*** 19 スキルと魔法ゲット ***
あれ…… でも待てよ。
アルスでの80年をフルに使っても、120億ゴールドを稼ぐには、年あたり1億5000万ゴールド、1日あたり約41万ゴールドも稼がなきゃなんないじゃないか。
それ、レベル20のモンスターと1日2万回以上戦うんだぞ……
いくらなんでも無理だろうに……
あっ! そ、そうか!
じいちゃんはレベル20のモンスター50体ぐらいと同時に戦ったんだ!
そうして全てのモンスターを倒せば、ゴールドポイントは20×50×50になって5万ポイントが手に入るんだ!
それを1日8回こなせば、日に40万ポイント稼げるんだ……
つまりモンスターハウスを日に8回も攻略してたんだ!)
天使が微笑んだ。
「そうなの。
まさに伝説のダンジョンマスターにふさわしい鬼気迫る行動力だったわ。
神界の神々も慄く……
でも、こんなにすぐその行動に気が付くなんて、さすがはコーノスケさんの薫陶を受けたお孫さんね……」
「これだけのゴールドの相続を相続させて頂いて、かつダンジョンポイントへの交換も認めて下さるとは……」
「うふふ、これなら当初に渡す準備金としてのダンジョンポイントの増額が認められなくても十分でしょ」
「もちろんです」
「それじゃあ、これは初期費用のカードよ。
2万ダンジョンポイントが入ってるわ」
「ありがとうございます」
「それからあなたもダンジョンでモンスターたちと戦ってレベルを上げるつもりなのよね」
「ええ」
「レベルさえ上げれば、それに応じてスキルや魔法を得るためのゴールドは充分ね。
そうなれば、あなたはもはや神に等しい存在になれるわよ。
もちろんダンジョン内限定だけど」
「はい……」
「でも……
いくらダンジョン内の神になれても、あの中央大陸の状況は変わらないわ。
誰もダンジョンには来ないし、もしダンジョンに挑む挑戦者が現れたとしても、その人に与える恩恵でまた戦火が拡大してしまうかもしれないんだもの」
「承知しています」
「それでも状況を打破出来る方法があるというのね……」
「こればっかりはやってみないとわかりませんが、試すだけの価値のある戦略は持っているつもりです」
「そう、それじゃあ楽しみにしているわ。
ねえタマちゃん」
「はいにゃ」
「これからダイチさんのスキルや魔法なんかを用意して、試しに中央大陸ダンジョンに行ってみるんでしょ。
よろしくサポートしてあげてね」
「もちろんですにゃ」
「それじゃあわたしはこれで失礼するけど、もしなにか困ったことや相談事があったらすぐに連絡をくださいね」
「ありがとうございます」
天使は微笑みながら消えて行った。
「さてと、それじゃあお腹減ったからごはんにするにゃ。
食べ終わって一休みしたら、スキルと魔法をゲットするにゃよ」
「あ、ああ……」
タマちゃんはお刺身盛り合わせとカップラーメン(麺だけ)をチョイスした。
大地はのり弁と幕の内弁当を食べながら、みそ汁代わりにラーメンの汁を飲んでいる。
「食事が終わったら、とりあえず『鑑定』と『身体強化』と『防御』と『異言語理解』のスキルをレベル3まで取るにゃ。
異世界基本セットにゃよ。
それから他のスキルや全属性の魔法能力をゲットするにゃ」
「あれ? たしかゴールドポイントを持ってても、総合レベルが足りないとスキルって取得出来ないんじゃなかったけ?」
「ダイチは既に総合レベルが8になってるにゃ。
伊達に剣術や格闘技の修練を積んでたわけじゃないのにゃ」
「そうだったのか……」
「それじゃああっち行くにゃ」
タマちゃんは、なんだかたくさんの小さな巻物が並んでいる棚の前まで行くと、大地の頭の上に飛び乗って来た。
「まずはその一番下の棚にある青い巻物を左から3つ取るにゃ」
「これ?」
「うにゃ。
それが『鑑定』のスキルスクロールにゃぁ。
まずはLv1って書いてある奴を広げるにゃよ」
(あ、なんか読めない字でなにやら書いてある……
これがアルス語か。
でも『鑑定Lv1』って日本語で書いたポストイットが貼ってある。
きっとじいちゃんが貼り付けておいてくれたんだな……)
大地が巻物を広げると体が淡く光った。
「これでダイチは『鑑定Lv1』のスキルをゲットしたにゃ♪」
「なあタマちゃん、このスキルって何ゴールドなんだ?」
「レベル1のスキルは一律50ゴールドにゃよ。
レベル2は150ゴールドでレベル3は450ゴールドにゃ。
レベルが1上がるごとに必要ゴールド数が3倍になるんにゃ」
「けっこう高いんだね……」
「まあ、貴重なスキルばっかしだからにゃあ」
「それもそうか」
