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*** 147 レベルアップ ***

 


「さて、そろそろ『治癒系光魔法Lv8』と『クリーンLv8』の複合魔道具を使うための魔石への魔力充填を始めようか」



 こうした上級魔道具には、1日当たり1個ずつの中型魔石が必要なため、大地は体感時間で1か月間時間停止収納庫に籠り、5000個の魔石に魔力を注入した。

 これで当面は間に合うだろう。



 ただ、大ドームに魔道具を設置する際に、大地は種族連合会から強い要請を受けたのである。


「お願いでございます。

 この『まどうぐ』の後ろに、ダイチさまの像を建立させていただけませんでしょうか……」


「それは構わんが、祭祀をしたり司祭を任命したりするのは止めてくれ。

 そういう宗教が蔓延るのは、後々の世に害になることがあるからな」


「仰せの通りに……」



 こうして、大ドームの中央にはシスくん謹製の大地の石像が建てられたのである。

 両脇にはミンナ嬢とヘンナ嬢の像もあり、そのミンナ嬢の肩の上にはジージくんの像もあった。


 最初にこの像を見たミンナ嬢とヘンナ嬢は頬を染めながらジージくんを見た。

 ジージくんの毛の色は黒だったために顔を赤らめているかどうかはわからなかったが、それでもしっぽは相当に膨らんでいた。

 どうやらジージくんはミンナ嬢やヘンナ嬢の肩の上に乗りたかったようだし、2人もジージくんに乗って貰いたかったらしい。

 お互い恥ずかしくて言い出せなかったようだ。


 それ以降、ダンジョンの1階層でジージくんを肩に乗せたミンナ嬢やヘンナ嬢が歩いていると、北大陸のヒューマノイドは皆トボガンになるようになっている。




 アルス時間で2か月も経つと、内陸部にいたヒト族30万人は全てダンジョン内ヒト族エリアに収容された。


 また沿岸部の多くの種族たちも、少なくとも1度はダンジョンで食事を振舞われている。

 どの種族も、暗く寒い冬になっても漁は続けられる上に、いつブリザードが吹いてもダンジョンに避難出来るという安心感から、皆笑顔になっていた。




「それにしても北大陸への救援は早かったにゃあ」


「そうだね」


「中央大陸はけっこうタイヘンにゃのに、なんで北大陸はこんなに楽だったのかにゃ」


「それはたぶん種族の違いだろうね」


「にゃ?」


「要はヒト族が多いと大変なんだよ。

 この北大陸だとヒト族って少数派だからね」


「そうかぁ、暴力で他人を従えて自分はオイシイ思いをしようとする連中が少なかったからかにゃ」


「そういうことだろうね。

 この北大陸の種族会の長老たちは、確かに尊敬されてるみたいだけど、決してみんなに尊敬を強要していなかったろ」


「うにゃ」


「つまり、彼らのして来たことって、『収奪』じゃあなくって『統治』や『防衛』や『奉仕』だったわけだ。

 だからほんの少し助けてあげるだけで、すぐに幸せな社会になったんじゃないかな」


「にゃるほど」


「彼らは確かに物質文明は持っていないけどさ、でも社会形態については地球なんかより何倍も何十倍も進んでいるよ」


「地球のヒト族も早くそうなるといいにゃねぇ……」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「それにしてもダイチさん、本当にありがとうございました」


「これでもう、この北大陸のひとたちも飢えることは無くなるでしょう……」



「いやまあわたしの力というよりは、神界の力やダンジョンの力のおかげですからね。

 あとは地球のスポンサーさんの」


「それでもダイチさんのお智慧も素晴らしかったです……」


「あ、あの…… ところでダイチさんはおいくつなんですか?

