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*** 18 第2の遺産部屋 ***

 


「さて、それからそなたがダンジョン内での努力によって得たスキルや魔法能力を、そのままダンジョン外でも使用出来るようにする件については、担当天使ツバサが認めたのでもうよかろう。


 そもそも神界の失敗は、現地住民の意識調査が十分でなかったことに原因があった。

 その調査のためにダンジョン外に出たマスターが殺されてしまっては元も子もないからの」


「ありがとうございます」



「それから、ダンジョンマスター就任時に神界より渡すダンジョンポイントの増額についてなんじゃが……

 残念ながらこの増額を認めるわけにはいかんのじゃ。

 そんなことをすれば、現在他の世界でダンジョンマスターとして働いておる者たち全員から追加支給の要請が来てしまうじゃろう。

 それは努力の見返りとしてダンジョンポイントを得るというそもそもの趣旨に反してしまうのじゃ」


「はい……」


「それからの、コーノスケが働きに働いて溜め込んだダンジョンポイントについてなのだが……

 もしもそなたが南大陸ダンジョンのマスターになるのであれば、すべて受け継ぐことが可能だったんじゃが……

 残念ながらあれはダンジョンに属するもので、中央大陸のダンジョンマスターになるそなたは受け継ぐことは出来ん」


「はい…… 当然でしょうね」


「じゃが、ダンジョン内通貨であるゴールドは個人に属するものじゃ。

 そしておなじくゴールドを貯め込んでいたコーノスケから、そなたがダンジョンマスターになるのを受け入れた場合に限り、そのゴールドを相続させてやって欲しいとの要望が上がっていた。

 初期ダンジョンポイントの増額が認められない代わりにこの相続を認めよう」


「えっ……」


「はは、安心せい、相続税は不要じゃ」


「は、はい」


「それからの、コーノスケはゴールドポイントとダンジョンポイントの交換制度の創設も求めていたのじゃ。

 どちらも、ダンジョンに入った者の努力によって齎されるものだと言っての。

 そこでわしは神界調査部に適正な交換比率の算出を依頼していたのじゃ。


 その結果がつい先日返って来ての。


 どうやらダンジョンポイント1ポイントを得るには、ゴールド1ポイントから10ポイントの範囲が望ましいということじゃった。


 そこでそなたには、1対1の交換比率を認めようと思う。

 つまり、そなた自身が努力して得たゴールドや相続で得たゴールドを1ポイント支払えば、1ダンジョンポイントと交換出来るものとする。


 どうじゃ、これで納得してもらえんかの」



 神さまの目が微笑んでいた。

 何故かまたツバサさまが驚いている。

 もちろんおっぱいも驚いている。



「は、はい。あ、ありがとうございます……」



「はは、これでそなたは、ダンジョン内に限定されるとはいえ、神に等しい権能を得たことになるのう」


「はぁ……」


「ところで他に何か要望や疑問などはあるかの」


「あ、あの。

 わたしは神界やダンジョンのルールについてほとんど知りません。

 ですから今後の任務遂行に当たって、数多くの疑問が生じると思います。

 また、言ってみればわたしはダンジョン内に於いては立法、行政、司法の三権を全て持っていることでしょう。

 場合によってはその力によってダンジョン外でも現地住民を『裁く』必要も出て来ることと思われます。

 そうした場合にいちいちツバサさまにお伺いを立てるのもご迷惑ではないかと懸念しております」



「ふむ、もっともな懸念じゃの。

 それではそなたに『ジャッジメント』のギフトを与えよう」


 ダイチの体がまた淡く光った。



「これからは、ダンジョンの設定変更の申請や、現地犯罪者の処罰に困ったときは、心の中で『ジャッジメント』と言うがよい。

 きっと適切な判断が返ってくるじゃろう。

 このジャッジはわしのジャッジに等しいので、その声に従っている限り神界からの譴責を受けることは無いぞ」


「あ、ありがとうございます……」



 神さまが微笑んだ。


「それでは今後なにか追加の要望があれば、担当天使ツバサを通じてわしに連絡するように。

 そなたの要請には出来うる限りの便宜を図ろう。

 それではそなたの活躍を楽しみにしておるぞ」



 神さまの姿が消えた。




 ツバサさまが微笑んだ。


「ふふ、すごいわねダイチさん。

 まさか初級神さまおん自らお越し下さるとは。

 神界もあなたには相当に期待しているようね」


(おっぱいが誇らしげに上を向いてる……)



「は、はぁ」


「そうそう、地球に於けるあなたの助役すけやくなんですけど、コーノスケさんの助役すけやく4名を引き続き協力者とすることも認めます。

 加えて追加で4名までの助役すけやくを得ても構いませんよ。

 あの4名の方もいささか高齢になってきていますからね」


「えっ…… 助役すけやくですか?」


「そうか、コーノスケさんはまだ伝えてなかったのね。

 あの須藤夫妻と佐伯さんと静田さんは、コーノスケさんのダンジョンマスターとしての役割を知っていた協力者だったのよ」


「ええっ!」


「もちろん他の人に口外しないという誓約(ギアス)の魔法も受け入れてたけど。

 だからダイチさんがこれはと思う人がいたら、そのひとにも助力をお願いするといいわ」


「は、はい……」



「それじゃあこれからコーノスケさんの第2の遺産が置いてある部屋に行きましょうか」



 また部屋に白い渦が出現し、それをくぐった先には広大な部屋があった。



「な、なんだこの部屋は……」



(初めましてダイチさま。

 これからよろしくお願い申し上げます)


「えーっと、キミは誰?」


(わたくしはこの時間停止収納空間そのものでございます。

 どうか『収納』とお呼びください)


「収納部屋にも意識が有って喋れるんだ……」


(はい、わたくしはコーノスケさまに作って頂いたLv10の収納空間でございますので、意志の伝達も出来るようになりました。

 なにかご用命の際には念話でご命令くださいませ)


「あ、ありがとう……」



「ふふ、驚いた?