「それじゃあ、自分の体の一部を見ながら心の中で『鑑定』って言ってみるにゃ。
ここはコーノスケの作った空間収納部屋の中にゃから、準ダンジョン領域として扱われるんで魔法も使えるんにゃ」
「うん」
(『鑑定』……)
*****************
名 前:北斗大地
出 身:地球
種 族:ヒト族
年 齢:15歳 男性
総合レベル:8
*****************
「な、なんか頭の中にディスプレイが出て来たんだけど……
割と簡単な内容なんだね」
「そりゃあレベル1だからにゃ。
それじゃあレベル2と3のスキルスクロールも開くにゃ」
「うん」
大地の体がまた淡く2回光った。
「また自分を『鑑定』してみるといいにゃ。
『鑑定』はレベルの高いものを使っても、消費魔力は一律1MPにゃよ」
「うん」
(『鑑定Lv3』……)
*****************
名 前:北斗大地
出 身:地球
種 族:ヒト族
年 齢:15歳 男性
適 職:ダンジョンマスター
職 業:特命全権ダンジョンマスター(アルス中央大陸ダンジョン)
総合レベル:8
体 力:10(10)
魔 力: 8(10)
攻 撃:10
防 御:10
敏 捷:10
器 用:10
運 :50
加 護
即死回避 帰還
ギフト
ジャッジメント
スキル
アクティブ
鑑定Lv3
保有ダンジョンポイント
11,999,999,350
*****************
「お、少し詳しく見えるようになった。
でもまあレベル3だとこんなもんか……
ところで魔力が2減って8になってるのは……」
「もちろん『鑑定』を使ったからにゃ」
「そうか、スキルも魔法も魔力を消費するんだもんね」
「そうにゃ。
総合レベルが上がれば保有魔力量は増えるし消費魔力量も減るにゃ」
「なるほどね。
ところでタマちゃん、タマちゃんも『鑑定』していいかな?」
「ふふ、いいにゃよ」
*****************
名 前:タマ
出 身:神界
*****************
「あれ?
名前と出身しか見えないんだけど……」
「にゃ、あちしは『隠蔽Lv9』を持ってて、それパッシブ展開してるからそれだけしか見えないにゃ。
地球やアルスには『鑑定』持ってるようなやつは、ダンジョンコア以外にいにゃいけど念のためにゃ」
「そうなんだ」
「それじゃあダイチ、次は『身体強化(A)』と『防御(P)』と『異言語理解(P)』を取るにゃよ」
「うん」
「それじゃあ次は好きなスキルを取っていいにゃ」
「そ、それじゃあさ。
『国語理解』と『数学理解』と『英語理解』と『社会科理解』と『理科理解』を取っていいかな……
い、いちおう受験生なもんで……」
「ははは、どうぞご自由ににゃ」
「でもさ、これレベル3まで取ると、ひとつのスキルで650ゴールドも使っちゃうよね。
それにレベル10まで取りたいのもあるから、あんまり無駄遣い出来ないし。
だからなんかもったいないって言うかなんか……」
「コーノスケがあれほどまでに頑張ってゴールドを貯めたのは、ダイチにスキルを取って欲しかったこともあるにゃよ。
それもアルスで死なないようにするためや、有意義な人生を送らせたかったからにゃ。
だからもったいなくなんかないにゃ」
「そ、それもそうか。
全てはじいちゃんに感謝だ。
それじゃあ死なないためのスキルや、役立ちそうなスキルも全部取るよ」
「それがいいにゃあ」
「ふう、ようやく全部取り終わったかな。
タマちゃんから見て取り忘れてるスキルってある?」
「こんなもんかにゃ。
それじゃあまた『鑑定』で自分をチェックしてみるといいにゃよ」
「うん」
(『鑑定』……)
*****************
名 前:北斗大地
出 身:地球
種 族:ヒト族
年 齢:15歳 男性
適 職:ダンジョンマスター
職 業:特命全権ダンジョンマスター(アルス中央大陸ダンジョン)
総合レベル:8
体 力:10(10)
魔 力: 6(10)
攻 撃:10
防 御:10
敏 捷:10
器 用:10
運 :50
加 護
即死回避 帰還
ギフト
ジャッジメント
取得スキル&魔法総数 : 74(48,100G)
スキル(身体系)
アクティブ
体術Lv3 剣術Lv3 棒術Lv3 投擲術Lv3
騎馬術Lv3 回避Lv3 縮地Lv3
命中率アップLv3 ロックオンLv3
パッシブ
身体強化Lv3 防御Lv3
敏捷強化Lv3 動体視力強化Lv3 臭覚強化Lv3
視覚強化Lv3 夜目Lv3 聴覚強化Lv3
スキル(耐性系)
アクティブ
なし
パッシブ