 すごくお若く見えるのに随分と落ち着いていらっしゃるものですから」


「ええ、地球での暦年齢は16歳になったところなんですけどね」


「えっ…… じ、16歳……」


「ですけど、生活年齢は22歳なんですよ」


「そ、そんなに長い間アルスで働いていらっしゃるんですか!」


「いえいえ、まだアルスに来てからはアルス時間で半年ほどですね。

 地球では学校にも通っていますし」


「「 ? 」」


「あのストレーくんはレベル10の収納なんですよ。

 そのレベルになると意識も分位体も持てるんです。

 しかも収納量はほぼ無限大ですし、その時間停止収納庫の中には生物も入れるようになるんです」


「「 !! 」」


「だから、俺はその中にダンジョンを造って、そこで6年ほど鍛錬をしていたんですよ」


「「 !!!! 」」


「おかげでけっこう強くなれましたし、魔法もたくさん使えるようになりました。

 それに、そのダンジョンでモンスターたちと戦っても、俺もモンスターもリポップされるようになっていますからね。

 だから、鍛錬すればするほどダンジョンポイントも貯まるんです」


「あ、あの……

 もう少しこの北大陸ダンジョンが落ち着いたら、わたしたちもその時間停止ダンジョンで鍛錬をさせていただけませんでしょうか」


「わたしたちも、せめてもう少し魔法が使えるようになりたいんです」


「どうぞどうぞ、歓迎させていただきます。

 それに、地球のスポンサーさんにお礼を言うにしても、レベル8以上になって『異言語理解Lv3』は取得しておいた方がいいでしょうからね」


「よ、よろしくお願いします……」




 その日の夜。


「にゃあダイチ」


「ん?」


「ミンナとヘンナが笑顔になってよかったにゃね」


「そうだね、だいぶ追い詰められた顔してたからねぇ。

 元通りの北欧美人に戻れてよかったよ」


「それに2人ともダイチを見る目がハート形になってたにゃよ♪」



(あれ? タマちゃんが嫉妬しなくなってるぞ?)


(にししし、ダイチの子の中にはヒト族もいたほうがいいからにゃ。

 あのミンナとヘンナにゃったら、第3夫人と第4夫人ぐらいにしてやってもいいにゃあ♪)



「それにしてもさ、ほらタイのひとって変わった名前のひとが多かったじゃない。

 だからミンナさんとかヘンナさんとか、ふつーっぽい名前なんで安心したよ」


「うにゃ」





 大地くん……

 実はね……


 ミンナさんの苗字って、『パーヤネン』って言うんだ……

 ヘンナさんの苗字は『パンツ』だし……


 2人のフルネームを聞いたときにびっくりしないでね♪



(作者註:フィンランドには本当にそういうフルネームのひとがいる……)




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 神界の神さまたち。


「それにしても、このダイチという男の手腕は凄まじいの……」


「うむ、たったの2か月で北大陸のすべてのヒューマノイドを救うてしまうとは……」


「これで北大陸ではもはや餓死者も凍死者も出ぬようになったか……」


「ダンジョンの力で地球の災害を防いでやりたいと言い出したときには不思議にも思っていたが……

 その成果によって得た食料で、見事に北大陸を救いおったのう……」


「この男の行動は、ことごとく我らの想像の上を行くの……」


「おお、北大陸300万のヒューマノイドの絶大なる感謝の念によって、E階梯も6.5まで上昇しておるわ」


「もはや天使威を与えてもよいレベルになりおったか……」


「いや、このままいけば、神威すら授けられるようになるかもしれんな……」


「ふふふ、『智慧と行動の神』の誕生か……」


「実に楽しみなことよのう……」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「さて、ミンナさんヘンナさん。

 北大陸の状況も落ち着いて来ましたし、そろそろお2人もレベルアップしていくつか魔法能力も取得しましょうか」


「「 よ、よろしくお願いいたします…… 」」


「いや、そんなに大したことじゃあありませんよ。

 辛くも怖くもありませんし。

 それじゃあ、動きやすい服装に着替えていただいて、ストレーくんの時間停止収納庫に行きましょう」




「さあ、こちらがその収納庫の中になります」


「このお部屋がそうなんですか……」


「あ、窓の外に海が見える……」


「アルスでの時間経過は地球に比べて10分の1になりますでしょ。

 でもそれでも時間がもったいないんで、食事や睡眠はなるべくここで取ることにしているんです。

 ここなら時間は経過しませんから」


「すごい……」


「おかげでアルスや地球とは連絡が取れないというデメリットもありますけどね。

 さて、外の砂浜に出ましょうか」




「ストレー、ここに棍棒を2本出してくれ」


(はい)


「まずはミンナさんからレベルアップしましょうか。

 そこの砂浜に座ってこの棍棒を持ってください」


「はい」


「それではその棍棒で私の脚を思いっきり叩いてください」


「えっ……」


「そうするとですね、『遥かに格上の者に攻撃を加えた』と見做されて、大幅にレベルアップするんですよ。

 そうですね、お2人のレベルは今1ですから、一気にレベル10ぐらいまでは上がると思います」


「で、でも……」


「はは、安心してください。

 たぶん俺にはほとんどダメージは入りませんから。

 ただ、一気にレベルアップしますと、『レベルアップ酔い』って言いまして、意識を失うことになるんです。

 まあ、そんなに不快ではないみたいなんですけど。

 ですからお2人が気絶されている間は、ジージくんが見守っていてくれますよ」


「にゃ、お任せくださいにゃ」


「それじゃあ座った姿勢で少し力は入れにくいかもしれませんけど、俺の足を思いっきり叩いてくださいね」


「は、はい。それじゃあ失礼して……」


 ごん!