 これがコーノスケさんの真の遺産よ。

 あなたがダンジョンマスターになることを了承したときのみ、この部屋も部屋の中の資産も渡すように頼まれていたの」



「あ、あれは…… き、金塊ですか?」


「そうよ、純度99.9999%の金のインゴット。

 1本5キロだから、それひとつで約2500万円ね。

 それが2万本、100トンあるから、ここにあるだけで5000憶円以上の価値があるわ」


「す、すげぇ……」


「でも金って比重が20以上あるから、5000億円って言っても体積にすると5立方メートルしか無いのよねぇ」


「こ、こっちは鉄のインゴットですか?」


「そう、ただの鉄よ。

 全部でやっぱり100トンあるけど、前にも言ったようにアルスでは金より鉄の方が価値があるから、その鉄を持ち込めば5倍の重さの金と交換出来るわ」


「でも鋳つぶして武器にされるかもしれないから、持ち込んでも配れないんですよね」


「ええそう。

 でもいつかその問題が解決された時のために念のため蓄えていたんですって。

 南大陸の火山の中に細いダンジョンをたくさん通して、金や鉄の鉱脈を探して。

 そこで見つけた鉱石を砕いた後に『精錬』の魔法をかけて作ったそうなの。

 でもね、鉄はまだアルスに持ち込めないし、その量の金も今の日本だとそう簡単には換金出来ないのよ」


「ええ、国税庁や公安調査庁の査察が入っちゃうんですよね」


「ふふ、脱税でもマネーロンダリングでもないけど、まさか異世界で掘りましたって言っても信じて貰えないでしょうからねぇ。

 でもコーノスケさんは毎年少しずつ換金して、それで主に食料を購入していったの。

 あそこにもの凄い量の袋が積んであるでしょ」


「はい……」


「あれは全部小麦粉ね。

 なんでも20万石あるから、20万人の1年分の食料だそうだわ」


「す、すごい……」



「それ以外にも大豆やイモ類の備蓄もかなりあるわ。

 それから各種の肥料や苗や家畜の飼料なんかも。


 まあ時間停止倉庫だからこそ蓄えておけるんだけど。


 それ以外にもあそこにあるのは全部鉄製の道具なの。

 鉄のくわとかすきとか、つるはしとかシャベルとか。

 どれもいざ使えるようになったときのために、静田さんに頼んで少しずつ買って溜めていたそうだわ」


(やるなじいちゃん……)



「それからあそこにあるキャビネットには、魔法やスキルのスクロールが詰まってるわ。

 全部コーノスケさんがダンジョンのモンスターと戦って得たものですけど。

 中には、コーノスケさんの依頼に神界が許可を出して作られた新しいスキルもあるわよ」


「そんなことも出来るんですね」


「ええ、ダンジョンマスターの任務遂行に当たって必要と認められればね。

 それじゃあ最後にゴールドの遺産相続をしましょうか。

 このカードにコーノスケさんがあなたに残したゴールドが全て入ってるわ」


「ありがとうございます……」



(なんかツバサさまの機嫌がいいんだけど……

 おっぱいもぶるんぶるん揺れてるし……


 お、随分と立派なカードだな。

 表面に中身が表示されているのか。



 ん? な、なんだこれ!


『12,000,000,000G』???


 いちじゅうひゃくせん……


 ひ、120億ゴールド!!!)



 ツバサさまが真剣な表情になった。


「そう……

 コーノスケさんは、最初はダンジョンの外に出ても死なないだけのレベルになるため。

 次は南大陸各地に水道網を行き渡らせるのに必要なダンジョンポイントを稼ぐため。

 その後はダンジョンを拡大してモンスターも増やして、殺到するダンジョン挑戦者に対応するため。

 それから水道の魔道具や魔石なんかのドロップ品を用意するため。


 そのために、毎日毎日ダンジョンマスター自らモンスターたちと戦ってダンジョンポイントを稼いでいたの。

 その過程で凄まじいまでの経験値を得てレベルも上がると同時に、とんでもない額のゴールドも溜まって行ったのね。


 さらにダンジョンが軌道に乗って、南大陸全域に水道と平和が齎されるようになっても、モンスターたちとの闘いは止めなかったのよ。

 ダイチさんが南大陸ダンジョンを継いでくれた時に、十分な額のダンジョンポイントを残しておいてやりたいって。


 それからもしも他の大陸のダンジョンに行くことになったとしても、ゴールドだけは相続させてやりたいって……

 南大陸の運営が軌道に乗って出来た余裕の全てをつぎ込んで、モンスターと戦い続けたの……」



(じいちゃん……)





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