物理攻撃耐性Lv3 精神耐性Lv3 痛覚耐性Lv3
麻痺耐性Lv3 呪術耐性Lv3 毒耐性Lv3
石化耐性Lv3 腐食耐性Lv3
スキル(その他)
アクティブ
鑑定Lv3 気配遮断Lv3
索敵Lv3 消音Lv3
武器製作Lv3 防具製作Lv3 道具製作Lv3
薬製作Lv3 錬金Lv3
睡眠Lv3 修復Lv3 料理Lv3
演技Lv3 隠形Lv3 手加減Lv3
地図作成Lv3 威圧Lv3
虚偽看過Lv3 暗記Lv3
国語理解Lv3 英語理解Lv3 数学理解Lv3
社会科理解Lv3 理科理解Lv3
パッシブ
気配察知Lv3 危険察知Lv3
異言語理解Lv3 罠感知Lv3
エキストラスキル(全てパッシブ)
物理防御力アップLv3 物理攻撃力アップLv3
魔法防御力アップLv3 魔法攻撃力アップLv3
経験値獲得アップLv3 敏捷アップLv3 器用アップLv3
成長促進Lv3 魔力消費半減Lv3 回復促進Lv3
魔法(全てアクティブ)
火魔法Lv3 風魔法Lv3 水魔法Lv3
氷魔法Lv3 土魔法Lv3 光魔法Lv3
空間魔法Lv3 雷魔法Lv3 飛行魔法Lv3
補助魔法Lv3 重力魔法Lv3
保有ダンジョンポイント
11,999,951,900
*****************
(4万8750ゴールドも使ってしまった……)
「そ、そういえばタマちゃん。
ふつーのダンジョン挑戦者の人って、こういったスキルスクロールはダンジョン内のドロップ品として手に入れるんだよね」
「うにゃ」
「それじゃあ、ここにあるようなスキルや魔法のスクロールを自由に使える俺って……」
「それもコーノスケの遺産にゃ」
「そうか、じいちゃんのおかげか……」
「その通りにゃ。
さて、それじゃあこれからスキルや魔法を全部試すにゃよ。
でもその前に、いろんな物を見て『鑑定』を5回使うにゃ」
「うん」
(それじゃあこの机を見ながら『鑑定』)
『机:地球産。総マホガニー製の高級品。推定価格200万円』
(高っ!
そ、それじゃああの黒い扉付きのキャビネットは……)
『キャビネット:地球産。総黒檀製の超高級品。推定価格500万円』
(もっと高っ!)
『ソファ:地球産。木部は柿、布部はペルシャ織の逸品。推定価格800万円』
『ベッド:地球産。木部はチーク製で総手彫りの装飾。マットレスは○○社製最高級品。推定価格1500万円』
『卓上彫刻:地球産。化石神代杉製。推定価格2000万円』
「あの、タマちゃん……」
「なんにゃ?」
「この部屋の家具って、ものすごい高級品ばっかりで、恐ろしくてもう触れないんですけど……」
「にゃははははは。
ダイチはもう『修復Lv3』を持ってるからにゃあ。
家具に傷をつけたぐらいだったらすぐに直せるにゃ」
「す、スキル便利……
あれ、なんか頭の中で警報が鳴ってるような気がする。
それになんか頭も重くなって来たし……」
「それは残りの魔力が1になった警報にゃ。
あと1回鑑定を使ったら気絶するにゃよ」
「やっぱりMPが無くなると気絶するんだ……」
「そうにゃ。
まあ、魔法やスキルの練習のときならいいけど、モンスターとの戦闘中だとヤバいにゃ。
気絶した状態なら間違いなく殺されちゃうからにゃあ」
「うん、気をつけるよ」
「それで、MPを回復させる方法は3つあるにゃよ。
1つ目はこのまま寝ること。
2つ目は魔力ポーションを飲むこと。
3つ目はさらに何かスキルを使って気絶することにゃ」
「何か違いはあるの?」
「このまま寝ることと魔力ポーションを飲むことは同じにゃけど、MPを使い果たして気絶すると、起きたときにMPの上限が上がってることが多いにゃ。
今の大地のレベルにゃら、1から2ぐらい上がるにゃよ」
「そうか、『鑑定』10回で気絶するようなMP量じゃあどうしようもないから、何度も気絶して増やしておいた方が良さそうだね」
「その通りにゃぁ」
「それにしてもさ。
なんかそういう設定がラノベそっくりなんだけど……
でもアルスにダンジョンが作られたのは500年も前なんだよね」
「あちしもコーノスケからラノベ借りて読んでみたんにゃけど。
あれ、初期の作家は間違いなく元ダンジョンマスターにゃぁ」
「えっ!」
「もちろんダンジョンマスターを馘になった後は、アルスで知ったことは地球では口外出来ないように誓約の魔法をかけられるんにゃけど。
でもきっとラノベはフィクションだから許されたにゃ」
「そうだったのか……」
「それに、その方がダンジョンマスター候補をリクルートするときに楽ににゃるから、むしろ神界が推奨した可能性もあるにゃ」
「へ、へぇー」