻って荷物を加え、地球時間で30分後に大地はタマちゃんとともにアルス中央大陸ダンジョンの入り口前に転移した。


 一応各種物資も追加して収納庫に入れてある。



(おー、なんかすげぇ数のモンスターが出迎えてる……

 ざっと見たところ20種500体ぐらいか。


 中央にいるのはゴーレム族か。


 あ、あれはゴブリン族だな、その隣はオーク族で、あっちはオーガ族か。


 うっわー、あそこにいるの、まるっきり恐竜じゃん!

 図鑑で見たラプトルそのものだよぉ!



 あ、でもこれ……

 ねえタマちゃん、このモンスターたちって大きさや形から言って、全員『戦闘形態』じゃない?)


(その通りだにゃあ)


(ん?

 なんだあの最前列にいる耳の長い幼女は……)



「お前が新たなダンジョンマスターかっ!」


(おほっ、幼女いきなりケンカ腰っ!)



「そうだけど君は?」


わらわはダンジョンコアの分位体じゃっ!」


(のじゃロリ……)


「神界め、性懲りもなくまた地球のヒト族をよこしおったか!

 しかも日本人じゃとっ!」


(あ、今俺簡易鑑定されたな……)



「帰れ帰れ!

 お前なぞ必要としておらん!

 しっぽを巻いて帰るがよい!

 ダンジョンになぞ入れてやるものかえ!」



(そうか、これ、俺をダンジョンに入れないためのモンスターバリケードだったんだ。

 そういえばみんなおっかない顔して俺を睨んでるわ……)



「なぁ、なんでそんなにダンジョンマスターを嫌ってるんだ?」


「もちろん全員が役立たずだったからじゃ!

 特に最近呼ばれた日本出身のダンジョンマスターは最悪じゃ!

 何もせずにただ飲んで喰って遊んでるだけ。

 あまつさえ当初神界から預かったダンジョンポイントを、全て自分のために使い果たして地球に帰ってしまいおったわ!」



(あ、よく見ればこの子、足が震えてるよ。

 そうか、決死の覚悟で俺を追い返そうと頑張ってるんだ……

 今までのダンジョンマスターはそんなに酷かったんだな……)



「さあ、ここに並んだモンスター軍団に食い殺されるか地球に帰るかのどちらかを選ぶのじゃ!」


 モンスターたちが一歩前に出た。



(ほう、どのモンスター種族も前列にいるやつほど強そうだ。

 雑兵を前に出してエラいやつが後ろで踏ん反り返っているわけじゃないんだな。

 最後方の小さな子供たちや女性を守ってるのは2番目に強そうな奴らか……)



 タマちゃんが口を開いた。


「にゃあダイチ、ここのダンジョンコアもモンスターも、ここまで反抗的にゃと使い物にならないにゃ。

 あちしが全員蹴散らすから、一緒にダンジョンコアを砕きに行くにゃぁ」


「な、ななな、なんじゃとっ!

 お前ごとき矮小な者に何が出来る!」


「ダイチ、これからあちしは戦闘形態ににゃるけど驚かにゃいで欲しいにゃ」


「う、うん」



 タマちゃんが光った。


 その光の中でタマちゃんがみるみる大きくなって行くのがわかる。


 体毛も白から黒っぽいものに変わって行った。



(おいおい、『質量保存』の法則はどこ行ったんだよ……

 物理学、ちゃんと仕事しろよな。

 でもまあ魔法が有ったりする時点で今更か……)



 数秒後、そこに現れたのは巨大な猫、いやもはや虎に近い生き物だった。

 しっぽを除いても体長は5メートル近い。


 体毛はほとんど真っ黒になったが、表面はところどころ赤いトライバル模様に覆われている。

 さらに顔は歌舞伎の隈取りのような赤い模様に覆われていた。



(こ、怖ぇ~)



「な、なんだあの化け物は……」


「へ、ヘルキャット……」


「そのような雑魚と一緒にするでない!