 ばたっ。


<ぴろりろり~ん! レベルが1上がって2になりました!>

<ぴろりろり~ん! レベルが1上がって3になりました!>

 ・

 ・

 ・

<ぴろりろり~ん! レベルが1上がって8になりました!>



「あー、8までしか上がらなかったか。

 ちょっと攻撃が足りなかったみたいですね。

 ヘンナさんはもう少し強く叩いてください」


「あ、あの……

 ダイチさんは大丈夫なんですか?」


「はは、ぜんぜん大丈夫ですよ。

 けっこう鍛えてますから」


「そ、それじゃあわたしも失礼して……」


 ばきっ!


 ばたっ。


<ぴろりろり~ん! レベルが1上がって2になりました!>

<ぴろりろり~ん! レベルが1上がって3になりました!>

 ・

 ・

 ・

<ぴろりろり~ん! レベルが1上がって10になりました!>



「お、レベル10まで行ったか。

 ねえタマちゃん、レベル8とレベル10だったら、異世界基本セットは取得出来そうだね」


「うにゃ。生活スキルと異言語理解はレベル3まで取れるにゃ」



「あにょ……

 失礼ですけど、ダイチさんは今レベルおいくつなんですかにゃ?」


「今は53だよ」


「す、すごい……

 たった6年の鍛錬でもうレベル53……」


「ははは、ジージくんが戦闘形態になったら俺よりも遥かに強いだろうに」


「それは種族特性ですにゃ。

 ボクが努力したわけじゃあありませんので……

 あにょ……

 いったいどう鍛えたら6年でレベル53にまでなれるんでしょうかにゃ」


「そうだな、今はモンスター1600体といっぺんに戦ってるかな」


「!!!!」


「奴らの平均レベルも18まで上がって来てるから、18×1600×1600で、1回戦うと4600万ダンジョンポイント得られるからさ。

 リポップした後に続けて10回ほど戦ってるんだよ。

 だから1日に4億6000万ポイントをゲット出来るんだ。

 強くなれるし儲かるし、最高だよな♪」


「そ、それが出来るひとはあんまりいにゃいと思いますけどにゃ……」


「あそうだ。北大陸のモンスターって何人ぐらいいるんだい?」


「全部で10種族200体いますにゃ」


「そのうち戦士は何人いるの?」


「今は150体ですにゃ」


「それじゃあさ、彼らも転移の輪で中央大陸ダンジョンに来て、一緒に鍛錬してみたらどうかな。

 鍛錬の後には、うちのフードコートで食事も出来るから、子供たちも一緒に来ればいいし。

 あ、もちろん彼らの分のダンジョンポイントは北大陸に行くように設定しようか。

 そうすれば、北大陸ダンジョンも収入が増えるぞ」


「あ、ありがとうございますにゃあ……」


(こ、このひと凄いにゃ……

 だからミンナたちに10億ダンジョンポイントも貸してくれたり、あんなに見事に北大陸のヒューマノイドも救って下さったんだにゃあ……)



「ストレー、ここに基本セットのスキルスクロールを全部レベル3まで出してくれるか。

 あとジュースとお菓子も」


(はい)


「それじゃあジージくん、ミンナさんとヘンナさんが起きたら、このスクロールでスキルをゲットさせてあげてくれるかな。

 彼女たちが起きるまで、ここでお菓子を食べながら見守ってあげていてね。

 もちろんこの空間には危険な生物はいないから。

 俺たちは地球に戻って、連絡を済ませてくるよ」


「畏まりましたにゃ。

 今日は本当にありがとうございましたにゃ……」




「ところでシスくん、中央大陸の大森林内種族の避難は順調かな?」


(はい、ダンジョン村の人口は間もなく8万人に届きそうです)


「すごいな。

 もう俺がいなくても勝手に獣人種族たちを救えていってるのか」


(移住して来た村のひとたちも、多くが勧誘部隊に参加してくれていますので、これからはさらに人口増加が加速すると思います)


「そうか、それじゃあ俺の食料集めも加速させないとな……」






<現在のダンジョン村の人口>

 7万2154人


<犯罪者収容数>

 5923人(内元貴族家当主205人)





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