 我はインフェルノ・キャットであるっ!」


「な、なんだと……」


「あの古代竜種と並ぶ天の殺戮者……」



(タマちゃん…… キャラまで変わっちゃってるんですけど……)



 モンスターたちは慄きながら一歩下がった。


 後方からは、女性たちの悲鳴や子供たちの泣き声も聞こえて来ている。



 さらにタマちゃんの全身から火が噴出した。

 ダイチも一歩下がる。


(この火はダイチには影響にゃいから大丈夫にゃ)


(そ、そうでしたか……)



「さて、ダイチよ。我の背に乗れ」


 タマちゃんが腹を地面につけた。


 大地は恐る恐るその背に跨る。



「ダイチよ、これも持つがよい」


 その場に大きな金づちのようなものが現れた。

 鉱石採取用のハンマーのように片側が尖っている。



「なにコレ?」


「ダンジョンコアクラッシャーだ。

 これで叩けばいかに強靭なダンジョンコアといえども粉々よ。

 今からここにいるモンスター共を焼き尽くし、ダンジョンの最下層に行ってコアを砕くぞ」


 後方からの悲鳴と泣き声が大きくなった。



「そ、そそそ、そのようなことをしたらダンジョンが消滅するぞぇっ!

 も、もちろんモンスターもじゃ!」


「問題ない。

 こちらにおわすは神界の神に直接任命された特命全権ダンジョンマスター様である。

 そのお方様を追い返そうとする者共など不要だ。

 神界より新たなコアを賜って、ここより離れた地にもうひとつダンジョンを作ればいいだけの話よ」


「なっ、ななななな、なんじゃとぉっ!」



 そのとき最前列中央付近にいた大きなロックゴーレムが、ダンジョンコアの分位体の胴体を掴んで持ち上げた。


 そのまま分位体を大地に向けて突き出す。



「新たなるダンジョンマスター、いや特命全権マスター殿よ。

 わ、我ら22種族の族長全員と、このコア分位体の命を差し出す。

 だ、だからどうか女子供だけは助けてやって欲しい……」



(あ、なんか耳に聞こえる音はごうんごうんいってるだけだけど、話の内容は理解出来るわ。

 さすがは『異言語理解Lv5』だね)



 幼女分位体のじゃロリがジタバタしながら喚いた。


「こ、こここ、ここな裏切り者がぁっ!」



「勘違いするでない、コア分位体よ。

 確かに我らモンスターの役割は、ダンジョンコアを守ってダンジョン挑戦者と戦うこと。

 だからといって、我らの主人は貴様ではないのだ。

 貴様は単に守られるだけの存在である。

 そもそも神界が任命された新任マスターを、話も聞かずに追い返すのは理不尽だと言ったであろう」


「な、なんじゃとぉっ!」


「さあ皆の者、ダンジョンまでの道を開けるのだ!」



 後方の女たちや子供たちが蜘蛛の子を散らすように逃げてゆく。


 最前列の族長と思しき巨漢たちは、皆その場に手を突いて首を差し出した。


 後方からは「父ちゃぁ~~ん!」などという子供の悲痛な声も聞こえる。



 大地はふとダンジョンクラッシャーを手に取ってみた。


 幼女分位体のじゃロリと目が合う。


「ひぃぃぃっ!」


 じょびじょば!



(あー、このコア分位体子ちゃん、しっこ漏らしちゃったわー。

 あーあー、白目剥いて首仰け反らして失神しちゃってるわー)



「そこの君」


 2列目にいたゴブリンが首を傾げながら自分を指さした。


「ああそうだ、そこのゴブリンくんだ。

 ここから一番近い水場はどこにある?」


「へ、へい、ここからですと、そこの斜面を下った先の川になりやす」


「それじゃあきみたち、ご苦労だけどこの分位体を連れてって、洗ってやってくれ」


「へ、へい!」



「さて、それじゃあみんなその場に座ってくれ。

 とりあえず詳しく事情を聞かせてもらいたい。


 ああ、タマちゃんももういいよ。

 元の姿に戻ってて」


「うにゃ」


 タマちゃんは縮んで元通りの姿になり、その場に座って毛づくろいを始めた。



(ねえタマちゃん……

 毛づくろいはいいんだけど、その両脚おっぴろげて座ってお腹を舐めるっていうのは、女の子としてどうかな?)


(ワーキャット状態でそれやると確かにあちしの女が終わるけど、今は猫形態だからいいのにゃ)


(さいでっか……

 ところで、タマちゃんは風魔法とかで俺やみんなの声を全員に届けることって出来るかな?)


(『音声拡散』にゃら簡単にゃ)


(それじゃあよろしく)


(うにゃ)





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